2013年4月29日月曜日

フィオッコ、ア、レ、グ、ロ!!!




携帯が鳴る前に、
朝の光で目覚める。

昨日の会場準備で既に足腰に疲れが残っており、
慌ててケーキをオーブンから取り出した時に火傷をした指先に痛みを感じるが、
長い一日の始まりに深呼吸。

初めて挑戦したレモンタルトをアルミフォイルに包み、
これまた初めて試みたマンゴシフォンケーキをラップで包み、
末娘バッタが一人で挑戦して、最後は半泣きで焼いた星型のガトーオショコラ、
その後、息子バッタが音頭をとって、二人で一緒に笑い合って焼き上げた円型のガトーオショコラをアルミに包む。

大きなポップコーンのケース2つも忘れないようにと玄関に出しておく。

300個のプラスチックコップ、
300枚のプラスチック皿、
300枚の紙ナプキン、
20mのオレンジの紙ロール、
3個のキッチンロール。

135人の生徒達の名札、
30人の先生達の名札、
10人の案内係りの名札。

最後のコンサートの時のために、
白いワイシャツ、ブラウス、黒いスカートを用意する。

バッタ達を起こして、
最後の確認。

バッタ達がバイオリンをトランクに積み始める。
今回、初めての試みというプチオーケストラのアトリエに声がかかっており、
アルトと譜面台も用意する。

いざ出陣。

去年は学校の行事で参加できなかった二人のバッタ達はいるが、
学校の語学研修で中国に行っている長女バッタの姿はない。

息子バッタが手際良く、
前日に準備した受付のテーブルで
名札をアルファベット順に並べ替える。

参加者へのプレゼントとして、
ト音記号とヘ音記号の丸いバッチがルチエから差し入れされる。
丸い鶉の卵のチョコと、
大会のロゴが入ったボールペンは、
大会からのプレゼント。

プログラムを印刷してくれるプロの設計士ジュディスが未だ来ていない。
朝は弱い彼女。
確か、去年も遅れての到着だったか。

ぞろぞろと参加者がバイオリン、チェロを抱えてやってくる。
手ぶらの子はピアニスト。

カフェのコーナーでは、オシドリ夫婦の幼稚園の園長と小学校の教員のフィリップ達が、やっぱりオシドリ夫婦のフィリップの両親と一緒に準備に入っている。
彼らの名札!
大急ぎで手書きする。ルチエの二人の名札も作成。

ブロンドの長髪をなびかせてジュディスがプログラムを抱えて走りこむ。
末娘バッタが既に受付を済ませた子や先生達にプログラムを手渡しに飛ぶ。

家の子はバイオリンなのに、何故コントラバスの先生が担当なの?
10時からのオレンジのクラスはどこ?
ピアニストの会場は?
この荷物はどこに置いていいのかしら?

様々な質問を捌く。
気がつくと、もう10時。
慌ててバッタ達を受付のお手伝いから解放する。

チェリスト達の特徴なのだろうか。
遅れての到着組みが多い。
しかも、受付の手前で、急ぐでもなく、親たちがぺちゃぺちゃとおしゃべりに花を咲かせる。

さあ、もう授業が始まっていますよ!
お名前は?受付をしてください!名札がありますよ。

大声で伝える。

「家の子がどの教室にいるのか、知りたいのですが。」
今、どの曲を練習しているのか聞いてみる。
「バッハの二つのバイオリンのための協奏曲です!」
誇らしげに伝える相手に、2階の12番教室であることを告げる。

ちらりと、末娘バッタのことを思う。

「フィヨッコが覚えられなくてね。何せ、ラフォリア、ビバルディ、ヘンデルと盛り沢山で、全てを暗譜するキャパがなくなっているんだよ。グループも言わずに行ってしまったから、どの教室かも分からない。」
どこかしら誇らしげに語る相手には、グループはアジュールで、2階の11番教室で練習していることを伝える。

そして、ちらりと息子バッタのことを思う。

と、冴えない顔で、もっと冴えない顔の息子エルウィンを連れてイザベルがやってくる。
「待っていたのよ!
さあ、この名札をつけて。教室は2階の9番教室。もう始まっているわ。」

