2011年11月30日水曜日

漆黒の空に浮かぶ、ぷっくらとした三日月に


バッタ3匹の顔が階段上に並ぶ。

未だ朝の5時。

珍しく泊りがけの出張と思ったら、息子バッタが咳がひどく、前日にダウン。
もう幼くはないが、咳で辛そうにしていて、熱で真っ赤な完熟トマトの彼を置いて家を空けることは、辛い。

タイガーバームを首と胸に塗り、肩を揉んでやり、背中をさする。

それでも、夜中に何度も咳がバッタ部屋から響く。
これでは、末娘バッタがやられるな、と案じる。

そうして、タイガーバームの香りに満ち満ちた我が家を後にする。

夕方、ミーティングの終了時に2回の着信に気がつく。

慌てて電話をすると息子バッタ。
末娘バッタが寝込んでいるという。そこで、自分の咳止めシロップと解熱剤を飲ませ、熱ピタ君を頭に貼ってやったが、他に何かすることがあるか、と聞いてくる。

彼自身は、はっきりとした声。
まだ咳はするけど、元気になったと言っている。
なんだか、涙が出そうになる。

ホットレモンを作ってあげてね、と伝え、ありがとう、と電話を切る。

きっと、タイガーバームを首と胸に塗ってあげたに違いない。

遅く帰ってきた長女バッタが、慌てておかゆを作ってあげるのだろう。
特別だからと、とっておきの梅干を出して。

満天の星空のようなイルミネーションの下を歩きながら、
先ほど、遠くの漆黒の空に浮かんでいた、ぷっくらとした三日月に思いを馳せる。

バッタ達をやさしい光で見守っていてくれるであろう、その三日月に願いを込めて。


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不思議な夢

不思議な夢を見る。

子供の頃に飼っていたコリー犬のサムが、
あの細長い鼻を突きつけて、
アーモンドの様なつぶらな瞳で訴える。

「ボクがいるじゃない。」

私は必死で答えている。
そう、恋人は貴方だけ。

首のあたりを、彼が大好きなやり方で手でカミカミしてあげる。

それでも、彼のアーモンドの瞳は睨んでいる。

サム、、、だって、、、あれは、、、。

そう、あれは、先日のこと。
友人の飼っている愛らしい歩夢(ぽむ)を膝に抱えながら、
彼女がこの金曜に避妊手術をするとの、ちょっと衝撃的な話を聞いていた。

友人宅はアパートで一匹がやっと。しかも、これからスイスに駐在する可能性も高いらしい。一匹でさえバカンス中の預かり手を捜すことが大変なのに、ましてや、5匹の赤ちゃん誕生ともなれば、どうするのだ、と旦那がもっともらしいことを述べ、子供達の非難の声や、友人の悶々たる悩みを斬ってしまったらしい。

きっと友人が何かに押されて、愛犬に産む喜びを体験させることにでもしたら、そして、その赤ちゃん犬を目の当たりにしたら、きっとバッタ達と一緒にとろけて、その場で、腕に押し抱いて引き受けることを約束してしまうであろう。

勿論、犬を飼うことでの弊害、障害はある。
犬と子供を一緒に語ることが許されるのであれば、子供とて同じ。
大変さを考えていたら、我が家にバッタは3匹も揃わなかったであろう。

そんなこんなを考えていた矢先の夢での久々のサムとの邂逅。

ぎくり、とする。
ちょうど、今の末娘バッタの頃に我が家にやってきたコリーの子犬。
中学の夏休みの目標として毎朝の犬の散歩を掲げ、朝4時、未だ空に星が瞬く中、どうやら寝ていたらしいサムを起こし、散歩をする。いつもは喜び走る彼が、ぽとんぽとん、と歩いて私の後をついてくる。調子が悪いのか、と思いつつも、取り敢えずはいつものコースを終え、家に戻る。その夜、父が、サムがくしゃみをして、風邪を引いたらしいと告げる。え?朝の散歩がいけなかったのかな。私の話に家族全員が大笑い。。。勿論、夏休みの目標の一つは、初日で断念せざるを得ないことになる。

フランスからクリスマス休みで戻ってきた年。
どうも調子が悪いと母から告げられる。サムは元気なく、毛布の上で寝そべっている。いや、横たわっている。ストローでミルクを飲ませてあげるが、なんだか、飲んだのか、飲まなかったのか。そうして、次の日の朝、同じ格好で横たわりながら、静かに独りで散歩に出てしまった。

