2018年2月17日土曜日

森の展覧会








森に入ると、雪解けの水であちこちがぬかるんでいた。

ぐちゃぐちゃの泥の上をずぶりずぶりと歩を進める。
小さな沼や細い小川があちこちに出現している。







遠くで鳥たちの囀り。
ぬかるんだ道には足跡が沢山ついているのに、人の気配はない。





あちこちの水溜りが空と木々を写し、森の中はちょっとした展覧会。



















冬来たりなば春遠からじ












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銀世界の中で




夜中に出発するバスで学校の仲間と一週間スキーに行く息子バッタ。
二週間のバカンスの間、学校の寮が閉まるので、その前に荷物を取りにきて欲しいと言われ、金曜の夜の高速を走る。

「ママさぁ。甘過ぎ!普通、しないよ、そんなこと。」
助手席で末娘バッタが溜息をつく。

そう言う彼女も、忘れ物をしたことで、会社から戻った足で荷物を持って彼女を迎えに行ったので、かなりの遠回りをしていた。そもそも、私が甘い母親なのだろうか。いつでも出動可能な状況ではないワーキングマザーであり、できる時には200%してあげたい。

二週間のバカンスのうち、一週間は遊び、一週間は勉強に集中することになっている。一週間分の本と教材、そして、たっぷりの洗濯物とで重くなったスーツケースと幾つかの袋を預かった。

じゃあ、ボンヌヴァカンス!
そう言って両頬にビズをする。
と、一瞬、首に顔を埋める息子バッタ。

ルームメートの友人も一緒だったので、あれっと思う。
疲れているのだろうか。声を掛ける前に、さっと離れ、小走りに友人と学校に戻るやいなや、
「ママ、荷物を取りに来てくれて、ありがとう!」
大きな声で手を振る姿。

家に帰り、今度は末娘バッタが翌日からのスキーの準備。息子バッタの学校に車で乗り入れるには、通門証が必要であり、以前父親がメールで送って来たように覚えていたが、メールボックスを探してみるも見つからない。学校のホームページにアクセスをし、個人のスペースを見てみると、丁度、本日付の連絡が入っている。良く見ると成績表。

ダウンロードし、じっくりと解読。初めて目にするプレパの成績表に、うなってしまう。

数学:筆記、口頭試問。物理・化学:筆記、口頭試問。IT。フランス語:筆記、口頭試問。外国語:筆記、口頭試問。産業科学:筆記。

これまでの全ての試験結果、科目毎の平均点および順位、クラスの最低点、最高点、メジアン、教師からのコメント。そして係数を加味した本人の総合平均点および順位。最後に絶対評価と思われる、AからFまでの各科目の評価と総合評価、および学校長からのコメント。

数学と外国語がA、産業科学がA+。他はA-。総合でA。

しかし、点数の評価は厳しい。恐らくは、クラスのほぼ全員が少なくともA-なのだろうと思われた。

係数が低いとはいえ、フランス語の点数を見て息を飲む。そうか。。。
係数が一番高い数学といえば、筆記はなかなかの成績だが、口頭試問が厳しい評価。いや、それでも、最初の点数に比べれば少しずつだが伸びているのか。

クラスメー全員がA、「highest honors」、優、の評価の中で、それでも成績順位がつけられる世界。49人の仲間がいれば、1番から49番まで存在する。

プレパ時代が自分の人生で一番暗黒の時だったと、先日フランス人の友人が漏らしていた。バッタ達の父親は、そこまで悲愴な話はしていなかったが、多かれ少なかれ、誰にとっても大変な時期なのであろう。

今頃、見渡す限り銀世界の中にいるはず。
頭を空っぽにしてくるといい。
Bonnes vacances !




