2022年5月31日火曜日

時にはのんびり日向ぼっこ

 





息子バッタが遊びに来てくれたので、彼にトンカの散歩をお願いして、買い物に出掛けることにした。私が一緒だと、せっかく息子バッタがトンカと走りだしても、トンカは途中でいつも立ち止まり、後ろを振り返って私がやってくるまで待っている。息子バッタの命令も、私の顔を見て判断しようとする。だから、私抜きで、二人で散歩に行った方が二人にとって楽だろうと思っていた。


何より、トンカは瞬発力に優れていて、猛スピードで走るので、息子バッタと一緒に走ることで、お互いに楽しめるのではないかと思われた。


のんびりとスーパーで買い物をし、BIOの専門店にも顔を出し、新鮮な野菜を入手する。確かに最近、物価が上昇しているし、行きつけのスーパーの問題かもしれないが、箱ティッシュが商品棚に姿を消して随分と経っていた。いつも買うタイ米も、大袋がなくなって暫くするのに、新たな入荷がされていない。


値上がりしているのはガソリンだけではないのだな、とぼんやりと考えながら家に帰ると、家の門の扉が閉まっている。つまり、既に息子バッタとトンカは家に帰って来たということである。一時間も経っていないが、恐らく二人で短距離走でもしたのだろう。疲れて急いで帰って来たのだろうか。


大きく膨らんだ買い物袋を両手に家に入ると、ソファーに息子バッタが寝転がっている。早かったのね、と声を掛け、買い物袋に鼻を突っ込むトンカを制して、片付けを始め、どこの森に行ったのかと聞いてみた。


行かなかったんだよ。


ぶっきらぼうに息子バッタが返事をする。え?


だから、行かなかったんだよ。首輪をつける時点ですごく嫌がっていたんだけど、前足を揃えて踏ん張って、てこでも動かなかったんだ。そのうちに、伏せをして蹲ってしまったんだよ。だから、行かなかった。


不満気な口調で息子バッタが状況報告をしてくれた。ボクだと、ちっとも言うことをきかないんだ。


いやいや、違う、違う!純粋にトンカは疲れているんだよ。ここ数日、週末と祝日が続いていたので、朝と夕方に二回散歩に行っていた。しかも、好天続きだったので、森に入り、新しい道を発見し、と、毎回2時間から3時間はたっぷりと歩き回っていたのよ。トンカは嬉しそうに跳びはね、走り回っていたけど、朝は6時から起きているし、昼寝をしているとはいえ、流石に疲れたんだよね。疲れちゃった、って言えばいいのに、言えないもんね。


そういうと、息子バッタが大いに笑い、そりゃあトンカも大変だわ、とトンカの背中を優しく撫でた。


ママは思い込んだら、まっしぐらの熱血漢だからねえ。時には何もしないで、一緒にのんびり日向ぼっこをするのでも、いいのかもね。



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2022年5月29日日曜日

奥様(マダム)は魔女 本編

 






お向かいのマダムに苺レモンムースの上に宝石のようにきらめくゼリーを作って、お裾分けに馳せ参じた。大喜びで受け取ったマダムだったが、真顔でマダムの家には魔女がいると言う。


聞いてちょうだいよ。だって、何十年も使っていた珈琲マシーンがダメになったかと思ったら、同じ日に大切なダイソンの掃除機がいかれてしまったのよ。それだけじゃないの。食器洗い機も、湯沸かしポットもよ。魔女の仕業としか思えないでしょう。


今月89歳の誕生日を迎えたばかりのマダムは、白髪を振り乱し、真剣な顔でまくしたてる。インターフォンやコンピューターの不具合で何度もお手伝いをしているので、マダムが電化製品をどんな風に扱うのか良く知っているので、さもありなん、と思うしかなかった。


うーん、と考え込む様子をし、おもむろに、ゆっくりと、「マダム、思うに、それはですね、」と、もったいぶって長引かせながら、「マダムが魔女なんですよ!」と宣言してみた。


うわぁっはっは!


心の底から可笑しそうな笑いが響く。お互いに大笑いをしながらも、内心ひやりとする。マダムが笑ってくれたから良かったものの、下手をすると、こんな侮辱はないと怒られるところか。


マダムの庭の立派なキィーウィーの木には雌花と雄花が何千と咲き誇っており、ミツバチたちが忙しそうに働いている。その様子を見せてもらいながら、土曜はノルマンディーから娘さんが会いに来て、日曜は息子のお嫁さんと子供たちが遊びにくるといった、マダムの近況を教えてもらう。


娘さんランチなんていいですね、と振ったところ、いいえ、ランチには行かないのよ、と突然悲壮な面持ちで告げられる。


実はね、ほら、孫のミカエル、あの子の3歳になる息子が未だ一言もしゃべらないのよ。2歳半になった頃、おかしいわね、と言っていたんだけど、あの子達、私に内緒にしていたのよね。つい先日、泣きながら告白されたわ、遺伝的な発話障害があるって。毎日お医者さんに会いに行っているんですって。


この歳になって、こんな辛い話があるなんて思っても見なかったわ。青天の霹靂とは正にこのことよ。おちびさん、とっても賢くて、この間も私のことを見てにこにこしてくれるのよ。こっちに来てって、手ぶりをするの。でもね、言葉を発さないのよ。もう、胸が潰れる思いよ。遺伝って言われても、我が家の方では誰もいないわ。


先日我が家に遊びに来てくれた、あの子の話をしてみた。あの子は一瞬一瞬を大切に、心から喜んで生きていて、パパもママも大変だろうけど、幸せに輝いている、という話を。


そうは言ってもね、でも、辛いじゃないの。痛ましいじゃないの。私は、どうしても辛い顔をしてしまうから、そんな顔を見せたら、ミカエルは嘆くだろうし、その子自身にとっても良くないことよ。分かっているけど、どうしようもないのよ。だから、会わないことにしているの。ランチには行かないわ。




そして唐突にこの話は終わり、今度は、もう一人の未だ一歳にもなっていない女の子のひ孫の話を、とろけんばかりの顔で一瞬だけして、デザートのお礼を丁寧に何度もしてくれた。いつも美味しいデザートを、どうして私に届けてくれるの?私は何もしていないのに?


