庭を歩くとリラの甘い香りがそこかしこで遊んでいる。
リラの花は咲き誇ってから切らないと、花瓶では開花してくれない。足も速い。それでも、リラの甘い香りは人気があり、友人やバッタ達の友達の家族に、たわわに咲き誇ったところを純白、薄紫、濃紫をたくさん束ねてプレゼントしている。
明日は漸く怒涛のような試験期間を終え、末娘バッタが帰ってくる。我が家では、特別な日には庭の花を飾るようにしているが、今年は何故か庭の薔薇が一つも未だ咲いていない。流石にボタンを手折ることはできない。そこで、リラの花を飾ることにした。
どのみち、いずれ茶色になってしまい、最後は刈り取ることになる花房。咲き誇っているところを、ばっさりと斬ってしまっても、むしろ一石二鳥ではないか。そうとばかりに、いつも長い枝ごと斬ることにしている。
幾つもあった大きいガラスの花瓶は割れてしまったのか、一つも見当たらず、シャンパンクーラーを使うことにする。大ぶりの豪華なブーケ。テーブルに飾るのも一興だが、玄関脇の階段が我が家の花瓶の定位置。入ってすぐに目につく場所。
飾って間もなくすると、二階で仕事をしていた長女バッタが、とても良い香りといって嬉しそうに降りてきた。玄関はすっかりと甘く爽やかな香りで満ちている。末娘バッタもきっと喜ぶに違いない。
甘い香りは階段を登って、二階の部屋にも優しく漂い始めた。
もう随分前に友人宅にたくさんのリラの花束を持って遊びに行ったことを思い出した。過ごした午後の間中、リラの香気が甘く爽やかに漂っていて、寒くなってきたからと火を入れた暖炉がぱちぱちと優しい音を立てていた。
その後、その友人は引っ越してしまったので、今にして思えば、それが別れの宴。元気にしているだろうか。久しぶりにリラの写真と一緒に、メッセージを送ろうか。
リラの香りが、ちょっとせつなく甘く、そして優しく思い出を揺り動かす。
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