2022年11月10日木曜日

名残り

 






今年最後の蕾かな、そう思いながらいまだに庭で咲き誇る薔薇たち。例年になく穏やかな日が続くことが大いに影響しているのだろう。それでも朝の7時になっても東の空は暗闇に包まれていて、夕方の5時になろうものなら、空に星が瞬き始める。


人間とはかくも愚かなものかな。わずらわしいと思っていたものがなくなると、それを懐かしむ、いや、かえって欲する気持ちが湧いてしまうことがある。


所詮気持ちなど山の天気のように目まぐるしく変わるもの。


こんな時は、芳しい薔薇の香りをせめて楽しもうではないか。この香りこそは確かなものなのだから。


いや、待て。香りを楽しむとすることこそ、主観的なことこの上ない。


笑止。誰がこの高貴な甘やかな香りに惹かれないものがいようか。


秋の名残りを楽しもうではないか。



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