私の帰りを待っていたのだろうか。
小、中、高と成長する私たちと一緒に、家族の一員で過ごしたサム。
大学に行ってしまうと、そんなに遊んであげられなかったし、フランスに渡ってしまうとなおさらのこと。
生活の広がりに、彼を連れて行ってやれなかった。

また、同じことをしなさんなよ。
そうサムが言いに来たのだろうか。

サムのぬくもりを感じながら目が覚める。




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2011年11月29日火曜日

早朝のメトロの中で



朝一の社外のミーティング。
社に向かう人の流れに逆らって、メトロに向かう。

乗り換えの駅と、目的地までの道をおさらいしながら、
これからのミーティングに備え、様々な思いをめぐらす。

それと同時に、幾つかのメールを斜め読み。

気がつくと、SMS

相手の名前とメッセージが表示されている。

今朝の、私からのメッセージへの返事。

軽い挨拶の言葉。
返事をもらった嬉しさと、ちょっぴり期待外れの思いが交錯する。

指が勝手にクリックして、
全文が現れる。

軽い挨拶の後に、『。。。』3つのポイントが余韻を持って続いており、その後に思いがけぬ一言。

電車の震動に身を任せ、目を閉じる。




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2011年11月28日月曜日

ゆっくり、たっぷり眠るには

息つく暇のない過密スケジュールの週末。
日曜の夜8時に、珍しくバッタ達は3匹ともベッドに。

何故か慌てて、こちらまでもベッドに入ってしまう。
このところ、どうも寝つきが悪く、眠っても途中で何度も目が覚めてしまう。
心配事があるわけではないが、目が覚めれば、気になることを考え始め、気がつくとすっかり目が覚めてしまっていることが多い。

これでは、夜中に泣き出す赤子と一緒ではないか。

そうして、ひょっとしたら、と思い至る。
先日、突然高熱が出て以来、寒さに気をつけている。毛布を掛け、パジャマ、トレーナー、靴下。。。暑過ぎるのではあるまいか。

幼い頃、父が中国土産といって、パンダの敷物を買ってきてくれたことを思い出した。勿論兎の毛だろうが、当時、本物のパンダだと信じて疑わず、一緒に寝ると大騒ぎし、自分のベッドに勝手に持ち込んでしまった。

そうしたら、どうしても夜、眠ることが出来ない。中国産パンダの特殊な匂いが眠りを妨げるのか?夜はどんどん更けていく。きょうだい達のやすらかな寝息が聞こえるほど、焦ってくる。焦れば焦るほど眠れない!うん、うん奮闘していると、母が部屋に入ってきてくれた。

眠れないの。

多分ベソをかいていたと思う。

母は私を見て、当たり前よ!パンダと一緒に寝ていたの?とびっくりして、さっさと取り上げてしまった。

パンダを取り上げられた悲しい気持ちよりも、眠れずに独り悲しく泣きべそをかいていたところを母に見つけてもらった安堵の方が勝った。そうして、すぐに眠りの世界に入っていけた。

ひょっとしたら。
毛布を取ってみる。
トレーナーを脱ぎ、靴下も脱いでみる。

そうして、あっという間に眠りの世界に入り込み、その夜は一度も起きずに翌朝を迎える。。。

あの当時から、実はそんなに成長していないのか。。。
笑みがもれる。
なんだか、パンダの敷物と一緒に寝ていた自分が甦る。
ばっかだね。
よかったね。
さあ、これからは、ゆっくりたっぷり眠るんだよ。




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2011年11月25日金曜日

マッチ売りの少女


新しいマネジメントとの飲み会。
そんな触れ込みで半ば有無を言わせない誘いを受け、
久しぶりに夜が訪れるちょっと手前のパリを歩く。

両側にぴっちりと隙間なく路上駐車されている細い道路が入り組み、
絶え間なく響くクラクションと排気ガスによって、
底冷えのする寒さと、都会の熱気が混じっている。

オシャレな外套を着込み、ママに手を引かれている子供。
バゲットを買おうと慌ててパン屋に駆け込む男性。
今晩の一本か、或いは友人宅への手土産か。ワイン屋の賑わい。
帰宅前の一杯か、早めの夕食か。暖かな光を放つブラッスリーで、メニュー片手に話し込む人々。

