2022年12月31日土曜日

ビストロYuvuzela亭のノエル

 





ビストロYuvuzela亭の今年のノエルのメニューをご紹介。厨房に迎えるスタッフは、ペスカタリアン宣言をした長女バッタ、蕁麻疹対策で食生活改善を目指しながらも何でも食べ、クオリティー優先の息子バッタ、果物アレルギーが顕著で、乳製品アレルギーもある筈ながら好きなものは食べちゃう主義の末娘バッタ。



海の幸:牡蠣、海老、ツブ貝







牡蠣2ダースをマルシェで調達。牡蠣の大きさで番号が1から5まであり、大きい程長い年月海の中で育っていたことになり、味もその分濃厚になるなどの蘊蓄があるが、実際どうなのだろう。昨年は蟹や雲丹も揃えたのだが、バッタ達から量が多すぎたとの指摘あり、泣く泣くリストから外してあった。潜在意識が働いたのか、今年は贅沢にも2番を選んでしまった。







海老買い付け担当の末娘バッタは、種類豊富に並んでいる海老たちの中から安めの海老を選んで頼んでいたが、担当のお兄ちゃん、丁度牡蠣を買い終えて様子を見に来た私が財布を握っていると察知したのか、「ノエルですよ!せっかくです。こちらの立派な海老を選ばなくっちゃ。」と威勢よく声を掛けてくる。お兄ちゃんにそそのかされ、大奮発。隣で末娘バッタは目を白黒。



ツブ貝も頼んだ量の二倍にしたと、責任感の強い末娘バッタは興奮して報告してくるが、まあ、ノエルだもの、それぐらい、いいわよ、と笑顔で返事をする。



息子バッタが「ママの好きなマテ貝があったよ。翌日はこれにしない?」と言ってきた。バッタ達は24日の夜は我が家で食事をし、25日はパパのところに行く予定となっていたが、ここ2年来パパを自分の人生から完全にシャットアウトしてしまっている息子バッタは家に残ることになっていた。パパの哀しみを知っているだけに、気持ちは複雑。いつか、息子バッタも吹っ切れて、心地よい父親との距離を持てるようになる日がくるだろうと信じているが、それがいつになるのか、今のところヒントも兆しもない。





山の幸:きのこ3種のウェリントン、コージェットのスフレ






茶色いシャンピニョンを700グラム、ジロールとピエドムトンをそれぞれ250グラム、それぞれ調達。ヘーゼルナッツは末娘バッタのアレルギーを引き起こす食品リストの一つなので、胡桃に急遽食材を変更。切り方、味付け、それぞれ別々にしたものを、折りパイ生地に包んでオーブン焼き。こんなにキノコを入れたらパイが爆発しちゃうと大騒ぎしながら長女バッタが担当。付け合わせのクランベリーソースも彼女が作成。







グジェール




コンテ、エメンタル、グータと3種のチーズを入れたグジェールは、息子バッタと末娘バッタが担当。簡単にレシピを見つけて作ればいいのに、何故か先日私が作った時のレシピを参考にしたいと、メモ書きの解読から開始。べとべとになり、粉を足すべきか二人で大騒ぎをしていたが、なんとか収まった様子。こんな賑やかさもノエルならでは。後でメモ書きを確認してみたが、30グラムの水を36グラムと誤読したらしいと判明したが、まあ、味が良ければ全て良し。





ブッシュドノエル





こんなにスポンジがしっかりと膨らみ、クリームも固く、綺麗に巻けたことはないと自画自賛。くどくならないように、敢えてチョコレートやクリームでカバーせず、粉砂糖を散らした程度。うっすらと雪化粧もお洒落ではないか。


息子バッタが大いに感動してくれたが、面白いもので、後日末娘バッタが、いつものように、ぺっちゃりとしたスポンジで、とろんとしたクリームの方が好きだと告白し、皆で唖然。まさか、あの失敗作が彼女の好みとは!




にぎやかに、楽しく夜は更けてゆき、お腹も心もたっぷりと満たされる。





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2022年12月29日木曜日

お誕生日おめでとうございます!

 





ジュークボックスや木彫りの等身大の少女の像が置いてあったバーで、お二人に初めてお会おいした日のことを、今でも鮮明に覚えています。幼い時はすごく恥ずかしがり屋で、柱に寄りかかりながら絨毯に明るい太陽の陽射しが映し出されているのをじっと見ている様な子でした。5歳か6歳の頃だったと思います。


「ブラジル」という地球の裏側にある国に住んでいることや、「ハンモック」という聞きなれない言葉の響きは魔法のように魅力的でした。今思えば、恐らく父や母も、大学時代の親友との再会に心躍り、嬉しかったのだと思います。その両親の思いを子供ながらに察知し、私までも嬉しくなり、お二人の存在が、ハンモックと一緒に私自身にとっても特別なものになったのでした。


そんなお二人と、母、子供達と一緒に過ごしたブラジルでの日々は、人生の中でも最高に楽しかった思い出の一つとなって輝いています。緑眩しい広大なお庭を見ながらのテラスでの朝食は、馥郁たる珈琲の香りが漂い、マンゴ、パパイヤが惜しげもなく置いてあって、搾りたてのパイナップルジュースが甘い香りを放ち、これまた人生の中で最高に贅沢な朝食の一つとして、私の思い出の引き出しの中で重要な位置を占めています。


お二人を通して若かりし頃の父や母を知ることも、とても刺激的ですが、同時に、今でも若々しく微笑んでいる写真の父が、もしも存命であれば、お二人のように今頃ロマンスグレーになっていたのだろうと想像することも、ちょっとした楽しみです。


どうぞお身体を大切になさってください。また是非ボニートの時の様に、一緒に鳥たちに「アラーラ!」と大声で声を掛け、カピバラを見つけては大騒ぎをしたいな、と思っています。


本日は奥様と母を訪れ、一緒にお誕生日をお過ごしいただき、誠にありがとうございます。嬉しそうな父を感じ、楽しそうな母を想い、心よりお礼を申し上げます。子供達からも、皆それぞれに「ハッピーバースデー!」そしてビッグハグをお送りします!



