2014年1月30日木曜日

感動に打ちのめされる至福のチョコレートケーキ



思わぬ生姜の香りの豊かさに酔いしれる。

先日、手作りのチョコレートケーキを友人宅でいただき、その上品さと奥行き深い味わいに衝撃を受ける。これこそ、求めていたもの、そう確信する。ついつい、その場で二切れも戴いてしまったが、口に入れるたびにまろやかに広がるカカオの香りが何とも言えない。

プロ程、出し惜しみなくレシピを教えてくれる。彼女も、その日のうちにレシピをメールで送ってくれており、早速覗いてみると、なんと、ケーキに入れる生姜の砂糖漬けの作り方から始まっている。嬉しい程の本格派。それなら、いっそのことローマジパンなるものも、アーモンドプードルと粉砂糖、卵白から作ろうとの気になり、各種レシピを比較検討する。そうして、材料を集め、先ずは最低一日は漬けねばならない生姜の砂糖漬けを作り始めると、その豊かな香りが部屋いっぱいに広がり、その意外さに驚く。生姜は常に隠し味、薬味として使うことが多いことからも、生姜のみを二時間近く煮ることは滅多にない。漢方にしろ、他の薬草が混じっているので、今回は生姜の香りのみを十分に堪能。なんだか、急にプロになった気がしてくるからおかしなもの。

翌日、アーモンドプードルと粉砂糖を一対一の割合で混ぜ、そこに、せっかくだからと、出来たての生姜シロップをちょっと、それから卵白を少しずつ入れ込む。あっけなくローマジパンの出来上がり。味見をしてみると、くどい甘さでもなく、意外に美味しい。

それでは、と下準備に取り掛かる。
生姜を粗いみじん切り、水に戻した乾燥アプリコットも粗いみじん切り。チョコレートを板の半分ぐらい粗く削る。分量の小麦粉、カカオを一緒に篩にかける。

鼻歌混じりにローマジパンと砂糖を一緒に撹拌。ぽろぽろと分離してきたところで、卵を一つ入れては暫く撹拌、とろりとなったら、また一つ、と四つ混ぜ込む。そこに室温にしておいた牛乳を静かに混ぜ入れ、十分撹拌。今度は、粉類を入れ、しっかりと混ぜ合わせる。そしてチョコレートを混ぜ、生姜とアプリコットを丁寧に入れる。最後に溶かしバターを静かに混ぜ入れる。

型に入れて180度のオーブンで焼くこと10分。表面に膜が出来たらナイフですーっと真ん中に筋を入れてあげる。それから一時間程焼き上げる。途中、焦げる心配があれば、アルミフォイルなどでカバーをする。

カカオの優雅な香りが家中を支配し、幸せ感に満たされる。こうして焼き上がったケーキは余熱がとれると、すぐに型から出して網の上に。その後、ラップに包んで保存。レシピには3日から5日寝かせるとあるが、先日ご馳走になったケーキは一週間寝かせたものとか。

もちろん、カカオを篩い入れる時に、トンカ豆も削って入れている。ちょっとずつ、ついつい、アレンジしてしまっている。さてさて、ジンジャーとアプリコット、チョコチップの入った大人の味のチョコレートケーキ、一週間も味見せずにキープできようか。味さえも見ていないのに、既にスライスしてラッピングし、プレゼントしたい友人たちの顔が次々に浮かんでしまう。方やバッタ達はいつ食べようかと狙っている。

そうして、気が付くと、二本目を焼いている。せっかくだから、生姜の砂糖漬けやローマジパンが新鮮なうちに、という大義名分を掲げるも、もう会う人、会う人に食べて欲しくてうずうずしている自分がいる。