控え目ながら、街路樹には銀の光が灯り、
おもちゃ屋は出番とばかりに愉快な仲間達がショーウインドウに白い粉を纏って並んでいる。

10年前、この道を、やはり我が子の手を引いて歩いた、その懐かしい思いに囚われ、はっとする。

パリはちっとも変わっていない。

向こうの隅に、マッチ売りの少女が佇んでいる気さえしてきてしまう。


いや、私がマッチ売りの少女であったのか。 





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2011年11月24日木曜日

サーモンピンクの照れ笑い



いつもは白雪のような肌なのに、
頬が上気したかのように、うっすらピンクの長女バッタ。

陸上をしているので、血行が良くなったのか。

まさか、熱でも、と思っていると、
どうも前回友達とショッピングして、チークを購入したらしい。

肌が敏感で、すぐにかぶれてしまうのに。。。

その辺は、ちゃんと研究して、クラランスにしたという。

こういった分野での向学心は旺盛なのね、と感心。


ふと、我が頬を見ると、右上に一筋のサーモンピンク。

一瞬の戸惑い。
そして、納得の笑み。

ゆっくりと指でなぞり、落とす。
サーモンピンクの照れ笑いをしながら。





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2011年11月22日火曜日

群青の空に引っ掻き傷の月

街路灯のオレンジ色が見えないほど
今朝の霧は濃い

チョコレート色のドアを開いて外に出ると
濃厚な空気が襲ってくる

こんな日の運転は危険を伴うから、
皆が安全運転

交通事故は、好天気で見晴らしの良い場所で起こる頻度が高いとの調査結果もあるぐらい。

案の定、ミルクの中で赤のテールランプが連なっている。

漸くトンネルに差し掛かると、
誰もがこれまでの遅れを取り戻すかの様に猛スピード。

スピードメーターを睨みながらも、流れについていく。

トンネルを抜けると、
群青色の空に引っ掻き傷の月




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2011年11月21日月曜日

炭の子バッタ達



久々に長女バッタに、精神が甘ったれている、と発破をかける。
志が低い、やる気がない、と畳み掛ける。
発した言葉で余計興奮し、激怒。

と、まるで千と千尋の神隠しに出てくる、釜爺のところで働く炭の子たちのように、息子バッタと末娘バッタがしゃわしゃわしゃわっと出てきて、さっさと周りを片付け始め、また、しゃわしゃわしゃわっと仲良くバイオリンの練習を始める。

こんな時、バッタ達が3匹いて良かったとつくづく思う。

息子バッタや末娘バッタにも聞かせてあげたい説教ではあったが、むしろ彼らの動きに救われる。

そうして、炭の子よろしく、しゃわしゃわしゃわと出てきて、一人一人、ママ、お休みなさい、とぺこりと頭を下げて去って行く。

最近喧嘩が絶えない二匹ながら、この結託の良さはなんなんだろう。
ママの怒りの火の粉が自分達にも及ばないようにと、素早い身のこなし。
痛く感心してしまう。

活火山はこうして休火山に戻り、
長女バッタの心を抉ることなく、抉ってしまったことで私自身が後悔することもなく、
スムーズに話は進み、いたく建設的な展開となる。

炭の子バッタ達に感謝せねば。
夢の世界を彷徨う彼らに、お休みのビズ。




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2011年11月20日日曜日

落ち葉拾い

このところ
風が全く無い状態なのか、
子猫さえも通らないのか、
庭の木々の下に積もった落ち葉は一向に減らず、
同じ場所を同じように飾っている。

緩やかな太陽を浴びて、
のんびりと、それでもしっかりと、
落ち葉を袋に詰めていくと、
思った以上の量があって、25Lの大きな袋がたちまち4つも出来てしまう。

お昼に貰った電話のことを考えていた。
明らかに電話の主は私のことを思って電話をしてきてくれる。
ただ、私の決意を誉めそやしたり、激励するといったものではなく、
逆に、私の短気で突発的で、負けん気な性格を熟知しているその友は、
私の決断が招く結果を心配し、正気なのかと言ってくる。