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2022年12月27日火曜日

宝石のようにきらめく師走のケーキ








 とても丁寧に作り方や材料を説明していて、味は勿論、プレゼンテーションも抜群で、各種秘蔵レシピを惜しげもなく紹介してくれる、敬愛してやまないFleur de selさん、塩の華さんの記事が久しぶりに掲載された。


ホワイトチョコレートとマスカポーネ生地の苺ケーキ。一目惚れ。これは早速作らねば。基本となる材料のマスカルポーネや苺を求めてマルシェに走る前に、ふと、型はどうしようかと思い至った。


これまでレアチーズケーキにしろ、ババロアにしろ、レシピで何と書かれていようと、我が家にあるサイズこそ様々だが、つるんとした、いわゆるプレーンの型を使ってきていた。が、なんだか今回はちゃんと底が取れる型を使ってみたくなった。


いつものスーパーでは底が取れる型は販売していないことを知っていたので、ちょっと先のハイパーに行くことにした。ハイパーと言うだけあって品揃えも充実しているが、品物自体が大型サイズで、とにかく広くて正直行くだけで疲れてしまう。バッタ達が幼い時は良く行ったものだったが、最近は敬遠していた。


安物買いの銭失いにならぬよう、重みあるバネ式のものを購入。試してみると、当たり前のことながら簡単に底が外れ、これこそが今回のケーキ作りになくてはならない物のように思われてしまった。


ところが、材料の主役を務めるはずの苺の入手に問題が生じた。果物や野菜は最近は全てBIOのお店にしていたが、苺は季節ではないからだろうか、どのお店にも置いていない。ハイパーやスーパーでも蜜柑こそ山積みされていたが、苺は見当たらなかった。フランボワーズでは足が早いし、蜜柑では特別感が損なわれてしまう。シロップ漬けのブラックチェリーで手を打つことにした。


さらなる難関は、Fleur de Selさんのレシピのオリジナルなポイントであるホワイトチョコレートだった。以前ホワイトチョコを甘みとしてシフォンケーキを焼いた際、味にうるさい息子バッタにすかさず指摘され、ブーイングを食らったことがあった。お坊ちゃまのお口には、ホワイトチョコレートは合わないらしい。そこで苦肉の策、エバミルクを代用することにした。ホワイトチョコの融点を利用した口どけの良さが楽しめないが、取り敢えずの打開策。


年末年始は休暇こそ取れないが、オフィスや学校に行かずにテレワークが主流らしく、我が家のダイニングテーブルでそれぞれのラップトップで仕事やら勉強をしているお嬢様やお坊ちゃまの邪魔にならぬよう、ロボットを使わずに手で粉々に砕いたスペキュロスと溶けたバターを混ぜ、ケーキの底を作った。


マスカルポーネ、生クリーム、エバミルクの生地を半分ほど冷蔵庫で硬くなったケーキの底に敷き、ブラックチェリーを先ずは周囲にびっちりと並べ、残ったチェリーもまんべんなく底に敷き詰めた。その上に残りの半分の生地を被せ、平らにして冷蔵庫で一晩寝かせる。


赤紫色のブラックチェリーのシロップを味見してみたところ、程よい甘さ。これをゼリー固めしたらどうだろう。苺の代わりに、柘榴を一つ買っていたので、柘榴の実が丁度宝石のように輝くのではあるまいか。


そんな幻想は、実際にマスカルポーネの生地を壊さないように、ゼリーを静かに入れ始めた数秒後にあっけなく壊されてしまった。底が取れる型は完全密封ではなく、底からだらしなく美しい赤紫のゼリー液が流れ出てしまい、悲鳴に似た声を挙げてしまったので、トンカが騒ぎを聞きつけて大喜びで味見をしようとまとわりつく始末。


愕然としながらも、必要は発明の母とはよく言ったもので、こうなったら別にゼリーを作り、それを切り刻んで飾ったどうだろうと思い立った。なんと、最初の思惑とは随分とかけ離れ、材料も作り方も本来のレシピから大幅に変更となったが、怪我の功名となるか。


さあさ、お立ち会い、お立合い。ご用とお急ぎでない方は、ゆっくりと目と鼻と舌でお味見を。


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2022年12月26日月曜日

森の中の音楽のシャレ―

 





バッタ達は、練習の開始時期こそ違うものの、皆それぞれ高校を卒業するまでバイオリンを弾いていた。彼らがそこまで続けられたのも、音楽の魅力はもちろんのこと、バイオリンの師の存在が大きかったことは言うまでもない。


我が家から車で30分程の森にある、赤ずきんちゃんのおばあちゃんの家のようなシャレーが教室だった。レッスンが終わって外に出たら雪がたっぷりこんと降っていて、車のタイヤが雪に埋まって動けなくなり、四苦八苦したこともある。夜道、あまりの大きな満月に車を停めて、バッタ達としばし眺めたこともある。


個人レッスンとグループレッスン、春は鮮やかな黄色い絨毯が延々と続く菜の花畑、夏はいつまでも暮れない青空、秋はたくさんのイガ栗、冬は雪景色、四季折々の景観を楽しみながら通ったものだった。


「今度の土曜日はノエルのコンサートに行ってくる。」


そう末娘バッタが言うと、長女バッタはもちろん、息子バッタでさえも、目を輝かせて行くと言う。今でもバイオリンの師から、教室のコンサートやバカンスの間の講習会など、イベントがあると案内がくるらしい。ノエルには皆でサンタの帽子を被って、マルシェでミニコンサートをしたものだった。ソロのコンサートとは違って、飛び入りでお姉ちゃんやお兄ちゃんが弾いても大歓迎の、アットホームさがある。


久しぶりに皆がそれぞれのバイオリンを出して、音出しをしようとしたところ、弓が痛んでしまっていて、至急交換する必要があることが判明した。皆それぞれ週日は学校や仕事があるし、家にはいないので、ついつい昔の様に皆の弓を携え、町中のアトリエを何年かぶりに訪れた。


バッタ達が毎日バイオリンを弾いていた時は、毎週とまではいかないが、月に何回かは弦を買いに、或いは教本を、時にはバイオリンのサイズの交換、新たにフルサイズを購入するために、扉をたたいたものだった。


ドイツ人のカタリナがすぐに「まあ、お久しぶりですね!お元気でしたか。」と嬉しそうに対応してくれた。


三日で三本の弓を張り替えてもらい、コンサートの時にはよく持って行って生徒達に人気だったバナナシフォンケーキを焼き、末娘バッタの運転で皆で出掛けて行った。「ママは行かないの?」と声を掛けられたが、バッタ達が弾くからどんなコンサートにも出掛けて行ったが、今更幼い子供たちのキラキラ星を聴くのもね、と遠慮し、トンカと留守番をすることにしていた。


その夜、バッタ達が嬉しそうにコンサートの様子を話していて、そのうちに昔の思い出話で盛り上がり、バイオリンの師の一番のお気に入りは昔も今も長女バッタだとか、やっぱり未だ3歳にもなっていない時から教えている末娘バッタだとか、なんだかんだ言っても息子バッタだとか、言い始めた。


バイオリンの師は、どの生徒とも特別な関係を持っていて、どの生徒にとっても特別な存在で、同時にどの生徒も師の特別な存在なのよね。


そう長女バッタが呟くと、それまで騒々しかったのが嘘のように静まり返り、皆それぞれの思いに浸り始めた。長女バッタよ、さすが良く分かっているじゃないか。そして、そんな関係を築けているバイオリンの師に、改めて感謝と尊敬の念を強く抱く。