そう、それ程、このケーキ、感動に打ちのめされること請け合い。
皆さんにも至福のひと時を。





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2014年1月26日日曜日

バックス降臨―四日間ぐつぐつ煮込んだチリコンカーン







道祖神の招きにあひて取るもの手につかない芭蕉よろしく、啓示のようなバックスのウィンクを受け、取るもの手につかず、レッドキドニーを手に入れようと外に出る。

ローマ神話のバックスはどこにでも出没する。今回はバンコク在住の友人のところに降臨。チリビーンズを作るべく豆を戻した翌日に旦那が風邪に倒れる。されど戻した豆は調理せねばと台所に立ち、玉ねぎのみじん切りと格闘し、ホールトマトを入れ込み、ぐつぐつと豆を入れ煮込むこと数時間。待てど暮せど豆は理想の柔らかさにならない。そうこうしているうちに、今度は我が身が熱を発する。熱で味見がままならないながらも、ひたすら台所でぐつぐつ煮込む。それでも頑固な豆はちっとも柔らかくならない。期待が先走ってか、チリをたっぷり最初に入れ過ぎてしまったのが敗因と分かった時には後の祭り。その間、暴動続きのバンコクで旦那は避難の為外出(む?非難するなら自宅待機ではないか?)。風邪で味見もできないと苦しみながらも、ひたすら煮込む。漸く旨みがたっぷりと染み込み、豆が理想の柔らかさになった時には、旦那も出張から戻り、風邪も治っていたとか。まる四日。

その話を聞いて、無性にチリコンカーンを作りたくなる。赤いんげん豆、レッドキドニーを先ずは手に入れないと。そうして取るもの手につかず状態で、外に走り出る。

二個で1キロはあるだろう玉ねぎを一心にみじん切り。ニンニク4片、細長い人参2本もみじんにする。ピーマンのお化け、緑のポワブロンを1個、これまたみじん切り。ニンニクが香ばしくキッチンを満たし始めた頃に、玉ねぎのみじん切りを入れ炒める。透明感が出たところで、挽肉、ベーコン。しっかりと焼くためにも、別のフライパンで焼こうかと思うも、特大サイズの中華鍋に放り込んでしまう。それから、人参、ポワブロン。そしてホールトマト。ぐつぐつのいい感じ。白雪姫の魔法使いが毒りんごを作った鍋は、こんな感じだったのかな、とひとりごつ。弱火にして蓋をする。

小一時間後に今度は水で戻したレッドキドニーを入れる予定となっていた。大きな玉ねぎに穴を開け、クローブを幾つか刺し、それを一緒に豆を固ゆでしておかねば。そう思う間もなく、郊外でハンドボールをしている息子バッタを迎えに行く時間に。慌ててキーを持って飛び出す。

我が家に戻ると、トマトの温かく優しい香りが嬉しく迎えてくれる。さすがの中華鍋。ちょっと焦げ付いた程度で、ぐつぐつ楽しそうな音を立てている。豆を入れて一時間は煮込まねば。時計を睨む、その脇で、空腹に耐えかねた息子バッタがビスケットを口にしている。急がねば。水で戻され、ぷっくらと膨らんだ豆を一気に鍋に入れる。そう、あと、せめて40分は煮込まないと。

その時には己の誤りに気が付いていなかった。トマトソースがぽてぽてとなり、これは、と思い味見をしてみて、漸く気が付く。豆が固い。芯があるわけではない。生煮えでもない。ただ、純粋に固い。

おおっ。バンコクの友人はチリを最初にどばっと入れたことを敗因としていたが、下ごしらえの段階で豆を固ゆでしておかねばならなかったのでは。うろたえてしまう。空腹でなくとも、食欲をそそる香り。バッタ達は期待に目を輝かせている。まさか、今夜はお預けになろうなんて思いもしていない、そのひた向きな目。ままよ。豆が固くとも、味が染み入ってなくとも、一品じゃわい。

そうして、毎日、少しずつ量は少なくなっても、中華鍋でチリコンカーンはぐつぐつと煮込まれ、豆はゆっくりと柔らかくなっていく。食べても、食べてもなくならない、魔法の鍋か、と疑いたくなった時もあるが、実に四日目にすっかりと平らげる。初日はクスクス、二日目はピタパン、三日目はご飯、四日目はピラフに添えて。