最近は、どうも人生、なんでもありだと思うに到っている。
どうあがいても抵抗できない「何か」が働き、
気がつくと、当初の思惑とは全く違った展開になっていることがほとんど。

で、あるならば、
その流れに身を任せてしまうことも、人生かな、と。

いつ終わるやしれぬ人生なのだし、
保身に回らずに、もっと汗を流しても良いのかな、と。

流れに身を任せることと、汗を流すことは、一見相反することのようで、その実、私の中では合致している。

理想のシナリオを掲げ、奮闘するが、その結果に心乱れることなく、こんなこともありかな、と流れを受け止めること。そんな風に思っている。

ごっそりとした枯葉を腕一杯に抱き込みながら、土の香りと、枯れ葉の香りを胸に吸い込む。

いつしか、額に汗。

さっきは、お節介な電話だと、ちょっと冷たい反応をしてしまったが、心配してくれる友人に、丁寧なお礼のメールを書こう。そうして、素直に、応援して欲しいことを伝えよう。

そう思いながら、汗を拭う。


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2011年11月19日土曜日

ズブロッカで乾杯!


幼い子供達が、ちょっと得意そうに、或いは恥らって、一張羅を着て演奏し、その度に会場が拍手に包まれる。

アンリ4世が建設し、ルイ14世がベルサイユ宮殿建設までは、住居にしていたと言うシャトーでのソロコンサート。

小休憩の時間に庭に出ると、夕日が木々の合間に燃えて見える。

今週末はパパとの週末だし、久しぶりにバッタ達の演奏を聴いて貰おうと予め誘っておいた。彼がいることで、私が精神的にダメージを受けようと、バッタ達の演奏を聴いて欲しかった。きっと、バッタ達の父親であることを誇りに思うであろう。彼らの演奏に心揺さぶられるであろう、と確信していた。

相変わらずの無頓着さで、休憩時間に嬉しそうに話に来た。

彼にしたら、私たちしか知っている人はいない世界になっているし、挨拶にくるのは当然と思っているのであろう。そうして、そのことに、そんなに動揺していない自分に気がつき、嬉しくもあった。

長女バッタが上手にパパとの会話を楽しんでいる間に、末娘バッタが甘えたように、トイレに連れて行って欲しいとせがむ。渡りに船と、その場を自然に離れる。途中、息子バッタのチョコレートケーキを一かけ失敬する。

栄養を取らねば。
朝から学校の総会やら、何やらで小忙しくしたきた。
練習は十分している。演奏をリードするのは私。間違っても、ピアノに合わせようとせずに、自分のペースで弾く、と決めていた。

そうして、外の空気をと思って出た庭で、夕日に出会う。

東山魁夷ではないが、夕日がその時私を見つめ、私が夕日を見つめる。その一瞬、エネルギーが心の奥底からゆっくりと湧き上がった来る。

果たして、Seitzのコンチェルト2番、第3楽章を思い切って弾き上げることができた。
小舟の川下りのところは、岩に乗り上げたり、転覆しそうになるが、まあなんとか収まる。最後に弓を高く上げてフィニッシュ。
大喝采。

席に戻ると皆が満顔の笑み。席に崩れ落ちる程、ようやくリラックスできる。
そうして、末娘バッタのヴィヴァルディが始まる。

コンチェルトニ短調第3楽章。

透明に響き渡る音に先ず驚く。そして、しっかりとアクセントがついている。

先週、一回も練習を聞いてあげていないことに思い至る。何度も何度もCDを聴いて練習したと本人が自己申告していた。

涙が出そうになる。

正直、この曲は彼女にとって背伸びし過ぎではないか、と思っていた。

1歳になっても歩こうとせず、1歳半になって、突然走り始めた末娘バッタ。上の子たち2人の話ばかりを私が聞いてしまうからか、耳が悪いのかと疑う程、大きな声で話す末娘バッタ。

