ノルマンディーの海岸沿いを車で飛ばして行くと、一面にコクリコが咲き乱れている場所を幾つも通る。太陽の光を浴びて、その場所だけが燃えている。思いがけないその光景に、はっと息を飲み、対向車に気を付けねばらなない細い曲がりくねった道なのに、意識が飛んでしまう。
そんな光景を、八方塞がりで、援軍などいないと思って孤高に闘う彼女に見せたかった。
気位の高い彼女は、決して自分から音を上げて応援を頼むタイプではなかった。だからこそ、彼女を支援している仲間がいることを知って欲しかった。関係者全員に声を掛け、我が家に集まってもらい、サプライズをしようと企てた。彼女の労をねぎらい、感謝の意を伝えたかった。随分と大勢の仲間が賛成してくれて、我が家に集まってくれる算段は付いた。
彼女は週末は家で缶詰で資料と闘いながら悶々と過ごしていると言っていた。だから、ある日曜日をXデーとした。
後は、彼女を我が家に誘うだけ。皆が彼女の為に集っているなんて聞いたら、絶対に出てこないだろう。サプライズにもならない。だから、そっと誘い出さねばならない。その時の誘いの言葉が、「コクリコを見に行こうよ。一面に咲き乱れている場所があるの。ノルマンディーにコクリコを見に行こうよ。」だった。
あれから何年経っただろうか。時々、彼女からメッセージが届く。コクリコの季節だね。思い出すよ、誘ってくれた時のこと。光景が目に浮かんで、すごく嬉しかったよ。
当時、彼女に誘いの電話をした時、気晴らしになるからと別の友人宅に既に呼ばれているらしく、私からの誘いをやんわりと断ったのである。だから、彼女は我々の企画を知らないし、仲間たちの思いを知らない。
あの時の我々の思いを知ってか知らずか、今年もコクリコは太陽の情熱を浴びて輝いている。
👇 拍手機能を加えました。出来ましたら、拍手やクリックで応援いただけますと、とても嬉しいです。コメントを残していただけますと、飛び上がって喜び、お返事いたします。
にほんブログ村
にほんブログ村
↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています
0 件のコメント:
コメントを投稿