寮から戻ってきた末娘バッタと、9月からキャンパスが変わるので共同生活をしていたアパートを引き揚げて家に戻り、3か月の企業研修をしている息子バッタと、食卓を囲んでいた時のこと。
「おっ!これ美味しいねえ。ランティーユだよね。」と、末娘バッタ。
ふっふっふ。最近レパートリーに入れた珊瑚色レンズ豆のダール。さあ、他にどんな材料が入っているか分かるかな?
「人参!違うの?あっ、サツマイモだ!」と、息子バッタ。
そう。フランスのサツマイモは日本のほくほくの薩摩芋と違って、橙色でサクサクしている。日本のもの程甘みも少ないが、それでもスープにはうってつけだし、鮮やかなオレンジ色は見て美しい。
「うーん、この辛さ。香辛料がいつもとちょっと違う気がするなあ。」流石、味にうるさい息子バッタ。そこまで気が付いたのか。生姜が多過ぎたかしら。
「これは、DucrosのCurry madrasだ!」
おっと!どうしてそこまで。いやはや。息子バッタには参ってしまう。ただの「Curry madras」だけでも凄いことなのに、香辛料のブランドまで出すとは。香辛料好きの我が家の戸棚は2段程香辛料の瓶がぎっしりと詰まっている。
息子バッタは一人住まいになってから、毎週新しい香辛料の瓶を揃えていると以前話していたことを思い出す。
流石でございます、と言えば、他にも何かあると言う。
「この味の深みはCurcumaに違いない。」
うーん。Curcumaは既にCurry madrasに入っているんだよ。それよりもPaprikaだよ、と言えば、Paprikaは鮮やかな朱色を出すだけで、味はそうないんだけどなあと呟く。
恐ろしや。三つ子の魂百まで。
今でも忘れない。あれは末娘バッタが生まれた時だから、息子バッタは未だ2歳ちょっとだった筈。生意気なことに、あの頃、既におしゃべりをしていたのかと、今更ながら驚いてしまう。
いや、おしゃべりどころではない。ある日、キッチンで夕食の準備をしていると、息子バッタが飛び込んできた。「今日はポテトだよ。」と言うと、オーブンをじっと睨んで「ポテトじゃないよ、Pommes dauphines !」
あ、はい、はい。そうでございますね、お坊ちゃま。
まったく、と苦笑しながらも、オーブンからマッシュポテトを丸くしてこんがりと焼き上がった熱々の「ポテト」もとい「Pommes dauphines 」を出したものだった。
今思えば、あの頃はなかなか手料理を手際よくやれていなかったのだろう。バッタ達が大好きなポテト料理。今ではすっかり買わなくなってしまったが、以前は冷凍食品のお世話になったものだった。
数日後。キッチンで夕食の準備をしていると、またしても息子バッタが飛び込んできた。「今日はPommes dauphinesだよ。」と言うと、オーブンをじっと睨んで「Pommes dauphinesじゃないよ、Pommes noisettes !」
ええっ!正直、息子バッタに言われるまで、違いなど気にしていなかった。マッシュポテトを丸めてこんがり揚げたものだとばかり思っていた。
慌てて袋を見ると、確かに。大きさが違う。そして、名称も違う。いやあ、びっくり。
生意気な息子バッタ。誰に教わったのだろう。
細かいことに拘るなんて!誰に似たのか。アバウトが信条の私でないことは確か。たとえば、地下鉄のメトロ。「メトロじゃないよ。メトロポリタン!」
なんて可愛らしくないんだろう。小憎らしい。確かに、当時の地下鉄の入り口は「METROPOLITAIN」と黄色地に緑で独特のアールデコ調で書いてあった。今は赤い「METRO」の掲示板の方が多いのだろうか。
そんな調子で、彼は大人になったのね。嬉しそうに「Curry tandoori」のスパイスを使った料理の話をしている息子バッタの横顔を見て思う。
三つ子の魂百まで。
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