水を得た魚のように生き生きと毎日忙しくしている末娘バッタ。通常の授業以外にも別の大学で物理学を学んでいて、週3回中学生の家庭教師をし、自治会やらクラブ活動に勤しんでいる。
そんな彼女にとって欠かせない足が自転車。それなのに、どうも毎回チェーンが外れてしまうという。そんなの、後輪を引っ張って調節してやればいいのだよ、とアドバイスをするが、どうも母親の言う事なんかまともに聞きはしない。
ママが大学時代に自転車部だったという話も、恐らく右から左の情報なのだろう。
彼女の寮の近くで、自転車の修理をしてくれるアトリエが見つかったと言うので、車で近くに寄ったついでに、トランクに載せて一緒に行ってみた。そこは自転車販売店ではなく、自転車好きのたまり場的なところ。年会費を払ってアトリエの工具を使い、自分たちでメンテをするシステム。初めてで分からない人には、仲間が教えてサポートしてくれると言う。
高校生ぐらいの男の子が丁度手持無沙汰に外にいて、末娘バッタが声を掛けるとにっこり笑って自転車を一緒に見てあげると言ってくれた。一応、様子を見守っていると、自転車のチェーンを外すための工具を取ってきて、使い方を末娘バッタに教えている。どうやらチェーンが垂れていて長いので一つ二つ切ることにしたらしい。
ええっ、と内心思ってしまう。おいおい、大丈夫か。
若い二人は手を真っ黒にしながらチェーンを外し、絡ませては直してと手間取っている。
この夏に修理したばかりだし、購入して未だ二年にもなっていないのに、チェーンの長さに問題があるなんておかしくないかしら。どうしてそうなったのかしらねえ。そう振ってみる。
漸く男の子はチェーン自体には問題がないことに気が付き、どうして良いのか分からないと困った顔をし、丁度そこを通りがかった年長の若い男性に声を掛けた。彼は自転車に一瞥を投げると、事も無げに後輪の位置をずらせばいいんだよ、と教えてくれる。
そう!そうだよね。ほっと安心。
そうなんだ!とばかりに、若い二人は真っ黒な手で後輪のねじを緩め、目一杯位置をずらして調整。ぴんと気持ちよく張ったチェーンを見て、末娘バッタが嬉しそうに微笑む。
高校生ぐらいの男の子は、はにかみながら、会員になりたいのであれば歓迎するけれども、修理のためだけなら、これぐらいのことなら無料サービスです、と言ってくれる。なんて良心的なのだろう。末娘バッタとお礼を言いながら、その場を後にする。
なんとも清々しい。
末娘バッタの誕生プレゼントはアーレンキーのセットにしようかな、そんな思いがふっと浮かぶ。
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fleur de selさん、こんにちは。
返信削除コメントありがとうございます。拍手機能の方でのコメントをどううまく表示したらよいのか分からず、せっかく頂いたコメントが未表示となっていて申し訳ないです。お返事もfleur de selさんに届いているのか、分からずに、頼りないブログ管理者です。すみません。
若い二人が一緒に手を真っ黒にしながら悩み、修理している姿は本当に微笑ましかったです。💞