やあ、久しぶり。元気にしている?
そんなメッセージが届いたので、パール色の薔薇の写真を送っておいた。先月にも同様のメッセージが来ていたので、島でのご来光の写真を送ると、どこにいるのか聞いてきたので、その問いにはスルーした。
既に、決定打を出していたと思っていた。それでも、時々、忘れた頃にメッセージが送られてくる。軽くて、爽やかなルイボスティーのようなメッセージ。それに対し、写真を送っていたことは確か。
人は聞きたいことを聞き、読みたいことを読む。そういうことなのか。
薔薇の写真の後に、この薔薇の花びらを摘みに夕方立ち寄る、といったメッセージが返って来たので、これはスルーしておいた。いつものように、夕方の長い散歩をトンカと楽しみ、疲れてへばっているトンカを一人にして、ちょこっと買い物に出ようとしていた矢先のこと。インターフォンがけたたましく鳴る。
トンカは跳び上がってはしゃいでいるので、何とか制して玄関に向かおうとするも、するりとドアの隙間から玄関に出てしまい、その勢いで二階に上がり、そして大喜びで一気に階段を降り、ほら、上手にできるでしょ、と見せたいのか、その往復を何度もする。
トンカの大騒ぎのそばで、インターフォンに出ると、メッセージを送って来た相手。どうしたものか。あんまりトンカが階段を往復するので、ままよ、と玄関の扉を開けて外に出してあげる。玄関アプローチをトンカが走り抜ける様子も見ずに、慌てて部屋のドアを閉め、勝手口から外に出る。トンカの吠える元気な声が聞こえてくる。きっと両者とも驚いているだろう。
はにかんだ笑顔が門の前で佇んでいた。
私にしてみれば決定打の、以前送ったメッセージのことについて触れ、それでもこうして来たということは、何か新たな展開があったのかしら、それとも、あのメッセージの意味は伝わっていなかったのかしら、と言ってみる。
戸惑いが顔に浮かび、何のことだか分からない、ただ、顔を見たかったんだ、と、数学の問題が解けずに、黒板の前で困っている子供のような表情をしている。
ゆっくりと、改めて、以前送ったメッセージの内容を丁寧に告げる。誰にでも分かる内容の筈だった。それでも、人は読みたいことを読む。聞きたいことを聞く。
階段の往復で興奮したのか、抜け出し作戦が成功したことに興奮しているのか、珍しくトンカは吠え続け、すごい勢いで土を掘り返したかと思うと、猛スピードで走り回っていた。どうしたの?ほら、落ち着いて。そう言って背中をなでるタイミングさえ与えない。
それで、仕事は上手くいっているの?調子はどう?
その時だけは嬉しそうに、誇らしげに、手を腰に当てて順調だと告げた。もう4年近く会っていなかっただろうか。無精ひげとは言わないのだろう。手入れが行き届いた髭をたくわえ、お腹周りもすっきりしている。そうか、今の自分を見て欲しかったのか。
私のことは一切何も聞かない。仕事のこと、子供のこと、日本の家族のこと、トンカのこと。まあ、いいか。いつだって、そうだったのかもしれない。
じゃあ、と立ち去る相手をトンカと見送る。ちゃんと今度はメッセージは伝わったのだろうか。人は聞きたいことを聞き、読みたいものを読む。さあ、トンカ、ちょっと大人しくお留守番していてね。これからちょっと買い物に出るから。
人生は続く。
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