ほら、あそこの一番端に見えるのがエベレスト。そして、その隣に聳えるのがローツェ。
ぐんと手前の右端にアマダブラムが存在感を持って白く輝いていた。地球の背骨と言われる、世界最高峰となる8000メートル級の山頂には笠雲が芸術的にふんわりと覆っていた。
Rajさんは感動して泣きますよ、とちょっと揶揄い半分で言っていたが、あまりに圧倒されて言葉が出なかった。雲一つない、くっきりとした青空ではなく、むしろ笠雲があることに、不思議と魅力を感ぜずにはいられなかった。
そして、雲はあれよあれよと言う間に形を変えていくのだから、目が離せない。
相棒が待っていましたとばかりに、大切に背負ってきた青いクリスタルボールを取り出し、まるで自分が大気に溶け込むかのように演奏を始めた。クリスタルボールの音色をバックに、その音色に合わせて光の演舞でもあるかのように景観を動画撮影しているAmmaの姿は、幻想的でさえあった。
クリスタルボールの音色に酔いしれてというよりは、クリスタルボールを心地よく演奏している相棒や、その様子を心から感心し、堪能しているAmmaを見守ることで、私の心は潤った。
恐らくは既に100に近い回数、同じ場所でエベレスト、ローツェ、ヌプツェといったクーンブ山群を愛でたであろうRajさんなのだが、我々と同じ空間を共有し、我々と同じように言葉なく、じっと見入る姿に心打たれると同時に、何人をもそうさせるであろう山々に、畏敬の念を覚えずにはいられなかった。
広場には博物館があったが、嫌な感じの鈍痛を頭に抱えていたこともあり、中に入って見学をしてみる気にはなれなかった。エベレストを初登頂したヒラリー卿と一緒だったシェルパの銅像を嬉しそうに写真に撮り、誇らしげに教えてくれるRajさんの言葉を聞くのが漸くだった。
ビスターレ、ビスターレ。ゆっくり行けば、なんとかなるに違いない。アマダブラムの純白な山頂が、木々の向こうから見えた時には、すっと痛みは消えてしまう。なんとかなるだろうし、他の選択肢を考える余裕はなかった。ありがたいことに、Ammaは非常に慎重に、ゆっくりと歩いて行く。
首からぶらさげているカメラのストラップをぎゅっと掴み、深呼吸をしながら、展望台を後にした。

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