賑やかな破裂音が聞こえてくる。遂に雷雨か、と思うもののなんだか軽妙で陽気さを伴った連続音に、花火に違いないと気が付いた。
慌ててバッタ達の部屋から外を見ると、確かに小指大に見えるエッフェル塔の方面で空に花火があがっている。しかし、まさかパリの花火の音が、こんなにリアルに聞こえるはずはない。
それにしても、また一日間違えてしまったか。革命記念日には各地で花火があげられる。だから、つい、革命記念日の7月14日の夜に花火があげられると思ってしまう自分に呆れる。前夜祭の存在を迂闊にも忘れてしまうから、こんなことになるのだろう。
そもそも、前夜祭、イブ、レヴェイヨンを祝うことは、クリスマスのことを思えば分かりそうなもの。二日掛けてお祝いなんて、庶民的考えではしないものな、と思ってしまう。
いや、それより花火。とにかく近くまで行って見てこなきゃ。
「ママ、雨が降っているよ。」
そんな息子バッタの声を後に、外に出る。確かに小雨が薔薇の葉を揺らしている。しかし、軽快な爆発音は続いている。終わる前に見ないと。大通りよりも、見晴らしの良い小径に出よう。そう思って小走りになる。
しかし、そんな酔狂な人間は通りに誰もいない。或いは、皆、首尾よく花火が良く見えるお城の公園に行っているのだろうか。
小径に入ると、想像通り、東の空にきらきらと金、白銀、赤、青、と大輪が咲き続けている。時々、彗星のようであったり、ロケットのようであったりと、なかなか工夫されている。
喧噪からかけ離れた場所で、ひっそり一人で小糠雨の中、一瞬、一瞬の輝きを楽しんだ後、スキップしながら爽快さに包まれて家路に就く。
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