さて、次回こそ下茹でをしてから、と思うも、暫くは今の余韻に浸っておこうか。さすがの四日連続。余韻は思っている以上に長引こうか。






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2014年1月24日金曜日

外は雨



「今晩は。午前中にメールをいただいた者ですが。」
相手の名前をしっかりと確認する前に、「あら!お電話ありがとうございます。はい、今朝メールを出させて貰いました。」と返事をしていた。脳の片隅で、名前を復唱しながら。

その日、早朝に5人程にメールを送っており、そのうちの一人とは既に何度かメールの交換をし、翌週会う手筈になりながら、時間や場所が決められないでいた。友人の知り合い、といった気安さから、年齢的に同じだろうし、この業界の人ならば、むしろ形式ばった書き方よりも単純明快さを好むであろうと、若干略式に返事をしてしまったことに、相手はぎょっとし、余り良い感情を抱かずに、メールの返事もなくなってしまったのだろうかと反省していた。そんな矢先であったことから、ほっとすると同時に、感謝の思いで一杯であった。

「ご都合よければ、明日にもどうかと思いまして。」

来週ではなかったのか。

「いやね、あなたの住所に目が行きまして。こんなことを申すのも変な話なのですが、叔母がその近くの病院に入院していまして、週に一回は見舞いに行っているのですが、ちょうど明日がその日なのですよ。」

実は、そこからが歯切れが悪い。叔母さんは脳腫瘍を患っていて末期。放射線治療をしていたが、今は化学療法を受けており、時々見舞いに行っても寝ていて会えない時がある。大抵、気分転換に病院の近くにあるブラッスリーでお昼をとっているが、時間は叔母さんの容態次第で変わらざるをえない。そんな状況でよければ、明日のお昼に、そのブラッスリーで会わないか、といったことであった。また、どうやら幼い子供がいるらしく、ヌヌ(ベビーシッター)の都合では、そもそも見舞いにさえも来ることができないかもしれない、と告げられる。そうして、
「いや、日本の方ですよね。分かっていますよ。時間厳守だってこと。でも、こういった状況なので、ご理解いただきいのですが。」

非常に理解しがたくなる。別の日の方が都合が良いのではないだろうか。無理に明日、どうしても会って話がしたいわけでもない。こんなややこしい家庭の内情を見ず知らずの他人に知らせるとは、妙なこと。

それでも、せっかくの申し入れ。仕事の合間をぬって出てくるのであろう。その時に、ランチをしがてら、誰かに会うといった時間の使い方を考えているのかもしれない。

大急ぎで明日のランチの約束をし、電話を切る。受けた電話番号を登録しようと、友人が送ってくれた連絡先リストをチェックしようとPCに向かう。と、その本人からメールが入っている。

「来週月曜のランチにしませんか。」

妙なこと。

急に叔母さんの具合が悪くなったのか。時間が曖昧なビジネスランチは止めようと思ったのか。奇妙に思いつつも、取りあえず連絡先をチェック。不思議なことに、先程の電話番号と、友人が送ってくれた連絡先とが一致しない。携帯番号を二つ持っているのか。そう思って名前を心で復唱すると、なんだかひっかかりを感じる。ぎょっとして、連絡先リストにざっと目を通す。

私の早とちりと思い込みの激しさは今に始まったことではない。危機一髪。メールでやり取りしていた相手と先程の電話の主は全く違う人物。しかも、友人からは、昨年二月の時点で新会社を設立する予定にあり、アジアの顧客をターゲットにしていると聞いていたので、ぜひ会いたい相手であった。その相手と分かっていたら、緊張してまともな話もできなかったろうが、勘違いのお蔭で、非常にリラックスして話ができ、会う約束も取り付けられることが出来、笑ってしまう。