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2018年2月11日日曜日

雪の魔法






火曜の午後から積もり始めた雪が水曜の朝にはすっかりと辺りを覆い珍しく銀世界。

バスが運行しない道を、転ばないように一歩一歩踏みしめて進む。雪道を歩いた幼い記憶がよみがえる。吹雪の中を登校した昔を思えば、雪が積もっただけで、交通が麻痺し、日常生活に支障をきたすなど、信じられない思い。

金曜の朝は少し降ていたが、さすがに土曜は通りの雪もまばらになっている。買い物をしなければと車を出そうとするが、ちょっとした雪が残っているだけなのに、動かない。末娘バッタを動員し、箒で雪掻き。

そろそろと車を出し、ノーマルタイヤでの雪道の走行の怖さを知っているだけに、慎重に運転をする。近所のスーパーについてみると、生鮮食品のコーナーが品薄。どうやらトラックでの入荷が出来ていなかったらしい。

ゆっくりと車を走らせ、またもとの場所に戻す。雪掻きをしようにも、雪用シャベルもスコップもない。DIYショップに買いに行くにも車が必要。それに、次に使う時は、また一年後だろうか。

一年に一回だけでもいい。
朝起きてみたら別世界になっている雪の魔法に、今は酔いしれる。










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2018年2月10日土曜日

大ちゃん






ここ数年、一年に撮影した中でのベストショットを使って賀状を作成し、お世話になった方々、随分ご無沙汰してしまっている方々にご挨拶を送っている。

ベストショットは一年間の最高の一瞬と必ずしも一致しない。それでも一つに決める時には、何やら厳かな気持ちになる。

近況報告と一緒に家族の写真を送ってくれる方が多いが、とても楽しみにしている。その中で、前の会社の上司が送ってくれた数枚の写真の中の一つ、今の会社の仲間達との写真に釘付けになった。

もともと日本人は若く見られるというが、彼も本当にいつでも変わらず若く、パリのオフィスに出張に来た時には、皆で大歓迎し、変わらぬ彼を称賛したものだった。秘かに彼を慕うスタッフも何人かいた。突然の会社売却という驚きの終わり方になった際、転身するにも精神的についていくことがやっとだった。彼は同業でも外資から日系に移り、しかも担当市場が変わり、機関投資家向けからリテールにと大きな転身をやってのけた。しかし随分つらい時期があったのだと想像するに難くない。今回、初めて、今の会社の仲間達とのショットで、爽やかな笑顔に久しぶりに接することができた。新たな人生を自分のものとして、自信に満ちて歩いている様子を垣間見、胸が熱くなった。

いや、実は釘付けになったのは、彼の笑顔にだけではない。彼の横に座っている男性の顔に見覚えがあったのだ。大学の時の同級生。忘れもしない「大ちゃん」ではないか!

オレンジ色の彼のジャケットを鮮やかに思い出すことはできても、大ちゃんのフルネームは出てこない。駒場から渋谷駅まで一緒に歩いて帰った日々が懐かしく思い出される。学園祭でクラスで劇を出すことになり、ガキん子役の私にちょっかいを出す役だった彼は、確か、実際女性にどうアプローチすべきなのか分からないから、何もしないので一度一緒にホテルに行ってくれないか、と真面目な顔で言って来たっけ。人の話に裏があるなんて思いもよらない青かった当時の私は、真面目に彼の話を受け、役作りのためなら、ホテルにだって、どこにだって行く心づもりであることを伝えたように覚えているが、実際のところ、どうだったか。結局はそんな時間を持たずに、本番を迎えたことだけは覚えている。確か上野か日暮里だったのか山手線の駅を利用していて、池袋で降りる私と一緒になる機会が多かった。

その大ちゃんが、実はクラスでも大人し目の、しっとり美人に思いを寄せていたとか、実はゲイだったとか、色んな噂を後で耳にし、なんだかはぐらかされた思いがし、それでも、まあ、そんなものかと思ったように覚えている。入学した年のクラスは一緒でも、進学した学部が違ってしまったため、大学の後半の2年間は全く会う機会もなかった。卒業後彼が大学院に進んだのか、或いは就職したのかも、定かではない。実際のところ、進学した学部さえも覚えていない。

その大ちゃんが、写真で、眩しそうに静かに笑っていた。

上司にすぐに返事を書き、相変わらず若々しく元気な様子を讃え、同時に、写真の中の「大ちゃん」について触れた。名前を失念してしまったが、学生時代の仲間に違いない、と。

すると、上司からすぐに返事がきた。

「隣にすわっているのは、さすがに20代の若者だから大ちゃんではなさそう(笑)。彼がニューヨーク赴任になって記念撮影したんだ。」

なんと!

