2011年10月2日日曜日

Absolut Vodkaの瓶に挿してある一輪の甘い香り




バッタ達が寝静まった私だけの世界で、Absolut Vodkaの瓶に挿してある一輪の、深紅のビロードのような小さな蕾が凝縮した甘い香りを放っている。

濃い緑の葉は勢い良く元気に突っ張って伸びており、先ほど枯れかけていたとは信じ難い。

このところ今の時期にしては異常なほどの暑さが続いていたが、夕方にもなると、日陰のひんやりさが空気全体に伝わり、半袖ではちょっと薄ら寒さを覚え、10月に入ったことを思い出させた。

夏の間の何度目かの芝刈りを経て、今年はこれが最後になるかと一人ごちながら、今朝、朝露に濡れた柔らかな芝を刈り取り始めた。庭中の芝を刈ることは、半日がかりの作業とはなるが、実はこれほど楽しいことはない。

月桂樹の近くでは芳しい香気が漂うし、クエッチの木の下では、だるい甘やかな果実の香りがする。杉の下では、一瞬にして爽やかで新鮮な香りに包まれる。松の下では、芝刈り機の刃が壊れないようにと、マツボックリをひとしきり拾う。そうして、今年の夏、やっぱり今日のように太陽がじりじりと暑く照り付けていた日に、皆で庭でおにぎりを頬張って、その後、バッタ達が遠方からのいとこたちと一緒にマツボックリ投げ飛ばし大会をしていた瞬間に時空間移動。

ちょっとした小高い丘に芝刈り機を押し上げながら、君の庭のガーデニングをしよう、と申し出てくれた男達の顔を思い浮かべてみたりもする。ふっと笑みが漏れる。そうして、今、太陽の下、宮沢賢治よろしく、我ひとり土と遊ぶ。

申し出てくれた一人が、オーストラリアのジョンであったことからも、彼の病状について、今朝届いたメールの内容を思い出す。全然体調は良くない、取り敢えずは化学放射線治療の2週目を終え生き延びている。放射線治療はあと4週間続く。と綴るジョン。彼を笑わせること、楽しませることを、しきりに考える。。。皆の演奏がいつか聴きたいよ。と最後に書いてあった一文を思い返し、ぐっとくる。芝刈り機のモーター音が思いをかき消す。

正午ちょっと過ぎに作業は完了。ここフランスでは、日曜の午後に芝刈り機などの騒音を嫌う。さっぱりとした庭は、歩いていて気持ちが晴れ晴れとする。

そうして、ゆったりと優雅なランチを、、、となれば申し分ないのだろうが、現実はそうもいかない。疲れを癒してちょっぴり昼寝など思っていたが、それも夢に終わってしまう。芝刈り機よろしくフルエンジンで作業をして、夕方になり、ふと気になって、終わりかけた薔薇を伐ろうと、庭に出ていた。

こともあろうか、一本の薔薇が、小さな蕾をつけて途中で折れてしまっていた。昨日、ジュダの木の枝を斬った時に、被害を受けたのであろう。で、あれば、既に折られた時から一日は時間が経っている。切なさと、すぐに見つけてやれなかったすまなさを感じながらも、廃棄袋に入れかけ、また、拾い上げてしまった。小さな深紅な蕾をなんとか救いたいと願わずにはいられなかった。

そうして、もう今は真夜中近く。
なんということだろう。ちゃんと蕾はふっくらとしてきている。甘酸っぱい香りを放って。。。




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皆様のコメント心よりお待ちしております。

2 件のコメント:

  1. あかうな3/10/11 09:28

    くっかばらさんこんにちは。
    台湾に住んでいるあかうなです。
    ジョンさんに赤いバラの花の香りが届くといいですね。。。

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  2. あかうなさん。
    優しいコメントありがとうございます。今朝も水揚げしました。蕾が開けかけていました。なんだか、重大な使命を帯びた気がしてきました。こんなことなら、オフィスに薔薇を持ってくればよかったかしら。。。
    いえいえ、きっと自らの生命力でしっかりと花開くと思います。
    コメント嬉しかったです。これからも、どうぞよろしくお願いしますね。

    返信削除