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2022年12月23日金曜日

爽やかなローズマリーとタイムの香るケークサレ

 






日本の大学院の博士課程が一体どういう制度なのか全く分かってはいないが、フランスの場合は博士課程に進学するとなると、所属の大学や研究機関、或いはスポンサー企業などと雇用契約を締結することになる。従い、最低賃金は保障され、社会人として納税の義務も発生する。逆に、どんなに優秀な学生であっても、教育機関で予算が取れなかったり、スポンサー企業が見つからなかった場合、博士課程への進学は諦めねばならないことになる。


さすがデカルトの国、合理的だと感心してしまう。博士課程の二年目になる長女バッタも、この秋から進学した息子バッタも、それぞれ毎月給与を得ている。長女バッタは国立の研究機関、息子バッタは大学の研究室所属なので、給与額は最低賃金に毛が生えた程度だが、産学連携となりスポンサー企業との契約にもなれば、かなりの給与額になるらしい。楽しそうに学友たちの高給について話しをしてくれる息子バッタの様子を見て、本人がハッピーであれば良しと最終的には落ち着くものの、親としては若干複雑な思いに駆られてしまう。


お金で幸せは買えないが、されど、といったところか。ビジネスで金儲けとは対極の人生を送ったご先祖様に思いを馳せ、我が身を振り返り、変なところで似てしまうのかしらと苦笑を禁じ得ない。


博士課程の履修者は学生なのか社会人なのか明確ではないが、バカンスに関しては社会人の枠組みに入れられるようである。それでも大学は年末のバカンスに突入ということで、息子バッタから我が家に戻ってテレワークをするので、遅くなるが夜には帰ってくるとの連絡を受けた。


OK!トンカが喜ぶわ!


翌日のランチに、二年前に長女バッタが植えて、今では我が家の庭の片隅で元気に育っているハーブをたっぷり使ったケークサレを焼こうか。

手に取っただけで爽やかな香りが鼻をくすぐる、小さくて細かい葉のタイム。夏の森林を凝縮したような濃い香りのする、深緑の硬く尖っていて細長い葉を持つローズマリー。


この二つのハーブを主賓とし、食感と味わいを引き立てるようにグリュイエール、コンテ、エメンタルをたっぷりと使い、色彩のポイントとしてポワロ―の緑の部分を細く刻み、カイエンヌ、パプリカ、コリアンダー、クローブを隠し味とする。


オーブンに入れて小半時間もすると、キッチンが幸せな香りで満ちてきて、まるで明るい太陽の陽射しが降り注いでいるよう。さあ、お昼よ!


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2022年12月19日月曜日

初めての味噌造り

 





寒さもひときわ厳しくなって、母が日本から送ってくれた貴重な黄色いダイヤを使って、味噌造りに挑戦する時期がいよいよ訪れたと思われた。もう何度か味噌造りを楽しんでいるという友人と、一時帰国をした際に乾燥麹を日本から運んでくれた友人に声を掛け、一緒におしゃべりも楽しみながら、愛情込めて大豆と麹を捏ねて味噌造りをしようじゃないかとなった。


幼い頃のおぼろげな思い出となるが、掘っ冠りをし割烹着を着た近所のおばさんたちが大勢で、大きな鍋で大豆を煮て、にぎやかに味噌を作っていたように思う。梅干し作りも、同じように大勢集まって、にぎやかにおしゃべりを楽しみながら、紫蘇と塩で手を真っ赤にして、干した梅を漬けていたように覚えている。


恐らく幼稚園生の頃で、手伝いもせずに、ぼんやりと眺めていただけなのだと思う。それなのに、その思い出は強烈で、味噌の香りや紫蘇の香りを伴って、時々幼い頃の自分の姿さえも見いだせる映像が何かの拍子にふと頭の中を流れることがある。


あの頃の量とは比較にもならない、わずかな量とはなるが、とりあえず完成した味噌の量が2キロもあれば十分ではないか、それを皆で分けて保管し、熟成させて楽しもう、そんな風に思えた。この2キロ、というのは、適当に出した数字ではない。


友人に持ってきてもらう麹の量は600グラムがマックスと思われた。我が身を振り返っても、どうしても日本からの帰りのスーツケースは食べ物や書籍でぱんぱんになってしまう。知り合いに頼まれた物を入れる余裕など、普通はないと言ってよく、ずうずうしいお願いと知りながら、そして、断られても仕方あるまいとの思いで、お願いしたものだった。


ありがたいことに、友人は600グラムならと引き受けてくれ、日本のご実家に届けた乾燥麹を持ってきてくれた。従い、全てのベースは乾燥麹の量600グラムであった。


乾燥麹を購入した会社のサイトには、味噌造りの動画が掲載されており、そこに材料の比率など好みの味に合わせて詳細に説明されていたので、それを参考に、乾燥麹が600グラムあれば、味噌は2キロ出来ると導き出され、2キロなら十分はないか、いやむしろ、キロこそが初めて挑戦するにあたり最高の量のように思えてしまったのだから、おかしなものである。


こうして、以下の材料と量が決まった。

有機玄米の乾燥麹 600グラム

国産有機大豆 433グラム

ブルターニュ地方のゲランドの塩 250グラム





以下、作る手順を次回に役立つように、反省点も含め詳細に箇条書きをする。

・前日に大豆は良く洗い、3倍以上のたっぷりの水に浸しておく(最低18時間)
・豆が完全に水を吸収していることを確認する
・圧力なべを高圧にセットし、沸騰してから40分弱火で煮る
・手で潰して芯がないことが肝心、だが、今回はやや煮過ぎたか
・ひょっとしたら30分で十分だったか、或いは中圧で40分か
・大豆を煮ている間に、麹と塩をまんべんなく混ぜておく
・60℃程度に豆の温度が下がった頃合いで、豆を潰す
・十分潰れたところに、予め混ぜておいた麹と塩を様子を見ながら混ぜていき、全部まんべんなく混ぜ合わせる
・十分に大豆、麹、塩が混ざるように愛情込めて捏ね、必要あればとっておいた大豆を煮た水を適宜入れながら、耳たぶの柔らかさになるようにする
・乾燥麹を使っているので、入れる水の量は多めとなるか
・十分捏ねたところで、空気を入れないように団子を作る
・煮沸消毒・アルコール消毒をしておいた瓶・壺・容器に団子を潰しながら(空気を入れないように)ぎっちりと詰め込む
・ラップや和紙をし、空気に触れないようにして、重しを載せて完了






大豆と麹、そして塩を混ぜている時のふくよかな香りといったら、最高。これで夏ぐらいまでは、じっくりく熟成するのを待つのだけれど、春先にちょっと様子を見てみるかしらね、と友人たちと笑い合う。


お味噌さん、お味噌さん。美味しくなあれ、美味しくなあれ!