私の記憶の「大ちゃん」は、20歳で時間が止まっていたことに漸く気がつく。そりゃあそうか。写真の大ちゃんは、さすがに50歳のおっさんの顔はしていなかった。

大ちゃん、元気にしているかしら。通りですれ違うことがあったとしても、ひょっとしたらお互いに分からないかもしれない。私の記憶の「大ちゃん」が20歳であるように、彼の記憶の私は20歳なのだから。






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2018年2月4日日曜日

恋文








どうしても手に取りたくて金曜の夜、閉店間際の本屋を目指す。日本の書籍を扱っている本屋は、パリ広しと言えども一軒のみ。一時期Book Offが事業展開していたが、採算が取れなかったのだろうか、閉店してしまっていた。

20時にあと数分。

どうしても、という念が通じたのだろうか。地下鉄の乗り継ぎもスムーズに、駅から地上に出て走りゆけば、目指す書店から明かりが見えている。

すぐに欲しい本をカウンターで問い合わせることもできたが、余りにも無粋。できることなら、本との出会いの一瞬まで楽しみたかった。

いつもの癖で文庫コーナーに急いで目を走らせる。年末にバッタ達と訪れていて、数書購入していたが、気になる作家を探し当て、作品名を追う。

葉室麟。
『潮鳴り』、『蜩ノ記』、『無双の花』、といずれも心揺さぶられていた。今回も二冊手にとる。

平野啓一郎。
『葬送』に出会った衝撃といったらない。『日蝕』を再読してしまった。それから、『決壊』、『かたちだけの愛』など彼の幾つもの作品を読んでいるが、年末に手にした『空白を満たしなさい』には、震えてしまった。表紙絵のゴッホの自画像がいやにリアリティを持って迫ってくる。小説の世界だからありえるストーリーながらも、現実の世界に生きる我々にメッセージがしっかりと届いており、大いに考えさせられてしまう。『マチネの終わりに』とは全く違った作品。今回も新たに一冊を手にしてしまう。

瀬戸内寂聴。
彼女の作品は以前に数作読んでいる。岡本太郎の母親、岡本かの子を扱った『かの子繚乱』は圧巻。日経に掲載された『いよよ華やぐ』も非常に楽しめた。最近、平野啓一郎が瀬戸内寂聴にインタビューをしている記事を読み、『青鞜』を読みたくなってしまった。そうして手にした『烈しい生と美しい死を』。また当時の問題作『花芯』、最近の作品『爛』。

本を手にすると気持ちがどうしても昂ってしまう。

急がねば、レジが終わってしまう。当初気になっていた本をカウンターで問い合わせると、既に売り切れで取り寄せねばならないと言われる。最初に聞いていたら、迷わず取り寄せてもらうところだが、既に読みたい本を数冊手にしてしまった今では、執着度が激減。別の機会に委ねることにする。

かくして、金曜夜、文庫本を数冊抱え、愛しい人達からの恋文をこれから読むような心持で、ひとり電車に揺られる家路につく。




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2018年2月3日土曜日

後ろ姿







吐く息も白い早朝の駅。
プラットフォームに下りるエスカレーターに人々は次々に吸い込まれる。
次に来る電車を逃すまいと駆け下りる集団の流れに乗ろうと勢いをつけたところで、懐かしい後姿を見つける。
百万人の人混みの中でも見つけられると確信が強まった瞬間、既に駆け下りる集団の流れに入り込んでしまう。
ネイビーブルーのピーコートはスーツケースを持っているらしく、エスカレーターで立って下りている。
声を掛けようか。
腕に軽く触れようか。
すれ違う瞬間、様々な思いが頭をよぎる。
振り返りもせず駆け足集団と一緒にプラットフォームを目指す。
背筋だけは伸ばして。







