2022年9月29日木曜日

海の男になったお兄ちゃん

 





私が小学生の頃、祖父母の代から大変お世話になっている方のご子息が、我が家の家業のアルバイトということで、夏休みに泊り込みで来ていたことがあった。まだ古い木造の家に住んでいたころだから、小学生の低学年の頃だったのだろう。ご子息は大学生だったのだろうか。年子の兄と、双子の妹、言わばぴったりくっついた団子三兄妹は、体格も大きく、頼もしく、だけど両親よりはぐんと若くて、一緒に遊んでくれるお兄さんの突然の出現に小躍りして喜んでことは言うまでもない。


「お兄ちゃん」、「お兄ちゃん」といっては、いつも後ろをついて回ったように記憶している。お兄ちゃんのアルバイトには、ひょっとしたら幼い3人の子供たちの面倒を見ることも入っていたのかもしれない。実際、お兄ちゃんと近くの湖に湖水浴に行ったり、庭で皆で一緒にバーベキューをしたり、夜の縁日をおんぶしてもらってぶらぶらしたりしたことや、いたずらをして怒られたことを覚えているが、お兄ちゃんが何のバイトをしていたのか、子供だったから全く覚えていない。


お兄ちゃんの名誉のために付け加えるが、三人の子供たちの面倒は本当に根気よく、優しく、時に厳しく見てくれた。私と妹が湖で、ばしゃばしゃと浮き輪で楽しく泳いでいる様子を浜辺で見ていて、時々変な泳ぎをすると、ぱっと飛び出して、もしもの為に様子を見に行ってくれた話を、母が感心してしてくれたことがある。


お兄ちゃんは、夏休みの度に来ていたように思うが、実際は何年続いたのだろうか。お兄ちゃんは泳ぎが得意で、海が大好きで、遂に、長いこと陸には戻らない海の男となってしまったので、新しい家に引っ越した時には、もう夏休みにお兄ちゃんは来なくなってしまっていた。


お兄ちゃんが乗っている大きな船の写真が写っている下敷きをもらったのはいつの頃だったのだろう。A3サイズで、とてもしっかりしているので、下敷きとしては非常に使い勝手が良く、なんだか大人になったような気がするので、あの当時の私の宝物だった。ここぞ、と言う時に、あの下敷きで勉強をすると、とてもうまくいくので、大切に大切にしていた。


その後、私自身が地元を離れてしまったし、海の男となって世界中を航海しているお兄ちゃんと会う機会というのは皆無に近かった。


それが、二年前ぐらい前からお兄ちゃんの方から実家に連絡が入り、今はシンガポールに家族と住んでいることが分かった。それから、時々メッセージを交わすようになっている。


最近のメッセージに「70歳過ぎ」と記されていて、新鮮な思いに捕らわれる。この時ほど「70歳」という響きが若々しく思えたことは無い。何故なら、私にとってのお兄ちゃんは、あの時の20代前半の、眉毛が濃くて、優しい瞳を持った、若々しくて頼もしい青年なのだから。


そして、そのお兄ちゃんを前にして、私はいつだって真っ赤な林檎のほっぺをした、いたずらっ子の小学生なのだから。



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2022年9月28日水曜日

郷に入っても郷に従わず

 





知り合い数人と食堂でランチをしていた時のこと。一人の男性がポピーシードのバゲットのサンドイッチを、トレイなしで頬張っていたので、テーブルにパン屑とポピーシードが散乱してしまっていた。すると、男性の目の前にいた女性が、ナプキンでささっとテーブルを一払いして、パン屑とポピーシードを床にばらまいてしまった。


開いた口がふさがらない。


せっかくナプキンがあったのなら、テーブルを綺麗にしようとの気持ちがあったのなら、どうして、ナプキンでパン屑を集めてトレイやお皿に載せて、後で捨てようとしなかったか。


早朝の散歩の時に、その光景が蘇る。朝6時半。通りは人影もないのに、学校の体育館からは煌々とした光が漏れていて、誰かが掃除をしている様子が窺える。三階建ての小学校の建物も、誰かが掃除をしているのか、一つの教室に明かりがついている。


ビストロやレストラン、カフェでも、早朝の掃除はフランスでは良くみかける光景ながら、そうか、と合点がいってしまった。


日本では小学校の頃から皆で毎日掃除する清掃の時間があり、その時には児童も教師も、時には校長も、皆で自分たちの教室、トイレ、校庭、体育館など校舎を掃除する。掃除をすることが当たり前だと、誰しもが思っている。


