本社サイドでの破格の昇進により、旦那が駐在期間を一年早々に切り上げて帰国した友人と、久しぶりにランチを共にする。
帰国直後に我が家に立ち寄り、実は犬嫌いだったことが判明し、赤ちゃんトンカからの歓迎の愛くるしい洗礼を受けた友人が、そそくさと帰って行ってしまって以来のこと。
待ち合わせの時間を間近に30分遅らせ、その遅らせた時間から更に15分は遅れてやってきた彼女。仕事の合間を縫ってやってきた身としては、のっけからげんなりとしてしまいがち。そんな自分を叱咤し、笑顔で迎える。
この夏にイギリスの大学を卒業した息子君の話が真っ先に話題となる。クラシックギターが専門で、現地の音楽学校で子供たちに教え始めているので、卒業後も現地に残るらしい。そんな彼に、パリでアパートを買ってあげようと、今物件を見て回っているという。もともと不動産関係が個人的にも興味があり、大好きな彼女。趣味も兼ねてのことだろうが、社会人になりたての息子に、あろうことかパリのアパートをぽんと贈るなんて、一体どういう料簡なのか。
今の私にはバッタ達にアパートを買ってやる余裕も、借りてあげる余裕もない。そんな自分の環境と比較してではなく、これから人生を切り拓いていく若者に対し、音楽家志望の若者なら誰もが喉から手が出る程に欲しいパリのアパートを、ぽんと買ってあげることの功罪を考えないのか、と真剣に思ってしまう。
彼をパリに帰りたくさせるインセンティブなのよ。
こともなげに彼女は言う。冷静に考えてみれば、私自身、東京での学生時代と社会人時代、親が購入してくれたマンションに兄弟で住んでいた。同じことか。それでも、その時は彼女の思いに共感できない自分がいた。
彼女は、9月から一年間陶芸教室に通うという。それは楽しそうだね。となるが、会社には帰国したことを伏せて、また一年休職の延長を申し出て受け入れられた、と言われると、ついつい、えっという顔をしてしまう。
次から次から、彼女の口から出てくる話を、友人としてにこやかに受け止めてあげれば良かった、と今なら思う。彼女だって、いちいち咎められ、審査を受けているような、居心地の悪さを感じたに違いない。
別の話題になっても、なんだか心ここにあらずの様子で、上滑りな会話が続いてしまう。
せっかく誘ってもらったノルマンディーでの週末だけど、丁度バカンスから帰って来たばからなので、難しいのよ。金曜に帰るので、土曜、日曜、と無理をすれば行けないことはなかった。無理してでもおいでよ、と言われることを考え、その時は一日だけでも行こうかな、と思っていた。が、特に引き留められることもなく、話題は別なことに移ってしまった。
そして、良いバカンスを、バカンス後に会おうね、と何とも歯切れの悪い別れ方。
私だけがそう思うのか。恐らく、彼女自身まだ帰国して二ヶ月しか経ておらず、色々と忙しいのに違いない。考えてみれば、私に関する質問がなかったな、とぼんやりと思う。まあ、あまり深く考えないことにしよう。バカンスから戻ったら、確かに一日だけでも、ノルマンディーに遊びに行けばいいじゃないか。連絡すれば、大歓迎してくれるに違いない。これまでだってそうだったように。
ますます暑くなりそうな日差しを避けながら、帰路を急ぐ。
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