2022年6月30日木曜日

ありがたき相棒







不思議なことに、トンカは時間がちゃんと分かるらしい。じっとりと熱い鼻面を太ももに感じるので、顔をなでてあげながら時間を見ると、仕事終了すべき頃合い。慌てて書類を保存し、伝達メールを書き、一日を終える。


そして、散歩に出る。


通常なら、それで仕事のことなどすっかり忘れてしまうのだが、時々、やり残したデータ処理を終えてしまいたいとの思いに駆られる。そして、ついつい、夕食後にPCを立ち上げ、作業を開始してしまう。


と、驚いたことに、熱い鼻面が太ももの上に置かれ、じっと動かない。今頃仕事?との声が聞こえてきそう。


ごめん、ごめん。これだけやらせて。


諦めたのか、目の前のソファーに転がりこむ音がし、そのうちに寝息が聞こえてくる。


トンカ、君、すごいよ。トンカがいなかったら、毎日の散歩にも行っていないだろうし、だらだらと仕事も夜中まで続けてしまいそう。相棒よ、これからも、よろしくね。


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2022年6月29日水曜日

バッタ達の弟

 






バッタ達には随分と年の離れた弟がいる。バッタ達の父親への未練など、ちっともなかったのに、彼の誕生を知った時には、自分でも理解できない程動揺し、落ち込み、泣き暮れた。家族崩壊の決定的証であり、最早戻りようがないことの決定打のように思えたのかもしれない。バッタ達が別の家族にも所属する事実を容赦なく叩きつけられた思いがしたのかもしれない。


当時ボルドーに住んでいたパピーとマミーが、生まれたばかりのバッタ達の弟に病院に会いに行くので、上京。バッタ達も一緒に連れて行くということで、我が家に立ち寄った時のことは、今でも覚えている。扉を開けると、赤ちゃん誕生の嬉しさに興奮し、かつ、孫たち3人に会えることで嬉しさにはち切れんばかりの二人が立っていた。


バッタ達が出て行った、誰もいない家で、どう過ごしたのか、そんなことはもう覚えていない。嬉しそうなパピーとマミーが扉を開けると立っていた、その瞬間だけが脳裏に焼き付けられている。


いつのことだったか、パスポートを忘れたか、何かの問題で、海外に遊びに行くパパとバッタ達一行のもとに、空港まで行ったことがある。その時初めてバッタ達の別の家族と会ったのだが、弟君はとってもキュートで、まるで映画の「ホームアローン」のケビンのようだった。一切のわだかまりなく、心から可愛いと思い、抱きしめたものだった。


2週間に一度の週末と、バカンスの半分を一緒に過ごしたからだろうか。パパの思いがちゃんと子供に伝わったからだろうか。つまり、父親の教育のお陰だからなのだろうか。彼らは本当に仲良し兄弟で、週に一回時間を決めて、兄弟チャットをしている。


ついこの間も、弟君の誕プレとかで、皆で遊園地、パークアステリクスに繰り出していた。早朝出発なので、前日は皆で我が家に泊り、翌朝早く起きて、これまたワイワイと皆でサンドイッチを作って、長女バッタの運転で、我が家のクリオに楽しそうに乗り込んで出掛けていった。


そんな彼らを見ながら、バッタ達を大いに頼もしく思い、なんていい子達に育ったのだろうかと、妙に悦に浸ってしまう。



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2022年6月28日火曜日

華やかでエレガントなストロベリーロール

 








いつもの、どうしても作りたい病に罹ってしまった。治すには、とにかく作るしかない。小雨が降りそうな曇り空の中、トンカの散歩を早朝にたっぷりとし、大満足でキッチンの床にへばりつくように身体を伸ばしているトンカを残し、材料の買い出しに出掛ける。


急がないと苺のシーズンは過ぎてしまい、マルシェには杏やネクタリンが出揃ってしまう。できれば粒の大きさが揃っている硬めの苺があれば良いが、新鮮であれば取り敢えずは良しとしよう。後は卵とゼラチン、そして生クリーム。


ちゃんとレシピを見てから買い出しに出るべきなのに、気持ちが逸り、かつ、トンカを一人留守番させることからのタイミングもあって、取り敢えず出掛けてしまったが、家に帰って詳細にレシピを見てみると、マスカルポーネ、無塩バター、エバミルクが不足していた。基本さえ押さえておけば、問題はないこととするしかあるまい。問題はそこではなく、苺のスライスをいかに上手にゼリー固めにすることではないか。


珍しく粉ゼラチンを手に入れることが出来たので、レシピ通りの分量できっちりと作ろうと気持ちが高揚する。水にゼラチンを振りかけ、ふやかし、その間にお湯に砂糖を溶かし、赤のエキスをちょっぴり垂らす。香り付けにキッシュを使うのだが、我が家に置いてあっただろうか。ドリンクバーの扉を開けて中を吟味し、チェリーではなくフランボワーズのスピリッツの瓶を取り出し、小匙一杯程ゼラチン液に入れる。