ところが、ところ変われば、それは常識でもなんでもない。学校の校門近くにゴミが散乱しているのも、掃除業者の仕事と割り切っている節がある。共働きの家庭や、高収入の家庭では、掃除をしてくれるメイドさんを雇っているところが多い。そんな環境で育った子供たちは、自分で自分の部屋やトイレを掃除するという習慣が全くなく、誰かがやってくれるものだと思ってしまう。


そんなメイドさんがいない家庭であっても、一旦家から外に出れば、誰かが掃除をしてくれるものだと思ってしまう。恐らく。環境がそうさせるのであろう。


ああ、フランスの学校に全員で掃除をする一斉清掃の習慣を導入出来たら、社会はどんなに変わるだろうか。私が校長であれば、そうするのに。まあ、一部の親から、我が子に掃除をさせるなんて、と突き上げをくらってしまうのが落ちか。


郷に入っては郷に従え、とはいうものの、こればかりは受け入れられない精神。今日も通りに落ちているゴミをそっと拾い、近くのゴミ箱に入れる。


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2022年9月25日日曜日

夕暮れ時のパリ

 





パリに引っ越した友人宅に夕食に招待される。トンカにとって、初めての夜の留守番。人生にはいつだって、ファーストタイムは付きもの。そうやって、経験を積んで大人になり、深みのある人生を送ることになる。


それでも、出来るだけ早く仕事を終え、大急ぎで散歩に連れ出し、かなり早めの夕食を与え、さっさと鎧戸を閉め、トンカの最近の散歩での戦利品の一つ、マナーの悪いキャンパーが捨てていったバーベキューの残りものの牛の骨を与え、静かに家を出た。


友人宅はパリの住宅街にあって、バッタ達が赤ちゃんの頃に過ごしたアパートの近くだった。余りの懐かしさに、立ち止まってしまう。何も変わっていないではないか。夕方の喧噪、気だるいパリの空気、空の色。


メトロの駅で待ち合わせていた昔からの友人が、気を遣ってくれ、言葉を掛けてくれた。私が過去を引きずっていることを良く知っているので、さりげなく、それでいてとても優しく大丈夫、と。


昔母が幼いバッタ達に会いに来てくれた時、仕事帰りの私をバッタ達を連れてメトロの駅近くのベンチで待っていてくれたことが鮮明に思い出された。幼いバッタ達が、そこにいるかのように思われた。


懐かしさだけで、そこには辛さも、悲しみも伴っていない。そう、だって、あの頃、本当に幸せだったのだから。そして、今も十分に幸せなのだから。


ありがとう。全然大丈夫!


そうにっこりと笑って、友人と歩き出す。いつでも優しく包み込んでくれる夕暮れ時のパリに。



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2022年9月24日土曜日

ツキを戻す!

 





通常サイレントモードにしている携帯に、誰かから電話が入っていたことが表示されていた。仕事中ではあるものの、一応確認をせねばとチェックしてみると、相手は末娘バッタ。


どうしたのだろう。メッセージではなく電話。週末は学校の別のキャンパスに行くといっていたが、何か問題が生じたのだろうか。慌てて電話をしてみるが、案の定通じない。彼女も携帯をサイレントモードにしていることが多く、電話を掛けて一発でつながった試しがない程。まあ、大した問題ではないのかもしれない、と思っている時に、彼女の方から電話が掛かってくる。


「ママ、運転免許合格したよ!」


威勢の良い声が鳴り響く。おめでとう!「風邪を引いていて体調は最悪だったし、ずっと忙しかったから無理かと思っていたのだけど、満点だったんだよ!嬉しいっ!」


彼女にとって二度目の挑戦だった。運の悪いことに彼女が登録していた自動車学校が倒産し、他の学校にたらい回しされ、漸くしっかりとしたモニターと出会ったかと思いきや、末娘バッタ自身がコンクールなどで忙しくなり、そうこうしているうちに、今度はそのモニターが引退宣言をし、別の学校を探さねばならくなるなど、最初に学科試験に合格してから随分と時間が経ってしまっていた。


慌てて夏前に試験を受けさせてもらったが、今度は彼女の準備不足で、試験場に持参する資料を夜中まで探したり、大学の期末試験の日とバッティングし、アクロバティックな時間割で双方に特別に配慮してもらったりしたにも関わらず、焦りか、疲れか、試験官の意図するメッセージをつかみきれずに、試験途中で既にアウト。