マダムの存在が尊いのです。今回は魔女にふさわしい煌めく宝石のデザートを献上します。お口に合いますように。






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2022年5月28日土曜日

奥様は魔女 イントロ編

 







このタイトルでピンとくる世代は少なくなってきているのだろうか。バッタ達の世代では、先ずは無理だろう。原題は「Bewitched」、訳すなら「魅せられて」とか「妖艶な」とか「妖しげな」だろうか。


フランス語では「Ma sorcière bien-aimée」。フランス語らしい訳

で、比喩もなくストレートに「私の愛おしい魔女」。


日本語では「奥様は魔女」。この題名を翻訳した人はなんて偉大なのだろうと感心してしまう。言外に含まれる微妙なニュアンス、醸し出す雰囲気、余韻。聞く者の想像を豊かに膨らませ、好奇心を掻き立てるに十分。


フランスの企業名も、最近では色々と工夫されてはいるようだが、企業精神など一切反映していない無味乾燥なものが多くて驚くことがある。携帯電話のオペレーターとしてフランスで旧国営オペレーター、Orange(英国のオペレーターのOrangeに買収された経緯があるが、フランスではあくまでオランジュと発音をする)のライバル会社として設立されたSFR。当時の親会社はCompagnie générale des eaux、ずばり総合水事業会社(こちらもその後Vivendiと社名を変え、メディアの買収などで大きく膨らみ、一時期世界的にも脚光を浴び、水事業のみスピンオフされている)。このSFRは、フランス語のアルファベット読みで「エスエフエール」縮まり「エッセフェール」と呼ばれてはいるが、「La Société française du radiotéléphone」の頭文字をとったもの。そして正式社名の意味はずばり「無線電話フランス企業」。企業精神や想像を膨らませる要素ゼロ。初めて知った時には、そのあまりの短絡さに笑ってしまった程だった。


と、長々とイントロを書いてしまったが、実は今日のテーマはこれが主題ではなく、「奥様は魔女」だったはず。あんまり長いと誰も読んでくれそうにもないし、短くても読んでくれる人も皆無のような昨今、どちらでもよいのだろうが、取り敢えず今回はここまでとしようか。


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2022年5月27日金曜日

ママ友ならぬ犬友

 






トンカと散歩をしていると、他の散歩をしているお仲間とすれ違うことが頻繁にあり、ほぼ毎回挨拶をし合い、気が合えば猛スピードでかけっこをしたり、ゴロゴロと絡み合ってじゃれあったり、ボールを一緒に拾い合ったりする。


一度など、相手が大柄のシェパードのオスで、飼い主さんの方から「遊びたいようだけど、恐らくコイツとは関わらない方が身の為だよ」などと声を掛けてもらい、慌ててトンカの首根っこを摑まえて近寄らせないようにしたことがある。


トンカが怖がって、きゃいん、と泣いて出会いが終わることもあるし、滅多にはないことだけど、お互いに見向きもしない時もある。


ある時、ビーグル犬と森で仲良くなり、二人でじゃれあい、走り合い、大はしゃぎしている間、飼い主同士で話をし、翌週も同じ時間帯に会おうと連絡先を交換したことがある。かくして、翌週同じ時間に同じ場所に行ってみたが、姿がない。連絡をしてみたところ、どうやら週末に遊びに行くので、ビーグルのイズィは託児所に預けてしまったとか。


今回は森の中で誰かを探して困っている女性をトンカと発見。聞けば、家のドアが開いていて、犬が逃げてしまったので真っ青になって探していると言う。トンカのようなサイズで白い猟犬とのこと。では、森で出会ったら連絡するから、と連絡先を交換する。最終的に、ムースという犬は家にちゃんと帰って来たが、それがきっかけとなり一緒に森を散策しようとなった。ムースはスペインからオランダに渡り、今の家族と出会い、今回ご主人の仕事の関係でフランスに1月から来ているという。


トンカのおかげで世界が広がる。



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2022年5月24日火曜日

口どけよく、軽くて華やかな苺のヨーグルトムース

 





先日は写真だけにしてしまったが、遠方からの親友を迎えるにあたり、何を作っておもてなしをしようかと楽しく考えた末、勝手に師匠と呼ばせていただいている塩の華さんのブログから「苺のヨーグルトムース」にすることに決定。


当初ランチにくる筈が、ご主人の友人のお見舞いに行く必要があるので、午後のお茶にしてもらえないかとの連絡があったのが前日。もともとソライヤは華奢で小鳥が啄む程度しか食べない。それでも、華やかさが大好きで、いつも美味しそうな料理の前でモデルのようにポーズをとった写真をSNSでアップしていた。とにかくご主人がソライヤにベタ惚れで、常にカメラマンの様な多種機能付きカメラを持っていて、喜んで彼女を撮影している。


そんな彼女を喜ばせる、午後のお茶に向いたデザート。それが今回のお題。


もともと小食の上に、恐らくランチをどこかで食べてきている筈なので、そうお腹は空いていないだろう。なので、シフォンケーキやロールケーキといったケーキ類は選択肢から外す。そうなると、ババロアやゼリーなどかしら。珈琲ゼリーか、今が旬の苺ムースか。


