それもまた一興

 

まさかとは思うが、本当に今年の夏は早々と駆けて行ってしまったのかと思う程、肌寒い日が続く。

クエッチもミラベルも、レインクロードも、青く硬い実は大きくならないし、数える程しか見当たらない。

今年は枇杷の木にはどうやら一つも橙色の実がついていない。辛うじて胡桃の木に黄緑色の丸い実が散見される。

唯一、豊作と思われる林檎。それだって、この嵐のような風で、まだ小さな実はちぎれんばかりに揺れている。

ラベンダーはなかなか穂が膨らまないし、紫色に染まってこない。

冷やし中華よりもタジン鍋。トマトとモッツアレラのサラダよりも熱々のピザ。グレープフルーツのタブレよりもクスクス。

例外はデザートか。

苺のババロアにネクタリンを盛りミルティーユを飾る。穂先が紫になり始めたラベンダーを厳選し香りと色を添える。

強風に枝がしなっている様を楽しみながら、初夏の日差しを感じさせる一品を味わうのも、一興ではあるまいか。

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