どんよりと鉛の様な頭で何とか夕方の会議を終えて外に出ると、
冴え冴えとした群青色の空が未だ明るさを残し、
旧正月を迎えて恐らく初めて見えたと思われる月が
細いながらも鋭い光を放っていた。
4時間の睡眠が堪えているのか、
悶々とした思いが募ってしまっているのか、
或いは、
本当に今年は暖冬なのか、
寒気を感じるでもなく、
体は変な火照りさえ持っている様に思われた。
ラジオではダボス会議の様子が延々と伝えられていたし、
道路は相変わらず、混み合っていて、
赤いテールランプが夕闇に続いていた。
それでも一定の流れがあり、
その波に乗ってアクセルを踏むことは、
何も考えられなくなった頭には、
好都合であった。
と、その流れに乱れが生じる。
ちょっと先で、二台の車が縦列になって止まっている様子が見える。
青い点滅。
覆面パトカーか。
その脇を通るとき、前の車から警官が仏頂面で降りるところだった。
無理な追い込みをしたか、
或いは、
無茶な車線変更をしたのだろう。
しかし、
何もこんなところで停めなくても良いだろうのに。
ラッシュアワーでもあり、
渋滞は輪をかけて悪化し、
却って事故に繋がりかねない、
そう思いながら、同時に頭の中では別の光景がくっきりと浮かんでいた。
あれは、冷たい雨の降りしきる夕方。
信号の手前で、対向車線に二台の車が重なる様に停まっている。
ハザードランプを点けてはいるものの、
既に夕闇がまわりを包み、雨まで降っており、見通しは良くない。
運悪く玉突き事故か。
この寒さの中、雨に濡れて、お互いに困っているだろうな、と思う。
と、その車の脇に人影。
雨の中、傘も差していない。
え?
目を凝らすと、
人影は、しっかりと抱き合う男女。
雨の降る真冬の闇夜が差し迫る中での抱擁。
別れ難いのか。
これから、別の目的地にそれぞれ車で行くのか。
信号が青になり、
彼らの姿はバックミラーに小さくなって、やがて消える。
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