そんな折、塩の華さんのブログの「苺のヨーグルトムースケーキ」に目が留まる。これだわ!ヨーグルトを使っているので生クリーム使用に比べ軽やかだし、とにかく華やか。ソライヤにぴったり。


トンカを一人でお留守番させて、急いで買い物に出動し、新鮮なBIOの苺を買い求める。ゼラチンは、確か常備していた筈、とスルーしてしまうが、買っておけば良かったと思うも後の祭り。ちょっとゆるめのムースになってしまったことが残念至極。


苺ムースを型から取り出すと、ぷるるん、と良い感じで出来たが、ゼラチンが少なめなので、次第にどろろん、としてしまう。気を取り直して、庭の深紅、赤、パール色の薔薇を飾ってソライヤ達の前に持っていく。笑顔が広がる。


幾つかグラスにも作っておいたので、その一つを真向いのマダムに進呈。美味しさは皆で分かち合わないと!塩の華さんに感謝💞




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2022年5月23日月曜日

有朋自遠方来

 




有朋自遠方来。

不亦楽乎。


高校時代にオーストラリアに留学した時以来の仲間、ダンシングクイーンの異名をとったインドネシアからのソライヤが遊びに来てくれた。

10年ぶりだろうか。ちっとも変らぬ魅力を振りまき、優雅なソライヤ。再婚したフランス人のレミとも、相変わらず仲良くおしどり夫婦で、今回はレミの故郷、ブルターニュに一時帰国している。

さくらんぼの木陰でにぎやかにおしゃべりを楽しむ。目下、オランダに留学している二人の子供たちの卒業が心配事の模様。オランダの教育システムの問題点、留学生に対する不当な扱いについて、滔々と自論を展開する。まあまあ、そう熱くならなくてもね、そうレミが彼女を優しく見つめながら制する。

帰り際、インドネシアに遊びに行った時の写真がないかと聞かれる。彼女の家の前で撮った写真がある筈。アルバムはすぐに見つかった。思い出として、懐かしんでみることができるようになったのだな、としみじみ思う。ソライヤにしてみても、昔の旦那との写真がたくさんあるのだが、嬉しそうに、そして懐かしそうに見ている。

子供達に見せたいのか、真剣な眼差しで幾つもの写真を携帯で撮影していた。

7月にはインドネシアに帰るとのことだが、それまでにバルセロナに遊びに行く予定とのこと。一度ブルターニュの家に遊びに来るようにと誘われる。トンカが喜んで飛び跳ねることができる程の大きな敷地らしい。

お金はお墓には持っていけないのよ。人生は楽しまなくっちゃね。そう言ってウインクをするソライヤ。元気でね。また遊びに来てね。私もトンカと一緒に遊びに行くね。


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2022年5月21日土曜日

人は聞きたいことを聞き、読みたいことを読む

 





やあ、久しぶり。元気にしている?


そんなメッセージが届いたので、パール色の薔薇の写真を送っておいた。先月にも同様のメッセージが来ていたので、島でのご来光の写真を送ると、どこにいるのか聞いてきたので、その問いにはスルーした。


既に、決定打を出していたと思っていた。それでも、時々、忘れた頃にメッセージが送られてくる。軽くて、爽やかなルイボスティーのようなメッセージ。それに対し、写真を送っていたことは確か。


人は聞きたいことを聞き、読みたいことを読む。そういうことなのか。


薔薇の写真の後に、この薔薇の花びらを摘みに夕方立ち寄る、といったメッセージが返って来たので、これはスルーしておいた。いつものように、夕方の長い散歩をトンカと楽しみ、疲れてへばっているトンカを一人にして、ちょこっと買い物に出ようとしていた矢先のこと。インターフォンがけたたましく鳴る。


トンカは跳び上がってはしゃいでいるので、何とか制して玄関に向かおうとするも、するりとドアの隙間から玄関に出てしまい、その勢いで二階に上がり、そして大喜びで一気に階段を降り、ほら、上手にできるでしょ、と見せたいのか、その往復を何度もする。


トンカの大騒ぎのそばで、インターフォンに出ると、メッセージを送って来た相手。どうしたものか。あんまりトンカが階段を往復するので、ままよ、と玄関の扉を開けて外に出してあげる。玄関アプローチをトンカが走り抜ける様子も見ずに、慌てて部屋のドアを閉め、勝手口から外に出る。トンカの吠える元気な声が聞こえてくる。きっと両者とも驚いているだろう。


はにかんだ笑顔が門の前で佇んでいた。


私にしてみれば決定打の、以前送ったメッセージのことについて触れ、それでもこうして来たということは、何か新たな展開があったのかしら、それとも、あのメッセージの意味は伝わっていなかったのかしら、と言ってみる。


戸惑いが顔に浮かび、何のことだか分からない、ただ、顔を見たかったんだ、と、数学の問題が解けずに、黒板の前で困っている子供のような表情をしている。


ゆっくりと、改めて、以前送ったメッセージの内容を丁寧に告げる。誰にでも分かる内容の筈だった。それでも、人は読みたいことを読む。聞きたいことを聞く。


階段の往復で興奮したのか、抜け出し作戦が成功したことに興奮しているのか、珍しくトンカは吠え続け、すごい勢いで土を掘り返したかと思うと、猛スピードで走り回っていた。どうしたの?ほら、落ち着いて。そう言って背中をなでるタイミングさえ与えない。


それで、仕事は上手くいっているの?調子はどう?


