2023年12月14日木曜日

夢のエベレスト街道トレッキング~ Day 3 ナムチェの朝(子を抱く母、アマダブラム)

 





ナムチェを出発しシャンボチェの丘に行く前に、サガルマータ国立公園に寄って行くという。その前に、ナムチェの村の薬局で薬を買いたいと願い出た。カトマンズで買ったアスピリンは、もう二錠しか残っていなかった。






ポーターさんが道案内をしてくれるというので、相棒と二人で、未だ朝早いナムチェの村に繰り出した。目抜き通りと思われるメインストリートには、びっしりと土産物屋とスポーツ専門店が軒を連ねていた。


朝早いので流石に通りにはトレッカーの姿はなく、店先で吐き掃除をしている店主の姿や、煙が出ている非常にシンプルな香炉のようなものを振っている人々の姿がちらほらあるだけだった。薬局は通りの奥まったところにあり、驚く程清潔で、フランスの田舎の手狭な薬局に見劣りのしないものだった。






薬剤師はとても若い女性で、これまた驚く程綺麗な癖のない英語を話した。アスピリンが欲しいと言うと、二種類あるがどちらが欲しいのかと尋ねて来た。アスピリンに種類があるなど初耳だった。戸惑っていると、店の棚から二つの箱を取り出し、一つは高山病対策、一つは解熱および痛み止めだと教えてくれた。


高山病対策には既にカトマンズでアセタゾラミドを購入していて、前日から飲み始めていた。ただ、頭痛が酷い時にはアスピリンにも頼りたかった。そう伝えると、それなら痛み止めの効用があるアスピリンを服用すれば良いと勧めてくれた。ただ、同時に服用すると効果が相殺されるので、少なくとも二時間はずらすことを忘れないようにと告げられた。


ええっ?それまで同時に錠剤を服用していたので、思わず大声を出してしまった。すると、こんな化学の基礎中の基礎を知らないのか、とばかりに、むしろ驚かれてしまった。だから前日は薬の効果があまりなかったのか、と腑に落ちる気がした。


そして、カトマンズ同様、ナムチェの薬局でも拍子抜けする程に薬の値段は安かった。





本当は、あと一日、このナムチェで標高を上げずに体調管理に努めるべきことは分かっていた。しかし、既にシェルパリゾートには予約を入れていたし、取り敢えず頭もすっきりしていた。Ammaこと母も相棒も、すこぶる元気だった。


Rajさんに、朝未だ頭痛がしているようだったら、私一人でナムチェに残り、Ammaと相棒を連れてシェルパリゾートに行って欲しいとお願いするつもりだったと伝えた。午後にも調子が良くなったら、皆の後を追うつもりだったと。


Rajさんはにっこりと微笑み、ビスターレ、ビスターレで行きましょう、と言ってくれた。サガルマータ国立公園からの景観は凄く見ごたえがあって、ディディはきっと感動で泣きますよ、と加えるのを忘れなかった。


あの日の朝、本当に頭から痛みは消えていて、それまでの悪寒や吐き気はなくなっていた。あれは、本当にシバ伸と天照大御神、そしてご先祖様のご加護のお陰だったのかもしれない。あの時、どうしても起き上がれずに、頭が爆発するようだったら、ナムチェに居残ることになったであろう。


果たして、そうなったらAmmaは私を置いて先に進むことを良しとしただろうか。





朝は体調は落ち着いていたとは言え、標高を少しでも上げると、身体が「おいっ!」とばかりに悲鳴を上げ始めるような気がした。そうして、確かに次第に頭が割れるように痛くなってきた。それでも、Rajさんが言った通りに、サガルマータ国立公園に向かう道から見えるヒマラヤ山脈は美しかった。






Ama Dablam、アマダブラムがくっきりと見えた。お母さんが我が子を抱いているように見えるでしょう、とRajさんが教えてくれた。だから、アマダブラムという名称なんですよ、と。ところが、後でネットで調べてみると、アマは確かに「母」ながら、ダブラムは「首飾り」という意味だという。


どうだろう。Rajさんに教えられたからか、私にも母親が赤ちゃんを抱いている様に見えてしまう。見る場所によっては、首飾りに見えるのだろうか。であれば、どんな首飾りなのだろう。


「私が一番好きな山です。」世界最高峰のエベレストではなく、このアマダブラムが彼にとって最高の山なのか。その一言がとても新鮮で、非常に感慨深く、またしても価値観のコペルニクス的転回が生じた瞬間だった。







👇 拍手機能を加えました。出来ましたら、拍手やクリックで応援いただけますと、とても嬉しいです。コメントを残していただけますと、飛び上がって喜び、お返事いたします。
 

にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ
にほんブログ村

↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています


---------------------------------------------------------------------
夢のエベレスト街道トレッキング(これまでの章)

0 件のコメント:

コメントを投稿