笑顔で送り出す。どうやら、嫌々だったらしく、イザベルがお昼には帰ると言い始める。
せっかく来たのだから、最後のコンサートに出ないと、と説得。

ランチボックスの箱を抱えてベアトリスがやってくる。
話し込んでいたイザベルと一緒に仕分けを始める。
袋に入っているとは言え、食べ物を床に置くことに抵抗を感じ、
それでも新たに机を運び出す気力もなく、
テーブルクロスを床に敷くことで、対応することに。

大人と子供、ノーマルとベジテリアン。
4種類のセットを準備。
床は沢山の袋がきっちりと並び、さながら花壇のよう。

恥ずかしそうにしか姿を見せない太陽の下、
仲間達と寒さに震えながらもお昼を食べるバッタ達の姿を確認し、
ソフィーやジュディスの背中を見つけ、彼女たちの脇に座り込む。
高校の社会の教師というソフィー。
真ん丸の茶色い瞳をくりくりとさせながら、
今度こそは、企画段階での落ち度をしっかりと列挙し、
問題提議をすると声を張り上げている。

「ちょっと待ってよ。
反省や、来年のことはさておいて、今、ここに横たわる現実の問題に目を向けてよ。
午後のオヤツ休憩は外にする?体育館にする?受付ホールにする?それによって、机を運ばなくっちゃ。で、誰が、いつ手伝える?」

皆、一斉に空を仰ぐ。

どんよりとした雲が覆っているが、
急に銀の粒が降ってくるとも思えない。

大騒ぎするであろう子供達、
あちこちに散らばるであろうケーキの屑、
こぼれるであろうジュースや水。

「雨が降っても、絶対、外よ!」
ソフィーが断言する。

午後はチェリストのカルロスとのオーケストラのアトリエが待っている。
できるなら、早目に準備をしてしまいたい。
ランチの終わりとチェリストの演奏が始まることを告げるゴングを鳴らす。
チベットからのゴングは、いつもなら優しく、心の湖まで震動が伝わるが、
こんなときの効果はいかほどか。

チェリストのいる家族はもう準備にコンサートホールに向かっている。
バイオリニストの家族の腰が重い。
ピアニストの家族は、観衆が少ない時の思いを知っているからか、動きが早い。

と、カフェのコーナーでのんびり食後のカフェを楽しむ親たち。
その周りではしゃぎ回る子供たち。

時々イギリス人、時々フランス人になる企画のシェフ、フランソワがウィンクを投げてくる。
いいんだよ。フランスなんだから、と。

それなら、と、
さっさとテーブルを運び出し始める。
驚いたことに、外に出したテーブルに早速腰をかけて話し込む女性たち。

午後のお茶会のテーブルの準備なんですよ、
と言っても、ちっとも気にせず、ましてや、手伝おうと動くこともない。

まあ、いいか。
仲間の助っ人たちが一緒に運び出してくれる。
あっという間に準備はオーケー。
遅くなったけど、チェロのコンサートを覗きに行こう。

すぐに息子バッタの笑顔に出会う。
隣りには末娘バッタの姿。
「ママ、僕、眠いよ。」
「寒くて、凍えているの。」
そういう末娘バッタに、
着ていたジャケットをそっと音を立てずに脱いで渡す。
ちょっとだけ、和みの時間。

髭面のカルロスが目に映る。
ユネスコのコンサートで、音楽性を巡って、指揮者と大いにぶつかり合った頑固親父の印象が抜けず、これから、彼の指導の下、プチオーケストラをするのかと、ちょっぴり緊張が走る。

「ママ、教室に連れて行ってよ。」
甘える末娘バッタに、ママもこれからアトリエなのよ、と告げる。

ゴセックのガボット。
幼いバイオリニストとチェリストに混じって、
第2バイオリンにジュディスの姿。

楽譜を見て弾くよりも、
耳で聴いて弾く子たちが多く、
ワンテンポ遅れて入るバスや第2バイオリンも
何回かの練習で形になる。

ちょっと一人だけ浮いているな、と思ったら、
弦を一本間違って弾いていて、慌てる。

リラックスさせようと、
冗談を交えて何度も繰り返し指導するカルロス。

彼の魅力に皆が引き込まれ、
はちゃめちゃだったプチオーケストラが
急に活き活きと踊り出す。

指導力に目を見張り、
弾きこなしてしまう子供達に目を見張る。
そして、
この一瞬を共有できたことに感謝する。

さあ、ピアニストのコンサートの時間。
これが終われば、午後のお茶会の時間。
皆が持ち寄ってくれた沢山のケーキ、山盛りのビスケット、抱えきれないボンボン、幾つものドリンクを外のテーブルに運ぶ。
いつの間にか仲間が集まり、一緒に準備をしてくれる。
今年は出だしこそ鈍かったが、参加者は135人。家族も含めると300人はくだらない。
それに対し、お菓子の提供がちょっと控え目なことが気になる。
ケーキはできるだけ、子供達がとりやすいように、小さ目に切ってね、
と、メッセージを伝える。

