2014年6月28日土曜日

喪明け



外は思いの外あたたかく
雨の湿りで草葉の香りがしっとりと立ち込めている。

肺の奥まであまやかな緑の香りで満たす。
今朝までのわだかまりが嘘のように消えてしまっていた。

雨の音を聞きながら、アルトの低音を体全体に振動させたからか、
一人で航空券とパスポートを持って旅立った息子バッタの元気な声を聞いたからか、
思いの丈を書き綴って送ってしまったからか、
新たな関係が築かれようとしているからか、
ともかくも、
これで本当に喪が明ける。

会う約束をしていた友人が風邪気味とのこと。
別の友人に声を掛けていたが、返事はない。

いいじゃないか。
今夜はPouilly Fusséを冷やそう。
チーズ売り場に紛れ込んでいた鯛をカートに入れてしまっていた。それを蒸してご馳走にしよう。

週末なのに申し訳ない、と仕事が舞い込んできている。
そうこなくっちゃ。
きめ細かな雨が静かに降り続いている。

しっとりと甘やかな草葉の香りがゆるやかに立ち込める。





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2014年6月24日火曜日

誘い







早朝の軽やかなステップとは対照的に
飽和状態の頭を抱え
一番近いながらも、遠くにあるバス停から
丘を登って歩みゆけば、
すっかり伸び放題の藤の蔓がおいでおいでをし
緑の陰を作っている。

その中からすくっと枝を伸ばし、
凛として香気を放つ蕾。

そっと唇を寄せる。




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2014年6月22日日曜日

紫陽花






異国の地に足を踏み入れ、気が付くと早二十年以上の年月が流れている。
その間、何十回となく聞かされた問い、「日本には帰らないの?」

異国の地で結婚をした時、
幼いバッタ達を抱えて一人になった時、
新たな就職先を求めていた時、
或いは、単なる会話の流れの中で。
常に周りから発せられてきた問い。

その度に、久々に降り立つ時の、清潔でまばゆいほどの空港や地下鉄を思い出す一方で、
あの朝の満員電車、夏の熱帯夜の記憶が重く圧し掛かってきたものである。

バッタ達が幼い時には、ワーキングウーマンには決して楽ではない環境を思い、
バッタ達の教育環境を懸念し、更には、我が身の就職先のことを思った。

バッタ達がティーンとなった今でも、懸念材料の内容こそ違え、数が減ることはない。

そうして、いつも同じような紋切り型の返事をしながら、
実のところ、その質問自体がナンセンスなことにすっかり気が付いている。

ひっそりと庭の隅で、色付き始めた紫陽花を見出した時のように。







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2014年6月17日火曜日

和解



他の人の話ばかりじゃなくって、偶にはこっちの話も聞いてくれなきゃ。

何言っているのよ。いつだって話は聞いているわよ。
アドヴァイス通りに企画書は作成したし、抱負も目標も立てて、それをちゃんと聞いてもらっていたよね。ちゃんと素直に話を聞いてきたわよ。

そんなことないよ。ちっとも聞く耳を持たなかったじゃないか。
随分前に意見を聞かれたけど、その時の返事を覚えている?SMSでの交信だったけど。

ちょっと待って。
ドキリ、とする。それって去年の話じゃない。
確かに、あの時の答えは覚えている。そう、確かに否定的な意見だった。
期待した返答じゃないことに気が抜けて、応援してくれないのかとの気持ちの方が勝ってしまっていた。誰にでもできることじゃない。それ程チャレンジングなこと。でも、私ならって思ってしまっていた。

そう、確かに意見を求めながら、その意見を受け入れてはいなかった。

すごく辛かったよ。君の立場になって考え、そして、冷静に状況を判断し、かつ、自分の思いと戦う。


何が原因がちっとも分からずにすれ違っていた心が一つになる。

見えていなかったのは私。
心を研ぎ澄ませて聞こうとしなかったのも私。

繋いだ手から、身体中の60兆個の細胞に歓喜が伝わる。






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2014年6月15日日曜日

末娘バッタからのお願い







ママ、明日の夜、ケーキを焼いて欲しいの。

末娘バッタがしおらしく言ってくる。学年末のお楽しみ会の担当はドリンクだった筈。友達同士で役割を交換したのだろうか。

話を聞いてみると、どうやら、近所の仲良しのお友達のお誕生日に、サプライズで友達数名とケーキやお菓子を持ち寄って押し掛けて行くらしい。ちゃんと友人のご両親には電話で了解をとったとか。手回しも良い。いつも張り切ってケーキを焼くのに、今回はママに頼むとはどうしたのだろう。それでも、卵、生クリーム、飾りの苺やフランボワーズは自分で買って揃えておくと言う。

それなら、とシフォンケーキを焼くことにする。バナナのしっとりとした味わいなのに、ふわりと軽いシフォンケーキ。そこに真っ白に固く泡立てた生クリームを塗って苺やフランボワーズを飾ろう。ポイントに、庭のミントの葉を散らそうか。