試験の前には家族全員に連絡をしており、皆から応援メッセージをもらっていたが、残念な結果に。免許取得を目指してから随分と時間が経っていることもあり、本人もすっかりしょげてしまい、もう無理かもしれない、と弱音を吐き始めてしまっていた。


落ち込む彼女に、たかが運転免許じゃない、と諭したのは、この夏のこと。


たかが運転免許、されど運転免許。周囲の友達の多くが取得し、楽しそうに運転している様子に、自己嫌悪を抱いてもおかしくない環境ではある。


今回は、誰にも試験の日を告げず、大騒ぎをして結果を待つこともなく、自分なりにしっかりと試験に臨んだと思われる様子に、末娘バッタの成長をみた。大袈裟ながら「臥薪嘗胆」の精神を、会得したのではないかとさえ思ってしまう。


さあ、そうやってツキを戻し、あらゆることに果敢に挑戦していくのだよ。

おめでとう。



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2022年9月20日火曜日

マロニエの実





 


ごろごろとマロニエの実が通りに散らばっている季節になってきた。黄緑色のとげとげの外殻がぱっくりと割れた中に、艶やかなこげ茶色の実がひっそりと潜んでいる様子に、思わずしゃがみ込み、手に取ってしまう。


早朝散歩の暗闇の中で、とげとげの外殻を踏んでしまったトンカは、大袈裟に跳び上がって驚き、トンカ以上に私を驚かせたものだった。


この季節になると、幼い時のバッタ達のポケットは、マロニエは勿論、ドングリ、胡桃、ヘーゼルナッツと、様々な実でふっくらと膨らんでいたものだった。何を隠そう私自身、今でもついつい艶やかな実や美しい形の実をポケットにしまってしまう習性がある。


だから、トンカのほっぺの片側がぷっくらと膨らんでいるのを見た時、思わず納得してしまった。だって、トンカには大切な実をしまっておくポケットがないのだから。


トンカはきっと、栗が好きだろうな。もう少ししたら、栗林に行こうね。



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2022年9月18日日曜日

いつ汚名返上なるか

 





長かった夏のバカンスが終わって、子供たちが学校に戻ってきて二週間になろうか。学校の校門付近の通りには、食べかけのバゲット、お菓子の袋、飴の包み、噛み終わったガムなどがごろごろ転がっている。


寮のある高校の駐車場では、週末になるとゴミ箱に入りきれなかったのだろうか、炭酸飲料の缶は勿論、ピザの食べかけ、サンドイッチの残りが紙袋に入れられて、時には野ざらしになって辺りに散乱している。もしかしたら、カラスやピーの仕業かもしれない。もしかしたら、そうではないかもしれない。


森の中も、サイクリストやランナーが途中で小腹を満たすために食べたと思われる、お菓子の袋や小さい紙コップなどが、あちこちに捨てられている。


そして、通りも、森の中も、あらゆるところに、ティッシュ、ティッシュ、ティッシュ!フランスは鼻をかむ為にティッシュを使うことは滅多にないので、何に使われたかは推して知るべし。


そう、だから、こんな環境だから、トンカだけが悪いわけじゃない。分かっちゃいるけど、でも、どうよ。そんなものを見つける度に、電光石火のごとく駆け付け、さくっと口に咥え、飲み込んでしまうのは。


鼻で確かめるだけで、口に咥えなくなることもあるが、それは稀。通りでトンカが加えたティッシュを口から取り出し、それを通りに捨てるのもなんだからと、近くのゴミ箱に入れる作業をしていると、なんだかなあ、と思ってしまう。


キャンプの跡にも、ハムの切れ端が残っているパック、缶詰なんかが散乱していると、ため息が出てしまう。もちろん、トンカはそこが綺麗になるまでは、その場から離れようとしないし、首根っこを摑まえて、引きずり戻そうとしても、逃げ足が速くて捕まえることさえできない。


わかっちゃいるよ。トンカが悪いんじゃないって。でもさあ、たっぷりの美味しいご飯をちゃんと家で食べているのに、何も拾い食いをしなくてもいいじゃない。トンカの他にも、何匹もの犬が通っただろうのに、他の犬は見て見ぬふりが出来るのに、何故にトンカは食らいつくのか。森や町の自然環境維持に使命感を燃やしているわけではあるまいに。