苺のヘタをカットし、やや厚めのスライスをし、ペーパータオルの上に並べていく。一体どれぐらいの量が必要なのか見当もつかないが、取り敢えずは1パック分使い切る。次にパレットにサランラップをし、その上に似たような大きさの苺スライスを選びつつ並べていく。1パックで十分の量であったことに、ほっとする。


苺スライスが並べたパレットに冷ましたゼラチン液をゆっくりとたらし、苺が浮かない程度の量で抑え、冷蔵庫に入れて冷やし固める。その間に、ロールケーキのスポンジを焼くことにする。きちんと粉を篩い、しっかりと硬いメレンゲを作り、完全に材料を混ぜて生地を作ることができれば、スポンジケーキの8割は成功といえよう。


マスカルポーネやエバミルクがないし、ホワイトチョコレートも切らしていたので、ここは基本の生クリームのみを使ってクリームをホイップする。2パック目の苺の大きさを吟味し、粒のそろっているものを選び出し、ヘタと先を切り落としておく。


焼き上がったスポンジを冷まし、薄っすらと筋をつけ、クリームを置き、苺を並べる。その上に新たにクリームをのせて、くるりとロールし、ぎゅっと成形し、冷蔵庫で冷やし固める。苺のスライスにもゼリーを新たに流し、こちらもしっかりと冷やしておく。


そうして、しっかりと固まったことを確認し、ゼリーシートをロールに巻き付け、改めてぎゅっと丸く成形し、冷蔵庫で冷やす。


その日は偶然にもバッタ達の友人たちも加わり、大勢でにぎやかに夕食を囲んでいた。華やかでエレガントなストロベリーロールが、彼らの称賛のまとになったことは言うまでもない。お向かいのマダムにと、慌てて一切れ厚めにカットし、お皿に取り分けながら、笑みがこぼれる。



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2022年6月27日月曜日

三つ揃いの紳士

 







夕方の森の散策に行った時のこと、同じような時刻に同じような場所で、三回繰り返して背広姿の紳士を見かけた。それはスーツというよりも、背広と言った方がしっくりとくる仕立ての良さが感じられるもので、これまたベストというよりはチョッキと言ったほうがしっくりとくる、きちっとした三つ揃いだった。


誰から教えられたわけでもないし、その場を見たわけでもないのに、その紳士が森の外れの塀沿いの隅に一年前から張られてあるテントの住人であると確信した。


森の中に穏やかに馴染む茶色の三つ揃いは、恐らく男性の一張羅であると思われた。ちょっと開けた叢の遠くに佇んでいたので、普通なら気が付かないかもしれないが、兎の様に広い叢を駆け抜けるトンカの姿を目で追っていたので、小径でもない場所に人間の姿を認めて、一瞬どきりとしてしまった。そして、一張羅の三つ揃いであることから、その異様さに胸騒ぎがした。毎回同じ場所であることにも、なんだか変な気がした。


ただ、遠目ながらも道に迷って困っている様子でもなく、人生に疲れてまさかの行動を起こす切迫感も感じられなかったので、特に近くに行って声を掛けることはしなかった。



人生色々で、人それぞれ多くの思いを抱えて生きている。一回目は先立たれた妻の命日だったのかもしれない。二回目は結婚記念日だったのかもしれない。ひょっとしたら、三回目は風来坊の生活にピリオドを打つと決心した日だったのかもしれない。


偶然のことなのか、やはりあの紳士がテントの住人だったのか、真相は謎ではあるが、森の外れの塀沿いの隅にテントが張られていた場所に、もうテントはない。そして、三つ揃いを着こなした紳士を森で見かけることもなくなった。



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2022年6月26日日曜日

水も滴るいい子犬

 





森の結界が解けたのだろうか。

先日はトンカと森に遊びに行った長女バッタが、ママの言っていた沼を見つけたよ、と写真を見せてくれた。確かに、最近は迷うことなくたどり着けるようになってしまっていた。それはそれで、悪くないか。そう思いながら、夕立の後の乾いた大地が水を吸って精気を取り戻し、濡れそぼった草木が風がそよぐ度に雫をぷるぷるとまき散らす夕方、沼に足を運んだ。


夕立のお陰だろう。沼はいつも以上に膨らんで見え、鬱蒼とした木々の隙間から入り込む、夕方にしては強い夏の太陽の光線は眩しい程だった。


と、沼の奥の方で水の弾けるにぎやかな音がした。それまで目の前の沼の縁で駆け回っていたトンカだったが、私が写真を撮っている間に沼の縁をたどって奥まで行ったのだろう。臆病なのに好奇心がそれを上回ったのか。沼から逃れようにも、底なし沼の体をなしているのか、随分と難航している音が続く。漸く十八番の跳躍力を使って、飛び出してきた。


水一滴身体にかかることを厭うのに、身体ごと沼の中に入り見事にずぶ濡れ状態。どんなに体をぷるぷると震わせて水気を追い払おうとしても、どろんこ状態に変わりはない。生まれて初めての汚れ方。手足を拭くのさえ、毎回這う這うの体なのだから、どうしたのものか。


