2021年5月31日月曜日

芍薬の香り

 




ママ!

そう言って手渡された大きな花束。

10年以上も前のシーンがフラッシュバックする。


ママ!そう言って手渡された大きな花束。

嬉しいとの思いよりも、先ずは驚き、そして、長女バッタに誰にもらったのか問いただしてしまった当時の情けない自分。長女バッタは、ママの大喜びの顔を期待していただろうのに、それこそきょとんとし、自分が買ったと主張。お金はどうしたの?と聞けば、貯めたという。


5月最後の土曜日はバッタ達の学校のお祭りの日と決まっていて、日中はスタンドでお手伝い。丁度長女バッタのダンスの時間とお手伝いの時間が重なってしまって、友人に送迎を頼んでいた。ひょっとしたら、その友人に立て替えてもらったのだろうか。そこまで考えてしまった。


ママに喜んでもらえないばかりか、信じてもらえずに、戸惑う長女バッタ。


だって、ママは、母の日に、未だ10歳にもなっていない幼い貴女が、一人で花屋さんに行って、ママのために花束を買うなんて、本当に思っていなかったのだもの。


ごめんね。


考えてみれば、土曜のダンス教室の隣が花屋さん。いつも新鮮な花を店頭に飾っていて、練習が終わる長女バッタを待つ間、冷やかしに時々覗いていた。


それ以来、毎年、母の日には花束を贈ってくれる。去年は日本にいたので、花束が突然届いたので不覚にも涙してしまった。日本の母の日とは日にちが違うので、驚きもひとしお。


今年の花束のラッピングに、ピンで留めてあった花屋さんのカード。10年以上前と同じ花屋さん。


いつものおじさんが花束を作ってくれたんだけど、今では2人の若い女性がアシスタントでいるんだよ。


嬉しそうに教えてくれた。


ありがとう。ママは、貴女の母親であることを誇りに思っている。とっても幸せよ。



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