久しぶりに足を踏み入れると、そこは既に違う世界が広がっていた。
知った道である筈なのに、こうも景観が変わってしまうと迷ってしまう。しばらく行くと広場に出て、案の定行き止まりとなってしまった。以前、こんな広場があっただろうか。
どこで間違ったのだろうか。茶色の土肌が剝き出しで見えていた、ちょっとした崖を思い出した。マウンテンバイクの通り道かと思ったが、そこを思い切って上りきるべきだったのか。
携帯の振動でメッセージを受信したことが分かり、誰かと思って見てみると自宅で仕事中の息子バッタ。「ママ、どこ?」
ピンクの薊の花の写真に「ここ」と書き、返信する。
しばらくしてから、友人から同じようにメッセージ。どうやら、夕方おしゃべりに立ち寄ってくれたらしい。呼び鈴を鳴らしても誰も出ないので、勝手に家に入って涼んでいたという。二階で仕事をしている息子バッタは、私が不在であることを知らなかったので、私が対応してくれているものとばかり思っていたらしい。
お茶でもご馳走しなくちゃ、と駆け足でUターン。日本に駐在することになったので、自宅を貸すことにしており、今引っ越し作業で大忙しの彼女。ビザがなかなか下りずに、7月出発の予定が8月末になっていたが、家は既に8月1日から貸す契約を交わしていたので、日程調整におおわらわ。家具や荷物は既にノルマンディの別荘と日本行きの倉庫に送り込まれていた。
よかったら、我が家に泊ってと申し出ていたが、パリ市内にAirBを借りたらしい。8月からはノルマンディの別荘に住むと言う。バリで建築デザインの仕事をしている彼女の長女がバカンスで戻っているし、週末にはバーミンガムでジャズギターを学ぶ息子も帰ってくる。
最終点検と掃除を兼ねて今朝は家に戻っていた彼女。冷凍庫の整理を忘れていたからと冷凍食品をたんまりもらったばかりだった。どうやら電気系統でも問題があるらしく、空っぽの筈の家は電気技師やお手伝いの人々でにぎわっていた。
ビザ申請に必要な重要書類を日本行き荷物に間違って詰めてしまったことが判明し、倉庫に行って荷物の点検をしなければならないと嘆いていた。段ボールの数が数だけに、3人の人出を要するので、新たに費用が5万円ぐらいはかかるらしい。しかも、倉庫はパリの郊外、オルリー空港の近くというから泣けてくる。
そんな彼女を労い、話を聞いてあげなきゃ。勝手に家に入ってくつろいでいたという彼女の姿が目に浮かぶ。遠い昔、車で家に戻った時に、彼女の車が我が家の庭の駐車場に停められていて、驚くやら困るやら、彼女らしいやらで大笑いしたことを思い出す。自然に笑みがこぼれてきた。
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