2021年10月26日火曜日

どっちもどっちか

 





「おや、君のお友達が来ているよ。」


「えっ?どこどこ?ぎゃぁ!」


「こんな小ちゃな蜘蛛ごときで、ガタガタ言わないの。」


どうしようかと迷うが、取り敢えず足元にあった運動靴で、玄関脇の箒の上にひっそりと固まっている物体をパンと叩く。すると細い足がくるくると体に巻き付いて、丸く縮まってしまった。ポケットにあったティッシュで採ろうとしたところ、箒の上でもあるし、外に放り出してしまうと言うので、そうかと任せて身を引く。


「あっ!未だ生きていた!」

慌てて運動靴で新たに潰そうとするところを押しとどめ、ティッシュで取ろうと身を屈めたが、

「僕がやるよ。」

と言うので、まあいいか、と改めて身を引いてしまう。縮まっているのだから、ひょいとつまんでしまえばいいのにな、と思いながら。


バシン!


運動靴でばっちりと潰す、すごい音がする。そして、玄関のドアを開けて外に放り出していた。


「どうして息の根を止めようとする僕を押し留めようとしたの?」

そう聞かれて、かなり驚いてしまった。


バッタ達の友達。宗教観も倫理観も全く異なる彼に、どう説明しようか。いや、説明が必要だなんて思ってもみなかった。


彼にしてみたら、運動靴で叩いたのだから、生き物の殺生に抵抗があるわけがないと思うのは当たり前だし、未だ動いていたら、とどめを刺すのも自然な行為だと思っているのだろう。


いや、それが全く違うのよね。

これは言い訳なのだろうか。

パンと叩くことで、蜘蛛は縮こまってしまう。そこをつまんで外に出す。それだけのことと、腹から液体が出る程徹底的に潰してしまうことでは、何かが違う。


今朝、玄関に置いてある箒には、前日潰した蜘蛛の液体が付着していた。


どっちもどっち、となってしまうのだろうか。


このタイトル「同じ穴の狢か」にしようか迷ったが、内容の割にはさすがにインパクトあり過ぎるかと、ひらがなの柔らかいイメージに変更した。こういったニュアンスの違いが、きっと彼には分からないのだろうな、と思う。これが我が子であれば、真剣に説明するところだが、さて、どうしたものかな。



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