2017年8月27日日曜日

サボテンの実






人生は選択の連続。
無意識のうちに、多くの選択肢の中から、色んな理由にせよ兎に角選んで生きている。

勿論、時にはしっかりと自覚し、悩みに悩んで、最後は清水の舞台から飛び降りる思いで選ぶ時もある。それでも、長い人生振り返れば、あの時はああする運命だったのだろうと納得したりもする。

逆に、あの時こうしていたらな、と今でも思うこともある。

それが人生。

人生論などを展開するつもりは全くなかったが、今、こうして書いていることも、何かに突き動かされてなのだろうから、人間とは面白い。実際のところ、きっかけは単純。今回の旅で何千枚も写真を撮影しており、毎回どの写真にしようかと選ぶ作業に時間を掛けてしまっている。楽しい作業といえば楽しいが、一つしか選ばなければならないとなると話は違ってくる。

そもそもデジタル化が自称カメラマンの精神を怠けさせてしまっている。以前は重いカメラを大切に抱え、貴重なフィルムの枚数を確認しつつ、ワンショット撮影するにも、多くのことを一緒んに考えて、所謂シャッターチャンスを狙ったものだ。

ところが、今ではスマホで簡単に撮影できてしまい、悔しいことにそのクオリティたるや、変な一眼レフで自己流にセットしたショットよりも良いことが多い。それに気が付いてから、カメラを持たなくなってしまい、数打ちゃ当たる的にワンシーンに数枚撮影してしまう。撮影なんて大袈裟な言葉は当て嵌まらないかもしれない。




そうして幾つものショットの中から、選ぶ作業が待っている。




どうだろう。今回の被写体が素晴らしいことも一因か。









スマホの小さな画面では味わえない迫力を今度はPCの画面で試してみる。そうして、自己満足の世界は続くわけだが、いやはや。

今回はサボテンの実にスポットを当てたかったのだが、どうもテーマに辿り着かないので、かなり強引に写真を出して紹介。




標高4000メートルのコルカ渓谷の道沿いにある景観スポット。そこで民芸品を販売しているスタンドが一つ。その傍らで女性がフルーツを提供していた。食べてみて良し、ドリンクにして良し、シャーベットにして良し。



キーウィみたいな黄緑色に黒いプチプチの種があるが、驚くなかれ。サボテンの実。





酸っぱくて爽やか。太陽の香りがした。





ペルー紀行
 第一話  インカの末裔
 第二話  マチュピチュを目指して
 第三話  真っ暗闇の車窓    
 第四話  静かな声の男
 第五話  さあ、いざ行かん
 第六話  空中の楼閣を天空から俯瞰
 第七話  再び、静かな声の男登場
 第八話  インポッシブルミッション
 第九話  星降る夜
 第十話  インカの帝都
 第十一話 パチャママに感謝して
 第十二話 標高3400mでのピスコサワー
 第十三話 アンデスのシスティーナ礼拝堂
 第十四話 クスコ教員ストライキ
 第十五話 高く聳えるビラコチャ神殿
 第十六話 標高4335mで出会った笑顔
 第十七話 プカラのメルカド
 第十八話 標高3850メートルの湖上の民
 第十九話 ゆく河の流れは絶えずして
 第二十話 コカの葉を噛みながら
 第二十一話  4000メートルの谷を覗き込む



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2017年8月24日木曜日

4000メートルの谷を覗き込む







チバイの村を出てコルカ渓谷に向かう途中、山の斜面を利用した段々畑が独特の趣を放っている。乾季だからか、斜面には何の作物もなく、延々と茶色の土が続く。ここが緑一面になった様子を想像するのも、また楽しい。







早朝から太陽の日差しは強い。いや、標高が高いからか。





ここを背景とした記念撮影がお勧めとかで、ガイドの男性がカメラマンを買って出てくれる。足場は崖の上。順番など一向お構いなしに、我先にと崖の上に登って写真を撮ってもらいたがる人々。各国からの旅行者なので、お国柄色々あって面白い。