コンサート会場からは割れんばかりの拍手。
それがお茶会開始の合図。
老若男女、皆、にぎやかに集まって、壮観。

にこにことフィズが、何を取って来ようか、と言ってくれる。

いいのよ、いいの。
こうして、皆がこんなに喜んでくれていることを見ることの方が、
すっごく嬉しいのよ。
でもね、最後のバイオリンのコンサートだけは、最初から最後まで観たいわ。
だから、後片付けは、その後にね。

フィズはもっとにこにこして、
君はゆっくりと観るといいよ、後は僕に任せて、
と言ってくれる。

どうしても、先ほどのプチオーケストラの成果を皆に披露したいジュディスの声を、
カルロス、そして、全てを運営している我々のシェフ、マリに伝える。
マリは喜んでコンサートで演奏しようと言ってくれる。

カルロスとマリが話し込む。

チェリスト達はもう出番が終わったと気持ちの上でも思っているだろう。
時間だって、押せ押せだし、と思っていると、
カルロスがやってくる。

貴方の指導の下なら、
なんでもやりますモードの私に、
今回は演奏を辞退したと伝える。

真っ直ぐと目を見て伝えるカルロス。
分かっていると思うけど、さっきは、少しずつ積み上げて、皆の気持ちが一緒になって、上手くいったんだよ。
あの時の魔法の瞬間を皆には覚えていて欲しい。
ピアノのコンサートがあって、休憩が挟んでしまい、
あの時の魔法が働かないかもしれない。
そうしたらどうだろう。
だから、今回は、プチオーケストラは、あれで解散。
でもね、皆には、あの時に味わった魔法の瞬間を求めて続けて欲しい。
それぞれに、ね。

心の湖が震える。

カルロスと同じだけの効果はないだろうが、
できるだけ同じように、ジュディスに告げる。

そうかもしれないわね、
宙を見つめ、ジュディスが応じる。

オッケー。さあ、バイオリンを取ってこよう。
もう、コンサートが始まるわ。

そういうジュディスに、今回は演奏する側ではなく、聴衆者として鑑賞したいと伝える。
フィヨッコが聴きたかった。
エレンの音にも触れたかった。

久しぶりに観客側に陣取っていると、
あら、今日は弾かないの?と声が掛かる。
演奏するってことは、実はそう簡単なことじゃない。
仕事だ、準備だ、と全く練習をしてきていない私には、
実は皆の中で弾く資格さえない。
慌てて、気もそぞらで、弦を間違ってしまう失態をやらかしたくはない。
そう、今日はゆっくりと、味わいたい。

幼い子たちがずらりと前に勢揃い。
彼らが賑やかに集まって、何とか列を作ろうとしている間、
後ろでは、真剣に大きな子達が様々に指の練習。
先生の姿も見える。
なんだか微笑ましい。
そう、先生だって、最後の瞬間まで練習している。

と、一瞬にしてキラキラ星が響き始まる。
それが開始の合図。
そうして、ビオラ体験グループがビオラの音階で一曲奏でると、
エレンが出てきて、アジュールのクラスのみが残り、皆、座り込む。

フィオッコ。
ア、レ、グ、ロ!!!

彼女が告げる。

予告どおりの軽快さと明朗さでメロディーが弾ける。

生徒達の中に、活き活きと楽しそうな息子バッタの笑顔を見つける。
あんなに嬉しそうに演奏会で弾く彼を見たのは、初めてかもしれない。
溢れんばかりの音の粒の輝き。
燦燦と煌く、その只中で、自信に満ち溢れ、はちきれんばかりの笑みで弾いている息子バッタ。

