2022年6月10日金曜日

不思議な出会い

 





トンカと散歩をしていると、色んな人たちとの出会いがある。これまで、恐らく言葉を交わすことがなかったであろう人々。


ゆっくりと散策を楽しんでいる高齢のマダムたち、のんびりとベンチでおしゃべりを楽しんでいるリタイアした夫婦、叢に寝そべっている親子、小川で水遊びをしている子供達、ワイルドな装いでマウンテンバイクを楽しむ若者たち、ランニング中の男性。もちろん多いのが犬を連れている人々。


トンカは嗅覚だけでなく、第六感も発達しているようで、トンカを受け入れてくれる人や動物を一瞬のうちに識別する。トンカの勘に頼るわけではないが、これまでトラブルになったことは有難いことにない。自転車やランニング中の人、散歩する人を上手に避ける術を身に付けている。


先日は3匹の犬を連れて、自分は携帯で大声で電話をしている男性と出会った。その日は雨上がりだったからか、一匹も遊べる仲間と出会っていなかったので、毛むくじゃらの塊を見つけると、カンガルーの様に跳び上がって牽制しつつも、大喜びのトンカだった。


ただ、3匹の毛むくじゃら君たちは、どうもスプリンターではなく、トンカとぐるぐると臭いを嗅ぎ合っているだけで、当てが外れてしまった感が強かった。電話を終えてこちらにやってくる男性に、見事な三匹ですね、と声を掛けると、強いアクセントで3匹の関係を説明し、一番若い一番大きめの毛むくじゃら君の飼い主であると教えてくれた。


そして、唐突にアジアのどこから来たのか、と聞いてきた。初めて会った人に対して、こんな失礼な質問はないだろう。憮然とした顔をしてしまったと思うが、相手は怯むこともなく、アジア系の方ですよね、と言い方を変えて来た。


日本ですよ。と教えると、大仰に目を見開いて驚いて、「ニホンジンデスカ!ワタシ、ニホンゴハナシマス。」と言ってくるではないか。この手は大いに苦手。なので返答をしないでいると、「ニホンゴハナシマスカ?」と聞いてくるではないか。

先ほどの大声の電話が英語だったので、英語で、もう長いことフランスにいるので、とさらりとかわし、で、そちら様はどちらのご出身ですか、と投げかけた。


その質問を聞いたか聞かぬか、3年半日本に住んだことがあり、大好きなんだ、と嬉しそうに話し始めた。そして、日本のどこから来たのか、と聞き始めた。その問いをやんわりと避け、日本に住んでいたのですか!と、それこそ大仰に驚いて見せた。お仕事ですか?だとしたら、どんなお仕事をなさっていたのですか?今度はこちらが矢継ぎ早に尋ねる。


大学で教えていたんだよ。トーダイ、ワセダ、。。。ふうん。ずいぶん昔の話ですが、と出身大学を告げると、「いわゆるフランスで言うところの、クリームのクリーム、最上級のクリームじゃないか」と言うので、昔のことですし、フランスでは全く何の意味もないものですよ、と伝える。相手はにやりとする。


私の日本人の知り合いで、彼は本当に優秀な経済学者なんだけれど、大学闘争の時代に大学進学したので、彼の年は東大の入試が行われなかったので、一ツ橋に行ったんだ。だから、彼のCVには、大学闘争で東大の入試が中止された年、との但し書きが記載されているんだよ。


バカバカしい。その方を存じ上げないので言うのも何ですが、つまらない話ですね。そんなことに拘るなんて。


吐き捨てるように言ってしまってから、後悔し、まあ、ジョークでしょうけど、と付け加えた。彼は日本人の経済学者の優秀さを強調している。それでご専門は?「経済学だよ」どちらの大学を出ていらっしゃるのですか?「プリンストン」


そう来たか。まあ、プリンストン相手に威勢を張ったのだろうか。出身大学で人格までランク付けされた日にはたまったものではない。


長女バッタの専攻が経済なので、彼女の話をすると、どこで学んでいるのか、と聞いてくる。おっと。彼女が何を研究しているのかは把握しているつもりだが、所属の大学となると覚束ない。すると、是非研究論文を読んでみたいので、送ってくれ、とリクエストされる。


面白いなあ。ちょっと嫌味なおやじ風に書いてしまったが、それから、パリで教えている日本人の経済学の教授の友達の話をし、2011年の東日本大震災の話をし、日本の故郷の宣伝までしてしまった。聞けば、彼の子供たちはバッタ達の通った学校の卒業生。もう卒業して随分と経つようだったが、そんなに近所に住んでいながら今まで会ったことがないことが不思議なぐらい。


是非連絡先を教えて欲しい、と言う。「最初のデートでは無理かな」笑える、笑える。


こんな会話の間中、毛むくじゃらの3匹とトンカは意外におとなしく、ぐるぐるとその辺を動いているだけだった。


去年までは森で散歩をしていたが、イノシシの子供と犬がやりあう事件があったので、それ以来は森の中には入らないことにしているという。そうか。森は魅力にあふれているだけでなく、危険も潜んでいるのだな、と今更ながら思う。


それでは教授、またお会いしましょう!笑顔で別れる。トンカがもたらしてくれた面白い出会いに笑みがこぼれる。


👇 拍手機能を加えました。出来ましたら、拍手やクリックで応援いただけますと、とても嬉しいです。コメントを残していただけますと、飛び上がって喜び、お返事いたします。




にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

にほんブログ村 犬ブログ 犬のいる暮らしへ
にほんブログ村
↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています

0 件のコメント:

コメントを投稿