2022年5月5日木曜日

パピーとの再会

 







何年振りかで会うパピーは、末娘バッタに私が以前描いて送っていたトゥッカーノのカードを見せているところだった。私の顔を見るなり、驚いた様子で、そして笑顔で挨拶をしてくれた。日本の家族は皆さん元気ですか?恐らく母のことを思いやっての言葉であろう。


末娘バッタとは昨年の夏以来の再会であり、突然の訪問を大いに喜んでもらえた。


末娘バッタが車椅子に乗ったパピーを街中に連れ出す。街中といっても、教会があって、クレープのレストランやカフェが数軒あって、パン屋と土産物があるだけの、簡素な、それでいて潮の香りが時々する島の中では一番大きな村の中心部。


日の当たる通りのカフェに陣取ると、飲み物を頼んで、トンカを改めて紹介する。孫娘に会って、久しぶりに外出ができ、パピーはとっても嬉しそう。以前からバッタ達の父親とパピーは似ていると思っていたが、はっとする程酷似している。


時々、一瞬だけど末娘バッタが辛そうな表情をする。パピーは、目の前にいる人物が末娘バッタであることは分かっているが、それ以外のことは曖昧模糊としている。今自分がどんな状況にあるのか、どこに住んでいて、これからどうするのか、など全く把握していない。


夕食はどうする?


トンカがいるので、レストランは無理なので我々は砂浜でのんびりしようかと思っていると私が伝えると、「パン屋に寄って、バゲットを買っていこうじゃないか。」とパピーが末娘バッタに言う。


末娘バッタが優しく、明日のランチを一緒に食べようと誘う。


パピーが生まれ育った島に戻ってくることは、本来なら素晴らしいことなのかもしれないし、パピーが元気で、本人の意思でそうするのであれば、大いに喜ばしいことなのかもしれないが、この状況ではどうなのだろう。


恐らく島は中学卒業と共に出てしまい、パリ、ナント、ボルドーでそれ以降の人生を歩んできたパピー。勿論、島には毎年何度も戻って来たし、家も構えてはいるが、幼馴染も数える程に少なくなってしまったし、知り合いも親戚がいるぐらい。それよりも、何よりも、パピーは今では一人では外出できないし、大好きな海を見ることさえできない。


息子はパリにいるし、息子の子供達、つまりバッタ達もパリ。息子は、いつでも会いに行けるパリにパピーが来てくれることを望んだのだが、パピーの意思決定の代理の権利を獲得しているボルドーに住む娘が、誰と相談することもなく、パピーを島のホームでお世話になることにしてしまった。

娘にしても、ボルドーからこの島まで一日がかりで来る程遠いのだから、そう頻繁には会いに来ることはままならないであろう。


海を見ることができない島の真ん中のホームで、子供達や孫もそう頻繁に会いに来ない、そんな状況がパピーにとって最善とは思い難い。


兄と妹とのつまらない確執なのか。


そんなことよりも、今、この時を感謝し、大切にしよう。パピーの手が優しくトンカの頭を撫でる。




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