2022年11月8日火曜日

生意気盛り

 






近所の犬仲間のグループのアカウントに、迷子の犬として画像メッセージが送られてきた。それを見て、心臓が止まる程驚いてしまった。トンカではないか。送信者の飼い犬と思われる犬と鼻を突き合わせているが、毛並み、毛の色、細身な体躯、正にトンカ。まさか、勝手口のドアがちゃんと閉まっていなかったのだろうか。


最近、トンカは生意気になってきていて、呼んでもちっとも応えずに、むしろ遠くに勝手に行ってしまうことが度々あった。ピザの食べ残しやバゲットの切れ端など、転がっていたらひっかかってしまい、何とか引き離しても、遠くに行った際にリードを外すと、一目散にその場に戻ってしまう。たとえ、それが直線コースでなく、歩道とは言え、道路を通るとしても、である。


その日の朝も、勝手に自分で散歩コースを決めて、サッカー場の入り口が開いていたことを良いことに、さっさとサッカー場に入ってしまっていた。朝といえど、未だ暗闇が支配している時間帯で、トンカが一体どこにいるのか分からない。これまでは口笛を吹けば、慌てて走ってくるのだが、どんなに口笛を吹いても、「トンカ!こい!」と呼び掛けても、気配すらしない。


漸く入り口に戻って来たかと思うと、飛び跳ねるように入り口をすり抜け、またどこかに駆けだしてしまった。それでも、恐らく逃げるように走る先はゴミ箱の近くだろうと予想をつけ、足音忍ばせ、暗闇をこちらも忍者のように走る。


案の定大きなゴミ箱のあたりをうろうろとしていて、蛇口が並んでいる水飲み場に転がりこんだところを押さえつけ、お縄頂戴となった。


そんなことがあったので、一匹でうろついている犬の写真をみて、トンカだと真っ青になってしまったのである。よく見ると首輪をしていて、それも丁度トンカの首輪に似ているではないか。ん?首輪?まてよ。トンカは外で散歩をする以外は首輪はしていない。トンカではないのか。


慌ててバッタ達に画像をシェアしていたが、すぐに長女バッタから、トンカに似ているが耳の形が違うのではとメッセージがあった。首輪の話をすると、トンカではないとなる。それでも心配なら、お向かいのマダムに見に行ってもらってはどうか、と言うので、そんなことをしたら、マダムは心配するし、大ごとになりそうだから、と提案を退け、冷静になって画像をもう一度見て、トンカでないことを確認する。


他の犬仲間から、トンカではなく、農業学校のスタッフが放し飼いをしているアイスに違いないとのメッセージも入って来て、ようやく安堵するに至ったが、本当に度肝を抜かれてしまった。


トンカよ。生意気盛りなことは分かるけど、呼び掛けたら返事をするか、ちゃんと戻ってきなさいよね。


トンカとの人生の珍道中は続く。


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