彼はつかんだんだ。
瞬間、悟る。

演奏することの楽しさを感じるまでに到達したんだ。

大きな波が体中に押し寄せ、
喜びが体内を駆け巡る。

ラモーのガボットが優しく流れ始める。

息子バッタの輝く笑顔は続いている。

続く、バッハの二つのバイオリンのための協奏曲。
ここで第2バイオリンとして末娘バッタのチームが加わる。
白目がちな大きな目を一層大きくして末娘バッタがリーダーを見つめている姿が印象的。
ここでも、息子バッタは晴れやかな笑顔。

なんだか泣きたくなってくる。
この日を迎えるために、彼はバイオリンを8年前に手に取ったのかとさえ
大袈裟ながら思えてしまう。

人数も増えてのビバルディ。
相変わらず、天からの啓示のように音が降り注がれる。

曲目が変わるたびに、子供達の数も増え、音の波が膨らむ。
我が子の晴れ舞台を見ようと、背伸びをする姿も増える。

アレグロで途中、一瞬の沈黙が訪れ、すぐに、それまで以上の音が流れ出す。
素晴らしい集中力。

締めくくりは、お決まりのキラキラ星。
会場は割れんばかりの喝采に揺れる。
マリが最後のスピーチをし始めると、
あちこちから、メルシーマリッ!と声が掛かる。

いくつか事務連絡をお願いしていたが、やっぱり忘れてしまっているマリに駆け寄り、
ざわつき始めた会場で大声を張り上げる。
「4つのお願いがあります!」
水を打ったように静まり返る。
一つ、今回は名札のプラスチックケースを回収してください。
二つ、パリに行く先生を乗せてくれる車を探しています。
三つ、椅子の脚に被せたペットボトルのキャップを外してください。
四つ、後片付けに、できるだけ多くの人手を必要としています。

張り裂けんばかりに叫んだ後、
仲間が肩を叩いて、称賛してくれる。
息子バッタが飛んでくる。
「ママ、あんなに大声で叫んだら、エコーで響き過ぎて、何も聞えないよ。」
にやにやしている。
素晴らしい演奏だったと褒めると、
にっこりと爽やかな笑顔が返ってくる。

それからは、また息つく暇なしの時間。

バッタの父親が迎えに来た時、
息子バッタが末娘バッタのバイオリンと私のアルトも一緒に、
車のトランクに入れてくれる。

一日の思いを語り合って共有する時間もなく、
動かないバイオリンの塊を廊下に残して去られ、
茫然自失で立ち尽くすことしか叶わず、
これまで、何度泣いたことか。

今回は何かが違った。

それでも、多くを考えることもせず、
仲間達と教室を全て元通りに戻し、
ゴミを出し、
最後の見回りをする。

反省兼打ち上げ会の日取りを皆が決める声を上の空で聞きながら、
そっと、シルバーペンギンに近寄る。

一人で帰んなきゃ。
すると、
さっきの演奏していた息子バッタの晴れやかな笑顔が甦る。
胸が温かい思いで一杯になる。
彼に、あんな笑顔をさせてくれた、この日と、マリと、仲間達に感謝の思いで泣きたくなる。

ありがとう。
ありがとう。
ありがとう。







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2013年4月24日水曜日

春爛漫



月明かりに誘われ、
闇夜に真っ白に浮かび上がる
絢爛たる散房花序のさくらんぼの花に
我を忘る。

未だ明けやらぬ朝霧の中で、
色とりどりの花弁をしっかりと閉じ、
すっくりと佇んでいるチューリップの波に
足を止む。

大空のキャンバスに
幾重にも刷かれた長い帯が
羽衣のような軽やかさで色をつけ、
薄桃色に輝き始めると、
あやしうこそ物狂ほしけれ 。。。 

春爛漫。



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2013年4月23日火曜日

月明かりに救われて




さくらんぼの白い花が枝にこんもりと咲き誇り、
地面は可憐な草花が咲き乱れ、
一気にリラの蕾が形を成し、
チューリップが一斉に固い蕾の色づいた先から、どんどんと開き始め、
春が駆け足に過ぎていこうかの勢い。

