外側はカリッと香ばしく、中はしっとりと濃厚。チョコレート好きには、たまらない美味しさ。そんな味わい深いガトーショコラを作りたかった。加えて、二年前から謎の腹痛に突然襲われて苦しむ末娘バッタが、あーでもない、こーでもない、と複数の医者の診断を仰ぎ、血液検査の結果、医者から口にしてはいけない食品リストを渡されており、グルテンフリーのレシピであることも、必要条件であった。
末娘バッタが、急に、チーズを食べると喉が痛くなると言った時には、冗談かと思った。バッタ達は三人とも好き嫌いなく、特に末娘バッタの食欲の旺盛なことは、料理のし甲斐があったものだから、やや面食らってしまった。
確かに、血液検査の結果では、チーズ(一部を除き)は摂取すべきではない食品リストに入っていた。他には牛乳、ヘーゼルナッツ、林檎(加熱したものは除く)、そしてグルテン。チョコレートの食べ過ぎではないかと思う程、チョコレートの摂取量が多いが、そんな指摘はなかったようだ。
グルテンアレルギーに関しては遺伝子組み換えや残留農薬が背景にあるのだろうか。我が身を振り返って、幼少時代や学生時代も含めて、グルテンアレルギーの友達や知り合いはこれまでいなかったが、バッタ達が大きくなるにつれ、彼らの友達の中にも何人かいるようになり、そしてその数は年々増えているように思われる。夕方、会社帰りにパン屋が閉まる前に駆け込んでバゲットを買うスーツ姿の紳士が、むき出しの細長いバゲットを小脇に抱えながら、端っこを齧る風景は一昔前ならパリの風物詩といっても良いが、最近はどうなのだろうか。食卓にバゲットがのぼらない家庭も増えているのだろうか。代わって、BIO専門店が大手を振るい、やや値は張るものの、オーガニックなグルテンフリーのパンを買い求める若者が増えているように思われる。
バッタ達を見れば、その傾向は如実に分かる。5人の若きエンジニア達で共同生活を営む息子バッタによれば、彼らは常にオーガニックな食材を求めており、それでも理論だけでは空腹は満たされないので、結果、どうしても値が張る鮮魚・肉類とは縁遠くなり、ややもするとベジタリアンの食事中心となっているらしい。しかし、若きエンジニア達は、パスタやデザートまで手作りをしてしまうというから、驚き。そこまで食材にこだわるのか、あるいは、彼らにとって料理は、実験の一環とでも位置付けているのであろうか。
長女バッタは、環境経済を専門としていることから、環境問題には非常に関心が高いが、中国留学を経てロッテルダムで勉強していた頃既に「お肉は週に一度」としていた。今では、特別な席(友人宅に招待されたり、パーティーなど)を除いては、自分からは肉類は摂取しない。料理する身としては、張り合いがないこと、この上ないがが、魚介類はOKとしているので、まあ良しとするか。そんな彼女の行きつけのスーパーはBIO専門店。
末娘バッタに至っては、本人の意思とは関係なく、グルテンフリーを否応なしに求められている。
BIO専門店には、赤や黒の古代米はもちろん、スーパーフードといわれる、チアシード、キノア、色とりどりのレンズマメ(黒、珊瑚、緑)、蕎麦の実、雑穀(ひえ、あわ、きび)など揃っている。
まあ、そんな硬い話はさておき、とにかく、美味しくなくては始まらない。
室温に戻したバターをポマード状に撹拌するし、キビ砂糖を入れ、更に撹拌。卵を一つずつ割り入れ、更に混ぜ、小麦粉ではなく、栗の粉を篩い入れる。最後に人肌に冷ました溶かしたチョコレートを入れ、艶が出るようにしっかりと混ぜる。この時、シナモンをたっぷりと混ぜ込む。トンカ豆でもいいかもしれない。この生地を、外側がかりりとするように、熱伝導が良いブリキ素材の型にとっぷりと入れ、とんとんと、平らにならす。
180度に熱したオーブンで30分。生地は10分後にはふっくらと膨らみ始め、チョコレートの豊かな香りが台所中を包む。
栗の粉を使ったのは、グルテンフリーを意識して。栗の甘みがあると想像し、砂糖は極控えめに。
果たして。長女バッタから、ママのガトーショコラの中で一番美味しい!とお墨付きをもらい、末娘バッタに至っては、友達の誕生ケーキに作りたいからレシピを教えて欲しいとせがまれる。
ふっふっふ。
外側カリッとして、中はしっとり濃厚な究極のグルテンフリーのガトーショコラ
材料:
無塩バター 250グラム
チョコレート 200グラム
キビ砂糖 150グラム
卵 4つ
栗の粉 70グラム
180度のオーブンで30分
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