2021年3月21日日曜日

春を待ちわびて

 







ママ、ハグ。


朝起きてきた末娘バッタがもじもじと近寄ってくる。

生意気なことを言っても、愛いヤツよ。


野性に戻された大きくなったライオンが、赤ちゃんの時に育ててくれた人間を覚えていて、ネコのようにじゃれつく様子を思い浮かべて欲しい。末娘バッタとのハグは正にそんな感じ。でっかくなった図体でがっしりと抱きつかれる。


ほら、今日は良いお天気よ。見てごらん。彼女が窓の外を見ることができるように、ハグし合いながら、ぐるぐると回る。


と、突然、不安と悲しみの感情が彼女の体からどっと押し寄せてきた。霊感などちっともないので、初めてのことに驚いてしまう。起きたばかりの彼女の身体はぽかぽかに温かいし、ほっぺはとっても柔らかいのに、どんどんどんどん悲しみが流れてくる。


そうか、そうなのか。そうだよね。いいよ、いいよ。ママがしっかりと受け止めてあげる。


できることなら、彼女の不安と悲しみの感情をすべて吸い取ってしまおう。


そう念じながら、しっかりと柔らかに抱きしめる。


身体を離した時、ちょっと心配をして彼女の顔をそっと覗いてみると、すっきり爽やかな顔をしている。


さっきの感覚は勘違いだったのだろうか。

春のおだやかな陽に連翹の黄色がまぶしい。






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