本人も不甲斐ないと思っているのではなかろうか。どろんこの姿に思わず笑みがもれてしまう。






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2022年6月24日金曜日

真夜中のメッセージ

 






夜中、暑苦しいわけでもないだろうのに、目が覚めてしまった。どうやら珍しく蚊がいたようで、腕や足が痒い。気休めとは思いつつも、洗面所に歯磨き粉を取りに行き、ペーストを少しだけ部屋のランプの台に塗り付ける。こんなことなら、就寝前にしておくべきだったな。


そして、ふと携帯を手にしてしまう。夜中に携帯を見ることは良くない、とは知りつつも、ついつい見てしまう。そして、ニュースやら、メッセージ、時には動画さえも見てしまう。


と、その日は末娘バッタからのメッセージが入っていた。しかも、今さっきもらったばかり。機内モードにしていたので、時刻はオンにした時のものなのかとも思うが、いやそうでもなさそう。


漸く年度末の試験が終わったからと、友人の引っ越しを手伝ってパリに行っている筈だった。恐らく、羽目を外してパリの暮れない夜を楽しむんだろうと思っていたが、どうもそうもいかなかったらしい。セーヌ川沿いを歩いていて、おっちょこちょいにも躓いて小さな五寸釘に腕をひっかけ、かなり出血したらしい。


友人のアパートで消毒してもらったものの、一応見てもらおうと行った近所の薬局で、かなり傷が深いので救急病院で縫ってもらった方が良いとのアドバイスをもらう。そこで慌てて最寄りの救急病院に向かうも、気温も穏やかな中々暮れない夜のことで、緊急患者がひっきりなしに救急車で運ばれてきて、末娘バッタの傷は深く、縫合処置をすることになったものの、優先順位が低く、後回しになってしまっている、とのことだった。


一瞬にして目が覚め、のろのろとしていた思考回路がフル回転する。パリだからなのではないか。今から迎えに行って、こちらの田舎の病院で診てもらってはどうだろう。そうメッセージを送ってやると、大丈夫とのこと。


大丈夫、か。


せっかくのバカンスの第一日目にケチがついてしまったが、バカンスの日で良かったと思わねばなるまい。試験に臨めなかった日には、泣いても泣ききれまい。結局朝まで一睡もできずに、待合室で声を掛けられるのを待っていたとか。いやはや。


掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 

筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等

諸々の禍事 罪 穢 有らむをば 

祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せと 

恐み恐みも白す



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2022年6月23日木曜日

出会いの森

 





バッタ達と、まるで千と千尋の神隠しに出てくるような情景だよね、と言っている森の入り口にたどり着いた時だった。小川のある散歩道からの小径を、今ちょうど登り詰めたと言わんばかりの様子で、飴色の毛をした大きな塊が佇んでいた。ラブラドールレトリバーに違いない。


トンカがさっと私の後ろにカンガルー跳びをしながら隠れる。警戒しつつも、遊びたい気持ちが溢れている時のポーズだった。


ちょっと息を切らしながら女性の飼い主が坂を上りきり、「この子は優しい子なので、大丈夫ですよ」と声を掛けてくれた。先ずは鼻と鼻でご挨拶。40キロは優にありそうな巨体ながら、未だ10か月という。飼い主さんにジャンプしてしまうトンカを叱ると、一向に構わないし、この年頃の行為としては当然ですよ、と優しく言ってくれてほっとする。


トンカたちが細い山道を猛スピードで駆けっこし始めた。スヌーピーという可愛らしいネーミングがぴったりの愛らしい顔をしているが、かなりの巨体。大声で吠えたり、誰彼構わずジャンプをするので、ほとほと困っていたところ、一か月前からピタリと止めたという。どうやらやんちゃなアド(テーィン)から、立派な青年に成長したということらしい。


これから森に行くのかと思っていたが、スヌーピーが坂を上がりたがるので、初めて訪れたと言うではないか。二匹は出会う運命にあったのかとさえ思えてしまう。聞けば、我々がいつも通る帰り道とドンピシャ。一緒に小川のほとりを歩き、二匹は猛スピードで駆け回りながら、よもやま話に花が咲く。


二匹のじゃれ合いを見ていると、ジャンプ力、瞬発力にかけては、トンカはぴか一。父親は森の精ではなく、カンガルーではないかと思えてしまう。助走なしで高くジャンプできるのは、すごいことではないだろうか。そして、急ブレーキがこれまた凄い。


スヌーピーはスヌーピーで、そんなトンカを優しく包むようにフォローしながら一緒に駆け回っている。これもこれで、素晴らしい能力だと感心してしまう。


気が付くとフランスの教育システムについて二人で熱く語っていた。聞けば、どうやら夫婦で教師らしい。もう少し話をしたいな、と思っているところで、彼らの車が停めてある駐車場についてしまう。


連絡先を交換しようか。ふと思いが過るが、いやいや、きっとまた会える。また、会おう!