嗚呼。


確かに通りで、犬の糞を踏んずけて嫌な思いをしたことがない人はいまい。だけど、人間も、ちょっとはルールを守ろうよ。せめてもの救いは、トンカの胃腸が頑強なこと。いや、少しぐらい具合が悪くなれば、拾い食いも止めるのだろうか。森と町のゴミのスイーパーとしての汚名をいつ返上できるのやら。



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2022年9月16日金曜日

早朝の散歩





 



未だ起きたてのベッドの温もりを身にまとい、

星が瞬く夜の闇に身を踊り出す


東の空が白々としてくる頃には

指先が冷たくなり

そろそろ手袋が必要な季節になり始めたことに気付かされる


草原は朝露に濡れ、

薄ぼんやりとした中でも

朝の気配を感じる


こんな時間に散歩している酔狂なものはおるまいと高を括っていたが、

真っ暗なサッカーのグランドから誰かの走る足音がする


お味噌汁がふと恋しくなる

朝食にお味噌汁なんて滅多に食べてこなかったのに

まったく不思議な現象


さあ、今日も一日張り切っていこうか!



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2022年9月14日水曜日

Yuvuzela亭のタルトタタン

 





我が家の林檎は、白雪姫の毒林檎のような赤さ。ちょっといびつながらも、ほどほどに丸く、しっかりとジューシーで甘酸っぱい味。


12個揃ったところで、どうしようか。色々なレシピを見比べてみながら、一つを選び出す。それを核とし、幾つかのレシピのあちらこちらから拝借し、付け足したものが本日のレシピとなる。我が家にある材料や器具によって、大幅に当初のレシピからかけ離れることもある。特にバターや砂糖の量は大きくカットすることが多い。かくして、Yuvuzela亭の味となる。


今回も、当初のレシピとは随分とかけ離れたものとなるが、林檎の甘酸っぱい香りとシナモンの香りが豊かにキッチンに広がり始め、パイ生地の香ばしさが加われば、もうどんなレシピでも失敗無しと思えてしまう。


林檎がとろけんばかりに仕上がる。さあ、お向かいのマダムに久しぶりに差し入れをしよう。最近はダイエットとかで、ケーキは作ってくれるなと言われていたが、たまには悪くあるまい。



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2022年9月12日月曜日

あれから30年

 





留学仲間のブログを読んでいたら、我々が渡仏してから早30年もの月日が経ていたことを知らされた。30年か。


30年前の夏も異常に暑かったことを覚えている。あの時の陽射しの強さや、乾燥した空気、通りの香りまでもが鮮やかによみがえってくる。フランス語の夏期講習のクラスで、午後にポンヌフで待ち合わせをしてセーヌ河の船に乗った思い出。


若さがなせる業なのだろうか。フランス語など、ちっとも話せなかったのに、何とかなると思っていたあの日々。夢だけは大きく、世界を股にかけ飛び回って活躍しようと思っていた。何を持って活躍と言うのか、どんな分野で活動したいのか。そんなことはどうでもよかった。とにかく、根拠なき自信に満ち溢れ、幸せで、エネルギーが体中から湧き上がっていた。


あの時に戻りたいか、と聞かれれば、もう一度これまでの30年間を改めて生きることは、しんどいと思ってしまう。ただ、もしもあの時に戻ったとしても、恐らく同じようにパリに憧れ、上司、先輩、同期たちにも恵まれた職場を何ら躊躇なく辞めて、フランスに来るだろう。


人間は簡単には歴史から学ばないし、学べないのかもしれない。


それでも軌道修正したいこともある。後悔のない人生を歩んでは来なかった。ただ、困難な時期があって、今の自分があると思えば、貴重な時間だったと言えようか。


であれば、これを祝わずして何を祝おうぞ。久々に留学仲間に声を掛けて、皆で集まるのも悪くないだろう。我々の30年に、先ずは乾杯といこうか。



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2022年9月11日日曜日

早朝の品評会

 





明け方に雨が降ったのだろうか。土は湿っていて、草木には水滴がついている。見上げれば青空が広がっていて、久々の良い天気になる予兆と思われた。早く行こうよ、とトンカに催促されて、恐らく未だベッドで寝ている人々の割合が多い時間に散歩に出る。


急にということでもないのだろうが、通りに出たところで周囲に靄が立ち込め始め、これでは森は一寸先も見えないという状態ではあるまいかと危ぶまれた。それでも、トンカは立ち止まるどころが、喜んで先を急ぐ。