おまじないをして、風呂敷を巻いたお味噌の瓶を、地下の冷暗所の棚に恭しく載せる。



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2022年12月17日土曜日

レクイエム

 




犬仲間の友達から「ちょっと!」と記事の転送メッセージが届いた。添付のリンクをクリックすると、強烈な内容の地元のニュースが飛び込んできて、俄かには信じがたかった。


その日の朝、二人の15歳の男子高校生の遺体が近所の高校生によって森の小径で発見された、というものだった。高校生は一人が二日前から、もう一人は前日から行方不明で家族から警察に届け出がなされていたらしい。詳細は書かれていなかったが、事件性はない模様だった。


ここ一番の寒い日を選んで、二人で一緒に今生に別れを告げることにしたのか。何が苦だったのか。人生まだ始まったばかりの年齢ではないか。それはこれから人生いろいろな苦労はあるだろうが、友達とバカ騒ぎをしたり、恋人と甘い夜を過ごしたり、子供達と笑い転げるなんてことはもうできなくなてしまった。なんて痛ましいことだろう。親御さんのことを思うと、胸が張り裂けそうになった。しかも、その森は、いつもトンカと朝夕散歩をする場所だったから、衝撃もことのほか大きかった。


夕方、トンカといつものように森に散歩に出かける。大地が凍っていて、凍てつく寒さが足元から這い上がってくるような日だった。下草は霜が降りてぱりぱりに凍っていたし、いつもトンカをからかいにくるピーや、ロビンもなりを潜めているようで、森はひっそり閑としていた。


歩みを進める度に、彷徨う二人の子供たちの魂を慰め、鎮めることができたらと、願わずにはいられなかった。ボーイスカウトの子供たちの手による、木の幹で囲っただけの掘っ立て小屋が見えてくると、遊び仲間がいなかったのだろうかと不憫に思えて涙ぐんでしまった。


子供から大人に移行する時期、多感な子供達はこの世の苦悩を全て我が身に背負っているような錯覚に囚われ、辛そうにしていることが多い。森の中でぼんやりとしていると、トンカが弾丸のような勢いで脇をすっ飛んで行った。すると今度は、トンカの熱い鼻面を膝に感じたり、ずっしりとした重みを味わいながらテレビを観たり、本を読んだりさせてあげたかったな、そんな思いに捕らわれてしまった。

周囲には次第に夕闇が迫ってきており、森の中のひんやりとした空気が体中に纏いつき、木乃伊取りが木乃伊になる、なんて縁起でもない思いが頭を掠め、身震いをし始めた頃に、遠くでトンカが立ち止まっている様子が目に入った。トンカの目線の先には、一人の若者がひっそりと佇んでいる姿があった。


一体、何をしているのだろうか。


近付くにつれ、若者はカメラを構えてシャッターチャンスを待っている様子であることが分かって来た。トンカは最初こそ立ち止まっていたが、敵ではなく、獲物でもないと判断したのか、さっさと藪の中に姿を消してしまっていた。若者の目の前には、泣きそうな色をした夕陽の欠片と、暗闇に支配される前の静寂な森があるだけだった。写真好きの私でも、立ち止まって一枚撮ろうとは思いにくい構図と色合い。


「ボンジュール!」


静寂を破る程の大声で声を掛けると、若者は何か囁き掛けてきた。近づくと、とても澄んだ瞳をこちらに向けて、「鹿がいるんです。ほら、3匹あの木の陰に。」と指を3本見せながら静かに教えてくれた。


彼が示した方を見ても、鬱蒼とした樹木があるだけだった。そんな様子を察知してか、手にしていたカメラで撮影した写真を見せてくれた。小型のデジカメだったが、望遠レンズ付きなのだろう、画面には確かに立派な鹿が木々の間に収まっている。青年は、夕日が沈む時間帯、鹿が現れる秘密のスポットであることを教えてくれた。


声を出来るだけ低めて静かにお礼を言って、青年と鹿の空間を邪魔しないように、そしてトンカに鹿の存在を気取られないように、足早に立ち去ることにした。


すうっと魂が浄められた思いがし、それまで震えんばかりだった身体に、優しい温かな思いがゆっくりと巡り始めた。


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2022年12月16日金曜日

A ce soir !

 





夕方、仕事の合間に携帯を何の気なしに覗いたところ、メールが届いていた。題名も「A ce soir !」。「では今夜ね」といったところか。


差出人は昔の同僚、イタリア人のリリー。彼女のパリのアパートで夕食会に誘われていたが、日程は翌日の夜の筈だった。ちょっ、ちょっと、待ってよ。ちらし寿司を作って持っていく予定にしており、仕事が終わってから海老、イクラ、卵などの材料を買い出しに行き、干し椎茸、人参、隠元などは、下ごしらえをしておこうと思っていた。


メールの本文を慌てて読むと、「今夜は皆に会うのがとても楽しみよ!○○(←私が」美味しい日本料理を一品持ってきてくれることになっているので、私は軽くパスタでも作る予定にしています。誰か、チーズ、デザートを持ってきてくれると嬉しいわ。19時半からお待ちしていますね。では、 « à ce soir ! » 」


ええっ!と思っているうちに、アイルランド人のカレンが「今夜はお誘いありがとう。デザートを担当するわ。」と反応、するとフランス人のドミニクが「チーズは任せて。」、ベロニクがアペリティフ、つまみを持ってくるという。


ちょっと、ちょっと!


慌ててリリーからの最初の招待メールを見ると、なんと私が勝手に一日ずらして認識していたことが判明する。トンカの夕方の散歩をカットすれば、ちらし寿司を作れないことはないが、海老なしとなろうか。ただ、夜家を空けるにあたり、トンカを事前に散歩させないなどということは出来ない相談だった。


なんてこった。慌ててリリーに電話をし、日にちを勘違いしていたことを告げると、大笑いされ、手ぶらで全然問題ないけれど、絶対来てね、と念を押されてしまった。


さてさて、どうしたものか。行かない、という選択肢はないことは確か。慌ててPouilly Fuméのボトルを一本冷蔵庫に突っ込み、先日買っておいたドイツのケーキ、シュトーレンの箱をプレゼント用に包装紙に包んだ。


早めに仕事を終え、トンカを散歩に連れ出し、急いで着替えて凍てついた車に乗り込んだ。年末のパリの夕方はプレゼントを買う人々でにぎわっていて、交通渋滞を覚悟せねばならなかった。それでも、恐らく日付が変わる時間帯に帰ることになるだろうから、電車よりも車の方が確かな交通手段だった。