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2022年6月22日水曜日

スムージー

 





お宅の犬の名前は?


少しは涼しくなったと感じられる夕方に、トンカを連れ出して森に行くと、向こう側からリードを付けたビーグルがやってくるので、「ボンジュール!」と声を掛け、トンカが遊びたがっている様子だったので、「この子、一緒に遊びたがっていますが、どうですか?」と誘ってみた。


ところが、ビーグルを連れていた年配の女性は、こちらをじっと観察しているだけで、ちっとも反応がないので、ひょっとしたらフランス語が通じないのかと思った。ただ、英語を話すような雰囲気もないし、バリバリのラテン系でもなく、ましてや、北欧やオランダ系でもなさそう。


困ったなと思い、英語で話しかけようかと思った矢先に、思い切ったように「ああ、今リードを離すわ。」とフランス語の返事が返ってきて、二匹がお互いを嗅覚、視覚、聴覚で確認し合っている時に、突然聞かれた質問が冒頭の犬の名前だった。


トンカです。トンカ豆のトンカ。


トンカ!それはいいわね。


二匹が喜んで走り回っている様子を見ながら、年齢、そして名前を聞いてみる。


ああ、私の犬じゃないのよ。


そう前置きをして、先ほどの躊躇いがなんだったのかと思う程、マダムは立て板に水の様に俄かにおしゃべりになった。


息子の犬なの。スムージーっていうのよ。発音しにくいから、あまり気に入っていないのだけれど、息子が考えてつけたの。なんだか、アメリカの飲み物なんですってね。


それで、あなたの犬はいたずらをしない?どんないたずらをする?草は食べるの?この子は草を食べちゃあ、アパートで吐くものだから、困りものなのよ。もう、悪さばかりするし。息子はパリの15区に住んでいるのよ。二人でアパートを借りていてね。相手の子は、それはいい子よ。息子は犬が欲しいって言って、随分とネットで探して、私たちの車を使って、フランスの中部のブリーダーのところまで2回も本当に自分と相性が合うか、って確認をしに行ったのよ。


私は犬って、そりゃあ手が掛かるって思うわよ。でもね、息子が可愛がっているからね。仕事の関係で4日間留守にしていて、その間家で預かっているのよ。散歩もね、と、森の道を詳しく教えてくれた。


その間、二匹は大喜びで猛スピードで駆けっこをしている。森の中で、ずっとリードをしながら散歩をしていたのだろうか。息子さんの犬に、何かがあったら大変だと思ってのことかもしれない。ビーグルは意外に無鉄砲に飛び出して、遠くまで追跡癖があると聞いている。


ふと気が付くと、二匹が絡み合ってぐーぐーしている。最初は噛み合いっこをしているのかと思ったが、スムージーのハーネスにトンカの顎が挟まってしまい、身動きがとれない状態になっていた。トンカは必死でもがいているので、鋭い牙に噛みつかれないように落ち着かせてから、顎をハーネスから外してやった。


こんなハプニングがあるから、やはり目は離せない。二匹は息も荒く、地べたにへたり込んで一時休戦状態となっている。


じゃあ、そろそろ行きましょうか。マダムはスムージーに声を掛けると、驚いたことにスムージーはマダムの足元にちょこんと座り、大人しくリードをつけてもらった。


なんてお利口さん!それでは、また。良い夕べを。


マダムとスムージーの姿は、森の奥に消えていった。さあ、トンカ。我々も行きましょうか。



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2022年6月19日日曜日

猛暑に熱々のクミンの香り豊かなブリックを頬張る

 




末娘バッタが週末に帰ってくるなり、ブリックが食べたいとリクエストする。この暑さの中で、ブリック?と思わなくもないが、食事のリクエスト程嬉しいものはなく、いつだって張り切ってしまう。


息子バッタだと、こうはいかない。何故か彼はママに遠慮するのか、ママが作るものなら何でも美味しいという、いわば、どうでもいいよとのメッセージに受け取りかねない姿勢を貫く。それは彼の優しさであって、実は何を作ろうかと既にアイディアがあって、材料も揃っている場合が往々にしてあるので、それであれば料理人の意思を尊重する、というもの。


長女バッタは、やや複雑。時々菜食主義者になってみたり、お腹の調子が悪いからとスキップしたりする。好き嫌いはないし、のんびりマイペースで食べるが、ちゃんと美味しく食べてくれるので問題はないが、料理の相談をするには、なんとなく物足りなさを感じてしまう。


だから、末娘バッタが好き勝手なことを言ってくれると、料理人としては嬉しくてしょうがない。


しかし、猛暑の中、煮えたぎったような熱風が入らないようにと窓を閉め切っているのに、火に油を注ぐかのようにブリックを作るとは。まあ、チュニジアの眩しい太陽の光に思いを馳せ、乾燥した空気と真っ青な空を思い描いて、クミンの香りをたっぷりと効かせて作ろうではないか。