霧で道に迷う程の森でもないし、そのうち晴れ上がるだろうと、トンカの後を追って森の中に歩みを入れる。そこは幻想的な世界が広がっていて、少し前まで猛暑で雨もない日々が続いていたお陰で、乾燥して干上がっていた森が久々にしっとりとしている。


森を抜けて草原に出ると、靄はすっかり晴れ上がっていたが、辺り一面が白くベールで覆われていて、朝日を浴びてきらめいていた。トンカが面白がって、鼻を突っ込み舐めては、顔をしかめている。


ちょっと待てよ。これは品評会ではないか。これ程の数の芸術家が、昨晩ひっそりと作品を仕上げたのか。草木の形態や、本人の技量によって、それぞれ個性的な作品に仕上がっている。細やかな水滴が、これまた驚くほど美しい効果を添えている。


そんな彼らの渾身の作を、そう容易くは撮らせないぞ、とばかりに、どんな角度で試してみても、焦点は合わないし、水滴の煌めきが映らない。招待状もないのに、突然お邪魔してしまった品評会。これから秋が深まるにつれ、いくつもの思わぬ品評会に出くわすのだろう。森の散策が一層楽しみになる。







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2022年9月10日土曜日

我が家は豊作、か

 





かつてない猛暑続きで、深刻な水不足の地域もあったフランスで、今、恵みの雨が降っている。この程度で問題が解決するのか、既にされたのか、農作物の収穫への影響は緩和されるのか、既にされたのか、詳しいことは分からない。


分かっていることは、末娘バッタが友達と作ってくれた我が家の家庭菜園は、毎日の水やりは必要がなくなっていて、毎日隠元が一つかみ以上収穫出来ているということ。クエッチの当たり年ではなかったが、ところどころで、ふっくらとした濃紫の実が細い枝に塊のようにくっついているということ。そして、まだまだ小さい木ながら、真っ赤な林檎が既に20個は収穫できたということ。


林檎は小さめの青い実の時から、トンカが随分と勝手に失敬して食べていたので、30個はなったのもしれない。いやいや、風で飛ばされて落ちている実も含めると40個以上かもしれない。


ミラベルが今年はどんな運命であったのかは、残念ながら不明である。トンカの面倒を見ることだけでも大変なのに、植木鉢も含めた家庭菜園に水やりをする必要があった息子バッタに、ミラベルの実の状況を確認してもらうことは酷であろうと、特にお願いをしていなかった。小さい頃はあんなに喜んでクエッチもミラベルもレインクロードも、そう、さくらんぼも!大騒ぎをして採っていたのに、大人になるとどうしてこうも無関心になるのか不思議である。


皆と楽しく収穫する行為が楽しいのであって、一人で食べるための収穫となると、労働としての意味合いが出てしまい、二の足を踏むのだろうか。


大人になるということは、厄介なことである。知り合いの息子君も、小さい時は我が家に来て、楽しそうに庭で遊んだり、おやつを食べていったりしたものだった。ところが最近はトンカと散歩中に出会っても、気が付かないのか、気が付いたからなのか、空を仰いで走り去ってしまう。


高校生の頃の息子バッタのことを思えば、さもありなん。人様のお子さんのことを言えたものではない。


かくいう我が家の息子バッタ君は、大学が始まると仲間たちとの共同生活が再開となったので、ちっとも我が家に帰ってこなくなってしまった。末娘バッタも、彼女が友達と汗を流して作った菜園の収穫した隠元を未だ味わっていない。長女バッタが日曜日のランチに顔を出すと言っているが、どうなることか。


それでいいのであろう。我が家のバッタ達は、豊作揃いということにしよう。皆それぞれの場所で大いに羽ばたくがよい。尾羽打ち枯らした時には、家に戻っておいで。いつでもトンカと待っているからね。



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2022年9月8日木曜日

能ある鷹なのか

 





バス停から大急ぎで転がり込むように家に入ると、トンカの熱烈な歓迎を受けた。人には飛びつかないようにと厳しく言っているが、一人で長時間留守番をしていたのだからと、大目に見てやることにしている。