翌日、ヌヌの問題があればSMSで連絡があるはずだが、それもなく、お昼の時間になっても特に先方からの連絡はない。13時半から14時半の間、と言われていたので、13時半を目指して待ち合わせのブラッスリーに行ってみる。もう一人、遅れてくるからと二人分の席を取り、新聞に目をやり待っている。そういった客に慣れているのか、気持ちの良い程に放っておいてもらえる。14時20分にメールが入る。14時半にブラッスリーで、と。一時間ゆっくりとくまなく新聞を読めたことは悪くない。こういう時間の使い方もあろうと納得する。

そうして漸く会えた相手は、50代になろうか、ラフな格好。自分の会社なのだから、そう畏まった服装をする必要もあるまいし、しかも入院患者の見舞いを兼ねているのだから、と思う。やや寂しげな、人生の辛さを背負っているような、しかし非常に紳士的な表情が印象的。

叔母さんの容態はすこぶる良くなく、ずっと寝たきりで目を覚ますことがなかったという。午後にも、もう一度主治医に会うことになっているらしい。元気にならなくては、と白ワインを一杯注文する。

そうして、彼が話したことによれば、昨年二月の時点で会社設立を願っていたが、肝心の資金がまとまらず、アイディアは良いと言われ続けるも、暗礁に乗り上げた状態にあるらしい。前の職場では、親会社が赤字に陥り、一部事業の撤退となり、彼の部隊もあっけなく売却の憂き目にあったらしい。ある日突然お払い箱となり、毎日忙しく世界の顧客相手に電話をしていたのに、その必要がなくなる。唯一、赤ちゃんの誕生が明るい話題であるが、今や仕事場からミルクやおむつを買って欲しいと奥さんからの伝言が来ると、なんと虚しいことか、とこぼす。

去年までは同僚も部下も大勢が年末の挨拶メールをくれたが、今年は片手にも満たないよ。そう寂しげに微笑む。

これまでの実績があるが、如何せん高給取りであったし、年齢からも他の職場は見つかるまい、とし、起業するしかない、との思いに至ったらしい。
「日本に行ったかい?日本の昔のお客さんに会いに行くべきだよ。彼らがきっと君の仕事を見つけてくれるよ。何らかの糸口が見つかるよ。」

前の職場に対して、契約違反だとし、労働審判所に訴えているらしい。時間はかかろうが、いつかは勝利し、それなりのまとまったお金が入るだろう、と言う。でも、お金の問題じゃない、そう彼の目は訴えている。

時間を作ってくれたこと、話をしてもらえたことに感謝をし、彼のビジネスプランが成功するよう、ファミリーオフィスとの良い出会いがあるようにと伝える。
「これ以上最悪にはなれないから、あとは良くなるしかないよ。」と寂しげな返事が返ってくる。

外は雨。
主治医に会ってくるからと病院に向かう彼が傘を差しだしてくれる。
丁度ここのお店で買い物があるので、と伝え、改めて感謝の言葉を述べる。
「何かあれば連絡を」そう言って、手が差し伸べられる。
しっかりと目を見つめ、握り返す。

傘が遠ざかると、ゆっくりとスパイスの専門店のドアを開ける。
トンカ豆を買おう。アマゾンでは幸福をもたらすとされ、香りは優しさに満ち、明るい気分にさせてくれる。今年はトンカ豆の香りのマジパン入りガトーオショコラに挑戦しようか。






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2014年1月22日水曜日

かかり始めたエンジン



外に出ると寒気が頬に突き刺さる。
背筋を伸ばし、早足で歩きだす。

何もわからないままに山積みのピースを前にし、あれやこれやと手に取って、上下、裏表、ひっくり返し、眺めつつ、漸くそれがジグソーパズルであったことが判明したといったところ。
今度は図柄を思い描きながら手にすることになるが、目的が定まると作業のスピードはすこぶるアップしよう。

