冬時間になって、日暮れの時間も随分と早まっているが、気温だけは異様に暖かく、なんだかちぐはぐな日々が続いている。それでも、青空に輝く太陽の下での森の散策は最高に爽やか。いつもより遠くまで足を延ばしてみようか、そんな気にさせてくれる。
かさかさかさ、と枯れ葉が敷き詰められた絨毯を歩く音が耳に心地よく、野ばらの真っ赤な実がちょっとした装飾になっていて心を和ませる。枯れ葉の厚い絨毯に埋もれている、イガからすっかり飛び出した栗を上手に見つけ出して、こりこりとトンカが食べる音もいたってのどか。
かなりの急勾配の坂を嬉しそうに駆け抜けるトンカの後姿に、笑みがもれる。壊れかけた煉瓦の塀の上を歩く様子は、もしかしたら猫のDNAも持ち合わせているのではないかと思わせる程。
と、丁度目をやった先にぷっくらとしたこげ茶色の傘のきのこがこちらに笑顔を向けている。ま、まさか。天下のセップ様では?いや、さすがに、まさかであろう。写真だけ撮って、その場を離れる。息子バッタがフラットシェアリングをしている仲間の一人がキノコ採りの名人で、彼らが住んでいる近くの森で20個以上のセップを採取し、皆で美味しく食べたという話をしていたことを思い出した。
その日は3時間以上のウォーキングとなり、山歩きの靴を新調したばかりだったからか、足が珍しく火照ってしまっていた。この時期にぐっしょりと汗ばむことは悪くはないが、風邪を引きかねない。急いで着替えて、ソファーに落ち着くと、息子バッタに早速キノコの写真を送る。
と、珍しいことに息子バッタからすぐにメッセージではなく、電話が入る。なんだか興奮している様子で、何事かとよく聞いてみると、セップを見つけたことを喜んでくれているのだった。
「え?本当にこれがセップなの?ママ、写真だけ撮って、キノコは採ってこなかったのよ。」
驚いたのは息子バッタの方だった。先日、息子バッタが久しぶりに家に帰った時に、一緒に森を散策し、セップの見分け方を教えてもらっていたのだが、まさか本当に、あんな大きなセップが見つかるとは露も思わず、そのままにしてしまっていた。
「明日、同じところに行かないとね。」
そう言われたが、さあどうどうしよう。なんだか、最初に見たキノコ(セップ?!)の大きさが、一回りも二回りも大きく思えてきてしまう。豊かな秋の香りがぷんぷんと漂ってくる。炒めた時のとろりとした食感までもが生々しく迫ってくる。
逃した魚は大きい、もとい、逃したセップは大きい。
トン、どうする?明日も森の奥まで、ちょいと行ってみる?相棒からは、すやすやとした安らかな寝息しか聞こえてこない。秋は日に日に益々深まる。
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