教習所に通っていた時、親しくなった友人から聞いた嘘の様な本当の話。路上試験で次の交差点で左折と指示された際、丁度前の車も左折のウインカー。前の車に続いて左折したところ、何とそこはファミレスの駐車場。教官から、お前よっぽど腹が減っているんだな、と呆れられたとか。
大笑いしてしまったが、実は他人ごとではない。
30年以上も前の話。フランクフルト空港でロンドン行きの飛行機に乗る際、チェックイン時間ぎりぎりになってしまった。滞在先のバーデンバーデンからフランクフルト行きの電車に乗ったのだが、駅でチケットを購入する際、クレジットカードが使えずひと騒ぎ。持ち合わせのドイツマルクの紙幣と硬貨を数えて、なんとか買えたが、今度は電車の出発時間ぎりぎり。プラットフォームに向かって走った、走った。と、スーツケース!後ろを振り向くと、一緒に旅をしていた双子の妹がすごい形相で両手で二つの大きなスーツケースを引っ張りながらあたふたと走っていた。しまった!ごめん、ごめん!
無事に電車には間に合い、ほっとしているのも束の間、今度は空港に着くや飛行機の搭乗ゲートで、早くしてください、皆さん待っています、と急かされてしまう。慌ててゲートに入ってみるものの、誰もいない。通常なら航空会社のスタッフが待ち構えてくれそうなところ、本当に誰もいなくて、驚いてしまう。と、ちょっと先にタラップをつけた小型飛行機が止まっている。ははあ!あれに違いない。今度も妹と一緒に走って、勢いよくタラップを駆け上がる。が、飛行機の中は誰もいない。急激な不安に襲われる。この飛行機じゃない。急がねば置いてきぼりを食ってしまう。冷汗が流れる。ふと、バスが目に入る。ああ、そうか。バスに乗って行くのか。
こんな経験、おそらく誰もが一度は二度しているに違いない。
おっちょこちょいがなせる業なのか。最近はそんな馬鹿なことはしないと思っていたのに、所用で初めて行く会場に赴いた時のこと。場所もさることながら、その地へも今回が初めて足を踏み入た。パリの郊外。まだまだ知らないところは多い。それでも、GPS様様で迷わずに着けるのだから素晴らしい。会場自体は通りから入って奥まったところにあるらしい。なんだかすごい人だかり。この分であれば、迷うこともあるまいと、駐車スペースを探す。運の良いことに、そう遠くない場所に廃墟のようなゴミ捨て場のような路地がみつかり、そこで車を止めて歩いて会場に向かった。
ここはアラブ系の移民が多い場所なのだろうか。イスラム教徒の着る長めの上着をまとった男性がぞろぞろ歩いている。「入口」と書いてあるゲートにはマスク着用のこと、体温が高い場合は入場禁止、など、イラストを使ったポスターが貼ってあった。予定の時間に合わせて来たのだけれど、どうも待たされそうだな、と思う。とにかく、すごい人込みなのである。こんな時は、正々堂々と、しっかりとした足取りで、ずんずんと前に進むに限る。
大柄の、いかにも関係者といった雰囲気を持っている男性に声を掛けられる。〇〇会場にお越しですか?それなら、ここではなく、この先の角ですよ。
えっ?これは大変失礼をしました。そして、教えてくださってありがとうございます。
約束の時間になりそうだったので、慌ててお礼を言ってその場を離れ、真の会場に向かう。外に出てみると、確かに張り紙があって、会場はもう少し先と矢印で示してあった。その時は特に気にせずに、会場に急ぎ足で向かった。用事を無事終えて戻ってくる際、先ほどの間違った会場を外から眺めてみる。公民館のような建物ながら、奥の方にドームが見える。
モスク、か。
外観では一見分からなかったが、確かにモスク。だから、アラブ系の人々が多かったのか。何かの行事でもあったのか、既にそこは誰もいなくて、ひっそりとしていた。うっかり者も、ここまでくると救いようがないか。
先ほどの会場でも、帰り際にトイレに寄ろうとして、鍵が閉まっているので受付の男性に、トイレを貸して欲しいとお願いしたところ、二つあるからどちらを使ってもいいですよ、との返事。あれれ?どういうことだろう、と戻ってみると、確かに男性用と女性用がある。そして、女性用は閉まっているが、男性用のドアが軽く開いている。あっ!赤面。当たり前のことながら、先客がいたのである。鍵が閉まっているから、会場で使えないようにしているのかと勝手に思ってしまった。
しまった、しまった。
うっかりした間違い。でも、気が付いたらモスク。服装が神を冒涜するなんて言われて、つまみ出された日には洒落にもならない。
笑い話なのか、笑えない話なのか。外観は一般の公民館っぽいのに、モスクだなんて、どれ程イスラム教がフランスに静かに、じわじわと浸食しているのかと思ったら、一向に笑えなくなってしまった。
にほんブログ村
↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています
0 件のコメント:
コメントを投稿