冷気を鼻腔一杯に吸い込み、武者震いさえしてしまう。

確固たる足取りで朝を体いっぱい感じる。






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2014年1月20日月曜日

幾つものシナリオ



ねえ、未だ新年の挨拶のビズをしていないじゃないか。

そんなメールが届いたのは十日ほど前のことか。
元日にはSMSで新年の挨拶が送られてきたし、メッセージはいつものようにビズで締めくくられていたから、彼がここで言うビズとは、会って頬を寄せ合うビズのことか。それとも、自分が正月にSMSを送ったことを忘れてしまっているのか。或いは、先日、会議に出なかったことを、やんわりと指摘しているのか。

そもそも本来、声が掛かる筈のない会議の日程の連絡メールを私に送ってきたのは、確かに彼。筋違いだろうと、出席しない旨、全員メールで伝えてある。あの会議は最後の最後まで時間と場所が決定せず、ぎりぎりで日延べとなるが、その知らせを受けた仲間が、大慌てで連絡を取り合い、その一時間後には決行となったいわくつきのもの。だから、「会議が延期となっていたら、会いに押し掛けていたところ。」と書き送る。

それに対する返事はない。
ガレットデロワでも一緒に、と誘おうか。一瞬そう思うも、ふわりと消えてしまう。
会う機会が減ってしまったことを残念に思う。

と、今朝、まったく思いもしなかった方面から彼に某イベントの招待メールが飛び込む。そして、なぜか、私にコピーが入っている。イベントの内容からしても、時間や場所を考えても、彼が参加するとは考えにくい。恐らく、イベント主催者は、忙しい彼に対して、参加の意思を伝えてある私から一声掛けてもらいたいのだろう。ただ、このイベントについては、それこそいわくつきらしく、色々な話があちこちから舞い込んできており、私自身、参加を躊躇し始めていたこともあり、積極的に彼に声を掛けるつもりは毛頭なかった。一方で、極重要なこと以外は、ろくすっぽ返事をしない彼が、こういったイベントの招待メールに対して返事をするとは考えにくい。

が、ところが、である。暫くすると、「ご招待ありがとうございます。喜んで伺います。」との返事が彼から主催者向けに行っているではないか。これまた、私にコピー入りで。

思いがけない展開に、大いに戸惑ってしまう。
単に事務的な手続き、と処すべきか、私も参加するのでご一緒しましょう、と声を掛けるべきか、彼から声が掛かるのを待つべきか。。。

当日まで、まだまだ日がある。
せっかちに決めないで、ゆっくりと楽しもう。
のんびりと外に目をやる。





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2014年1月19日日曜日

しっとりと小雨



小雨が降っていて満月の威力は薄れるのか、ランチの誘いはすげなく断られる。遠方に出張のため無理、と一言。いつものことながら、残念、とか、別の日を提案することもない。

分かってはいても、物足りない。

そうこうしているうちに、全く連絡が途絶えてしまう。

忙しいのか、気持ちの余裕がないのか。
ちょっとしたSMSがどれだけエネルギーの源になるのか知る由もあるまい。いや、全く音沙汰なしの状況がどれだけエネルギーを失わせるのか知る由もあるまい。

気にしようと思えば、色んな事が懸念事項として浮かび上がってくる。
いつだって妄想に苦しめられる。妄想なのか現実直視なのか、その判断さえも曖昧となる。

ここは相手の動きを待つしかない。

リスがふさふさの尻尾をピンと張って飛び回っている様子を見ても心浮かず、
たっぷりのフランジパーヌのガレットデロワがこんがりと焼き上がって、兎のフェーブが当たっても、ちっとも嬉しさが出てこない。