その時だけは嬉しそうに、誇らしげに、手を腰に当てて順調だと告げた。もう4年近く会っていなかっただろうか。無精ひげとは言わないのだろう。手入れが行き届いた髭をたくわえ、お腹周りもすっきりしている。そうか、今の自分を見て欲しかったのか。


私のことは一切何も聞かない。仕事のこと、子供のこと、日本の家族のこと、トンカのこと。まあ、いいか。いつだって、そうだったのかもしれない。


じゃあ、と立ち去る相手をトンカと見送る。ちゃんと今度はメッセージは伝わったのだろうか。人は聞きたいことを聞き、読みたいものを読む。さあ、トンカ、ちょっと大人しくお留守番していてね。これからちょっと買い物に出るから。


人生は続く。



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2022年5月20日金曜日

薫風

 




薫風何處來

吹我庭前樹

啼鳥愛繁陰

飛來不飛去



「千と千尋の神隠し」に出てきそうな森の入り口がある。トンカと小川に沿った小径を散歩している時に、いつも気になっていた。ちょっとした上り坂になっていることは、すぐに見て取れた。特に夕方の約束があるわけでもないし、夜バッタ達の訪れを待つこともない。さあ、トンカ、行ってみようか。


トンカは慎重の癖に、好奇心たっぷり。すぐに喜んで登り坂を駆け上がっていく。以前、自転車でここを上っていく人を見たことがあるが、これはすごいアップ。サドルからお尻を上げて一気に上り詰めないと、大変なことになるだろうなと思う。トンカはあちらこちら道草を食いながらも、最終的には私と同じペースで上っていく。兎と亀状態。


上り詰めたところはティー字路で、どちらも自転車が一台ようやく通れそうな小径。迷わず右を選択する。ゴルフ場の近くなので、その脇を通る道なのではないかと思い、どこかの段階で右に降りていく道があるだろうと踏んでいた。


狭いながらも平坦な道が続き、しばらくすると腰ぐらいの高さの煉瓦の壁のようなものが見えて来た。どうやらゴルフ場の敷地との境目に沿って造られているようである。そして、平坦なものだった道も、いきなり急勾配の坂になったり、でこぼこの上りになったりと、マウンテンバイク専用道のような様子を呈してきた。サイクリストにとっての最高の穴場なのかもしれない。しかし、徒歩ではトホホの距離とアップダウン。


かくして、ゴルフ場を遠回りに一周して、漸く「千と千尋の神隠し」に出てきそうな森の入り口に戻ったのが3時間後。さすがのトンカも、玄関に着いた途端、家の中に入る手前でグロッキー状態。ふふふ。楽しかったよね。また、いつか行こうか。汗びっしょりの背中に新緑の風が心地よい。



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2022年5月19日木曜日

薔薇の花園

 





今年は春から速足で初夏に気温が移っているからだろうか、我が家の庭では薔薇が見事に咲き誇っている。庭の奥で、これまで雑草が蔓延っていた場所でも、息子バッタが大いに活躍し雑草伐採をしてくれたことが奏功してか、大輪が数多く咲いている。


キッチンの窓から、庭の奥でローズ色が優し気に新緑の風になびいている様を見ると、うっとりとしてしまう。正に薔薇の花園ではないか。純白の薔薇もどんどんと蕾を増やし、膨らんでいる。これは昨年は見られなかった光景。


ミラベルの木の近くのクリーム色の薔薇は、今年も楽しませてくれているし、お隣さんとの境にある垣根のそばの深紅の薔薇や、小粒の野薔薇たちも、勢いを増して咲き誇っている。玄関アプローチでは、レインボー色の薔薇も大輪を咲かせているし、道路前の垣根で藤が弦を伸ばし始めている場所でも、ピンクと赤の薔薇たちが賢明にたくさんの蕾を膨らませている。


今年は薔薇の当たり年なのだろうか。


子供時代に読んだ「秘密の花園」を初めて手にした時のことを思い出す。「秘密」という文字に淫靡さを感じ、なんだか悪いことをしているような、背徳の行為に愉悦を感じている自分に戸惑ったことを覚えている。文字に意味を見出し、想像を膨らませる。優等生気取りの時代だった、いや、本当に田舎の単純で純粋で真面目な子だった自分を懐かしく思う。



ちっとも優等生ではないけれど、単純で純粋でいたずらっ子のトンカが、隣で急に吠え出す。太っちょ鳩君たちに、大好きなさくらんぼを食べられちゃうのがお気に召さないのか。大丈夫、さくらんぼの木を見てごらんよ。まだまだたくさん赤い実がついているじゃない。あんまりたらふく食べるとお腹を壊すし、今は鳩さんたちに楽しんでもらう時間でいいじゃない。


分かったのか、分からないのか。熱い目でじっと見つめ返すトンカ。トンカの情熱にどこまで応えられるのだろうか。胸が締め付けられる思いがした途端、トンカの目がふっと閉じ、やわらかな寝息が聞こえ始める。



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2022年5月18日水曜日

試練

 





これでまで、一日家を空ける時は長女バッタか息子バッタにトンカのお守りをお願いしていた。彼らの都合がつかない時には、犬の師匠の友人に一日保育をお願いしていた。


しかし、それでも誰の都合もつかない時もある。そんな時には、私が予定を変更して家にいることもあった。


とはいえ、トンカも5ヶ月を迎えたわけで、そうそうトンカ中心の生活を送るわけにもいかない。せめてランチに立ち寄ってもらい、散歩に連れ出してもらえたら、それで御の字。先ずはそのスタイルからお互いに慣れていかないと。