彼女は赤ちゃんの時も幼い時も、彼女の為の音楽も、お話も聞かせたあげていなかった。今だって、上の子達と英語で話をして盛り上がること暫し。

末っ子だからって、甘えられるという特典は、我が家では年齢差が少ない為か、そうないかもしれない。

堂々と弾き上げる彼女の姿は、親として涙なしには見られない。

演奏中に笑みを絶やさないことも、素晴らしいと思ってしまう。会場が割れんばかりの拍手を頂戴する。私も惜しみなく拍手を送る。

そして、息子バッタ。

VeraciniGigue

知っている。今朝も誰よりも早く起きて練習をしていたこと。サッカーの練習が終わってからも、さっさとシャワーを浴びて、気になる部分を練習していたこと。

濁る音を気にしてか、いつもより若干パワーに欠ける気がするが、その代わり粒が揃った音がキラキラと輝かんばかり。リズミカルで思わず体が弾んでしまう。

ふと気がつくと、一番前でパパがビデオを取っている。

馬鹿親丸出し。

私は、いつの頃からか、バッタ達の演奏に集中できないからと、カメラを演奏会に持って行くことを止めてしまっていた。良い写真を撮ろうなんてスケベ心を起こしたら、もう演奏には集中できない。今は、私自身が演奏することからも、最早、撮影は不可能となってしまっている。

そうして、長女バッタのWeberCountry Dance

華やかで響く音がサロン一杯に広がる。
自信を取り戻してくれて、本当に良かったと嬉しくなる。彼女も嬉しそうに、優雅に弾いている。ちょっと音を外すが、そんなことは問題ではないと思えるほどの演奏。

あの響く音が出なくて、どんなに悲しく辛い思いをしてきたか。

今はきっと、練習そのものも楽しいに違いない。

心配そうな顔で戻ってきた彼女に、最高だったと告げると破顔一笑。

その後、大騒ぎで会場を片付け、バッタ達の荷物をパパの車に積む。

バッタ達も一生懸命、ママ上手だったよ、今までで最高の演奏だったね、と言ってくれる。

そうして、
今、バッタ達と別れて家に帰り、一人、今日の演奏を振り返る。

勝利の杯を一緒に上げられたら、どんなに嬉しいか。

まあ、これも人生。
それでも気になるから電話をして、バッタ達一人一人を褒めてあげる。

息子バッタが、思うように音が出なかったと嘆いている。

とっても良かったよ。すごくリズムカルでアクセントも上手だったよ、と言ってあげる。

むぎゅっと抱きしめてあげたくなる。

末娘バッタが、何度も何度も、ママ上手だったよ、素敵だったよ、と言ってくれる。

褒められることが、次へのステップに繋がることを十分熟知しているかのように。

では、zubrowkaでバッタ家族に乾杯としよう!



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2011年11月18日金曜日

ボンボヤージュ


5年間の知的刺激溢れ、人情味あるこの会社での仕事に、終止符を打つ日がやって参りました。新たなチャレンジに向け旅立ちます。」

最近、この手のメールが毎日の様に届く。

櫛の歯が欠けるように、皆、辞めて行く。

昨夜の同僚、もとい、元同僚の送別会。想像通り驚くほどの人が彼の新たな門出を祝い、激励する為に集ったが、昔の同僚にも声がかけられてあったらしく、懐かしい顔が少なくなかった。

ボージョレで乾杯しながら、古株の同僚と、何故皆辞めていくのか、との話になる。
彼曰く、新しくやってきたマネジメントのメッセージが心に届かない。俺に一体いて活躍して欲しいのか、なんなのか、全く分からない。だから、皆、不安にかられ、他にチャンスを求めて出て行くのだ、と。

マネジメントの恐ろしい本音が垣間見えた気がした。

自然縮小。

合併後の会社で、大幅な人員削減が出来るほどフランスのシステムは企業に甘くは無い。そして角が立つ。

大体、二社は相互補完関係にあり、双方の良いところを尊重し合い、仲良くやっていく、などは絵に描いた餅。一つの会社であるなら、トップは一人。マネジメントも1+1=2と膨らませるわけにもいかないし、決定・判断のプロセスが劣ることになるだけ。

で、あるなら、当然、買収された側のマネジメントは一掃されるであろう。

心あるもの、志高きものは、立ち止まって考えるに違いない。
若手は、新たなマネジメントの下で、闘争心を掻きたてられ、チャレンジ精神旺盛に奮闘することを決意するのであろう。