太っちょの鳩たちが毎日の様に足を運び、
枝を折らないかとの、こちらの心配を余所に
思った以上に空高く、枝から枝へと飛ぶ。

我が家の庭に、何があるのか。

様々な鳥たちが、
自分達の時間をきっちりと守って舞い降り、
土を啄ばみ、
仲間と遊ぶ。

鳥のけたたましい囀りが
駆け足で過ぎ去らんばかりの春を謳っているかのよう。

いつもなら心地よい春なのに、
一人だけ取り残されてしまいそうな、
そんな焦りに押し潰されてしまいそうな、
息苦しさを覚える。

真っ白な塊のさくらんぼの花に埋まれ、
息さえできない心地になる。

寝付かれぬ夜。
窓がやけに明るい。
誘われて外を見れば、
煌々とした月。

昔からの知り合いに会ったような思いに囚われ、
思わず身を乗り出してビズを投げる。





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2013年4月18日木曜日

咲きほころぶ春




さて、
到着を連絡しようと携帯を取り上げるや、
隣に見慣れたモデルが滑り込む。
ぴったりなんて奇蹟的。

早いじゃない。
いつ出たの?
今、連絡しようと思っていたの。

そう言うと、
心配げに、待った?と聞いてくる。

ううん。
だから、今着いたところ。

それでも、
どれぐらい待たせてしまったのか、と聞いてくる。

かなり意外。
これまで、そんなこと聞いたこともなかったのに。
さすがに、前回、1時間以上も待たせたことを悪いと思っているのか。
いや、そんなことは知る由もあるまい。

それより、
随分、無理をしたのかもしれない。

先日、
無理難題を時間も考慮せずに吹っかけてくる顧客相手に四苦八苦しており、
彼の地にミサイルを飛ばして欲しいよ、
との放言に、
ドタキャンの憂き目を見たこちらとしては、
ミサイルを飛ばしたい相手は、
貴方なんだけど、

冷たく言い放ったことが、効いているのか。

或いは、
送ってもちっとも反応がないメールに対して、
時間がなくて全く見ることができていない、
と言われた時に、
分かっているけど肩透かしを喰らったような思いと、
さもありなんとの諦めの境地とが入り混じって、

私のメールを見る以上に重要なことが
この世の中にはあるのね、

と、
いやに素直な言葉を吐いてしまったことが効いているのか。

昨夜遅くまで仕事をし、例の顧客の要請を完了させたという。

あれも、これも、と
聞いて欲しい話をし出すと、
既に知っている様な反応が返ってくる。

ほら、先週会った時に、聞いているよ。

そう言われて、はっとする。

あの、1時間以上待ち続けた時って、
未だ先週のことだったのか。

ううん、久しぶり。
長いこと、会っていなかった。

会いたかった。

にっこりと包み込む笑いが返ってくる。

さくらんぼの白い花が咲きほころび、
春はあちこちで微笑んでいる。。。







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2013年4月16日火曜日

10人の仲間を想って詠う



大イベントを終えて、10人の仲間を想って詠う



かの君を想って詠う。

君がいた 君がいたから カクテルも 一味違って 思い出深し
今年はね ちょっとやめるの カクテルは そう言いながら 中核メンバー
冗談も 本気にとって 中華街 三色デザート 探して回る
熱いのを 食べて欲しいと あちちちち チジミお皿に 沢山盛って
真っ白い 大福の下に 隠れるる ほんのりピンク 初恋の味


かの姫を想って詠う。

貴女にと 最初に声かけ 断られ 新たに3人 連れて現る
エレガンス 美貌に才能 溢れさせ 天は二物を 与えたもうか
いつだって 笑顔はじける いつだって 明るいコメント 前向き姿勢
甘辛し トッポキの味 まろやかな 豆腐と餅に ミントの香り
軽やかに ロゼの粒かな 高らかに 弾けよ天に 我らの笑い


かの方を想って詠う

引き受けて くれた時には 成功を 確信できたよ 感謝してます
あたしはね 普通過ぎて 浮いてるの そう言う貴女が 最も貴重
かじっては 甘い懐かし かじっては 新たな思い メロンパンかな
最高の 装いにての 打ち上げに 迎え出でては 涙抑える
大根と 柚子の香りが しっとりと しゃりり食べては 君を想うよ


千を想って詠う

千ノ輔 ああ千ノ輔 千ノ輔 君とのロマンス いつか夢見て
福の神 お目目が弱い お獅子様 二人の踊りに 愛を感じて
燃えてるの やめろったって そりゃ無理よ いかせて頂戴 燃え尽きるまで
花なくば 作ろうじゃない 鳥なくば 歌おうじゃない 千に任せて
鶏の足 海老にムールに イカリング あらゆる旨み パエリアに咲く