これまでも、滅多なことでは粗相をしないかったのだが、ここにきて、さくらんぼをたらふく勝手に食べるようになったからだろうか、朝起きると既に仕事をしてしまっていることが続いている。それでも外に出すと、喜んで早速仕事に取り組むのだから分からない。やはり、さくらんぼの影響で必要に迫られてのことなのだろう。


そんな時に一人で留守番をさせるのも酷な気がした。それでも、人生には通らねばならない関門というものがあるわけで、トンカには通ってもわわねばならない。案の定、その試練の日の朝も、しっかりと勝手に家の中で仕事をしてしまっていたし、ランチに立ち寄ってくれる友人の為に準備をしていると、気配で察知したのか、珍しくまとわりついて、鼻を鳴らす。


トンカにとっての試練は、家族にとっての試練。


そっと家を出るも、トンカの鼻鳴きがひっそりとした庭に静かに響く。


朝ごはんも食べたし、朝の仕事も終えている。サロンとキッチンを開放しているのだから、のんびりとソファーで朝寝を楽しんでちょうだいね。夕方にはちゃんと帰ってくるからね。そう自分自身にも言い聞かせ、そっと門の扉を閉める。さあ、今日も暑い日になる気配。空がどこまでも青い。



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2022年5月15日日曜日

さくらんぼ

 







今年に入って二度目の草刈りをする。するとどうだろう。この間と同じように、夕方から久しぶりにでぶっちょの鳩軍団が遊びに来たし、黄色い嘴が特徴のメールノワー、黒歌鳥(クロウタドリ)がこれまた大勢で遊びに来たし、このところちっともご無沙汰のピーやカケス君まで遊びに来ている。


仮説として、土が掘り起こしやすくなった、ミミズが這い出て来た、或いは、これまで来ていたが雑草に隠れて気が付かなかった、などがあるが、どうだろう。


まあ、我が家のさくらんぼが色付いてきたことに起因するのかもしれない。


トンカは案の定大喜びで青くて堅い時期から、落ちて来た実を拾っては食べていた。赤い実が落ちていても、突進するわけでないことに気が付いたが、視覚よりも臭覚が発達している所以だろうか。


そう考えると、真っ白なティッシュに目がないことも、トンカの視覚に由来するのだろうぁ。いやいや、使い終わったティッシュなので、やはり臭覚か。


鳥君たちよ。大いに遊びにきて欲しいし、さくらんぼも好きなだけ食べてもいいよ。でも、できたら木の上の方のさくらんぼを啄んでね。今日は小さなお友達が遊びに来るので、彼らの為にとっておいて欲しいんだ。


願いよ届け。





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2022年5月14日土曜日

小川にて喉を潤す

 





このとことろ暖簾に腕押し感満載。


まあ、川べりでクッカバラが勝手に囀っているのだから、聴衆がいようがいまいが、本来であれば関係のない話なのだけど。


共感、共鳴、あるいは発見、驚嘆、といった反応が少しでもあれば、クッカバラも囀り甲斐があるというものだけど。叶わぬ願いかしら。


さて、我が家のトンカ、とにかく水に濡れることが苦手。泥遊びも、恐らくそこに魅力を感じていない様子。それはそれで良いのだけど、散歩で土埃のついたおみ足を水で綺麗にしてあげたいのだが、それも嫌がる。


庭の芝生に水撒きをする時、喜んで水飛沫の中に我が身を投じていた幼少時代に我が家にいたコリー犬のサムを思い出す。サムがまだ一歳になっていなかった頃だろうか。サムが成長してからは、残念なことに芝生はダメになってしまって、水撒きの必要もなくなったので、そんな姿を見ることは無くなった。でも水遊びが大好きで、ホースの先から出てくる水を喜んでガブガブと飲んでいた。


だから、トンカが我が家に来てから真っ先にしたことは、庭の水道管を開けて水を出すこと。しかし、トンカは見向きもしないどころか、水を避けるので空振りに終わってしまっている。


暑くなってきたので、小川にジャンプして水浴びをする犬君たちを頻繁に目にするようになった。彼らと一緒につられて水に入らないかと見守っているが、トンカは上手に避けて遊んでいる。ボールが小川に入ると、皆一斉に取りに行くのに、土手の手前で急ブレーキをかけて自分からは取りにいかない。


ついに昨日は、遊んで喉が渇いたのか、小川に身を乗り出すが、手を濡らさないように慎重に、喉を潤す程度。その様には笑ってしまう。もともと、暑さに対する抵抗力が強いのかもしれない。父親は森の精ではなくて、ジャングルの王者なのかもしれない。


さあ、トンカ、この夏どう化けるのか、楽しみにしているよ。




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2022年5月13日金曜日

森を闊歩

 







森でも喜んで茂みに飛び跳ねて入り込み、そして飛び跳ねながら戻ってくるトンカ。最近は以前よりも恐怖心よりも好奇心が勝るのか、ガンガンと突進することが多い。状況把握の力も出てきているのかもしれない。先日は華麗なリスの尻尾の動きに見惚れていた。いやいや、そう過大評価するものではないことも重々承知している。何せ、森のスイーパーの綽名返上はまだまだ先の様に思われる。


森や道端に捨ててあるあらゆるゴミに興味を示し、鼻で正体を突き止めるだけでなく、どうしても味わってみないことには気が済まない性分。捨て煙草には、一度だけ鼻を突っ込んでからは、その後一度も興味を示さないのだから安堵しつつも驚いてしまう。


