2021年5月15日土曜日

雲間から太陽の光の筋

 





前ブレーキしか利かないママチャリで、末娘バッタの後姿を追う。


今朝は一向に起きてこないので、やきもきしていたが、いつの間にか勉強を始めており、11時には森を走るという。自転車で伴走して欲しいとのリクエストに、森の入り口まで一緒に行って、その辺を散歩しながら待っていると言えば、怖い顔で「ダメに決まっているでしょう。レイプ防止にならないじゃない。」とドギツイことを言う。


もともとしっかりとした子だったが、日本人が美徳とする婉曲表現やオブラートに包んだ物言いをしなくなったのは高校時代からだろうか。それに従って、服装も、周りにどう見られるかではなく、自分がどうしたいか、を主眼としたものとなった。わざとなのか、気にしないだけなのか、地味なグレーの男物と思われるジャケットに、ゆったりとした濃紺のジャージパンツをいつも身に着けている。


それでも、自分が女性であり、森の中でランニング中に襲われるリスクがあることは承知している模様。確かにランニング時は短パンにTシャツ。もちろん、母親としても断じてそんな事態にさせてはなるまい。


渋々、連日の雨でぐちゃぐちゃに濡れていて、時々水溜まりが出来ている、森の中の細い獣道を、ブレーキの壊れたママチャリで走る羽目になった。寒さがぶり返したとはいえ、森の中は新緑で眩しく、枝と言う枝から若葉が出ていて、頭を下げながら漸く通る場所ばかり。


でこぼこなので、スピードを出さずに慎重に自転車を進める。曲がり角では、先に行っている末娘バッタが左!とか右に行くよ!とか大声で伝える。それでも、心配なのか時折後ろを確かめる。


ったく、どっちが親なのか。


鬱蒼とした森から開けたところに出た途端、曇天からざーっと銀の雫が流れ落ちてきた。走っている時には、火照った体には爽やかなシャワーといえようか。


雨も小降りとなってきたところで、思い切ったかのように、突然末娘バッタが走りを止めて早歩きとなる。このところ走りこんでいなかったので、きつくなってしまったと言う。


ふと林に目をやると、鷹が枝に止まっている。まさか、視線を感じたからではあるまいが、さっと華麗に飛び立ち、演舞を披露して別の枝に移った。末娘バッタと二人、息をこらして見つめる。森の主からのメッセージぞ如何に。


末娘バッタが鼻歌交じりにシャワーを浴びている間に、レンズ豆とほうれん草のスープを作る。雲間からは太陽の光の筋。





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