翻って、古株となった私。
最早会社の壁と化していたが、新たなマネジメントになり、壁も刷新か。

求められている以上、誠心誠意で尽くすタイプと自己分析しているが、さて、どうか。

とにかく、今は、新たに出航する人々の未来に幸多からんことを祈願せずにはいられない。

ボンボヤージュ。



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2011年11月17日木曜日

ラッシュアワー


夕闇迫るラッシュアワー

一日中駐車場でゆるんでいた車内の空気が
急速に冷え込む。

鉄の塊の芯の温度が
ハンドルから伝わる。
そこに置かれた手の爪は、
青紫になっていようか。

助手席から手が伸びる。

ギアチェンジを必要としない間だけ、
手と手の触れ合い。
指と指の絡み合い。
                         
突然前が開け、
慌ててギアチェンジ。

そこに置かれた手の爪は、
ピンク色になっていようか。

夜の帳が下りた中、
アクセルをそっと踏む。




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小舟の川下り


ちょっと太目の焦げ茶色の木製。

フルサイズのように長過ぎず、
バイオリン向けよりも重いもの。

「今日一日お貸ししますから、試してみてください。」

ルチエのサビーンはくりくりとしたすみれ色の瞳を一層丸くさせ、他の品も幾つか見せてくれる。

来年1月の全国大会の練習があるからと、今年のソロのコンサートが急遽今度の土曜に決まったのが先日。その話を聞いて、思わず声を上げてしまった私の顔を、パパの週末でスケジュールが合わないのかと、心配そうに先生のマリが覗き込む。

準備の時間が余りないから、との私の返事に、マリは大笑い。

バッタ達はそれぞれに今仕上がったばかりの曲を弾くらしい。
私は進行形のSeitzconcerto No.2 第3楽章。

今年の夏、末娘バッタがコンサートで弾いた曲。

彼女は、あんなに軽々と弾いていたのに、中間の小舟が川下りをしているようなリズミカルな部分は透明な音が出ない。

その後のスタッカート。何度繰り返しても、躓く。気ばかり逸って、左手と右手が合っていない。

重音。二つの弦を弾く時に、何故か力が入り過ぎてしまう。

コンサートなので、ピアノの演奏が入る。
大切なことだけど、間違ってしまっても、音楽は止まることなく、弾き上げねばならない。

しかも、先週は高熱にうなされ、ほぼ一週間は練習が出来なかった。

それなのに先週の土曜は、ピアニストのトマと合わせるリハーサル。
皆が帰る最後に弾こうと思っていたのに、早々と先生のご指名を頂戴し、子供達と親達の前に出る。

一週間病気だったと言うと、小学校教師であるシルヴィアンヌの「親でも言い訳を見つけたわね!」に、教室は笑いに包まれる。

恐れていた通りにぼろぼろの演奏(弓がガチガチと弦にぶつかり、左手が出鱈目に)。皆、無言で激励の拍手。穴があったら入りたいとはこのこと。せめては、子供達が、大人でもこんな演奏か、と自信を持って演奏してくれれば有難い、と、自分を慰める。

それでも、
そんな演奏でも、その後、マリ(バイオリンの先生)は私に対して非常にポジティブで明るく、カーボン弓ではなく、ぜひ木製の弓を使ってみてはどうか、と勧めてくれた。そして、小柄な私がアルト(ヴィオラ)を弾く上で、弓の長さを4分の3で試してみてはどうか、と。Seitzのコンチェルトは木製の弓の方が求めている音が出しやすいのでは、と。

彼女は、心からそう思ってアドバイスをしてくれたのかもしれない。
そうであれば、天才的教育者である。

私のへこんだ気持ちを十分受け止めつつも、全く違った話題を提供し、全く別の次元の話をすることで、私がSeizのコンチェルトを演奏することに別の色合いを持たせてくれた。