それにしても、コルカ渓谷の凄さをどう言葉にして良いのか分からない。




谷底は暗くて写真に撮れていないが、ずっと奥に川が流れている。





そして、遥か向こうの尾根は白い雪で覆われている。きらりと光るところを見ると、氷河ではあるまいか。




雪、雨、風、自然が年月を掛けて作り上げた岩肌。








渓谷の最標高地点は海抜4,350 メートル。そして、下を覗いた時の深さが最高4,160メートル。ペルーでも最深のスポット。

その渓谷に、コンドルが飛ぶという。

ガイドの男性が、今朝、コンドルを見ることができなかった時のためにと、バスに乗り合わせた旅行者たちのうちから、生贄を選ぼうとゲームをしていて、息子バッタが三人のうちの一人に選ばれていた。

と!いきなり頭上を思いもしなかった大きさと勢いで、俺の姿を見てくれと言わんばかりの余裕でコンドルが舞う。












遥か向こうには雪山。青空にペルーの真っ赤な国花が映える。
コンドルたちは、今度は俺の番だと言わんばかりに次々に優雅な舞を見せてくれる。彼らはリマまで飛んで行くという。マチュピチュでもユゴーが先日コンドルを見たと話していたことを思い出す。一度獲物を得たら一週間は狩りをせずに済むらしく、時には一羽たりとも姿を見ることができなこともあるらしい。





それが本当の事なのか、それとも、その場にいた我々の高揚した気分を一層盛り上げるためにガイドの男性が話したのかは定かではない。しかし、効果は覿面。

母もバッタ達も、皆興奮。飽きずに空を見上げ、大自然の中の優雅な舞をいつまでも心ゆくまで楽しんだ。




ペルー紀行
 第一話  インカの末裔
 第二話  マチュピチュを目指して
 第三話  真っ暗闇の車窓    
 第四話  静かな声の男
 第五話  さあ、いざ行かん
 第六話  空中の楼閣を天空から俯瞰
 第七話  再び、静かな声の男登場
 第八話  インポッシブルミッション
 第九話  星降る夜
 第十話  インカの帝都
 第十一話 パチャママに感謝して
 第十二話 標高3400mでのピスコサワー
 第十三話 アンデスのシスティーナ礼拝堂
 第十四話 クスコ教員ストライキ
 第十五話 高く聳えるビラコチャ神殿
 第十六話 標高4335mで出会った笑顔
 第十七話 プカラのメルカド
 第十八話 標高3850メートルの湖上の民
 第十九話 ゆく河の流れは絶えずして
 第二十話 コカの葉を噛みながら



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2017年8月20日日曜日

コカの葉を噛みながら







アレキパの朝も早い。8時にホテルを出て、一泊二日のコルカ渓谷ツアーに参加する。先ずはアレキパから国立自然保護区を通り、4910mの高地を超えてコルカ渓谷の入り口の村チバイまで。バスで4時間。






ガイドの男性が、バスの中でコカの葉の摂取方法を教えてくれる。5枚の葉を一緒に、ゆっくりともぎゅ、もぎゅ、もぎゅと噛む。確かに唇や舌が麻痺したような感覚となる。美味しい、というよりは、今、身体が必要としているエッセンスに思えた。






このコカの葉に熱湯を注いだだけで作るコカ茶は、それまでも随分と飲む機会があり、いつの間にか愛飲していた。どこのホテルや宿にも、フロントやラウンジなどに大型の給湯器があり、コカの葉とカップや紙コップが置いてあるからかもしれない。






確か、クスコのインカ博物館で、コカの葉の様々な効用および如何に医薬品として昔から利用されてきたかについての説明が図解されていた。






コカインは勿論、この葉から抽出して作る。葉自体のコカイン濃度は薄いらしく、依存症や精神作用は非常に弱いとされている。それでも、精神を興奮させる作用のあるコカインの原料でもあるコカの葉は、精神的な疲労を回復させる効果を持っているとされる。インカの時代も、厳しい肉体労働の合間にコカの葉を噛み、疲れを取ったと言われている。






ペルーに来る前は、珈琲を楽しみにしていた。数年前に行ったブラジルでの珈琲が美味しくて、馥郁たる香りを楽しみながら、当時の思い出も蘇り、心豊かな時間が持てることからも、今でも購入する珈琲豆の原産地はブラジルにしている程。ところが、同じ南米でもペルーの人々の珈琲の楽しみ方は全く違う。そもそも、珈琲を楽しんでいるのか正直分からない。香りも味の奥行も全く度外視している。きっと、ペルーにはペルーの珈琲の歴史があるに違いない。しかし、高地では、身体が要求しているのは、豊かな香りとか、濃厚な味わいなどではなく、コカ茶のような、緑の渋みなのかもしれない。






