2023年4月18日火曜日

春爛漫

 






今年の三月は、気温が早朝に氷点下に落ち込むといった、例年になく寒い日が続いていたのに、4月になる頃には急に暖かくなり、気が付いて見ると春爛漫となっていた。


いつもなら、クロッカス、連翹、そして水仙など、先ずは黄色が春の訪れを告げ始め、次第にヒヤシンスが甘美な芳香を運びこみ、チューリップが黄緑色の硬い蕾を持ち始め、それが段々と赤、紫、白、黄と色付き始めると、さくらんぼ、レインクロード、クエッチ、ミラベルといった果樹の枝先が膨らみ、次々に華やかに花を咲かせ、梨、そして、林檎にと主役が移っていくのが常だった。


ところがどうだろう。今年は全てが同時に咲き始めた。ともすると、リラや牡丹まで一気に咲いてしまう勢い。


そして、森では木々が芽吹き、奥まった沼は新緑に包まれていた。さながら、モネの家の蓮池のようではないか。



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2023年4月15日土曜日

警戒心








森の中では鹿、猪、雉を追って、藪だろうが茂みだろうがお構いなしに駆け回るので、トンカは生傷が絶えない。柔らかで、赤ちゃんの肌のようだった肉球も、今では弾力があり、黒々としっかりとしている。自慢の真っ黒な爪も泥が入り込んでいて、ぽっちゃりと手足を水に漬けてあげたら、水がすぐにも真っ黒くなりそう。体のあちこちにかすり傷があり、時々耳がちぎれていたりする。それでも、一晩たてば大抵は治っていて、数日もすれば完治してしまう。


先日の鼻の傷も今ではすっかりなくなり、いつもの黒々とした鼻になっている。


目ヤニが多くなったかな、と思ったのが数日前だった。しばらくすると、左の目から黄色い膿が出るようになった。結膜炎かしら、とも思ったが、恐らくトンカのこと。飛び回っている時に、何かの欠片が目に入ってしまったのだろうと思い、特に獣医さんに連れて行くことはしなかった。洗浄水で何回か洗ってあげたが、次第に何をされるのか気が付いて、ちょっとでも顔を覗こうとすると、逃げるようになってしまった。


これは良くない傾向。大好物のチーズで釣っても、今度はチーズをあげようとすると、テーブルの下に隠れるようになってしまった。あらら。


最終手段はピーナツバター。そう思うも、なんと、瓶を棚から出そうとしただけで、別の部屋で寝ていたのに、気が付くと隣にいる程だったトンカが、寄り付きもしなくなってしまった。そんなに洗浄水を目に流されることが嫌だったのかしら。


困ったと思っていた時に、息子バッタが久々に帰宅。彼に頼んでトンカを抱いてもらい、漸く目の洗浄に成功する。チーズやピーナツバターよりも、そりゃあ息子バッタの抱っこの方が嬉しいよね。


これで少しは警戒心がとれてくれると嬉しいのだが。それよりも、目が治って欲しい 。ね、トンちゃん。



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2023年4月12日水曜日

魅力再発見

 




ニュース解説をヘッドホンで聞きながらバスに揺られていた時に、非可聴という耳慣れない言葉が飛び出してきて、はっとした。解説者は丁寧に「ひかちょう」とは、聴くこと可能に非ず、と漢字で表記すると教えてくれたので、成程と納得することができたが、それ以上に話自体が非常に興味深かった。


レコードとCDで聴く音楽の違いで、レコードの場合は防音対策をしているスタジオでの録音でも、虫の音も入ってしまえば、レコードに針を置く時の音も聞こえてしまう、と。一方、CDの場合はノイズ処理が可能で、非可聴音域は全て切り捨ててしまうので、演奏のみの音を取り出して聴くことができるようになっている、と。


一見、CDの方が優れているように思われる。ところが、実のところ、そうとも言い切れないらしい。これは感覚の問題で非常に主観的なことなので、なんとも言えないが、ニュース解説者はクラシック音楽に造詣深く、スピーカーにも一家言あり、自宅にオーディオルームを持っている程のこだわりを持っている人物である。その解説者が、久しぶりにレコードで音楽を聴いたところ、同じ演奏でもCDの時とは違う感動を覚えた、とのことだった。耳で聴こえていない音域も全て聴くレコードの方が、身体全体で音楽を楽しむことができた、と言う事だろうか。