それにしても、ポイ捨てゴミの多いことよ。森では、恐らく子供が我慢できずに、といったことなのだろうと推測する。むろん、子供とは限らないのだが、隠れた木陰というよりは、道端なのだから厄介である。サイクリストの手から落ちたのか、マスクも散見する。ひょっとしたら鼻をかんだ後のティッシュかもしれない。


まあ、いかんせん、使い終わったティッシュが次々にトンカの胃の中に納まるのだから、たまったものではない。ダメ、と言っても、これが使命とばかりに譲らない。ダメ、ダメ、ばかり言っているのも、せっかくの散歩が台無しになってしまう。終いには根負けするわけだが、どうにかならないものか。


いっそ、散歩する一時間前に下見散歩をして、ゴミ拾いをしたいものだと本気で思ってしまう。


そんなこんなだから、散歩の途中、うっかりと道端の葉っぱに手をやられることが多い。泣く子も黙るオーティ(ortie)、イラクサ。恐らく、フランスの子供なら誰もが知っている草木ではあるまいか。タンポポやクローバーよりも、オーティを知らないと痛い目に合う。うっかりと触ると針で刺されたような痛みが指や手に走り、その後お風呂に入っても、翌朝目が覚めても痛みは続く。


息子バッタに、オーティにやられた話をして、手を見せると、ふふんと鼻で笑われ、上から触るから棘に刺さるので、下から触れば大丈夫なんだよ、と言われてしまう。うっかりと触ってしまったのだから、どうしようもない。お酢で洗うと痛みが和らぐ、なんてことも知っているのでびっくりしてしまう。


トンカはオーティにやられたことはないのだろうか。そんな痛みはへっちゃらなのだろうか。


オーティといえば、アンデルセンの「白鳥の王子」を思い出す。魔女に白鳥にされた11人の兄たちの魔法を解くために、イラクサを必死で編んで帷子を作るエリザ。イラクサの棘が手に刺さり、痛い思いをしつつも、無言で編み上げる。


幼いながらも、イラクサってどんな植物なのだろうと思っていた。田舎育ちではあるが、聞いたことも見たこともなかった。時々、山で漆にやられたと、手や腕を真っ赤に腫らせている友達がいたぐらい。


それがフランスに来て、草餅にする蓬ではないかと嬉々として触って、激しい痛みが指から手全体に走って驚き、遂にオーティの存在を知るに至った。その時、エリザの痛みを我が痛みとして感じることができ、幼い時の謎が解けた。


このオーティ、薬草効果もあるらしく、手袋をして葉を摘む人々を時々森で見かける。オーティスープなるものも、あるというので感心してしまう。棘があっても、食した最初の人は偉大だと思ってしまう。


きっとトンカも知らずにオーティを口にして、その薬草効果の恩恵を享受しているのかもしれない。


かくて、今日も元気に森を闊歩する。



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2022年5月12日木曜日

新緑の季節に心躍るグリーンアスパラと海老のリゾット







トンカを我が家に迎えてからは、週末に向けて金曜の夜に帰ってくる息子バッタにトンカをお願いし、土曜の朝に買い出しに繰り出すことにしていた。もちろん、彼が帰ってこない日もある。そうなると、トンカが一人お留守番。たかだか一時間、されど一時間。


新緑の季節、この時期はアスパラが美味しい。緑、紫、ホワイト、揃って元気にBIOのお店で挨拶をしてくれる。ホワイトアスパラはグタグタに煮た缶詰ものしか知らなかった私にとって、フランスでその美味しさに開眼した。そして、パリッとしたグリーンアスパラの美味しさは堪えられない。


早速カートに入れる。週末に帰ってくるだろうバッタ達を思って、ついつい買い物カートは重くなってしまう。彼らの友達も来ることになれば、あっという間に冷蔵庫や貯蔵庫は空になってしまう。一方で、彼らの都合がつかない時は、いつまでたっても冷蔵庫はぱんぱんに食材が入っていて、いつの間にか新鮮だった野菜が萎びてしまう、時に腐ってしまう。


それでも、あれやこれやとメニューを想像しながら、ついつい手にとって買ってしまうのだから、母親とは一体なんなのだろう。息子バッタは、帰ってくるなり、いつだって冷蔵庫を開けて中をしばらく覗く習性がある。冷蔵庫はむやみやたらに開けて欲しくない主婦にとっては、大変迷惑な行為ではあるが、嬉しそうな彼の顔を見るとにやりとしてしまう。寮生活の学生にとり、実家の冷蔵庫は何か心躍るものがあるのだろう。


その割には食事のリクエストを聞いても、気のない返事ばかり。その点、末娘バッタはいつだって食べたいメニューがはっきりしている。お好み焼き、ビーフン、クスクス、タジン、ファラフェル、などなど。「だって、結局はママは自分が作りたいものにするんだもの。そして、それが美味しいから、僕はなんだっていいんだよ。」とは息子バッタの弁。


息子バッタしか帰ってこなかった日曜のランチ。ガレットにしようか、と誘ってみると、珍しく冷蔵庫に海老があったじゃない、と指摘される。あら、そうね。ふーん、じゃあリゾットってどう?