普段着に着替えたり、水を飲む時間さえ与えてくれずに、きゅいん、きゅいんとけたたましい。犬は無駄に吠えさえしなければ、驚いた時、嬉しい時、怖い時、吠えるのは自然だし、吠えるべきだと思っている。しかし、ご近所付き合いという面倒なものがあり、隣の家の幼い子達が外で泣き始めたり、大人たちが大声で電話をしたり、食事をとったりする度に、トンカが吠えていては困りもの。できるだけ、無駄泣きはしないように気を遣っている。


そもそも一日中家の中にこもっていたのだから、大いに飛び跳ね、エネルギーを発散したいだろう。だから、出来るだけ急いで散歩に連れ出すことにしている。


ところが、このところ急に局所的ににわか雨が降る日が続いている。トンカに天気予報を知らせても、これから雨が降るから散歩は今日は止めようと言っても、分かってもらう事は無理な相談。従い、レインコート着こみ、キャップを被って、いざ出陣となる。


普段は濡れることを嫌がっているのに、散歩となると話は違う様子で、ぱらぱらの小雨であれば全く問題なく嬉しそうに外に出る。ところがある時、森に行く手前で久々の土砂降りに合ってしまった。しかも雷を伴う派手なものだった。どうしようね。ちょっと雨宿りしようか。


先ほどすれ違ったジョギングをしていた二人連れが大急ぎで戻ってきた。せっかくだけど、この天気じゃ無理よね、と声を掛けられる。なんだかつられて我々も家路を急ぐことにした。子供を迎えに来たのだろうか。傘を持って走っている男性とすれ違う。「あら、ありがとうございます!傘は私にですよね。」なんて軽口をたたきたくなるが、何せトンカを連れているので、おとなしく土砂降りを体中に受けながら歩き続ける。


流石のトンカも途中で立ち止まっては、ぷるる、ぷるると身体を振って水気を飛ばしている。シャワーを浴びたと思えばいいか。風邪を引くほどの寒さではないし。


道路の側溝が既に川の様になっている。お願いだから徐行して、と車に願いながら、いつの間にか速足から駆け足になっていた。坂を上がったところを曲がれば、もう我が家。


いつものように横断歩道を渡り、我が家の前の小径に入ると、驚いたことにトンカが我が家の門の前で座り込んだ。え?知っていたの?こちらを早く開けてよと言わんばかりに見上げている。


何十回、いや、既に何百回になっているだろうか。ここの通りを通るが、門の前で立ち止まったことはなく、いつもやり過ごそうとする。バッタ達も、トンカは家が未だ分からないんだね、と言っていた。


いや、分からないどころじゃない。ちゃんと知っていて、やり過ごしていたのか。何たることよ!


流石にずぶ濡れになってしまったので、早く家に帰ろうと思ったのだろうか。いやはや、驚くしかない。能ある鷹は爪を隠す。トンカは能ある鷹なのだろうか。にんまりしながら、ぐっしょりと濡れた手で門を開ける。


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2022年9月7日水曜日

初めてのお留守番

 





9月に入ってから一日中家を開ける時も、トンカに一人で留守番をしてもらわねばならなくなった。比較的仕事場に拘らない頼みの綱であった研究職の長女バッタから、トンカがいる家では仕事にならないと、半泣き状態で断られてしまったので、諦めるしかなかった。


トンカが赤ちゃんの時には、長女バッタが難しい時には、友人に頼んで日中だけでも彼女の家に連れて行ってもらったり、それが難しくても散歩に連れ出してもらったりしたが、なんだか彼女の犬好きと、困っている人がいたら放っておけない優しい性格に付け込んでいるようで、よほどのことがない限りはお願いしないでおこうと思い始めていた。


相手が断りにくいことをお願いしてはいけない。まったくその通りではないか。しかし、どうしようか。


変なもので、我が子であるバッタ達の時には、彼らが3か月になって産休期間が終わると、ベビーシッターのヌヌに早朝から家に来てもらい、当然のように会社に行ったものだった。同じように、トンカだってもう9ヶ月になるのだから、一人で留守番ぐらいしてもらわねばなるまい。そう自分に何度も言い聞かせ、トンカとうまく共存していくためには、お互い少しずつ譲り合わねばならないこともある、と結論付けるも、まだ悶々と悩んでいた。


庭で放し飼いにしておくことも考えたが、何せ私がずぼらな性格なので、我が家の門や塀は非常に簡易で簡素なものである。トンカがちょいと本気を出せば、問題なく乗り越えて道路に行けるだろうし、いたずらな子供たちがひょいと門を開けることだってあり得る。押し売りが誰もいないのかと、ずけずけと庭に入ってくることだって大いに考えられる。