すごい話ではないか。


確か、実家には今では使われていない居間でレコードプレイヤーが鎮座している筈。母が処理してしまう前に、今度実家に帰った際に聴いてみよう。グレングールドのバッハの演奏がある筈。楽しみが増えた。


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2023年4月10日月曜日

春の日の夢物語






トンカと散歩をしていると、驚くほどの記憶力に圧倒されてしまうことがある。何かに憑かれたかのように藪の中に突進する時は、以前そこで何かを獲得したことがあることが多い。鹿を追いかけた場所でも、尻尾をぴんと立ててじっと様子を窺う。恰も、あの時の鹿にまた会うことを期待しているかのようである。


トンカが神経衰弱をやれば、すごいことになるのかもしれないと思い、先ずは同じ香りをつけたペアのカードを複数セット用意すればよいのかと考えた。と同時に、トンカの場合は記憶ではなく、残り香があるから反応するので、必ずしも稀に見る記憶力の持ち主である必然性はないことに気が付いた。


自分の単純さに笑いが止まらない。親バカとはよく言うが、いやはや。


春の日が見せた夢物語。


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2023年4月8日土曜日

春よ、ようこそ!

 





日本には四季がある、と良く言われるが、フランスでは日照時間の変化の激しさで季節の移り変わりを感じると言えようか。もっと詩的な言い方はないものかと考えてみたが、今のところは名案が浮かばない。年間トータルにしてみたら、地球上どの緯度においても日照時間に変わりはない。緯度が高く、夏に白夜となるのであれば、そこの冬は太陽が全く出てこないと時期もあることになる。


フランスの場合は白夜こそないが、夏時間を採用していることからも、夜の11時まで日が暮れない日々ある。真冬には朝の8時になっても未だ暗いこともある。そして、日々、日の出と日の入りの時間が、あれよあれよと変わっていく。


ほぼ定刻にトンカと早朝散歩に出ているので、この変化が手に取るようにわかるのも面白い。このところ日中暖かいので、あちこちで雑草が随分と育って草原状態になっている。そよ風で葉先がきらめいて、波のように見えるのも、をかし。早朝は霜が降りて細い葉の周りが真っ白になり、それが朝の日差しを浴びてあっという間に緑濃くなり、葉先に小さな雫が宿るのも、をかし。


嗚呼、春よ。ようこそ!


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2023年4月5日水曜日

有明の月

 




ぼんやりまなこで、未だ凍てつく早朝の草原に足を踏み入れた途端、息を思わず呑んでしまった。


丁度木々の間にすっぽりと収まる形で、まあるく輝いているものがある。まさかのお月様。トンカと一緒に地平線が良く見える丘まで行ってみよう。日の出前の藍色の空が次第に明るくなってくる中、月が地平線の向こうに隠れてしまう前にと、急いで走り、丘を一気に駆け上った。


果たして、有明の月は我々のことを待っていてくれて、にんまりと微笑んでいた。


トンちゃん、明日は5時に起きてお月見しようか。え?地平線に隠れる一瞬が切なくも美しいって?そうかなあ。ねえ、明日、ちょっと早めに起きて散歩に行こうよ。ね。


 


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2023年4月2日日曜日

花より団子のお花見会

 




いつもなら大地ではクロッカス、水仙、ヒアシンス、チューリップの順で咲き始め、次第に連翹が黄金に輝き出すと、樹木の花芽がぷっくらとし出して、さくらんぼ、ミラベル、クエッチがそれぞれに純白の花を咲かせるのだが、ここにきて駆け足で暖かくなったものだから、一斉にすべてが咲き誇っている。


花が散ってしまう前にと、慌ててトンカの友人師匠と連絡し合い、我が家の庭でお花見をすることにした。あいにく我が家はトンカと私だけだったが、彼女の家族は大型プードルとスピッツを飼っていて、バッタ達よりは二、三年年下のお子さん二人がいる。皆さんお揃いでどうぞと誘ったのだが、当日旦那さんは出張で不在、そして恐らく子供達は遠慮すると思うわ、とのことだった。


天気予報はやっぱり当てにならず、良い日を選んだはずなのに当日は肌寒く、とてもではないが外でピクニックをするのは厳しい天候となってしまった。それでも、お花見決行で結構よね、と確認し合った。せっかくだけど、家の中で食べましょうよ、と。食事会は人数が大勢いた方が楽しいと相場が決まっている。ご近所の散歩仲間に声を掛け、彼女がデザートを作って持ってきてくれることになっていた。


