なんだろ、この洋服の山は。
二階のお風呂場のドアを開けて、ぐにゃりとした衣類に足を突っ込み、
ちょっと分けが分からなくなる。
そして、突然、パズルが全て嵌る。
そうか、あれは、そうだったのか。
前日、夕方帰ってくると案の定、家の前の通りは両側びっちりと違法駐車の車で一杯。
学校の行事があると、駐車場設備のない学校に赴く保護者は、止むを得ず、近辺に駐車場を求めるが、マンモス校ゆえ、あっという間に路上であれ、駐車が許可されている場所はなくなってしまう。
その日は長女バッタの学年の、教員と保護者の面談日。
希望すれば担当教科の教員全てと、二者面談ができる特別の日。
既に父親が参加すると言ってきていたので(彼は、一緒に行こうと誘ってきたから、毎年のことながら、やはり、驚きつつも、即座にお断りしていた)、その日は通常の業務を終えての帰宅だった。
こんな日は、我が家の庭に入る門を開け、前庭に止めてしまうことにしている。
と、驚くことに、堂々と、我が家の門を塞いで止めている車あり。
信じられない思いで、我が家の前を通り過ぎざるを得ず、遠くのパン屋の通りの前で漸く場所が見つかり、そこから歩いて帰宅。
一言書いてやろうと思って、その文面を必死に考えていた。
ただ、こんなことをするのは、肝の据わった大物で、一体どんな人だろうと思う。
そして、まさか、まさかだが、バッタたちの父親ではあるまいか、との思いが過ぎる。
バッタたちに聞いてみると、パパは最近新車にしたばかりなので(社用車)、車種もナンバーも分からない、という。
過激な文面を認めていると、隣で息子バッタが牽制をする。
結局、彼の校正を受け、極柔らかな、お願い文となってしまったが、それでも、その紙を、大威張りで門の前に止めている車のワイパーに挟めると、なんとなく溜飲が下がる。
そうして、8時頃に、どうも咳き込んで真っ白な顔で調子の悪い長女バッタが寝てしまった頃、父親登場。今年度の長女バッタの成績は悪くないので、親として大いに誇らしかったに違いない、意気揚々とした嬉しそうな表情をしている。
手には、私が書いたお願いの紙。
やはり、あのどでかい車は彼だったらしい。
長女バッタが具合が悪く先に寝ていると知りながらも、未だ寝たばかりなら、お休みのビズをしに行きたいが、どうか、と言う。
こんな時、ぎょっとしてしまう。
私にしてみれば、彼女はもう14歳。
身長も悔しいことに私以上になったし、
胸の膨らみだって、かなり魅力的になってきている。
そんな娘の寝所に行こうだなんて、
一体、何を考えているのか。
しかも、彼女は具合が悪いのである。
その時、
末娘バッタが飛び上がって提案する。
ちょっと様子を見てくる、と。
その間、父親は息子バッタの成長ぶりをしきりと喜ぶ。
そうして、戻ってきた末娘バッタ。
ドアが閉まっていて、どうにも入りづらかったと報告。
その口調に皆で楽しく笑い、
それはご苦労様、ありがとう、と労う。
その場面を思い出しながら、
実は末娘バッタは、大急ぎで二階に上がり、
お風呂場の前に山積みとなっていた脱ぎ捨てた洋服を、
兎に角、お風呂場に入れ込んでしまったのだと、納得する。
父親が、二階に上がって、洋服が散乱した様子を見て、大いに怒るであろうことを思い、事前回避を試みたというわけである。
まったく、大人になったと感心してしまう。
そんなこととは知らない父親は、
嬉しそうに各教員との面談の話をしてくれていた。
もう20時を過ぎている。
遅いし、何か食べるかしら?
私にしてみれば、もうこんな時間なので、どうぞパリにお帰り下さい、のメッセージ。
ところが、彼は嬉しそうに、『ああ、そう言ってもらえるなら、ぜひ』、と返事をする。
あ、じゃあ、お茶がいいかしら、ね。
『え?随分のグレードダウンだね。夕食から、お茶かぁ。じゃあ、別にいいよ。』
ごめん、ごめん。日曜に帰ってきて、買い物にも行けていない状態なのよ。
あ、そうだ。ラーメンでよかったら、どうかしら。
息子バッタがぴくん、と反応する。
そう、台湾から美味しいラーメンを仕入れてきており、
もう半分は食べてしまったが、実に貴重な食品なのである。
大丈夫よ。ちゃんと、他のラーメンがあるから、と彼に目配せ。
『ラーメンね。いいね。ありがとう。』
牛肉の辛細炒めをサービスしたラーメンを食べながら、
末娘バッタや息子バッタと話している様子は、本当に嬉しそうで、
正直、あんな表情は久しぶりかな、と思う。
末娘バッタは早々にお休みをして寝にいってしまう。
息子バッタはまんざらでもなさそうで、
丁度フランス語のエッセイの宿題があったので、それを見てもらっている。
時差もあるし、
いつも6時には起床するし、
もう、寝る時間になったから、と、
早々に引き上げてしまう。
ベッドに入ると本当に眠ってしまう。
夢の中で、
息子バッタがお休みのビズをしに部屋に入ってくる。
息子バッタが私の背を超えるのも、
もうじき、か。
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皆様からのコメント楽しみにしています。
クッカバラさんのバッタさんはいつもクッカバラさんの強い応援団ですね。私も応援させてくださいね。くっかくっかくっかばらばらばら。。。
返信削除心優しきあかうなさん
返信削除ありがとうございます。うふふ。
いつか、ぜひ、クッカバラが元気に囀る歌声を生でお聞かせしたいです。
応援、いつもありがとうございます。とってもありがたく思っています。
これからもどうぞ宜しくお願いします。
あ、ここまで書いて、一つ台湾の思い出で書き残していたテーマを思い出しました。また、何れ書きます。ぜひ、また読んでください。