不思議なことに、あれだけ毎日何杯も飲み、すっかり虜になったかのようなコカ茶だったが、お土産に買って来た大量のティーパックは今では忘れられてキッチンの片隅に置かれたままになっている。風土、気候、その時の身体の状態などが、大きく左右するのだろう。依存症になる恐れは、全くなかったと言えよう。






標高3856メートルの場所でお茶休憩となる。風と雨が作りあげたと思われる岩肌が真っ青な空に映える。






ビクーニにしろリャマやアルパカにしろ、こんな高地に連れてこられて、頭痛はしないのだろうか。











アルパカとリャマの見分け方を、愛嬌のある顔とツンとすまして高貴な様子とで、顔で演じて一瞬にして教えてくれたアレキパの女性の言葉が甦る。標高が高いことで地元の人たちは高山病に悩まないのか、と母が尋ねた時のことである。海に遊びに行った帰りは矢張り頭痛がすると言う。自分たちの祖先は元々標高の高いところに住んではいなかったので、身体が環境に慣れる必要があると言う。勿論、慣れれば問題はない。山岳地帯に追いやられた歴史を、それ自体を恨むわけでもなく、淡々と説明し、思い起こさせてくれた。当時の権力に追いやられて湖上に生活することになったチチカカ湖の人々のことが頭をよぎった。

「チベット高原に最初から住んでいる彼らには、そういった高山病の問題はないのよ。」

なぜチベット民族を引き合いに出したのか。考えあってのことなのか。





「私たちは音楽とお酒があれば、いつだって幸せなのよ。どこに行かなくてもね。最近は旅行者によって、旅をする、という喜びを覚えた人々もいるけれど。」

どこか遠くを見つめて彼女が答えていた。







標高4500メートル。太陽により近づいているのだろう。空と大地の空間が狭くなってきているとも言えようか。遥か彼方に山頂に雪を抱いた峰が連なって見える。ここよりも更に高い山脈。







こんな高いところに生えている花を見に行こう、とガイドが誘う。もちろん、希望者だけで、と。標高の高さで具合が悪くなっている人や、関心のない人はゆっくりと景観を楽しんで、といったことだけの話だと思うが、バックパックの女性が、その花を見に行くのは、どんな理由があるのかとガイドに尋ねてきたから笑ってしまった。

好奇心がないわけではないだろう。コルカ渓谷までやってこようと言うのだから。何だか特別な気がして、私などはガイドのすぐ後ろを嬉々として歩いていただけに、ずっこけてしまった。感覚の違い、と言えばそれまでだが、旅に出ること自体、実際は理由なんであるようでない。そぞろ神のお導きではあるまいか。






その花、というか、苔のような、しかし決して苔ではない植物が岩の上にびっしりと生えていた。そして、確かに花を咲かせている。そこからの蜜が松脂のように光って粘っていた。一年に何ミリ育つか育たないか。うっかりして、植物の名前をメモしなかったが、探してみても見つからない。そんな出会いが旅の楽しさではあるまいか。







山裾に集落が見え始める。そこがコルカ渓谷の入り口の村、チバイだった。












ペルー紀行
 第一話  インカの末裔
 第二話  マチュピチュを目指して
 第三話  真っ暗闇の車窓    
 第四話  静かな声の男
 第五話  さあ、いざ行かん
 第六話  空中の楼閣を天空から俯瞰
 第七話  再び、静かな声の男登場
 第八話  インポッシブルミッション
 第九話  星降る夜
 第十話  インカの帝都
 第十一話 パチャママに感謝して
 第十二話 標高3400mでのピスコサワー
 第十三話 アンデスのシスティーナ礼拝堂
 第十四話 クスコ教員ストライキ
 第十五話 高く聳えるビラコチャ神殿
 第十六話 標高4335mで出会った笑顔
 第十七話 プカラのメルカド
 第十八話 標高3850メートルの湖上の民
 第十九話 ゆく河の流れは絶えずして



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