4週間にわたる試験期間を迎え、3人の共同生活がスタート。トイレに並ばずに済み、長時間難問に挑戦する上で、大勢が机を並べる体育館スタイルではなく、普通の高校の教室が会場となる地方都市を選んだ末娘バッタ。
寮での生活にしろ、週末の家庭にしろ、とにかく今は朝から晩までびっちりと勉強をする日常なので、急に試験期間だからといって、料理をするとは考えにくい。洗濯だってやるのかどうか。
3人で決めたという食事のリストを眺めて、3人で分担した食料品を買う。基本、彼女たちの意見を尊重しつつ、不足分をカバーしよう。かつ、グルテンやラクトースフリーの食事制限がある末娘バッタのことも配慮せねば。
そこで、野菜がたっぷりと入っている料理の代表格、ラタトゥイユとチリコンカルネを保存食として作ることにする。
先ずは乾燥キドニービーンズをコンソメスープに浸すことから。小一時間は浸す必要があるから、その間に玉ねぎ、緑のパプリカ、にんにくを刻むとしよう。ラタトゥイユの材料も一緒に刻んでおこうか。ズッキーニ、玉ねぎ、なす、パプリカ、人参、トマト。
3人のうち、一人がストレスなのか、親離れが出来ていないのか、めそめそしていて、親も帰るのか最後まではっきりせずに、結局最終的には留まってしまい、彼らの分のランチも用意することになっていた。本来なら、黒子に徹し、料理だけを作って運ぶのみにしたかったが、相手の親御さんから強く引き留められ、結局6人分のピラフを作ることに。
今は深く考えずに、とにかく明るく前向きに、すべてを受け入れ、自分のやれることをやる。それが末娘バッタをサポートする上で一番重要、そう心に決めていた。
大体、3人が共同生活をするなら、ベッドは3つなければならないだろうのに、確かに3つベッドはあるにしろ、2つの部屋にそれぞれベッドがあり、三つ目のベッドは通路の端にあるという配置だった。それを知った時の驚愕、呆れ、悲哀。
なぜ相談してくれなかったのか。
いや、彼女から何回か電話があり、取れない時があった。気が付いて折り返しても、既に授業中であったり、すれ違いが多かった。
自分の目の前のことで精いっぱいで、まさか末娘バッタが悩んでいるとは知らなかった。気が付かなかった。なんたること。
当時、気持ちの余裕がない彼女は、滞在先の選択に関し、すべて友人に任せてしまっていたという。会場からも徒歩20分。もっと良い物件をママが見つけてあげるよ。お金はママが払う。そう言うと、今更遅いし、もう決まっていることに、あれこれ言わないで欲しい。それに、一人で受けるなんてことになったら、絶対嫌だもの。
その時に、悟った。
深く考えずに、とにかく明るく前向きに、すべてを受け入れ、自分のやれることをやる。それが末娘バッタをサポートする上で一番重要。
チリコンカルネ。
オリーブオイルでにんにくを炒め、香りが出てきたところで、たっぷりの玉ねぎのみじん切りを入れる。玉ねぎが透明になってきた頃に、カバンに詰めてきたクミン、パプリカを振り入れる。クミンの香りがキッチンを満たす。このためだけに、いえいえ、もちろん後に味見をするためにも購入した赤ワインを入れ更に炒める。
スープをたらふく含んででっぷりとしたキドニービーンズをスープごと鍋に入れ、ぐつぐつと弱火で豆に火を通す。
豆がふっくらとしたところに、トマトを入れ煮る。
最後にこれも刻んだ緑のパプリカをたっぷりと入れ、塩コショウで味を調える。
嗚呼、うまいっ!にんまりとし、火を止める。
0 件のコメント:
コメントを投稿