90年代の南アフリカのルポを読みながら、著者が余所者のあんたには分からないよ、とことあるごとに現地の人に言われ続けたことを考える。
幸せとは、と改めて思う。

なんだか勝手に意地を張っている気がしてきて、軽く挨拶のSMSを入れる。
結局のところ、流れに逆らってもがくことをやめ、流れに乗りながらも、自分は変われない。

子の刻が過ぎたころに着信音。
外はしっとりと小雨が降っている。




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2014年1月16日木曜日

フレッシュバニラビーンズ



郵便受けに大きめサイズの茶封筒が入っている。
『フレッシュバニラビーンズ在中』。
なんだか、きつねから空色のたねをもらったゆうじの心境。

フレッシュなバニラビーンズが売っていたので、一本買おうとお札を出すと、小銭がないからと残っていたバニラビーンズ全部を渡してくれたとか。そこで一本、おすそ分けに預かる。

だから、ゆうじのように、大切な何かと交換してもらったものではない。

ジップロックで密閉されていても、柔らかな鞘からの豊かな香りはこぼれんばかり。たくさんのバニラビーンズを手に入れた友人は、早速、たまごアイスを作ったとか。思わず、シャーベットのようなアイスミルクの素朴な味が口に広がる。

一本の予定が、たくさんのバニラビーンズを手に入れてしまった友人。さしずめ10ユーロ札でも手渡したのだろうか。そうすると、10本以上ものフレッシュビーンズを手にしたことになるのだろうか。フレッシュはさすがに香りが高いね、と、にこにこしている友人が何とも微笑ましい。

さて、このバニラで何を作ろうか。舌の上でとろける、ぷるるんとしたフランにしようか。それともリッチな味わいのクレームブリュレに挑戦しようか。おしゃれにパンナコッタとしようか。ジンジャーと一緒にカクテルの隠し味として使っても悪くないだろう。

取り敢えず、しばらくは香りを十分楽しんで想像の世界で遊ぼう。
ふっくらとした細長い焦げ茶色の鞘を頭上にかざす。




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2014年1月10日金曜日

スローモーション




階段を上るところで、誰かが下りてくる音がする。
何かに引き留められ、そこに立ち尽くしていると、マリーンブルーのオバーコートが現れる。
立ち止まり、簡単な挨拶を交わす。
そして、ゆっくりと、スローモーションのように右頬を合わせ、
次には左の頬を合わせる。
唇の端が触れるか触れまいかのところで、
一瞬、時がフリーズ。

それから、
何もなかったかのように、マリーンブルーは階段を下りてゆき、

こちらも背筋を伸ばして階段を駆け上がる。





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2014年1月8日水曜日

新春にあたり







台湾の朝は早い。
7時前には学校に行ってしまう姪と甥。朝食は車の中でとるらしく、お土産のチョコ入りブリオッシュを一切れ、ママが袋に入れている。中学生の姪は、前日、11時まで生物の宿題に取り組んでいた。人間の肺の模型を作るとかで、ペットボトルを輪切りにし、風船を両側につけ工夫をしていた。さながら、ペットボトルが胸郭、輪切りにしたところにつけた風船が横隔膜、ボトルの口から内部に入れ込んだ風船が肺、といったところ。ボトルの上からマジックで肋骨を書き込む。何やら図鑑で骨の数まで調べているから驚いてしまう。図鑑の絵はそこまで正確なのだろうか。考えもしなかった。恐らく、そう、恐らく、宿題は風船を二つペットボトルに着けるところで完了なのであろう。ところが、芸術肌の彼女は、そこに肋骨を書きたくなったのだと思う。そして、恐らく、それで十分な筈なのに、驚いたことに、彼女は粘土をどこからか引っ張り出してきて、このモデルに緑のジャケットを作っていた。

それで、11時まで時間をかけて宿題を仕上げ、翌朝は6時起きで他の宿題の見直しをしている。競争社会の台湾では毎日試験があり、成績順位が発表されるらしい。若さなのか。それがちっとも苦でもないらしく、こうして、ちゃんと自分の楽しみを究めているところを垣間見ることが出来、伯母としては嬉しい限り。