先ずジャガイモを茹で、その間に玉ねぎをみじん切りにする。マッシュポテトを作り、ツナ缶をほぐし入れ、塩コショウ、そしてクミンをたっぷりと入れる。せっかくだからと、マッシュルームのみじん切りもたっぷり入れる。


ブリックの皮に円くおき、真ん中に卵をそっと割り落とす。皮を二つ折りにし、水溶き小麦粉で回りをしめらせ、封をする。うっかりしていたが、我が家にはオリーブのエクストラバージンしか置いていない。勿体ないとの思いが過るが、ままよ。たっぷりと鍋にとり、オイルを熱し、そこにするりとブリックを滑りこませる。じゅわじゅわと心地よい音が聞こえて、暑い中にも香ばしさでキッチンが豊かな楽しさに溢れ始める。


目を丸くして、固唾を飲んで末娘バッタと息子バッタがブリックが揚がる様子を見ている。卵に十分火が通り、それでも半熟の状態が理想。相変わらずの欲張りで、ポテトの量が多かったかもしれないが、なかなかどうして美味しそうじゃないか。


さあ、熱いところを食べてちょうだい。ボナペティ!



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紫陽花には雨が似合う

 





紫陽花には雨が似合う。


このところ、すっかり好天気続きで、夏に向かってぐんぐんと進んでいることが感じられる。ちょっと前までは流石に朝は肌寒く、コートやショールが欠かせなかったことが嘘のよう。ともすると、熱波が全土を襲い、外に出るにも億劫で、冷房など備えていない一般家庭では寝苦しい日となってしまう。


そんな日には、早朝の爽やかな空気を家に送り込むと、午前中から鎧戸やシャッターを閉め、外の熱が入り込まないようにしている。それで一階は過ごしやすくはなるが、二階にはどうしても熱が上がってしまう。


それでも、そんな日は数える程。そんなに長くは続かないし、庭の紫陽花がせっかく色付いてきた蕾をしょんぼりとさせていたのに、雨がざっと降り始めると、俄然我が舞台との如く鮮やかに蘇る。


ひんやりとした雨を受けて、レインクロードの実も一回り大きくなったように思われる。雑草もすっかりと蘇ってしまったか。そろそろ草刈りをせねば。なんだか、こちらまで活躍の場を提示されたかのように嬉しくなってしまう。


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2022年6月17日金曜日

朝摘みフランボワーズ

 






久しぶりに近所の友人からメッセージが入る。


お庭で採れたフランボワーズを届けてくださると言う。なんて嬉しい申し出なのかしら。夜の帰宅となるが、翌日ならいつでも在宅している旨を伝えると、朝摘みをお持ちくださると言う。


「朝摘み」、なんて爽やかな響きだろう。早朝、まだ日も昇ったばかりで朝露に草葉は濡れ。辺りは冷ややかで新鮮な空気に包まれている。空高く鳥たちが颯爽と駆け巡っている中、かわいらしい帽子の形をした真っ赤なフランボワーズ達は、もう嬉しくておしゃべりを始めている。


家にいるとは言え、テレワーク。お茶の一つも差し上げられない無粋を事前に詫びると、平日はお仕事にお互い精を出しましょう、との返事。


朝摘みならぬ、朝切り薔薇のブーケをお礼に用意しておこう。薔薇の甘い香りを引き立てる深緑の月桂樹を添えようか。葉を少し刻むと、ぱっと爽やかな森の香りが放たれるので、それを演出としようか。


なんとも爽やかな一日の始まり。


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2022年6月16日木曜日

ひっそりと緑の水をたたえる沼

 







先日、トンカを連れて息子バッタと森を散策していた時のこと、「以前ここに小屋があったよね。ボクが子供の頃のことだけど。」と、唐突に言われて面食らってしまった。小屋があった記憶などないし、正直な話、彼が幼い時に一緒に森を散策した記憶がない。近所の公園にバッタ達と連れ立って行くのが精いっぱいで、森にまでは足を延ばしていない筈。幼い時のバッタ達は森の入り口にたどり着いただけで、お散歩終了になってしまっていた。


思い出すのは別の森に自転車で行ったこと。確か末娘バッタは三輪車だったか。だから、自転車組の長女バッタと息子バッタを途中で見失い、にわか雨が降りだし、血相を変えて探し回ったことを覚えている。森での散策なんて、それぐらいだった。そもそも、一番「散歩」なるものを嫌がったのは息子バッタだった。何の目的もなく、ただ歩く、という行為の楽しみが彼には理解できず、瞬間移動に憧れるタイプだった。


いつの頃からか、一人で街を歩いたり、森にランニングに行ったり、友達と山歩きを楽しみ始めたのだから、人間は分からないもの。しかし、記憶にかけては彼の右に出るものはいない。となると、そこに小屋があったのだろうとしか言いようがない。


それより、以前沼があったけど、見当たらないよね。干上がっちゃったのかしらね。


トンカが未だ生まれてもいない随分前のこと、バッタ達がいない週末、一人で森を散策することがあり、その時に沼を見たのだが、このところ色んな道を通っても、ちっとも沼にぶつからなかった。


