2022年3月20日日曜日

新たな出会い

 






師匠から声が掛かったのは森デビューを果たしたことを報告してすぐのこと。週末に森に行くようなら、是非一緒に行きましょう、と。朝9時半に車で迎えに来てくれると言うので、飛び上がる程喜んだのは言うまでもない。


当日、9時からトンカと外に出てウォーミングアップ。首輪も意外にすんなりとつけることが出来てほっとする。水筒、タオル、ウェットティッシュ、ビニル袋、そして、煮干しを用意する。9時半かっきりに、我が家の通りにピタリと車が停まった。いそいそとリースをつけて、さあ行こうとトンカに声を掛けても動こうともしない。困ったな、と思っている時に、車から友人が降りたって、トンカ!と声を掛けてくれる。


魔術師。


トンカは声を聞くなり、大喜びで通りに出て行こうとする。すごいなあ。トンカと二人で助手席に乗ると、後部座席には大型のプードルのハクとこれまた小型のチワワのサスケが歓待してくれる。トンカは初めての友達に戸惑いを見せつつも、嬉しそう。


友人は、本当に慎重で丁寧な運転をして、我々を森の入り口まで連れて行ってくれる。さあ、トンカ。ハクとサスケと一緒に森に行こう!


驚いたことに、犬たちは最初こそ3匹でくるくると回っていたが、ちゃんと師匠というか、魔術師の友人の後に従い森の中に入っていく。3匹とも、本当に嬉しそう。じゃれ合いながらも、ハクは仲間の長としての威厳を持って、野太い声で叱ったり、喜んだりしている。サスケは皆の間をちょこちょこ、ちょこちょこ行ったり来たり。すごいパワー。トンカが仲間たちにすぐに溶け込んでしまっていることに、あっけにとられてしまった。


暫く行くと、シェルティに出会う。友人は、あら、ジャック、おはよう、と声を掛ける。驚いたことに、友人はそこの森で散策する犬たちをほぼ全て把握していて、名前、犬種、年まで知っている。やはり、彼女は魔術師だった。


ジョギングしている人が通ると、犬たちは喜んでついて行こうとしたり、嬉しがって飛び上がって挨拶をしようとする。そこを上手に押し留め、走行者を先に行ってもらうように伝える。そんな時、しっかりとトンカの首輪を手にする彼女を見て、なるほど、こうするのか、と学ぶ。


自転車が実は大いに曲者。トンカなんて、何度自転車の後をついて行こうとしたか。動いている物に対して、本能で追いかけてしまう。追いかける分には、戻ってきさえすれば、百歩譲って良しとするが、何せ真っすぐに走らずに、自転車の前を横切ってしまうから困りもの。サイクリストのムッシューなど親切にスピードを緩めて、「こいぬだね。可愛いね。自転車を追いかけないようにちゃんと教えてあげてね。僕なんか、この間追いかけて来た犬と一緒に走行して、あっという間にその犬が前に来て、轢いてしまったんだ。そんな事故に合わないようにね。」と、忠告をしてくれた。


それから、ラブラドール、ゴールデン、コリー、スパニエル、色んな犬と、飼い主たちに出会った。犬に優しいランナーもいたし、犬何て迷惑ね、と態度で示すランナーもいた。森は出会いの宝庫。


これまで、何度森を散歩しただろうか。それなのに、この日はいつもの森が違った森に見えたのだから不思議なもの。


一時間は歩いただろうか。後半、トンカが鼻を鳴らし始めたので、早めに切り上げることに。トンカにとっては、先が見えないことへの不安があったのだろうか。特にへこたれた様子ではなく、足並みはしっかり、時々1メートルほどの垂直ジャンプをして友人や私を驚かせてくれたりもした。


帰りの車で、私の腕の中で眠り込んでしまったのには笑ってしまった。これでは、まるで子供と一緒ではないか。いや、同じなのか。友人、ハク、そしてサスケと、また是非一緒に森に行こうと約束をして別れる。


トンカ、楽しかったね。仲間って、こんなに良いものなんだよね。そうだったのか。犬も仲間が必要なのか。世界がぱっと明るく広がる。


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