姉御を想って詠う

うれしいね 何でも知ってる 姉御肌 力強しや 頼もしきかな
おっと来た 姉御のメール 超やばし 今度は何が 出てくることか
あっまずい 駐車場の ビップとか 6時に姉御 開けてやれない
韓流で 私もちょいと 一ひねり 超辛キムチ 旨み抜群
いいじゃない 二年後にまた 集まって みんなでやろうよ 楽しいカクテル
 

桜姫を想って詠う

この人ね さらってしまおう 委員会 お正月会 うまい文章
振袖の 着付けの為の 長リスト タオルに紐に 知らない言葉
見た目には 超真面目なの 実際は おっちょこちょいの 可愛いドジさん
嘘でしょう 夜中の3時 鋏研ぐ ちょっと恐いね 桜姫様
超遅刻 嬉しそうに はしゃいでる 手作り餡蜜 甘く優しく


雷どんを想って詠う

庭園の 小石探して 彷徨うか キャンパスの冬 子供遊ばせ
驚きの マイペースだよ 雪ちゃんの 雷ドドン お囃子ドドン
ワゴン車に 一杯詰まった 一所帯 翌朝子供 どうして乗せた
気がつくと 一人さっさと 洗い物 命の指を 大切にして
ありがとう ビール数本 忘れてた ポップコーンに ベリーのタルト


別の姫を想って詠う

悪かった ひっぱったのは 私です 夫婦でふうふう 言わせてしもた
悪かった からかったのは 私です 君は可憐に 頬を染めてる
ありがとう 本気の本気 中華街 君の見立ては 美味しい肉まん
若草の お召し物が 似合ってる その髪飾り ほのかな香り
ラタトィユ これが噂の ラタトィユ まろやかな味 幸せの味


やっちゃんを想って詠う

まかせてね そうきっぱりと 言ったのは そうよ貴女よ やっちゃんなのよ
やれますよ きっぷの良さが 売り物の 貴女の魔力に 皆魅せられて
当日は とんがりコーン スタイルで 決めてくれたよ カッコええよお
あきません 日本の心 忘れずに 姿勢見せよと 言の葉強し
あかんわと 未だ熱かりし ガトショコラ 抱かれた坊や 嬉しく笑う


別の君を想って詠う

颯爽と トロチネットで 馳せる君 慌てなくとも 待っているよ
強引に ひっぱってしまい ごめんねね 貴女の力 必要なのよ
頑として 動かないとこ 天晴れな  芯の強さに 漏れる微笑
100ユーロ お札がないと 言う君に おいおいおいと 慌ててコケル
仏語でも 英語尚更 気炎上げ もめる会議に 副鼻腔炎



才長けた ママが集うよ 我が町に 桜散れども いよよ華やぐ




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2013年4月12日金曜日

大地にばら撒かれた濃紺の粒



一転俄かに掻き曇り
天空から銀の粒。

明日の夜集まる仲間達を迎えるにあたって、
満開の桜と
金の粒のシャンパンに以外に
彼女たちの弾ける笑顔があれば、
正に、藤原道長の心境。
望月の欠けたることもなしと思へば。