そう言うと、息子バッタは不思議そうにこちらを向いて、ママ、ほら、ここだよ。と小径を指さしたのだから、本当に驚いてしまった。そして、その小径に入って、息を飲み込んでしまった。密やかに鮮やかな緑の水面がきらめいていたのだから。


実は、それ以降、朝日が差し込む沼の様子を写真に撮りたいと、何度も足を運んだのだが見つからなかった。一体、あの沼はどこにあるのだろう。森はたくさんの小径があるが、何故だろう。トンカと森を散歩しながら、色んな道を試してみるのだが、どうも見つからない。


それが、今回泉なるものを初めて発見し、そのおどろおどろしい薄暗闇の中で水が湧き出る音にびくびくしながら歩いていると、緑の沼がぽっかりと姿を現した。森には精が宿るというけれど、信じたくなってしまう。


そういえば、トンカの父親が森の精だったか。



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2022年6月14日火曜日

ほろ苦い大人のデザート

 




一年前に日本に駐在となり、少なくとも三年はいるだろうから、その間に遊びに来てね、と言っていた親友夫婦が、一年もしないでフランスに戻って来た。職場での大抜擢がその背景なので、喜ばしいことではあるのだが、せっかく引っ越して、日本語もなんとなく分かり始め、友達も出来てきたところだったし、まだまだ行きたいところに行けていないとの思いもあり、やや消化不良の模様。それでも、彼らがフランスに戻ってくることは、とても嬉しいことで、うきうきとしていた。


我が家に彼らの車を預かっていることもあり、帰国してすぐの週末に顔を出してくれたのだが、一つだけ計算外のことがあった。トンカの存在。なんと、親友は幼い時に犬に噛まれたとかで、犬が怖くて大の苦手。そんなこと、これまで初めて知らされた思いだった。


トンカは誰にも愛嬌が良いし、こんなに可愛いのだから、と思っていたが、その思いは万人に共通するものではないようだった。怖いので犬を家にいれないでくれ、と言われ、丁度遊びに来ていた息子バッタが庭でトンカを遊ばせてくれることになった。


大丈夫、トンカは噛まないし、一度挨拶をしたいだけで、その後は我が道を行くタイプだから、まとわりつかないよ。そう言っても無駄だった。それでも、二回目に遊びに来てくれた時には、森まで一緒に散歩しようとなった。


森の散策の間、一度もトンカが彼女に悪さをすることはなかったが、森から戻ってくるやいなや、もう帰ると言うではないか。これまでの我々の付き合いで、一度たりとも一緒に食事か、お茶をせずに別れることはなかった。これは大ショックだった。


冷蔵庫にはグレープフルーツ味のプリンが人数分冷えていた。息子バッタが、ママ、本当に犬を怖がっているんだもの、仕方がないよ、と慰めの声を掛けてくる。それは分かってはいるが、なんてことなのだろう。大好きな友達と一緒に時間を過ごすこともできず、愛しいトンカを受け入れてもらえないなんて。


グレープフルーツで作ったキャラメルをかけた、ぷるるんとしたプリンは、今の心持をちょうど反映しているかのように、ほろ苦かった。



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2022年6月13日月曜日

お留守番

 






長女バッタが一日家でトンカを見てくれる日の前日に、急にランチプレゼンテーションが入ったので、午前11時半には家を出なければならないと知らされる。


ちょっと、ちょっと、それはないじゃない。


そう言おうとする気持ちを抑える。長女バッタだって、遊びではなく、仕事をしているのだから、流石にトンカ優先とはいくまい。はて、どうしたものか。

トンカももう6ヶ月になり、そろそろ一人でお留守番をしてもらいたい時期になっている。それは一緒にいてあげたいが、買い物であったり、ちょこっとした用事、友人たちとの会食など、トンカを連れて行ってあげられない場も少なくない。


思い切って午後一人でお留守番をしてもらうことにした。


ちょっと早めのお昼を食べさせてから、大好きなヤクのチーズをあげて長女バッタはこっそりと出掛ける手はずとなった。


当日、11時半きっかりに長女バッタから無事に家を出た旨連絡が入る。できるだけ早く帰ってあげたいと思うが、なかなかそうもいかず、漸く家の玄関にたどり着いたのが夕方5時半。元気の良いトンカの声が聞こえる。


ただいま!サロンのドアを打ち破らんばかりの音がしているので、すぐにサロンに入ると塊が飛び掛かって来た。さっとサロンを見渡したところ、驚いたことに絨毯もソファーもおもちゃさえもきちんと片付いていて、特に異臭もせず、お利口さんにヤクのチーズを噛みながら、静かにお留守番をしてくれていたことが分かった。


大急ぎで庭に出してあげると、松ぼっくりを口に咥え、今にも松ぼっくりを飲み込まん勢いで飛び掛かってくる。偉いね、トンちゃん。ありがとう、ちゃんとお留守番ができたね。お利口さんだね。トンカは、嬉しくて、安心して、それでも、興奮して、もうどうして良いか分からない状態で松ぼっくりを咥えてグーグーしている。抱きかかえようにも、飛び回って捕まえようがない。


よし、トンカ、森に行こう!