毎日たっぷりと散歩をしているので、トンカに逃走癖はなさそうだが、とにかく好奇心の塊なので、門が開いていたり、外でにぎやかな音がしたり、お仲間が通ったりしたら、ひょいひょいと外に出て行ってしまい、車にはねられてしまうことだって大いに考えられる。


と、なると、我が家で一番広いスペースであるリビングに一人で留守番をしてもらうことが最善策であると思うに至った。


朝から家を空ける日は、6時に起きて30分の散歩に出ることにした。フランスの9月は日の出が7時以降なので、未だ星が瞬いている中、トンカといつもの散歩コースの最短版に出ることになる。朝靄が出ていたり、真っ暗な場所があったりと、いつもとは様子は違うが、トンカは早朝の冷たい空気が大好きなので、足取り軽く散歩を楽しんでくれるだろう。


散歩から戻ってトンカが気分よく大好きなソファーでくつろいでいるところを見定めて、そっと出掛けてしまおう。バッタ達の時もそうだったが、変に別れの挨拶はしないことにしている。実は私自身が頭の切り替えをする必要があることが最大の理由。変な後ろめたさを引きずっていては、せっかくの一日が始まらない。


そっと大好物のヤクのチーズを置いておくことと、インターフォンのスイッチを切っておくことは忘れないようにしよう。


こうして10時間後に、転がるように帰ってくると、チーズの塊を口に咥え、もう自分でもどうして良いのか分からないぐらい興奮して、張り倒されんばかりの勢いで大歓迎を受けた。慌てて外に出してあげて、目一杯褒めて、可愛がってあげる。


そそくさと木陰に走り込み、用を足し始めた頃に、そっと家に戻り状況を確認。


そして、驚いて立ちすくんでしまう。朝家を出た時と何もかもがすっかり同じではないか。ソファーも齧られた形跡はないし、マットも最初に置いてあった場所から移動していない。テーブルの上の何かをひっくり返したり、本棚から本を引っ張り出したり、パイナップルの植木を穿った形跡は一切ない。そして何より、室内でまったく用を足していない。


とすると、家で仕事をしている時に、本を齧ったり、ソファーをひっくり返したり、カーペットを齧ったりするのは、私がいるからなのか。観衆がいないと、一人、静かに昼寝をしているのだろうか。これには本当に驚いてしまった。


ここであんまり褒めないことにしよう。下手に褒めて、次は全く違った結果になりかねない。それにしても、期待以上にお利口だったトンカに、おみそれしました、と頭を下げねばなるまい。トンカの大好きな干芋スティックをあげよう。とにかく、着替えて早く散歩に連れ出してあげよう。


ありがとう、トンカ!君はすごいよ!



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2022年9月5日月曜日

艶やかな黒毛のジュル






 


一直線で遠くまで見通せる道を散歩していた時のこと。シルエットから、随分先に犬がいることが分かり、さてどうしたものかなと思いながら、大きさや犬種を見極めようとしていたところ、どうも飼い主さんがこちらを気にしている様子が窺えた。


それならと、大幅にペースダウンし、のろのろとした歩みにしてみる。トンカはその分藪は茂みに鼻を突っ込んで遊べるので、一向に気にせず楽しんでいる。が、それでもいつの間にかお互いの間隔は狭まり、遂にトンカの知れることになり、例のカンガルー跳びをして、挨拶を始める。


こちらを気にしていたのだから、さっと別の小径に入るか、急げば良いのに、と思ったものの、挨拶をして近寄ってみるとラブラドールっぽい艶やかな黒色のオス犬と、なかなか感じの良い男性でにこやかに挨拶を返してくれた。一緒に遊びたがっているのですけどよろしいでしょうか、と言ってみると、勿論ですよ、ただ、ちょっと怖がりなんですけれど、と意外な返事が返って来た。


二匹は鼻をくっつけ合って挨拶をしていたが、トンカが得意の追い駆けっこを仕掛け始めた。が、相手は乗ってこない。ボール遊びをしていた様子で、男性がボールを遠くに投げ、トンカも一緒に二匹でボールの追いかけっこが始まった。


つぶらな瞳が可愛い犬だったので、声を掛けると怯えた様子で後ずさりされてしまう。「人見知りというよりも、人間が怖いんです。」と男性が説明してくれた。幼い時に随分と人間に虐げられ、いじめられていたという。特に帽子を被った男性は苦手で、恐怖心が抜けられない、と言うので、慌てて被っていた野球帽を脱いだ。