遠くにエッフェル塔からの光が見え始めてくると、なんだか気持ちが高揚し始めた。夜のパリを運転するのは、久しぶりであることに気が付き、昔の同僚たちに会うことを意外にも結構楽しみにしている自分に笑みがもれた。


ちらし寿司を持ってこれなかったことは残念だけど、それは次回に、ということで。リリーのアパートの呼び鈴を鳴らし、5階まで階段をスキップしながら駆け上った。



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2022年12月15日木曜日

手袋を買いに

 




雨は苦手なトンカも、不思議なことに雪には大はしゃぎ。薄化粧をした地面に鼻を擦り付けたり、凍った氷を齧ったり、真っ白になった草原を駆け回ったりしている。バッタ達も幼い時はそうだったし、大人になった今でも雪と聞けば大はしゃぎをする。雪には人の魂を突き動かす何かがあるのだろう。


息をする度に鼻の先が凍り付いてしまいそうな凍てつく朝、手袋をした指先と防寒靴の足の指が徐々に冷たくなっていく感覚を味わいながら、いつも通りに、いや、いつも以上に足取り軽くスキップをしている様なリズムで前を歩くトンカを眺める。


寒さで心なしか色が濃くなったキャラメル色の艶やかな毛並みとスレンダーな体躯に無駄なくぴっちりとついている筋肉は、狐の子と見紛うよう。これで尻尾がふっさりと見事であれば、後姿は狐として十分通ろうか。


そんな思いに捕らわれていたからだろうか、息子バッタが小学生の頃に冬休みの宿題で「手袋を買いに」という作品の感想文を書いたことを思い出していた。ひょっとしたら宿題ではなく、授業中に彼が書いたものだったのかもしれない。その辺の記憶は曖昧ながらも、今でも鮮明に覚えている一文がある。


「きつねは手袋をしません。だから、きつねの子がてぶくろを買いに行くこともありません。」


我が目を疑ってしまった。先生を困らせようとか、何か特別なことを書いて驚かせようとか、そんなてらいもなく、愚直なまでの子供ならではの感想。いや、いや、いや。


一体なんだって想像力の欠如としか思えない、いわゆる子供らしさを持たない感想なのだろうか。呆れてしまった。想像の世界で遊ぶことが大好きだった自分自身を振り返り、我が子のあまりに現実主義さぶりに声も出なかった。


長女バッタは毎晩魔女の学校に通っていると吹聴し、末娘バッタをうらやましがらせていたし、末娘バッタもどちらかと言えば想像の世界に遊ぶタイプ。同じ環境で育っていながら、子供とはこうも違って成長するものなのかと、本当に驚いてしまった。


そんな彼も、ハリーポッターは好きだし、SF小説も好きなのだから、学校と言う場所で、想像力を豊かに引き伸ばす情操教育なんて堅苦しいことが嫌だったのかしら、と思うしかあるまい。


諸先生方も恐らく色々とご苦労なさっているのだろう。息子バッタの非常に現実的な感想に対して、担任の先生がどのようなコメントを書いたのか、ちっとも覚えていない。ひょっとしたら、コメントなしだったのかもしれない。


「確かに現実の世界では、狐が手袋を買いにくることは決してありませんよね。でも、そんな世界があると想像してみてください。ちょっと楽しくなってきませんか。狐のお母さんも、人間のお母さんのように、狐の子の手が寒くてかじかんでしまうとかわいそうだからと心配をして、手袋を買ってあげようとしたのでしょうね。狐の子の手を自分の手で包んで、はーっと息をかけて温めてあげたこともあるのでしょうね。○○君のお母さんも、○○君の手をそんな風に温めたことがあるのではないでしょうか。」


なんて、私なら書くかしら、ね。今度息子バッタが家に帰ってきたら、この話をしてみよう。今の彼なら、どんな感想文を書くだろうか。


さあ、トンちゃん、そろそろお家に帰ろうか。お手てがかじかんでしまう前に、ね。



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2022年12月12日月曜日

ノエル色の贈り物

 





どん、どん、どん。

ドアの叩く音がするので、お昼前に来ると言っていた息子バッタが早めに来たのかと思い、「待ってね!今鍵を開けるから!」と大声で呼びかけながら、大騒ぎをしているトンカも一緒に玄関の前に飛んで行き、ドアを開けると大きな花束を持った男性が立っていて、びっくりしてしまった。相手の男性は、トンカの歓迎の襲撃に出くわし、大きな花束を高く掲げなければならなかった。


状況を上手く把握できずに当惑している私に名前を確認すると、「マダムに贈り物です。」そういって男性は大きな花束を手渡してくれた。


真っ赤な薔薇の花のブーケに、たくさんの蕾が連なっている真っすぐに伸びたアマリリスの長い茎が3本。非常にダイナミックで、ぴったりのガラスの花瓶がないことが悔やまれた。しかし、必要は発明の母とは良くいったもので、ちょっとした工夫で華やかな雰囲気を壊すことなく、頂いた花を生けることができた。


それにしても、送り主は記載されておらず、特にメッセージも見当たらずに、なんだかぼんやりとしてしまった。ちょうど別件で母から連絡があったので、送り主不明の花束の写真を送ったところ、「どこぞに思い人がいるのではないですか。胸に手を当てて静かに思いを巡らせてみて。」とのこと。


送り主は、名前を告げなくても当然分かるよね、と思ってお花を贈ってくれたのだろうと思う。ごめんなさい。正直分かりません。ひょっとしたら、とは思うものの、確認する術がない。まさか、お花を贈ってくれましたか、と聞いてみるわけにもいくまい。


お礼を伝えたいし、お返しもしたいところだが、なんだか気持ちだけがぼんやりと宙に浮いてしまっている。こちらから何のリアクションもないとなると、つまらなくなって、きっと相手の方から連絡があるのではないか、と一縷の望みを持ちつつ、玄関にもたらされた華やかなノエルの色合いに、目を向ける。


アマリリスの蕾はふっくらと膨らみ、深紅の薔薇は甘やかな香りを放っているが、何も告げてはくれない。



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2022年12月8日木曜日

無農薬国産大豆の糸引く自家製納豆









バッタ達が幼い頃、夏の長いバカンスを利用して、6月、7月と日本の学校に体験入学をしていたことがある。日本の実家から歩いて通える地元の学校、つまり、私が幼少時代に通った幼稚園、小学校、そして中学校に母が掛け合ってお願いをしてくれた。実現できたのは、何よりもひとえに母がバッタ達を引き受けてくれたからで、二ヶ月も仕事を休めない私にとって、本当にありがたいことであった。


帰りのリュックの中身は、バッタ達の大好物の日本の食べ物でぎっしりとなることが多かったが、その中でも一番驚いたものは納豆だった。あれは確か末娘バッタのリュックサックだったと思う。納豆のパックがぱんぱんに詰められていた様子に、先ずはあっけにとられ、そして大笑いしてしまった。


