朝9時の船で本土に戻ることにしたので、早朝からトンカとたっぷり海岸線沿いに散策をする。船着き場の港まで歩いて30分、リュックを背負って、トンカを連れての行程なので8時には出発することにしていた。
途中鴨がたくさん泳いでいる沼があったり、鬱蒼とした森の中を通ったり、大草原を横切るなど、複数の道が選べたが、この際最短距離を取ろうということになる。つまり、車道を大人しく歩く、ということである。
丁度村を出たところで、一度抜いて行った車が停まってくれた。なんと、バッタ達の父親の従妹夫婦。彼らも同じ船に乗ることは前日、パピーの従妹の叔母さんの家に挨拶に行った際に聞いていた。しかし、こうもタイミングよく会うとは非常に幸運としか言いようがない。トンカも一緒に、皆で車に乗せてもらい、あっという間に港まで来ることが出来た。
これがこの島の魅力の一つ。とにかく小さいので、知り合いに出くわす可能性は大きい。以前、バッタ達の父親と島に遊びに来た時、船の中で常に親戚の誰かと出くわし、お互いに嬉しそうに近況を交換し合い、船着き場から電車の駅まで車に乗せてもらっていた。
もう二十年近くも会っていない筈なのに、当たり前のように話をし、離婚したことなど全く関係ないかのようにふるまってもらえるのは、大変不思議でもあり、ありがたかった。それほど時間が経過したということでもあり、それほど近しい関係ではなかったということでもあるか。
船の出航まで、カフェでおしゃべりをするのも、以前とちっとも変っていない。車に乗せてもらったお礼にと、彼らも誘って朝日を楽しみながらエスプレッソを味わう。バッタの父親の従妹夫婦はリヨンに住んでいるので、これから8時間かけて車で帰ることになる。恐らく同い年ぐらいの従妹は、あれから誰か良い人に巡り合って再婚したのか、と屈託なさげに聞いてくる。
そんなことにはならなかったのよ。そんな出会いがあるかもとは期待していたのだけどね。
笑顔で返事をする。
でもね、もう今では不思議なことに、ちっともそんな出会いを求めなくなっちゃった。必要を感じないのよね。それに、相棒としてはトンカを迎えたし。
人生、これからよ。きっと素敵な出会いが待っているわよ。
ふふふ。笑って受け流す。これまでの人生だって、大いに楽しんできたことなんて、力説するつもりは毛頭ない。
結婚式を挙げた神聖な地であるし、思い出がたっぷりと詰まった地でもあるし、何より、彼の大切な故郷なのだから、むやみに足を入れては申し訳ないと思っていたが、そんな変な気遣いは必要がないことに気が付いた。私が抱えていたわだかまりも、いつのまにかすっかり消えていることにも、今回気付かされた。
見上げる空はどこまでも青く、潮風が爽やかだった。そう遠くない将来、是非また訪れよう。きらめく海を見つめながら、そっと呟いた。
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