息子バッタのバイオリン向けの4分の3サイズの木製弓で練習をすることで、フルサイズのカーボン弓の扱いに梃子摺っていた私は、その扱い易さを発見し嬉々となる。

長女バッタの木製弓はフルサイズ。私のアルト用と比べて、長さが同じであることを知り驚き、これまた感心する。

こうして、慌ててルチエのサビーンの元を訪ねることになる。

幾つかの弓を前にして、選択肢は幾つもあるようで、実は一つしかないことが明らかであった。サビーンは一日家に持って帰ってよいと言ってくれている。

私が選んだ弓は一つだけ。それを取るか、取らないか。

その日は無理をして会社からこっそり抜け出してアトリエに寄っていた。翌日、同じようなことが出来るとは限らない。

「いただきます。」

しっかりと松脂をつけ、音を出し始めると、バッタ達が寄ってくる。皆がそれぞれに自分のバイオリンで弾いたり、私のアルトを弾いたりと試したがる。

息子バッタの弓より、気持ち長く、十分な重みを持っていた。

バッタ達が寝静まってから、おもむろにアルトを弾きだす。16部音符の連続、スタッカート、スラー、、、。小舟の川下り。。。

気がつくと、午前零時を回っている。

天才的な教育者マリよ。
どうやら貴女の魔法は私に上手く効いたみたいよ。

今も早く練習したくてウズウズしている。
ユーディーか。弓は生まれたばかりの雛をつかむ如く持つべしと言ったのは。


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2011年11月15日火曜日

アヒルの親子の行列





薄暗くなりかけた土曜の夕方、
遅々として進まないテールランプの赤が延々と続く中、
ちょっとした裏道に出る。

と、路上駐車の列から、人影が飛び出て、さっと通りを横断する。
それに続けて、背の高い少年が、丈の高いアイロン台を立て掛けて支え持ち、こちらを窺っている。

どうやら、先に通りを横断した人影は父親らしく、良く見ると両手に買い物袋を提げている。

どうぞ、渡って。

サインを送ってやると、アイロン台が通りを横切る。
すると、次から次に車の陰から出てくる、出てくる。
両手に買い物袋下げた子供達。
締めくくる様に、母親らしき人影がゆっくりと通りを横切る。

アヒルの親子の行列さながら。

あっという間に帳は下りて、あたりはすっかりと夕闇に包まれる。

ゆっくりとアクセルを踏み、夜の街に入っていく。


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志は高く、夢は大きく、そして貪欲であれ!


末娘バッタ。
昨年は読書感想文に、徳川家康の伝記を選んだから大変。
兜、殿様、戦(いくさ)、から始まって、今川、織田、といった一族の名前、そして、三河などの地名が乱れ飛ぶ。戦国時代の話など興味がなければ、読みこなせない。何度噛み砕いて解説しても、分からないものは分からないらしく、サポートするこちらとしても、イライラが募った。

だから、今年はもっと分かりやすい近現代の人にしなさい、と早めに忠告しておいた。

以前、ニュートンの伝記を読んだ息子バッタは、彼の暗い性格、非社交的な生活に唖然とし、学生からの人気がなく講義の参加者はほぼ皆無、造幣局の長官の時に、通貨偽造の罪人を徹底的に洗い出し、死刑に処した事実を知り愕然。唯一のポジティブな発見内容は、ニュートンの時代に既にケンブリッジ大学があったこととしていた。

万有引力の法則とは、やらを知りたかったらしく、それなら伝記には詳しくは書いておるまいて、と言ってやる。

やれやれ。読書感想文の本選びも簡単ではない。学校での指導を期待するも、制限された授業日数や時間を考えれば、無理なことか。

そして、先日の万聖節のバカンスの際、末娘バッタは野口英世の伝記を選ぶ。

故郷の英雄。
小・中学の学習旅行で何度生家を訪れたか。彼の生い立ちのエピソードなら諳んじている。お客様をお迎えする、となれば、決まってお連れする訪問先のリストに入っていた。

大学生の頃だろうか、実は英世は酒・女・金にだらしなく、借金はしても踏み倒しであったと誰かから教えられる。きっと、百科事典の様にあらゆる雑事をも知っている雑学博士の兄からに違いない。

潔癖な青年時代。それで少し英世に対する尊敬の念が翳った気がする。

それでも、生家に行けば、何度も何度も繰り返し早く帰ってくれるように願う母シカによる手書きの手紙を前にし、胸詰まり、柱に刻まれた英世の決意を見て、胸奮い立つ思いがしたもの。

奇しくも誕生日を同じとする末娘バッタ。
そのことを素直に嬉しいと彼女の感想文には綴ってある。

そうして、こんな風に続く。

野口英世は、『志を得ざれば再び此の地を踏まず』と自分の家の柱に掘りこんで東京に行きました。私も大きくなったら、家の柱に自分の夢を書いて、その願いをかなえてもどって来たいと思います。

よし!その心意気よろし。
先ずは夢を育もう。志は高く、夢は大きく。そして貪欲であれ。


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