と思いきや、
どうやら、アルコールに弱い乙女ばかりとか。

そうか。

ならば、と。
金の粒ならぬ、
ミルティーユの濃紺の粒を探しにいく。

一粒、一粒には、
アルザスの早朝の霧の中、
大きな野生の濃紺の粒を口に運んだときの幸せが
凝縮されている気がする。

そうして、
気がつくと、箱に積みきれない程のフルーツを抱え、
ミントの香り高く、
愛車シルバーペンギンに近づく。

と、
銀の粒が走る。

トランクを開けようとしても、
両手が塞がっていては、
どうにも仕方がない。

座席に乗せてしまおう。
そう思ってドアを開けた途端、
フルーツの山から、
濃紺の粒がバラバラと転がり落ちる。

銀の粒が、
霰となって、
濃紺の粒と一緒にバラバラと音を立てて道を叩く。

せっかくの濃紺の粒が地上にばら撒かれてしまうが、
バラバラ、
バラバラ、と
大地が喜んでいる。

乙女達には、
何か別のものにしよう。

霰は止むことなく地面を叩き付け、
どこかで、雷の音が轟き渡る。



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2013年4月10日水曜日

気まぐれな太陽




いつでも会う時は、
ちょっと身構える。

ついつい、思っていることとは裏腹の、
憎まれ口をきいてしまう。

気まぐれにしか訪れない冬の太陽であり、
その気になって蕾なんかを膨らませた日には、
翌日からの霜ですっかり萎み、
枯れてしまうことは知っているのに。

それでも、太陽の訪れが待ち遠しい。

だから、現れると、
生きていたのね、
と大袈裟になってしまう。

素直になれない。

他の仲間と親しそうに挨拶のビズをし合っている様子を見ると、
なんだか、はぐらかされた思いがする。

忙しいことは分かるが、
連絡一つ寄こさずに、
メールの返事さえもないことから、
呆れ返るよりも、
怒りさえ覚えることもある。

それでも太陽。
会えば鳥達は囀り、
花々は色とりどりに華やぐ。

分かってはいるけど、
やってられない時もある。

ならば、放っておけばいいのだろうが、
月に少なくとも一回は会合で会う。
いわば、同じ目的を共有する仲間の一人。

今回も、その仲間達との大掛かりなイベントがあり、
数ヶ月前からの綿密なる準備、
企画段階で大揉めに揉め、
交渉、根回しに大いに時間を使い、
漸く当日、なんとか段取り通りに進み、
多くの参加者に喜んでもらい、
満足感に浸る間もなく、会場の後片付けに走り回っていた時。

機転を利かせる、なんて芸当は、きっと女性の十八番なんだろう。

大きなゴミ袋を両手に抱え、
さあ、ゴミはどこに持って行けば良いのか、
と数人の男性陣がうろうろしている。

ゴミは外と相場が決まっている。
そうして、暗くたって外に出てみれば、廃棄物を置く場所なんて、
すぐに見つかる。
いや、見当がついてもいい筈。

そう言っても、
意外に男性陣は、戸惑うらしく、
とりあえず、と、
ドアの脇に置き去りにする始末。

ちょいと回った数歩先に、大きなプラスチックのゴミ箱が並んでいるというのに。

と、
大きなゴミ袋を両手にぶら下げ、
私の後についてくる影あり。

「ほらね。私の言うことって、間違っていないでしょう?ここにゴミ箱があるのよ。」
意気揚々と声を掛けると、

「いつだって君の言う通りにしているじゃないか。君の言いたいことが分かった時に限るけど、さ。」
暗がりで声がする。

「ええっ?なんですって?
そんなに私の書き方って、分かりにくい?最近すっごく注意して分かりやすい正しいフランス語で書く努力をしているんだけど。」

心外に思う反面、以前、フランス語の書く力を磨かないといけない、と言われたこともあり、心配になって、気弱な声で言ってみる。

すると、
大きな笑い声がして、
「大丈夫。ちゃあんと、分かっているよ。」
暗がりからぬっと出た二つの大きな手で、
がっしりと顔を捕らえられる。

えっ。

一瞬を置いて、
片頬に
熱いビズ。。。

。。。太陽はいつだって気まぐれ。




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2013年4月8日月曜日

手はカルチャー




フランスと日本で、
同じ型、同じ生地で100の衣服を作ったとします。
できた作品を比べると、
フランスで作られたものと、日本で作られたものには、
違いがあります。

手はカルチャーでもあるのです。


世界のモード界の重鎮は、
宇宙をも包み込む微笑を始終絶やさずに、
一つ、一つ、
言葉を切って話をする。


『カルチャー』の定義について、大学時代の比較文化論か何かの講義で、
女子学生と喧嘩腰の討論をしたことが思い出された。
当時、討論の何たるものかもわきまえていない青二才同士。
相手の意見に聞く耳も持たずに、
自論のみを主張し合った二人。
にやにやと嬉しそうな担当教授。

文化、カルチャーとは果たして個人的なものでもありえるか、
といったことについての討論。

今なら分かる。
アメリカ生活が長い彼女の主張は、
英語のcultureから由来しており、個人的なものであって当然とするもの。
方や、こちら、いっぱしの純日本人。
文化たるや、個人的なものではなく、社会が共有するものである、との主張。

そう、英語の『culture』と日本語の『文化』の定義の違い。
あの時、そこまで踏み込んで考えられる余裕がなかったことが歯痒いし、
きっと分かっていながら、
女子学生の珍しい討論を面白がって聞いていたであろう教授が口惜しい。


『手はカルチャーでもある。』

今の私の心にストンと入り込む。
60兆個の細胞を歓喜で震わせる『手』を思う。



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