バッタ達の伯父、つまり私の一つ上の兄の大好物が納豆で、夕食のデザートとして、お茶碗にこんもりと納豆を食べる程である。その伯父の食べっぷりを見てか、日本のお米が大好きで、お醤油の味が大好きなことが由来してか、バッタ達は3人とも大の納豆好き。


フランスで納豆が入手できないこともない。パリの日本食料品店に行けば、冷凍納豆が当然ながら日本に比べれば高い値段とはなるが購入することが出来るし、南仏で大豆を生産している農家が納豆を作っていて、予め予約を入れておけば小包で配達してくれる。


しかし、先日日本の実家に戻った際、母が手作りをしている無農薬の国産大豆の納豆を食べた際。艶もさることながら、お味がとにかく美味しくて、心の底から感動してしまっていた。そうだ、納豆を手作りをしよう。


フランスに帰ってくると、早速ヨーグルトメーカーを通販で購入した。なんだか「安物買いの銭失い」の感が拭えないが、とにかくシンプルイズベスト、ということで、40℃で保温できるものにした。大豆は、これも通販で無農薬のBIOのものとした。フランスではとにかく大豆を食用とする習慣がないので、スーパーでも無農薬の八百屋でも販売していない。納豆菌は大切に日本から持ってきた、選りすぐりの国産大豆の納豆のパックを使うこととした。


茹でた大豆を味見をしてみると、とても美味しかったし、茹でたお湯も薄味の豆乳のようで美味しくて、これはいいぞ、とほくそ笑んでいた。あとは、ヨーグルトメーカーにお任せなので、正直何もすることがないのだが、大いに期待をして出来上がった納豆を食べてみて、何かが違うな、と思ってしまった。


豆が硬かったので、茹で時間を多めにすることにしてみたが、あまり改善しなかった。バッタ達が帰宅した土日などに味わってもらったが、大喜びはするものの、興奮が冷めやると、どうもいつもの糸が引かないと、トーンがすっかりと冷えてしまった。糸が引かないのは、保温時間が少ないのに違いないと、いつも以上に保温時間を長くしてみるが、今度は匂いがきつくなってしまった。


そんな様子を日本の母に報告したところ、大豆が違うのかもしれないわね、と日本から国産大豆を送ってくれた。最近漸く日仏間での郵便配達サービスが再開したが、なにせ燃料費高、物価高とかで、大豆に支払ったお金の数倍も郵便料金に取られてしまった様子に、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。それに輪をかけるように、フランス側で受け取る際に、これまた母が支払った郵便料金の半分は税金として徴収されてしまった。そんなこんなで、黄色いダイヤの座を数の子から奪う勢いの超高級大豆様が2キロ程手に入った。


こんな貴重な大豆様をむやみやたらに使ってはなるまい。そう思い、丁度日本に一時帰国するという友人に、納豆菌なるものを日本から持ってきてもらうことにした。粉末なので、ほんの栞程度の重さのパックのものを通販で購入し、彼女の実家に送っておいた。


彼女の帰宅と同時に納豆菌をゲットし、カップ1杯分の大豆を水に一晩漬けて膨らませ、十分柔らかくなるまで圧力なべで煮て、熱々のところをソーサーに入れて、予め水に戻して置いた納豆菌を振りかけ、ヨーグルトメーカーにセットし、保温を開始した。


さあさあ、お立合い、お立合い!


先ずは、うっすらと納豆独特の香りが、嫌味ではなく、さらりと流れる。そして、おおっ!糸がしっかりと引いているではないか!ぐるぐるとかき混ぜ、どんどんと強い糸を絡ませ、お醤油をしゅっと掛けて味見をしてみたところ、嗚呼、弾力ありながらも十分に柔らかく、お味も嬉しくなる程に美味しい。遂に、美味しい手作り納豆にたどり着くことができたか。感無量。


手作り納豆は難し過ぎると、諦めかけていただけに、本当に嬉しい。考えてみれば、納豆菌が成功の鍵を握っていたことになるが、当たり前のことだろう。


納豆をお椀に移す際に大喜びで慌ててしまったからか、キッチンの作業台に二粒ほど納豆が残ってしまった。と、トンカがすかさず飛び上がってペロリ。え。ちょっ。とんちゃん、納豆食べるの?健康には良いだろうけど、これは余りに貴重だから、そうそうあげられないのよ。



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2022年12月6日火曜日

トンカと真ん丸の月と私

 






夕方近くに散歩に行くと、樹木の枝の先が切り絵のように見えて、非常に趣深い。夕闇が迫るにつれ、トンカの青色に光る首輪の輝きが増してくる。暗闇だろうと、昼間のように跳びはね、駆け回るトンカなので、次第に真っ暗の中で青色の筋だけが、素早く移動するのを見ながら、トンカの行方を確認しつつ、こちらは懐中電灯で足元を照らし、できるだけ泥濘にはまらないように注意しつつ歩みを続ける。


あれほど遠くに走っていったり、藪の中に入り込んだりする癖に、なぜか用を足す時は奥まった場所とはいえ、こちらが確認できる場所でするのだが、何か理由があるのだろうか。もしもの際に敵から守って欲しいとの本能がそうさせるのだろうか。


そんなことを考えていたら、青色の線が一点で動かずにいる。目をそちらに向けると、真っ黒な樹木のはざまから、こちらを覗いている真ん丸のお月様と目が合ってしまう。曇天の日が続いたからだろうか。気が付かぬ間に月はこんなにも満ちてきていたことに驚いてしまう。


ちっぽけな懐中電灯など必要がないくらい、月明かりが周囲を照らし始めた。濡れた落ち葉が重なり合っている小径など、まるで小川のさざ波のようにきらきらと光り輝いている。遠くから鹿の甲高い鳴き声。こんな世界もあったのか。


頬に冷たい風を受けながら、やわらかに微笑む。



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2022年12月3日土曜日

スパイスの香り豊かなYuvuzela亭特製スペキュロス

 





毎年ノエルの時期に楽しみにしていた、分厚いスペキュロスがここ数年手に入っておらず、ご無沙汰をしている。スペキュロスがないノエルなんて、とまではいかないが、何か物足りなさを感じていたところ、ふと、自分で焼いてみたらどうだろうと思ってしまった。


そうなると頭の中はいつでもスペキュロスのことを考え、暇さえあれば、スペキュロスのレシピをチェックし、比較検討してしまう。ベルギーやオランダのビスケットなのだが、皆それぞれ好みのレシピで、スパイスの配分を工夫したり、型を工夫したりして楽しんでいることが分かった。恐らく、各家庭の味というものがあるのだろう。