そう言いながらも、海老の殻剥きを始め、それで出汁をとってリゾットを作ろうと台所に立つ。玉ねぎをみじん切りにして、オリーブオイルでガーリックを先に炒めて香りを出し、玉ねぎを加えて更に炒める。食欲をそそる香ばしさがキッチンを満たしていく。隣のレンジでは海老の頭と殻がぐつぐつと美味しい香りを放っている。


途中でグリーンアスパラの硬めの部分を斜めにスライスしたものを入れながら、お米は透き通るまで炒める。そこに熱々の海老の出汁を入れると、じゅっと快い音が響く。うっすらとオレンジ色のリゾットが炊き上がってくる。最後の段階でグリーンアスパラの先の柔らかい部分を入れ、パルメザンチーズをたっぷりと削り混ぜ、最後の最後に檸檬の皮を削って香りをつける。海老と庭の深緑のローズマリーで飾りつけをして出来上がり。


さあ、ボナペティ。息子バッタの笑顔が輝く。



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2022年5月11日水曜日

末娘バッタの信念

 







エスカラッド、いわゆるロッククライミングをしているかと思えば、キャンパスからエッフェル塔までの早朝マラソンに参加したり、大学対抗バドミントン大会に出場したりと、何かとスポーティーな、いや、かなり体育会系の学生生活を満喫している末娘バッタ。今度はレッド、つまりマルチスポーツイベントに参加をするという。


レッドはトライアスロンをイメージすれば分かりやすいだろうか。二人でチームとなり、一人が自転車、相方がその脇でランニング。交代しながら進んでいく。カヌーあり、泳ぎあり、とコースによって様々。前回、キャンパスからエッフェル塔までマラソンした仲間の一人から声が掛かったという。


へー、すごいねえ。場所はどこなの?自転車は自分たちで調達するの?何人ぐらいがエントリーしているの?


矢継ぎ早に質問を投げかけるが、末娘バッタは相変わらず至ってマイペース。詳細は分からない、という。分からないのではなくて、調べればわかるのだが、今は面倒くさいので、取り敢えず無難な答えをするといったところ。まったく誠実さに欠ける、が、これが彼女のキャラ。


しかし、週末に行われ、金曜の夜から現地入りをし、二日間にわたって競技が行われるという。宿泊施設はどうなるの?また、質問をしてしまう。


ああ、テント買わなきゃ。


ふーん。その友達は持っていないの?


ん?ああ、マルタン?持っていないよ。


あ?相手って、男性なの?


そうだよ。マルタンに誘われたって最初っから言っているじゃない。


まさか、男性とチームを組むとは思わなかった。体力も持久力も全く違うだろう。それで彼はいいのか。いや、それより、彼と一緒のテントに寝るのか?


ママ、ただの友達。なに心配しているの?


ちょっと待ってよ。それでなくともテントは小さいんだから、その狭い空間に若い男女が二人だけで寝るって、ちょっと、大丈夫なの?ちゃんと考えたの?


母親の心配など、どこ吹く風の末娘バッタ。彼女の奔放な意見に、これまで何度も度肝を抜かれているが、さすが二十歳の大切な娘をそうおいおいとオオカミに手渡すわけにはいかない。


議論は堂々巡りをするだけ。仕方がないので息子バッタに加勢してもらう。彼に事情を説明すると、リスクはできるだけ回避すべきとの意見がでる。そう、当たり前ではないか。


釈然としない末娘バッタ。まあ、後は本人が決めるだけだが、一人ずつのテントを二つ持っていけば良いだけのことではないか、と思ってしまう。さあ、どうするのか。


一週間後、マルタンに確認したが、本人は全くそんな気はないので心配無用と答えたし、周囲の友達に意見を聞いたが、イベントに参加するのは男性が多く、後はカップル同士。なので、男性ばかりのテントの中に、一人だけ女性がテントで寝ることと、知っている男友達と一緒のテントで寝るのとでは、どちらが安全か考えてみると良い、と言われたらしい。


おい、おい、おい。


かくして、意気揚々と二人用のテントをスポーツ専門店で買い、現地入りした末娘バッタ。マルタンと二人の写真が時々送られてきて実況中継をしてくれるが、自転車とランニングの場所ではマルタンが完走してくれて助かったとか、道に迷って10キロもロスしてしまったとか、大変ながらも楽しそう。


これでは、若者たちは、疲れていて何も考えずにバタンキューの世界か。


翌日も疲れた体に鞭打って、二人で仲良くゴールインしたらしい。お疲れ様。こうして、末娘バッタは自分の信念を貫き通し、友情を確かめ合い、更に仲間を増やしていく。あっぱれなこと!まったく、若さとは素晴らしい!彼らの未来に乾杯!



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2022年5月10日火曜日

バナナシフォンケーキに魅せられて

 







いつも美味しいケーキをご馳走になるけど、今回のケーキは格段に美味しかったわ。軽くて、弾力性に富んでいるだけでなく、バナナのしっとりとした風合いが何とも言えないの。ぜひ、レシピを教えて頂戴。


マダムに惚れ込まれたケーキとは、オイルフリーのバナナシフォンケーキのこと。マダムがそこまでおっしゃるなら、とこちらも大喜びで、材料とレシピをできるだけ丁寧に、かつ分かりやすく書いて、デッサン入りでその日のうちに届けた。


滅多にケーキを作らないのであれば、台所に常備していないと思われるベーキングパウダー、ホワイトチョコレートを一緒に添えて。


マダムはとても喜んでくれたが、毎回会うたびに「この週末には作るつもりよ」、「バナナがなかったから、買って来たので明日にも作るわ」、「孫娘が来る来週末に作ることにしたの」と、こちらが却って申し訳なくなるぐらいに言ってくる。レシピだけならともかく、バーキングパウダーやホワイトチョコレートを添えたことで、変にプレッシャーを掛けてしまったのだろうか。


レシピが分かりづらいなら、よろしかったら土曜の午後にも伺うので、一緒に作りましょうか、と申し出たところ、「あら、レシピぐらい読めるし、ケーキも一人で焼けるわよ!」と言われてしまう。


