「むかし、って言うけど、どれぐらいのことを昔っていうか知っている?」
え?昔?ずうっと、ずっと前のことでしょ?
「そう。でも、それを年にすれば、何年で昔になると思う?」
国道49号。磐梯山が見える場所だったと思う。夕日に照らされながら子供達3人が、運転手の母親の話に聞き入っている。
何百年とか、何十年とか、何億年とか、色々な声が上がる。
「十年一昔って言うのよ。だから、10年たったら昔なの。」
へえっ。驚いて、その言葉は心の泉に浸透する。まだ、私が一昔生きていない頃だったと思う。母の運転で、よく子供達3人を乗せた車は国道49号を走った。所得税なる話を聞いたのも、あの道。
国に半分もっていかれちゃっても、最初の額が大きければ、手に残る額も大きいから、ママは頑張って仕事をしなくっちゃ。
そんな、子供にも凄く分かりやすい話だったと思う。今思えば、子供に解説するというよりは、自分に言い聞かせていたのであろう。
突然、このまま東京に行っちゃおうか、となる時もあった。
夕日の中。子供達はこれから始まる冒険にウキウキした。東京の出身の母が何故磐梯山を望む国道49号を走る地に身を置いたかは、別の機会に話すとしても、田舎の方言がまだ身についておらず、双子に年子の、まるで三つ子を育てる母が、時々ふるさと恋しく、東京に行きたくなることがあっても、不思議ではあるまい。
その3人の子供達は、きっと、一人、一人が、自分がママに一番愛されている、とちょっときょうだい達に申し訳ない気持ちを抱きながらも、照れつつも、思っていたことと確信している。
母の言葉は、3人に向けたものなのだが、一人一人に向けたものでもあった。
『十年一昔』。
その話を聞いて、もうそろそろ4昔になろうとしている。
気がつけば、私もバッタ達3匹をクリオに乗せ、Mauleの森を抜け出し、まあるい月をみながら、皆に話している。そして、それは自分に言い聞かせてもいて、一人一人に告げてもいる。
もうすぐ一昔を生きることになる末娘バッタ。
彼女の誕生日に、この十年一昔の話をしよう。彼女に話しながらも、バッタ達皆の心に語りかけ、そして、それは、紛れもなく自分にも語りかけることになろう。
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皆様からのコメント心よりお待ちしております。
いいですね。クッカバラさんのお母様からクッカバラさんへ。クッカバラさんからバッタちゃんへ、語り継がれる思い。。。
返信削除あかうなさん
返信削除10年って、あっというまですね。