2022年5月10日火曜日

バナナシフォンケーキに魅せられて

 







いつも美味しいケーキをご馳走になるけど、今回のケーキは格段に美味しかったわ。軽くて、弾力性に富んでいるだけでなく、バナナのしっとりとした風合いが何とも言えないの。ぜひ、レシピを教えて頂戴。


マダムに惚れ込まれたケーキとは、オイルフリーのバナナシフォンケーキのこと。マダムがそこまでおっしゃるなら、とこちらも大喜びで、材料とレシピをできるだけ丁寧に、かつ分かりやすく書いて、デッサン入りでその日のうちに届けた。


滅多にケーキを作らないのであれば、台所に常備していないと思われるベーキングパウダー、ホワイトチョコレートを一緒に添えて。


マダムはとても喜んでくれたが、毎回会うたびに「この週末には作るつもりよ」、「バナナがなかったから、買って来たので明日にも作るわ」、「孫娘が来る来週末に作ることにしたの」と、こちらが却って申し訳なくなるぐらいに言ってくる。レシピだけならともかく、バーキングパウダーやホワイトチョコレートを添えたことで、変にプレッシャーを掛けてしまったのだろうか。


レシピが分かりづらいなら、よろしかったら土曜の午後にも伺うので、一緒に作りましょうか、と申し出たところ、「あら、レシピぐらい読めるし、ケーキも一人で焼けるわよ!」と言われてしまう。


何せ真向いのマダムなので、週日はともかく、週末にもなると必ずといっていい程顔を合わせるので、お節介し過ぎてしまったかな、と反省することしきりだった。


が、ある時、インターフォンがけたたましくなるので窓の外を見てみると、マダム。慌てて玄関に行くと、「大失敗よ!でも、取り敢えず作ったので一切れ持って来たわ。」と、未だ温かいアルミの包みを手渡された。うまく解けなかったけれど、宿題をちゃんと提出できたことを嬉しそうに報告する子供のような表情のマダム。


思ったようには膨らまなかったとのこと。レシピの書き方が悪かったのかもしれないと、慌ててアルミを開けてみると、確かにシフォンケーキの膨らみがない。今思えば、お行儀が悪いかもしれないが、一口その場で食べてみた。どうやら、型に塩入りバターを塗ったのではと思われる。メレンゲがしっかりと硬く角が出来る程まで泡立てていなかったのではないだろうか。


それでもメレンゲはしっかりと泡立てたという。5分は少なくとも泡立てたかと聞けば、そんなにしなくてもメレンゲになった、と譲らない。生地の色が濃厚な黄色なので、黒糖でも使ったのだろうかと思うが、これもキビ砂糖だと言う。なら、小麦粉か。すると、娘が田舎で飼っている鶏の野放し卵なので、黄身がオレンジ色で美しいでしょう、とマダムの方から情報をくれた。ひょっとしたら、卵のサイズが小さかったのかしら、と思う。


上手くできないってこと、すごく嫌なので、また挑戦するからね。と、マダム。次回は、是非、これでもかって程にメレンゲを時間を掛けてしっかりと硬く泡立ててみてくださいね。


メレンゲに非はなかったと不満げなマダムだったが、他に何が考えられるだろうか。レシピが分かりにくかったのかもしれない。信念を曲げて、サラダオイルを使ったレシピを別途書いて、手渡したが、どうも未だ最初のレシピに拘っているようだった。


負けん気なマダム。そんなマダムに、日本の母の日に、アールグレイの香りのシフォンケーキを焼いて、庭の薔薇と純白のリラを飾ってプレゼントする。フランスの母の日にはまだ間がある。お孫さんが遊びにくると聞いていたが、どうやら別の日になったようで、半分は冷凍庫に入れてしまったという。


とっても美味しかったわよ。でもね、やっぱり私は、あのバナナの香りのするケーキのほうが数段好きだわ。茶目っ気たっぷりに笑うマダム。実は、私もそうなんです。でも、せっかくだから別のケーキも味わっていただきたいと思って。


日がどんどん長くなってきて、優しい夕日が真っ白なリラをパールのように輝かせている、そんな5月のある夕方のこと。


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