何年振りだろうか。
潮風の中を延々と続く砂浜を歩く。
思いの外、日差しは暑く、ほのかに潮の香りがする。
海藻なんか一つも流れてなくて、貝殻といえばマテ貝ぐらい。
それでも、懐かしさが胸の底から込み上げてくる。
突然、声を掛けられる。
以前の職場の同僚。名前がすぐに出てこないが、10年以上も前なのに、ちっとも変っていない。末娘バッタが今年の11月で20歳になるのだから、もっと前の話になるのか。彼女がお腹にいる時に9.11があり、職場のTVでCNNの放映を映画の一コマのように、茫然として見ていたのだから。
職場の仲間たちは気さくで和気あいあいとしていたが、非常に特殊な業界。一歩足を外に踏み出せば、その虚構のような空気には馴染にくく、業界から去ることを決めた時から、昔の同僚たちとの邂逅を懐かしむことはなかった。一度だけ、集まりに行ったことがあったが、それだけ。会話がちぐはぐしてしまうし、自分から飛び込む場所ではないと感じていた。
それなのに、浜辺で会った時には、驚きと、懐かしさと、嬉しさで、歓喜の声を上げてしまった。まったく、いたって単純。
こんな風に、なんのわだかまりもなく、再会を喜び合える場所が、海なのかもしれない。
潮風に打たれ、嬉しさに顔をほころばせながら、はしゃぎ合う。
ふと、息子バッタと末娘バッタも父親とこんな風に、潮風に髪を振り乱しながら、偶然に会うことが出来れば、と思う。
海の懐に抱かれれながら。
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