2021年7月12日月曜日

曇り空から晴れ間

 





旦那の日本駐在を期に、日本語習得を目指し3人もの家庭教師をつけて頑張っている友人から、子供用の日本語の本を貸して欲しいと言われていた。彼女は中国人なので、平仮名が読めて、助詞をマスターすれば、漢字は読めなくても意味は推して知るべし、と思っていることが窺える。言語センスのある彼女のこと、努力も人一倍ながら、あっという間に日本語をマスターしてしまうだろう。


本の選択には迷ってしまった。子供用の本は往々にして平仮名ばかり。彼女は漢字、特に熟語によって文章の意味が分かるのであって、まだ日本語のボキャブラリーは少ない。色々な学び方があり、人それぞれに合ったやり方があるのだろうが、文章を読めないにも関わらず、意味だけ理解するという手法は、なんだか漢文を返り点など訓点をつけて日本語の文体に置き換えて読解する方法に似ていて、笑ってしまう。


漢文を少しでも読解できるようになると、なんだか中国語が読めるように錯覚してしまうが、実はそんなに簡単なことではない。


日本に行ってしまえば、否が応でも日本語のシャワーを浴び、語彙も増え、話せるようになっていくのだろう。彼女と日本語で話をする日くるのかと思うと、なんだか不思議な感じがする。


小学生高学年が読みそうな探偵もの、彼女が好きな村上春樹の短編集、経済書、エッセイ、この4冊を選び、リュックにしまう。近所なので、ちょっと歩いて行って届けよう。


すると、息子バッタが珍しく車で送ってくれると申し出たので驚いてしまう。運転免許を獲得して未だ一年未満。とても慎重な運転でギアシフトもスムーズで安定感がある。だが、自称運転嫌い。本当は運動と散歩を兼ねて歩いて行こうかと思っていたが、せっかくなので送ってもらうことにする。


なんだかこそばゆい。いつもの風景が違って見える。ゆっくりと丁寧にカーブを曲がると、もう友人宅。ありがとう!そう言ってドアを開けて外に飛び出す。曇り空から晴れ間が見えてきた。


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