嬉しさで、こちらの方が飛び上がらんばかり。トンカ、そうしょっちゅうは一人にしないけど、これからも仲良くやっていこうね。相棒よ。



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2022年6月12日日曜日

鋭敏な感性

 






森を散策している時に、突然トンカがカンガルー跳びをし、背中の毛を逆立てて前に進みたがらない時があった。犬がこんなに毛を逆立てることを見たこともなかったし、いつもすたすたすたっと探偵気取りで臭いを嗅ぎながら楽し気に歩いているトンカが、突然立ち止まってしまったので、驚いた。


前方、見通しが悪いわけではなく、ちっとも危険信号を発するような様子は見受けられない。しかし、何かがいて、トンカをここまで牽制せしめているのだろう。イノシシだろうか。兎やリスなら、喜んでついて行くだろうし、シカなら相手の方がさっさとどこかに走って行ってしまっているはず。


そういえば、トンカが未だ赤ちゃんだった時に、寝る前のトイレに外に連れ出した際、藪の前でカンガルー立ちをし、じっと上を覗いているので、こちらが怖くなってしまったことがある。


人間には感じ取れない何かを感じることが出来るのだろう。


感じ取り過ぎて、最近は吠えることをすっかり覚えてしまった。やれやれ。鋭敏なその感性を別のことに有効活用できないものかしら。


悩みは絶えないながらも、トンカへの愛は膨らむ。



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2022年6月10日金曜日

不思議な出会い

 





トンカと散歩をしていると、色んな人たちとの出会いがある。これまで、恐らく言葉を交わすことがなかったであろう人々。


ゆっくりと散策を楽しんでいる高齢のマダムたち、のんびりとベンチでおしゃべりを楽しんでいるリタイアした夫婦、叢に寝そべっている親子、小川で水遊びをしている子供達、ワイルドな装いでマウンテンバイクを楽しむ若者たち、ランニング中の男性。もちろん多いのが犬を連れている人々。


トンカは嗅覚だけでなく、第六感も発達しているようで、トンカを受け入れてくれる人や動物を一瞬のうちに識別する。トンカの勘に頼るわけではないが、これまでトラブルになったことは有難いことにない。自転車やランニング中の人、散歩する人を上手に避ける術を身に付けている。


先日は3匹の犬を連れて、自分は携帯で大声で電話をしている男性と出会った。その日は雨上がりだったからか、一匹も遊べる仲間と出会っていなかったので、毛むくじゃらの塊を見つけると、カンガルーの様に跳び上がって牽制しつつも、大喜びのトンカだった。


ただ、3匹の毛むくじゃら君たちは、どうもスプリンターではなく、トンカとぐるぐると臭いを嗅ぎ合っているだけで、当てが外れてしまった感が強かった。電話を終えてこちらにやってくる男性に、見事な三匹ですね、と声を掛けると、強いアクセントで3匹の関係を説明し、一番若い一番大きめの毛むくじゃら君の飼い主であると教えてくれた。


そして、唐突にアジアのどこから来たのか、と聞いてきた。初めて会った人に対して、こんな失礼な質問はないだろう。憮然とした顔をしてしまったと思うが、相手は怯むこともなく、アジア系の方ですよね、と言い方を変えて来た。


日本ですよ。と教えると、大仰に目を見開いて驚いて、「ニホンジンデスカ!ワタシ、ニホンゴハナシマス。」と言ってくるではないか。この手は大いに苦手。なので返答をしないでいると、「ニホンゴハナシマスカ?」と聞いてくるではないか。

先ほどの大声の電話が英語だったので、英語で、もう長いことフランスにいるので、とさらりとかわし、で、そちら様はどちらのご出身ですか、と投げかけた。


その質問を聞いたか聞かぬか、3年半日本に住んだことがあり、大好きなんだ、と嬉しそうに話し始めた。そして、日本のどこから来たのか、と聞き始めた。その問いをやんわりと避け、日本に住んでいたのですか!と、それこそ大仰に驚いて見せた。お仕事ですか?だとしたら、どんなお仕事をなさっていたのですか?今度はこちらが矢継ぎ早に尋ねる。


大学で教えていたんだよ。トーダイ、ワセダ、。。。ふうん。ずいぶん昔の話ですが、と出身大学を告げると、「いわゆるフランスで言うところの、クリームのクリーム、最上級のクリームじゃないか」と言うので、昔のことですし、フランスでは全く何の意味もないものですよ、と伝える。相手はにやりとする。


私の日本人の知り合いで、彼は本当に優秀な経済学者なんだけれど、大学闘争の時代に大学進学したので、彼の年は東大の入試が行われなかったので、一ツ橋に行ったんだ。だから、彼のCVには、大学闘争で東大の入試が中止された年、との但し書きが記載されているんだよ。