どうして今まで思いつかなかったのだろうか。アレンジ大好きな私にぴったりのビスケットではなかろうか。そうなると我が家の香辛料の瓶を眺めまわし、これぞと思うものをピックアップすることから始まった。当然のことながらシナモン、そしてクローブ、カルダモン、コリアンダー、ナツメグ。大丈夫、皆揃っている。


粉砕機にクローブ、コリアンダー、胡椒の粒を適当に入れ、カルダモンは実を割って中の粒のみ取り出して入れ、細かい粒になるまで粉砕する。ナツメグの実を削り始めると、独特の豊かで奥行きのある香りがぱっと広がった。シナモンの香りがポイントとはいえ、トンカの香りも混ぜたらどうだろう。トンカ豆を削ると、今度は甘い香りが空中に放たれる。これにジンジャーを加え、Yuvuzela亭のスペキュロスに入れる香辛料は確定した。


室温に戻したブルターニュの有塩バター100グラムに、赤茶のキビ砂糖100グラムを入れてクリーム状になるまで混ぜ合わせる。香りを封じ込める意味を込めて、先ほど調合したお手製香辛料を入れ込む。ここに溶き卵一つ入れ、最後に小匙一杯のベーキングパウダーを混ぜた小麦粉250グラムを振り入れ、生地が丸くまとまるまで混ぜ合わせる。


生地は冷蔵庫で二日ばかり寝てもらって、焼く30分前に冷蔵庫から取り出し、好きな型に成形し、180℃に熱したオーブンで10分から20分ほど、様子を見ながら焼き上げる。


キッチンは甘く高貴な香りで満たされ、幸せとはこのことかな、と思ってしまう程。厚みがあったからか、薄っすらと焼き色がつくまで20分はかかったろうか。ラックの上で冷ましてから、お気に入りの缶に入れて保管。ふふふ。嬉しくて笑みが自然とこぼれてしまう。


さあ、いかがでしょう。Yuvuzela亭のスペキュロス。挽きたての珈琲もお淹れいたします。トンカと一緒に、皆様のお越しをお待ち申し上げます。


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2022年12月1日木曜日

適正体重とは








「あら、随分と痩せているのね。がりがりだわ。」

夕方の散歩をしていると、暗闇からそんな声が掛けられた。こちらは懐中電灯をぶら下げ、トンカは青く光る首輪をしているが、相手は何も持っていないので、本当に暗闇がしゃべっているようだった。


トンカの周りには、わらわらと数匹の犬が寄ってきて、それこそ品評会のように匂いを嗅ぎ始め、ぐるぐると犬同士で会話をし合っている。どうやら3人ぐらいで、スイスシェパードやジャックラッセルなど5匹と散歩をしている様子だった。その中でも一番体躯の小さい犬がきゃんきゃんと吠え出した。


大きさや速さで凌駕できないと分かると、声量で威嚇し自己顕示するタイプなのだろう。往々にして小型犬に多いが、それなりに理に適っていて応援したくなってしまうが、どうやら一緒の連れはそうは思っていない様子で、しっつ、と叱り始めた。


「こんなに痩せていて!」

また批判の声が響いた。それはトンカに対してではなく、トンカの連れ、つまり、私への非難の声であった。ちゃんと餌を与えていない、可哀想に、と。え、ちょっと待ってください。トンカが痩せているって、それは運動量が多いから、フィットしているってことなんです。


いや、それよりも、この暗がりで何が見えるというのだろう。私の懐中電灯で照らされた、陰影の濃い姿ではないか。


早々に別れたものの、その後も彼女の声が頭の中でこだましていたが、いつの間にか長女バッタが生まれた時のことを思い出していた。初産。嬉しさと、誇らしさ、そして、不安がないまぜになっていた、あの頃。


出産後の二日目か三日目だっただろうか。入院していたクリニックで、看護婦さんから新生児の体重が落ちているので、母乳ではなくミルクを与えるようにと小さな瓶を渡された時、大病の宣告でも受けたかのように落ち込んでしまった。


母乳で育てようと漠然と思っていたのだが、生まれてきて未だ数日も経っていないのに、既に母親として彼女を守り切れていないのか、と愕然としてしまった。


新生児検診でいらした小児科のイスラエル先生に、ミルクを与えるようにと言われた話を伝えると、周囲の看護婦さんたちに「みんな、この赤ちゃんをどう思う?」と、いつもの穏やかで、優しい眼差しで問いかけた。


皆口々に、可愛い、可愛い、と言ってくださる。「そうでしょう?とっても可愛い赤ちゃんですよね。とても幸せそうですよね。ママの母乳で十分に満足しているってことなのですよ。赤ちゃんにもそれぞれの個性があって、体重の変化だけを見ていては大切なことを見落としてしまうのですよ。」


そして、お母さん、安心してくださいね。と、ウインクをしたように思う。それ以来、イスラエル先生は私からの絶大なる信頼を勝ち得、以降、息子バッタ、末娘バッタを診ていただいた。


そう、その通り。トンカは、こんなにも愛らしく、嬉しそうに跳ね回っているではないか。何ら問題もない。スリムな体躯がトンカの個性であって、誰かに何かを言われたからといって、食生活を再考する必要はあるまい。


ね、トンカ。


トンカと散歩をしながら、何度言われたことだろう。その度に、実は餌の量を増やしてみたりもしたが、どうも今の量がトンカにはぴったりだろうと思われる。量を増やしても、拾い食いの習慣は止めないし、逆に用を足す回数が増え、やや軟化してしまい、むしろトンカの胃腸に過度な負担となってしまうと思われた。


それでも、確固たる自信などない。トンカの様子をしっかりと見ながら、成長に合わせて、必要な量を与えていきたい。もちろん、大好物の煮干しや干し芋、ビーフジャッキー、チーズも適度に楽しみながら。


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2022年11月30日水曜日

秋の木漏れ日を味わうグルテンフリーのガトーオマロン

 





フランスで初めての職場、そこで出会った緑の目が魅惑的な、まるでソフィーマルソーのようなマリロランス。彼女が教えてくれた、職場近くの小洒落たカフェ。そこでは、秋になるとデザートに「ガトーオマロン」がメニューに現れる。


一口食べて、しっとりとした味わいに虜になってしまった。女性のシェフが切り盛りしていて、とびきり新鮮な野菜をふんだんに使った大盛りサラダが人気で、女性客が多かったが、そのガトーオマロンは一切れがホールケーキの6分の1サイズ。その大きさに圧倒されはしたが、素朴な栗色のケーキはそれぐらい大胆な方がいい。そして生クリームやカスタードクリームの類も必要なく、飾りもいらない。そう一瞬にして悟った。


職場が引っ越すと知り、何より残念に思ったのは「ガトーオマロン」のことだった。ある時、思い切って女性シェフに声を掛け、レシピを教えてくれないかと聞いてみた。にっこりと微笑み、お客様にとても人気がある当店自慢のデザートなんですよ、でも企業秘密ですからレシピをお教えすることはできません、と当然と言えば当然の答えが返って来た。