そうか。
先日、末娘バッタが遊びに来た友達とシフォンケーキを焼いたのはいいが、型をひっくり返して冷やさずに、そのままの格好で冷やしたので、せっかくのふんわりがすっかりぺしゃんこになってしまっていた。ひょっとしたら、卵黄の撹拌も、とろりと白くなって、字が書ける程まで十分にしなかったのではないかと思われた。焼き加減も、もう少し時間が長くても良かったのではないか。そう思いつつも、せっかく意気揚々と焼き、得意顔の女の子たちには直接伝えはしなかった。それでも、末娘バッタは自分たちが作ったケーキとママがいつも作るケーキの違いを感じたのかもしれない。同じレシピなのに、何かが違う、と。

ふふん。
可愛い子達。そうよ、まだまだ、経験を積まないと、ね。

実に、一緒にケーキを作った友達が、そのサプライズパーティーの相手。それなら余計、とっておきの美味しいバースデーケーキにしないと。

バナナを潰す役割を買って出た末娘バッタ。未だブツブツが残っているところで、作業を終えている。ここが勝負なのよ。味の違いが出るのよ、とばかりに、丁寧にとろりとなるまで潰させる。卵黄も、もったりと白くなるまで撹拌させていると、前回もちゃんとそこまで撹拌させたと言ってくる。それは偉いよ、と褒めながら、卵の黄身なのに、卵白のようにふんわりするって卵の力は凄いよね、と言えば、卵黄なのかと驚いている。彼女、卵白を泡立てた結果と思ったらしい。メレンゲとは違うもったり感と淡いクリーム色。そして今度はメレンゲをしっかりと固く、それでもふんわり感を維持させつつ泡立てる。ここまで出来れば、もう八割は成功したようなもの。

ケーキ作りって簡単なようで、実は細かいところでの詰めが、経験があるのとないのとでの差になって出てくるのよね、と改めて思う。

バッタ達もしっかり一緒に見ているようで、実際に自分だけで作るとなると勝手が違うのだろう。

まだまだママの出番があることに、ちょっと嬉しくなりながら、翌朝早く生クリームで飾り付け。飾り付けぐらい、末娘バッタが担当しないかと思うも、こちらもママ任せ。でも、このサプライズパーティーを友達と企画し、ちゃんと先方のご両親にも電話を入れて了解を取るなんてアレンジをしているのだから、ママの出番がなくなる日も近いか。。。

ハッピーバースデー。




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2014年6月12日木曜日

母の日







母の日は国によって違う。
ずっと昔、バッタ達のパパが日本にいた時、母の日だと言ったら大急ぎでフランスの母親に電話をして、母親から冷たく、母の日なんかじゃないと言われて電話を切られてしょげていたっけ。あんまりしょげていたので、もう一度、話がしたいからって電話をするように勧めたことを思い出す。長時間の電話の後で嬉しそうにしていた様子をみて、異文化での生活はそんなに簡単なものではなく、郷愁を覚えるものなのだろうな、と、こちらまで哀しく思ってしまったこともあった。いや、それよりも、新聞『Le monde』を大切そうに読み返していた姿が印象的であったか。異国での母国語への郷愁、愛惜の情。

話が思わず逸れてしまったが、壁に掛かっているオーストラリアのカレンダーの母の日も。これまた日本でいうところの母の日、そして、フランスの母の日と違う。日本への母へは、それでも忘れずに、何か贈るか電話をすることにしていたが、遂に今年は忘れてしまっていた。

一方、バッタ達は、学校で何かを作ってくる年齢はすっかり過ぎてしまっているが、彼らにとっては何だか重要な日のようで、パパの週末にぶつかることがあれば、長女バッタが代表でパパに電話をして、堂々と日程の交渉をしてしまう。そして、幼い時から、どうやって手に入れるのか、大きな花束やプレゼントを用意してくれていた。今年は、確か、試験とぶつかったのか、なんだか忘れてしまったが、どうやら母の日を勝手にバッタ達が決めてしまっていた。

そして、ある日曜日。いつものように、鳥の囀りで起き始めると、驚いたことにバッタ達も起き始める。オーブンが温められ、包丁がリズミカルに音を奏で始める。優雅な朝は、フレッシュなお水、そして、珈琲、などと日頃嘯いているので、遠慮がちに長女バッタが聞いてくる。朝ご飯はいつにする、と。ポーチドエッグが品よく皿に盛られている。息子バッタもキッチンでなんだかそわそわしている。

ママ、いつもありがとう。

そういって、バッタ達三人が揃って牡丹の花束をプレゼントしてくれる。魔法瓶と一緒に。

甘い香りに包まれ、なんだか不思議な気分。
朝食の後片付けは、息子バッタがキッチンに残り、食器洗い。

母の日。
サラダ記念日じゃないけど、バッタ達が勝手に決めてしまった今年の母の日。
ありがとう。


これまでは 試験イベント 暇がなし だから今日こそ 家の母の日



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2014年6月8日日曜日

鼓舞






そっと声に出してみる。

秘めた思いが言葉になって
宙に浮かび
天空に響き渡る。

体中の細胞が共鳴し
力が漲り
高揚感で舞い上がる。

よし、いける。

いつだって、スタート地点。






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