バカバカしい。その方を存じ上げないので言うのも何ですが、つまらない話ですね。そんなことに拘るなんて。


吐き捨てるように言ってしまってから、後悔し、まあ、ジョークでしょうけど、と付け加えた。彼は日本人の経済学者の優秀さを強調している。それでご専門は?「経済学だよ」どちらの大学を出ていらっしゃるのですか?「プリンストン」


そう来たか。まあ、プリンストン相手に威勢を張ったのだろうか。出身大学で人格までランク付けされた日にはたまったものではない。


長女バッタの専攻が経済なので、彼女の話をすると、どこで学んでいるのか、と聞いてくる。おっと。彼女が何を研究しているのかは把握しているつもりだが、所属の大学となると覚束ない。すると、是非研究論文を読んでみたいので、送ってくれ、とリクエストされる。


面白いなあ。ちょっと嫌味なおやじ風に書いてしまったが、それから、パリで教えている日本人の経済学の教授の友達の話をし、2011年の東日本大震災の話をし、日本の故郷の宣伝までしてしまった。聞けば、彼の子供たちはバッタ達の通った学校の卒業生。もう卒業して随分と経つようだったが、そんなに近所に住んでいながら今まで会ったことがないことが不思議なぐらい。


是非連絡先を教えて欲しい、と言う。「最初のデートでは無理かな」笑える、笑える。


こんな会話の間中、毛むくじゃらの3匹とトンカは意外におとなしく、ぐるぐるとその辺を動いているだけだった。


去年までは森で散歩をしていたが、イノシシの子供と犬がやりあう事件があったので、それ以来は森の中には入らないことにしているという。そうか。森は魅力にあふれているだけでなく、危険も潜んでいるのだな、と今更ながら思う。


それでは教授、またお会いしましょう!笑顔で別れる。トンカがもたらしてくれた面白い出会いに笑みがこぼれる。


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2022年6月8日水曜日

お好み焼きの夕べ

 







ママ、あのね。


トンカを一日面倒を見てくれた末娘バッタが、夕食に彼女の大好きなトロロ芋を摺りながら、とつとつと話を始めた。


冷蔵庫には鶏のモモ肉、ダチョウの胸肉、前日の海老とキノコのリゾットが眠っていたが、お好み焼きが食べたいと言うリクエストに応え、もう暫くは眠ってもらうことにする。キャベツの千切りをし、意外に美味しい繋ぎとなるズッキーニを削る。卵は一つでいいかしら。


キッチンの小さな空間を一緒に肩を並べて、いや、彼女の方が頭一つ以上大きいのだが、Yuvuzela亭のアレンジで特別に美味しくなれとお好み焼きの準備を一緒にしながら、彼女の話を聞いた。


恐らくパパとママとでバカンスの期間を分けていたことに由来するのだろうか。ぎりぎりまで日本に行っていて、帰って来たその足でパパとブルターニュに行くこともあった。むしろ、それが当たり前の様に、ブルターニュから帰って来た翌朝にはイギリスに出発していたり、とにかく時間の有効利用と言えば言葉はよいが、ぱつんぱつんのスケジュールで走って来た。


だからか、末娘バッタはいつだって幾つもの予定を同時に抱えている。子供の頃も友達の誕生パーティーの梯子を提案したのも確か彼女だった。今はパーティーの梯子など、当然のことのようにしているのだろう。分刻みの生活。この間の私とのブルターニュ行きも、帰って来たその夜にはノルマンディーの友人とのキャンプに出掛けていた。そして戻ったかと思ったら、今度はトライアスロン大会にと出掛けて行き、そのまま新学期を迎えていた。


大学生活も、同時に別の大学で単位を取得し、ディプロムを獲得するように頑張ったり、そうかと思うと中学生に日本語を教えてみたり、自治会選挙に出たり、スポーツイベント企画をしたりと、いつ自分の机でしっかりと勉強をする時間があるのか、正直謎だった。


人間は平等に一日24時間しか与えられていない。


ふと、我が身を振り返り、似ているな、と苦笑してしまう。そんな生活が続くわけがなく、どこかで破綻してしまう。しかし、誰かに指摘されても、むしろ反発するだけで自覚しないことには改善できないので、質が悪い。


トンカと一日を過ごして、少しは落ち着いて考えることができたのだろうか。これまでのぱつんぱつんの夢計画の一つを少し考えなおしたい、と告げられた。そう焦らずとも、後二年後にチャレンジしても良いのかと思った、と。


親が自分の夢を子に託しているのではないか、そんな過ちを犯してはいないか、と自戒していたが、彼女は自分で考え、自分の言葉で、自分の夢として語ってくれていることに、心から嬉しく思う。


そうだよね、ママも賛成よ。


肩の荷が下りたのか、すっきりとした笑顔が戻って来た。そして、どんどんと強いエネルギーがあふれんばかりの笑顔にと広がっていく。その夜のお好み焼きが格別に美味しかったことは言うまでもない。



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