何せ真向いのマダムなので、週日はともかく、週末にもなると必ずといっていい程顔を合わせるので、お節介し過ぎてしまったかな、と反省することしきりだった。


が、ある時、インターフォンがけたたましくなるので窓の外を見てみると、マダム。慌てて玄関に行くと、「大失敗よ!でも、取り敢えず作ったので一切れ持って来たわ。」と、未だ温かいアルミの包みを手渡された。うまく解けなかったけれど、宿題をちゃんと提出できたことを嬉しそうに報告する子供のような表情のマダム。


思ったようには膨らまなかったとのこと。レシピの書き方が悪かったのかもしれないと、慌ててアルミを開けてみると、確かにシフォンケーキの膨らみがない。今思えば、お行儀が悪いかもしれないが、一口その場で食べてみた。どうやら、型に塩入りバターを塗ったのではと思われる。メレンゲがしっかりと硬く角が出来る程まで泡立てていなかったのではないだろうか。


それでもメレンゲはしっかりと泡立てたという。5分は少なくとも泡立てたかと聞けば、そんなにしなくてもメレンゲになった、と譲らない。生地の色が濃厚な黄色なので、黒糖でも使ったのだろうかと思うが、これもキビ砂糖だと言う。なら、小麦粉か。すると、娘が田舎で飼っている鶏の野放し卵なので、黄身がオレンジ色で美しいでしょう、とマダムの方から情報をくれた。ひょっとしたら、卵のサイズが小さかったのかしら、と思う。


上手くできないってこと、すごく嫌なので、また挑戦するからね。と、マダム。次回は、是非、これでもかって程にメレンゲを時間を掛けてしっかりと硬く泡立ててみてくださいね。


メレンゲに非はなかったと不満げなマダムだったが、他に何が考えられるだろうか。レシピが分かりにくかったのかもしれない。信念を曲げて、サラダオイルを使ったレシピを別途書いて、手渡したが、どうも未だ最初のレシピに拘っているようだった。


負けん気なマダム。そんなマダムに、日本の母の日に、アールグレイの香りのシフォンケーキを焼いて、庭の薔薇と純白のリラを飾ってプレゼントする。フランスの母の日にはまだ間がある。お孫さんが遊びにくると聞いていたが、どうやら別の日になったようで、半分は冷凍庫に入れてしまったという。


とっても美味しかったわよ。でもね、やっぱり私は、あのバナナの香りのするケーキのほうが数段好きだわ。茶目っ気たっぷりに笑うマダム。実は、私もそうなんです。でも、せっかくだから別のケーキも味わっていただきたいと思って。


日がどんどん長くなってきて、優しい夕日が真っ白なリラをパールのように輝かせている、そんな5月のある夕方のこと。


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2022年5月9日月曜日

潮風

 






朝9時の船で本土に戻ることにしたので、早朝からトンカとたっぷり海岸線沿いに散策をする。船着き場の港まで歩いて30分、リュックを背負って、トンカを連れての行程なので8時には出発することにしていた。


途中鴨がたくさん泳いでいる沼があったり、鬱蒼とした森の中を通ったり、大草原を横切るなど、複数の道が選べたが、この際最短距離を取ろうということになる。つまり、車道を大人しく歩く、ということである。


丁度村を出たところで、一度抜いて行った車が停まってくれた。なんと、バッタ達の父親の従妹夫婦。彼らも同じ船に乗ることは前日、パピーの従妹の叔母さんの家に挨拶に行った際に聞いていた。しかし、こうもタイミングよく会うとは非常に幸運としか言いようがない。トンカも一緒に、皆で車に乗せてもらい、あっという間に港まで来ることが出来た。


これがこの島の魅力の一つ。とにかく小さいので、知り合いに出くわす可能性は大きい。以前、バッタ達の父親と島に遊びに来た時、船の中で常に親戚の誰かと出くわし、お互いに嬉しそうに近況を交換し合い、船着き場から電車の駅まで車に乗せてもらっていた。


もう二十年近くも会っていない筈なのに、当たり前のように話をし、離婚したことなど全く関係ないかのようにふるまってもらえるのは、大変不思議でもあり、ありがたかった。それほど時間が経過したということでもあり、それほど近しい関係ではなかったということでもあるか。


船の出航まで、カフェでおしゃべりをするのも、以前とちっとも変っていない。車に乗せてもらったお礼にと、彼らも誘って朝日を楽しみながらエスプレッソを味わう。バッタの父親の従妹夫婦はリヨンに住んでいるので、これから8時間かけて車で帰ることになる。恐らく同い年ぐらいの従妹は、あれから誰か良い人に巡り合って再婚したのか、と屈託なさげに聞いてくる。


そんなことにはならなかったのよ。そんな出会いがあるかもとは期待していたのだけどね。


笑顔で返事をする。


でもね、もう今では不思議なことに、ちっともそんな出会いを求めなくなっちゃった。必要を感じないのよね。それに、相棒としてはトンカを迎えたし。


人生、これからよ。きっと素敵な出会いが待っているわよ。


ふふふ。笑って受け流す。これまでの人生だって、大いに楽しんできたことなんて、力説するつもりは毛頭ない。


結婚式を挙げた神聖な地であるし、思い出がたっぷりと詰まった地でもあるし、何より、彼の大切な故郷なのだから、むやみに足を入れては申し訳ないと思っていたが、そんな変な気遣いは必要がないことに気が付いた。私が抱えていたわだかまりも、いつのまにかすっかり消えていることにも、今回気付かされた。


見上げる空はどこまでも青く、潮風が爽やかだった。そう遠くない将来、是非また訪れよう。きらめく海を見つめながら、そっと呟いた。







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