そこで、日本に帰ることになったので、暫くはお店に来れないこと、とても美味しかったので教えていただければとずうずうしいお願いをして申し訳なかったと伝えた。


会計をして帰る時、さっと女性シェフが近づいて、「ヒントを一つお教えします。粉類は入っていませんよ。」と囁いた。まあ、ありがとうございます!日本に帰るなどと嘘をついた自分が恥ずかしかったが、それ以上にヒントを教えてもらえて飛び上がらんばかりだった。


それから「ガトーオマロン」の味を探しが始まった。そして、遂にこれかな、と思えるレシピにたどり着いた。基本の原材料は3つだけ。


栗のピュレ 500グラム

卵白 卵3個分

カソナード 100グラム


・栗はマッシュして生クリーム大匙2程度でピュレを作る。

・卵白に砂糖を一度に入れて、しっかりと角が出るまで撹拌しメレンゲを作る。

・栗のピュレに3分の1程度のメレンゲを入れ、しっかりと混ぜ、残りのメレンゲに混ぜ込む。


そして180℃のオーブンで1時間。


焼く前にバニラエッセンスを生地に入れたり、バニラビーンズ入り砂糖を使っても、或いはラム酒をちょっと入れても楽しいかもしれない。


秋の木漏れ日を感じさせる幸せな香りがキッチンを満たしてくれ、一時間はあっというまに経てしまう。


まだ温かい時に味わっても、しっかりと冷まして味わっても、それぞれに楽しめます。いかがでしょうか。栗のピュレは完全にクリーム状にしないで、少し栗の粒が残っている状態が意外に美味しいです。


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2022年11月28日月曜日

ボルシチの味 後編

 




お目当てのシュトーレンを買うことはできたが、厚みのあるA5サイズの特大スペキュロスは見つからなかった。当てもなく探していると、息子バッタの同級生のママ友や、末娘バッタにお裁縫を教えてくれたお料理もお裁縫もプロ級の友人に声を掛けられる。


久しぶりなのに、久しぶりの気がせずに、かつてのようにおしゃべりをし、冗談を言い合い、とても楽しい時間が流れていく。彼女たちも既に子供達は卒業しているのに、いやだからこそ、なんの気兼ねもなく学校のバザールに出掛けてきて、掘り出し物を見つけたり、懐かしい顔に出会っておしゃべりに花を咲かせていく。


そうこうしているうちに、メッセージを送ってくれた現役ママの友人と出会う。彼女には、良かったら我が家の玄関スペースに車を停めてね、と予めメッセージを送っていた。


バザールがある日は学校の近くの路上駐車の場所は大方既に誰かの車が駐車してしまっていて、体育館の駐車場も満杯、近くの別の学校の駐車場に停めに行くなど、駐車場確保には皆が苦労する。丁度末娘バッタが車を使っているので、学校の近所の我が家の玄関スペースを使ってもらえれば、と思ってのことだった。


この申し入れを喜んでくれて、早速車を停めて来たという。トンカのにぎやかな歓迎の声に迎えられたというので、嬉しくなってしまった。


彼女と立ち話をしている間に、数名の知り合いやバッタ達がお世話になった先生が通り、その度に色々な話題に盛り上がり、時間が経つのも忘れてしまう程。友人は現役ママなので、バザールの出店でのお手伝いがあるからと、とりあえず別れたが、車をとりに戻る時に、是非顔を見せてね、と言っておいた。


家に帰ってくると、お留守番をしていたトンカから、どこに行っていたのキックを盛んに受けてしまった。そりゃあそうだよね。朝は一緒に森に行くつもりにしていたのだものね。ごめん、ごめんよ。


なだめているうちに眠ってしまったトンカの温かな体温を心地よく感じながら本を読んでいたら、突然トンカが起きて窓に向かって盛んに騒いでいる。と、友人が車のトランクを開けている様子がカーテン越しに見えたので、慌てて外に出てみる。慌ててと言っても、トンカと一緒に台所の勝手口から出て行ったので、当然ながらトンカが先に飛び出してしまった。友人の慌てふためいた声が聞こえるので、それこそ慌てて行ってみると、なんと友人は両手に包みを持っていて、トンカにいたずらされないように高く掲げている。


「ボルシチなんです。この器に入れて食べてくださいね。」


なんと、熱々のボルシチと、それを入れるお洒落な器。バザールで買ってきてくれるなんて。慌てて彼女の手から受け取り、這う這うの体でトンカの魔の手から逃げることに成功。


ボルシチは野菜とお肉がじっくりと煮込んであって、最高の味わいだった。



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ボルシチの味 中編

 





ところが、現役ママの友達からメッセージが入ったこともあり、急遽予定を変更し、トンカには家でお留守番をしてもらうことにし、毎年恒例のノエルのお菓子、シュトーレンとスペキュロスを買いに繰り出すことになった。


シュトーレンはドイツのお菓子だが、昔の職場の同僚だったドイツ人のヴェルナールが毎年お客様からの戴き物の大きなシュトーレンを恭しくスライスし、皆に一切れずつふるまったことを思い出す。非常に懇意にしているお客様からの一年間の感謝の気持ちを込めた贈り物だと聞いて、ドイツにも日本のようなお歳暮を贈り合う習慣があるのかと、感心したものだった。


それ以来、なんだか特別な思いが込められている気がして、大きなシュトーレンを見ると買うようになってしまった。ひょっとしたら偶々ヴェルナールのお客様がお歳暮にシュトーレンを選んだのかもしれない。しかし、あの時の誇らしげで嬉しそうなヴェルナールの顔からは、大きくて真っ白な粉砂糖がたっぷりと振りかけかれた美しいシュトーレンこそが、特別であると思わしめる何かがあった。


それと、スペキュロス。学校のバザールで出会った、3センチはありそうな、たっぷりとした厚みのスパイスが効いたB5サイズはありそうな大型ビスケット。一かけ口にしただけで、深みのあるシナモンの豊かな香りがビスケットの甘みと一緒に襲ってきて、得も言われぬ程の幸せ感に包まれる。


ところが、ここ数年は何故かバザールで見つからず、手にすることが出来ていない。夢のスペキュロスの味になってしまう前に、是非とも見つけて、味わいたいと切に願ってしまう。


今年はバザールの開始時間が遅いのか、皆がゆっくりとしているのか、朝の10時頃に行ったにも関わらず、これまでだったら既に出店の前では押せよ押せよの大混乱なのだが、意外に閑散としていて、担当者がのんびりと商品を陳列しているところだったり、通りでは段ボール箱を抱えている人や、両手に大きな袋を持っている人などが慌てた様子で行き交っていた。


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