「おや、君のお友達が来ているよ。」
「えっ?どこどこ?ぎゃぁ!」
「こんな小ちゃな蜘蛛ごときで、ガタガタ言わないの。」
どうしようかと迷うが、取り敢えず足元にあった運動靴で、玄関脇の箒の上にひっそりと固まっている物体をパンと叩く。すると細い足がくるくると体に巻き付いて、丸く縮まってしまった。ポケットにあったティッシュで採ろうとしたところ、箒の上でもあるし、外に放り出してしまうと言うので、そうかと任せて身を引く。
「あっ!未だ生きていた!」
慌てて運動靴で新たに潰そうとするところを押しとどめ、ティッシュで取ろうと身を屈めたが、
「僕がやるよ。」
と言うので、まあいいか、と改めて身を引いてしまう。縮まっているのだから、ひょいとつまんでしまえばいいのにな、と思いながら。
バシン!
運動靴でばっちりと潰す、すごい音がする。そして、玄関のドアを開けて外に放り出していた。
「どうして息の根を止めようとする僕を押し留めようとしたの?」
そう聞かれて、かなり驚いてしまった。
バッタ達の友達。宗教観も倫理観も全く異なる彼に、どう説明しようか。いや、説明が必要だなんて思ってもみなかった。
彼にしてみたら、運動靴で叩いたのだから、生き物の殺生に抵抗があるわけがないと思うのは当たり前だし、未だ動いていたら、とどめを刺すのも自然な行為だと思っているのだろう。
いや、それが全く違うのよね。
これは言い訳なのだろうか。
パンと叩くことで、蜘蛛は縮こまってしまう。そこをつまんで外に出す。それだけのことと、腹から液体が出る程徹底的に潰してしまうことでは、何かが違う。
今朝、玄関に置いてある箒には、前日潰した蜘蛛の液体が付着していた。
どっちもどっち、となってしまうのだろうか。
このタイトル「同じ穴の狢か」にしようか迷ったが、内容の割にはさすがにインパクトあり過ぎるかと、ひらがなの柔らかいイメージに変更した。こういったニュアンスの違いが、きっと彼には分からないのだろうな、と思う。これが我が子であれば、真剣に説明するところだが、さて、どうしたものかな。
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