朝5時の外の空気は思いの他寒さを感じなかった。今日は風がないからか。
それでもポケットから茶色い皮の手袋を出す。しっとりと手に馴染む風合いが気に入っていた。ハンドルを握るときにも具合が良く、外出する時にはいつもつけている。
土曜の通りはひっそりとしている。数日前まで夏日のような日が続いたからか、暗闇の中で濃厚な色を放つ薔薇の花があちこちに目立つ。
広場ではカフェの前に並べられたテーブルと椅子が夜露に濡れて光っている。今日の朝食をテラスで楽しむお客向けに、昨晩並べたと言うよりは、昨夜遅くまで仲間たちと楽しんだお客向けに使われたテーブルと椅子、といった感じがする。そして、スーパーの前では今日一日のスタートに向け、店舗の清掃をする人々が、店が開くのを所在なげに待っている。
一日の締めくくりをしないで、昨夜の名残を引き摺るかのような街。
いや、実は、時には切れ目などなく、流れ続けているのであって、これから日が昇り、空が白んできても、それは時の流れの一場面でしかないのであろう。
駅前を大きく一周して帰途につく。
ふと見上げると、暗がりのアパートの窓から人影がこちらを見下ろしている。
この夏、やはり同じように早朝の街を歩いた時にも、窓を開け放って、外を見ていた人に違いない。こんな朝早く、一体何を思って窓に佇んでいるのだろう。いや、相手の方こそ、こんな朝早く、一体何を思って街を歩いているのだろう、と思っているのかもしれない。
もしかしたら、私と同じように、時間の絶え間ない流れの中で、切れ目としての一日の始まりを感じる人なのかもしれない。
お早う。
そう言って、未だ夢の中のバッタ達がいる我が家に向かう。
にほんブログ村 クリックして応援していただけますと嬉しいです。
皆様のコメントお待ちしております。
0 件のコメント:
コメントを投稿