男性が保護して3年になるが、まだまだ過去のトラウマを引きずっていると言うではないか。トンカよりも体は1.5倍は大きく、しなやかな体躯が美しく、愛らしい瞳を持っている。それでも、近付くと矢張り後ずさりをされてしまう。ボールを投げてあげたり、持っていた煮干しをあげてみたが、そう簡単に心を許してくれる様子はなかった。


だからこちらの方を気にしながら散歩をしていたのか、と納得。いつでも何かあったら守ってあげることができるように、アンテナを張り巡らせ、周囲の様子をうかがっていたのだろう。


敵愾心も警戒心もまったくないトンカとの散歩が、いかに気楽で楽しいものなのかと改めて思われる。ジュル、と呼ばれていたようだが、正式名称はジュニア。飼い主の男性には心を開いていて、ボール遊びも、ちゃんとボールを追いかけて拾っては、飼い主にところまで持ってくる。その度に、ジュルは飼い主の男性からご褒美をもらっていた。


うーん、犬のトレーニングはまめじゃないと効果がなさそう。どんな時でも、どんなに時間がかかっても、最後はちゃんと戻ってくるトンカに正直なところ満足している。トンカは気まぐれなので、ボールを取りに行かないことがあっても、まあいいかな、と思ってしまう。しかしそれでは、いつまでたってもボールを取りに行くことはないだろう。が、まあいいじゃないか。


幅広の道を行くというジュル達と別れ、茂みの中にある小径にトンカと一緒に入り込む。ジュル、また一緒にボール遊びをしようね。



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2022年9月4日日曜日

おめでたき性格

 






トンカと散歩に行く森には大きく分けて三種類ある。一つは鬱蒼とした森で、複数の小径があちこちに入り組んでいて、沼もあれば今は枯渇してはいるものの泉もある。マウンテンバイクで楽しめる道もあれば、乗馬をする道もある。鹿、猪、狐など野生の動物も生息している。


もう一つの森は見事な大木が比較的間隔をあけて威風堂々とあちこちに構えていて、すっきりとした空間が楽しめる。切り倒された大木が幹を削ぎ取られ、綺麗に積まれていることからも、非常に手入れされている森といえよう。


三つ目の森は見通しの良い一直線の長距離コースが幾つもあり、乗馬、ジョギング、サイクリングが楽しめる。その間を複数の小径が通っていて、鹿や兎も生息している。上述した二つの森に比べて、比較的平坦なことも特徴の一つであろう。


どこの森に行って、どんな道を通るかは、その時の気分次第。毎日森を散策する日がくるとは思いもしなかったが、ひょっとしたら周囲に森がある場所に住んでいること自体、トンカと出会う為だったのではなかろうかとさえ思えてしまう。


まったくもって、おめでたき性格なんだな、と頬を緩ませながら、今日もトンカの可愛い後姿を追って森を駆け抜ける。


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2022年9月3日土曜日

夏の終わり

 





久しぶりの森の中は、8月の猛暑続きですっかりと乾燥し、土はこれまでになくひび割れが多く、最近のものと思われる縮れた薄茶色の落ち葉が、あちこちに散見された。枯れた大木が根こそぎ倒れていたり、幹が途中から折れていたりと、なんだか凄まじい様相を呈していた。


あんなに毎日のように森を歩き回り、時には朝夕の二回に渡り出向いており、どんな小径も分かっているつもりになっていたが、すっかり様子が変わってしまっていて、戸惑ってしまう。


7月の末に、いつもの森の入り口で鹿の死体が見つかり、同じ週に別の場所で、今度は狐の死体が見つかっていた。猛暑によるものか、人為的なものか、毒をくらったのか、まったく分からずに、取り敢えずは散歩のルーティーンから外してしまっていた。



9月に入って、いつの間にか足がそちらに向いて入ってみたものの、なんだかよそよそしく感じられ、不思議な思いがした。


と、ぱらぱらぱら、と小気味よい音があちこちでしだした。トンカが嬉しそうに音の方に駆け寄って、鼻を大地にこすり付けている。その間も、ばらばらばら、と音がしている。トンカが一つをぱりんと歯で割って食べている。


ドングリか。


一瞬にしてなじみ深い景色になり、愛しい空間となり、笑みがもれる。



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