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2018年1月30日火曜日

ヘッドライト



車の左のヘッドライトの電球がどうやら切れてしまい「片目のジャック」になっているらしい。

「片目のジャック」とは母が良く使っていた言葉で、実のところ映像など目に浮かばない。むしろピーターパンのフック船長のイメージがわき上がってしまうが、フック船長は鰐に腕を食われてしまって、片手がフックだっただけで、片目ではなかったか。

最初から話が逸れてしまったが、とにかく車のヘッドライトの電球を交換する必要があった。毎日車を使うことがなく、しかも夜になって初めて電球の交換が必要であることを思い出すことから、もたもたして「片目のジャック」状態がかれこれ一月続いてしまっていた。

以前、ガレージに交換を頼んだ時、こんな簡単なこともできないのか、と言わんばかりの対応だったことを思い出し、スーパーの車コーナーを覗いてみる。と、ちゃんとヘッドライト用の電球が販売されている。交換する時は左右同時に交換しましょう、との注意書きまである。思い切って購入し、自分で交換してみることにする。

不遜にも、誰かがやっていることに、自分が出来ないことはない、との思いがどこかに潜んでいるに違いない。いやいや、下手の横好きなのだろう。これまでに水漏れ、ペンキ塗り、カーテンのレール付けから始まり、蛇口交換といったDIYをやってきている。料理に通じるものがあるだろうか。複雑そうに見えても、レシピをみて、丁寧に作れば、やれないことはない。

ところが、それはレシピがあれば、の話であろう。

車のヘッドライトの電球の交換。これが、思った以上に大変であった。取り敢えずは、どこに電球があり、何を外せば良いかは分かったが、がっちりと設置されている電球が取り外せない。そして、どうも買った電球がぴったりとしたサイズには思えないし、余計な器具がついているように思われる。

最近は料理の仕方にしろ、全てユーチューブで映像が確認できることを思い出し、検索してみる。モデルの年代によっても、どうやら電球の形状やら取り付け方が違うことが分かってくる。そして、正に、これと思う映像も、肝心の電球取り外しの部分はカットされている。

夜中に末娘バッタを迎えに行くことになっていたので、どうしても交換する必要があったし、冬は夕方でも薄暗く「片目のジャック」は危険であった。

仕方ない、ガレージのお世話になるか。

近所のガレージに行ってみると、土曜は17時に終業となっていて唖然とする。隣村の大きなガレージに駆け込むと今日の受付は終了したので、月曜に来てくれと言われてしまう。電球の交換なんて、プロには赤子の手を捻るようなものだろう。朝飯前。ところが、その時間さえも取れないという。

ちょこっとコツを教えて欲しい、本当に困っている、とごねると、お前さんのお蔭で我々は残業だよ、と露骨に悪態をつかれながらも、最後の最後まで待つならやってやってもいい、と言われる。一瞬悩むが、待つことにする。

鍵を渡してしまったので、暗闇が押し迫る中、エンジンを切った車の中で震えながら待つこと小一時間。すぐにできると踏んで、何も持たずに出てきてしまっていたが、付き合いの良い末娘バッタと今年の夏のバカンスの計画についてや、最近彼女が取り組んでいるレポートの内容についてなど、色々と話をして過ごす。

と、ガレージから中年の男性がにこにこして歩み寄ってくる。先程の男性は受付担当で、作業部隊は別だったのかと初めて気が付く。顔に一日の疲れがべったりと張り付いているが、笑顔を絶やさず、とても丁寧に対応してくれるので、待たされた不満や寒さなど一遍にふっとんでしまう。

既に購入していた電球は旧式で、今ではほぼ使われていないことを知らされ、あっと言う間に新しい電球に交換してくれる。右の電球の交換もお願いするが、今日は本当に時間がないんだよ、これから未だ修理しなくちゃいけない車があるんだ、と申し訳なさそうに断られてしまう。

いえいえ、無理をお願いしたのはこちらです。本当にありがとうございました。

そういうと、ウィンクが返ってくる。

真っ暗になった道を明るいライトを照らし家路を急ぐ。
道路だけでなく、どうやら心まで明るく照らされているように思われ、ほのぼのとしながら、夕食はカボチャスープにしようかと、思いめぐらす。





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