毎日、お弁当を持っていくというので、一週間の滞在期間中に二回程作ってあげる。そうして、彼女の弁当箱を手にして、大いに驚く。そこには、レミゼラブルよろしく、番号が打ち付けられている。暑さで食品が傷みやすくなることを懸念してか、学校では一斉に弁当箱を蒸すので、必要らしい。その事実にも驚いてしまう。

生徒番号、と言えば聞こえはいいが、どうやら、その通し番号は彼女が三年間の中学生活でずっとついて回るらしい。クラスの生徒数は45人、一学年のクラス数が気の遠くなるような数字。ちょっとした一つの村が入ってしまいそうな規模ながら、当地では普通らしい。そういえば、制服にも、名前ではなく、長たらしい数字の羅列が刺繍されていた。

フランスだって社会保険番号がある。しかし、当然名前も重要。いや、そう思っているだけで、実は番号だけで処理されているのかもしれない、とぼんやりと思う。




我が家の末娘バッタの大好物である三色弁当、そして、つくね弁当を作る。





クラスの友達とわいわい楽しみながら、フランスから遊びに来た伯母が作ってくれたと見せ合いっこするのかな、と、彼女のお昼の時間を想像してみる。びっちりと5時までの授業を終えて、どっぺりと疲れた中学一年生の頭には、お弁当の味なんか報告する優先順位は低い。が、どうやらママから言われたのだろう。殊勝に「美味しかったよ。ありがとう。」と言ってきた。いやいや。つくねは味が濃すぎたかな。お友達は何て言っていた。そう振ると、驚くべき答えが返ってくる。

そこは日本の学校と同じで、クラスでお昼になるらしいが、騒ぎがあってはいけない、と皆それぞれの席に座って、前を向いて大人しく食べるという。テーブルを寄せ合って、或いは、仲良しと一緒になって、おしゃべりしながら楽しい時間、といったイメージではない様子。

そうか、そうか、そうなんだ。だから、友達がどんなお弁当なのかも知らないらしい。きっと、彼女がそんなことには関心がないんだろうな、と思ってもみる。

遠い昔、長女バッタが幼稚園に行きはじめたころ、ランチは食堂に行き、前菜、メイン、サラダ、チーズ、デザートとあると聞いて驚いたことを思い出す。そうそう、日本に行って、食後に「デザートはなあに?」と息子バッタが聞いて、かなり顰蹙を買ったっけ。

こんなところで、これだけ大きな違いがあるのだから、それは価値観の違いや解釈の違いでの行き違いもあろうな、と思う。でもきっと、バッタ達は台湾の甥や姪を大いに理解していて、いつか何かあった時に、味方になるだろうな、と思う。同じように、甥や姪も、バッタ達に何かあった時には、味方についてくれる大いなる理解者だと思う。

個人のレベルを超えた繋がりとなれば、それこそ、国際人としての彼らの存在意義とはなるまいか。

日本で生まれ育った一卵性双生児の一人が臺灣、一人がフランスに居住し、それぞれに三人の子に恵まれ、育てているという、人生の妙。これから、この6つの粒が、どこにどう飛んでいくか。。。とっくり楽しむ前に、我が人生をなんとかせねば。

何とも言えない力が、どこからか湧き上がってくる。








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2014年1月7日火曜日

謹賀新年



佳節愉快 諸事順利 萬事如意 富貴厳春


あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。



天翔ける馬のように軽やかに、時には草を食む馬のようにゆったりと、疾走する馬のように一心に、一年を過ごしてまいりたいと思っております。


皆様、ご家族、ご友人にとりまして、新年が輝かしいものとなりますように。




お元気でお過ごしでしょうか。
フランスにお越しの際には、どうぞお声掛けください。


庭で採れた胡桃、ヘーゼルナッツのパイ、ミラベルのジャム、クエッチのタルト、チェリー酒をご用意し、月桂樹の葉を敷き詰めた薫り高い塒にて歓待申し上げます。




クッカバラ、バッタ一同