「本当に皆でお邪魔していいのかしら。」


友人師匠からそんなメッセージが届いた。勿論よ、嬉しいわ!と返事をしながら、「皆」とは、子供たちのことなのか、犬君たちのことなのか、と疑問に思った。が、その時はその時。茶巾寿司を作ろうと準備をしていたし、海老の殻でとった出汁はたっぷり出来ていたし、子供達が来てくれればトンカも大喜びする。


果たして。トンカが興奮し出したので玄関に出てみると、おお、大型プードル君、ちびっこスピッツ君を引き連れ、お子さんたちも一緒に、友人一家がお揃いでやって来てくれた。「息子の友達も呼んじゃったのよ。いいよね。」というので、最初は犬君の友達かと勘違いをしてしまったが、高校生の友達のことであった。大笑い。勿論よ!




トンカは訓練をした甲斐なく、興奮して飛び回って皆に挨拶をしている。犬君たちは外で遊んでもらった方が落ち着くかもしれない、となったが、せっかくなのでと皆で外でさくらんぼの花を愛でることにした。ひとしきり遊びまわったり、おしゃべりをして、お腹もすいてきたし、と家に戻り、スープを温め直していると「あら!トンカが!」と、友人のお嬢さんが素っ頓狂な声を上げる。何事かとサロンに行けば、なんと、一つだけ格好が悪くできてしまった茶巾寿司をお皿に分けて置いておいたところ、それをぺろりと食べてしまった後だった。


皆大笑いをしているが、ちょっと、ちょっと、トン助よ。それはないでしょう。でもさあ、ねえ。美味しかった?寿司飯には、椎茸、人参、さやいんげん、海老が入っていたが、卵焼きはもちろんのこと、お米一粒も残さずに、食べてしまったのだから、美味しかったのだろう。もうちょっと味わって欲しかったけど、いや、そこじゃないよね。いやはや。


友人はお稲荷さん、細巻き、唐揚げをたくさん作って、お重に入れて持ってきてくれた。ジューシーなお稲荷さんは大好物。嗚呼、なんて幸せなのだろう。そして圧巻は散歩の友人のデザート。日本産のサツマイモをマルシェで見つけたとかで、サツマイモのシフォンケーキを焼いてきてくれたのだが、これが得も言われぬ美味しさ。まろやかで、軽くて、優しい味わいで、一口ごとに唸ってしまった。もう一つは、苺大福。可愛らしい赤い苺がまっしろな大福からのぞいていて、見て楽しみ、味わって楽しむ、素晴らしい出来。


花より団子とはよく言ったもので、おしゃべりと美味しいお食事に夢中になり、あっという間の楽しいひと時に。どうもありがとう!今度はもうちょっと太陽が出ていて、暖かい時に外でにぎやかにやろうね。


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2023年4月1日土曜日

旅立ちの日に

 





ネコヤナギが好きだった。あのビロードの艶やかな房が、なんの変哲もない枝からにょきりと出てくることが、摩訶不思議でならなかった。以前、道路の脇のあぜ道で、自由気ままに咲き誇っているネコヤナギの枝を失敬してきたことがある。庭の片隅に植えてみたが、残念なことに根付かなかった。


あれから、何度も同じ場所に行くのだが、刈り取られてしまったのか、ネコヤナギの姿を見かけることはなかった。


それが先日、長女バッタとトンカと午後の散歩を楽しんでいた際、小川のほとりに、それらしき枝を発見した。枝には幾つも、尖った芽の先が見え隠れし、銀色に輝いていた。ネコヤナギの季節にしては、ちょっと遅すぎはしないかと思ったが、今年は急に寒くなったり、暖かくなったり、そうかと思うと、また寒さがぶり返したりと、季節感が分かりにくい日々が続いていた。出遅れた枝があっても、いいではないか。


これから化けるぞとの生命感にあふれる枝を、申し訳ない、失敬しますよ、と手折る。トンカが眩しそうに見上げている。ふふふ。大切に持ち帰って、瓶に差して置いた。


毎日、膨らみの変化を楽しみながら、水を変えていたのだが、奇しくも長女バッタがフィレンツェに旅立つ朝、芽がぱっと出ていた。それはネコヤナギの房などではなく、黄緑色のやわらかな葉となるようだった。拍子抜けはしたが、却って愛おしく思われたことも事実。


長女バッタの旅立ちの日ということも、いいではないか。生命力あふれる、逞しい、その身体で、新たな挑戦に一人旅立っていく貴女。皆の期待なんか、かっ飛ばすぐらいの勢いで、大いに化けておくれ!


いってらっしゃい


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