2014年2月16日日曜日

母上参上




目覚ましが朝5時を告げる。寝る前にチェックしたサイトでフライトの状況を再確認する。やはり予定時間を小一時間も早く到着する模様。ぼんやりはしていられまい。慌てて身支度を整えアクセルを踏む。こんな早い時間は渋滞とは無縁。それでも、どこにアクシデントが隠されているか分からない。決して失敗してはならない時には、用心のうえにも用心を重ねるべし。迷いもせずに有料の高速を使う。40分もせずに空港に到着。掲示板を見れば既に到着している。抜群のタイミング。そろそろ入国審査を経て、荷物受取のターンテーブルの周りで陣取っているだろうか。

実は先回、夏に出迎えに行った時、大いに失敗をしていた。あの時は到着前に空港に車を乗り付け、息子バッタと台湾の姪を引き連れ、荷物受取ターンテーブルの大ホールが良く見えるガラス張りの前で、仁王立ちして待っていた。ところが、待てど暮せど姿が見えない。何度かバッタ達を到着ゲートの出口に見張りに行かせたが、そちらにも姿はないという。大ホールの幾つもあるターンテーブルは全てが稼働しており、様々な国から訪れる人々でごった返していた。中国大陸からの便、大阪からの便、成田からの便。一体、どれが成田発の荷物を扱っているのか。一瞬不安に思うが、まあ間違いはあるまい、と、そこにアクセスする為の階段を凝視し続ける。ネズミ一匹見逃すまい、との気合いである。バッタ達も一言も口をきかずに、我こそが一番先に姿を見つけようと必死の形相。

ふと、携帯を見るとメッセージが入っている。嫌な予感がする。すると、今度は呼び出し音がなる。慌てて出てみると、ずうっと待っていた本人。既に到着ゲートに出て、誰もいないので困り果て、近くにいた親切な若者から携帯を貸してもらい、電話をしていると言う。そんなことはないだろう。こちらは二時間前から見張っている。一体どこから出てきて、いつ我々の目の前を通って行ったのだろう。長旅をして漸く到着ゲートを潜り抜けても、出迎えがおらず、大いに戸惑ったであろう相手の気持ちを慮る余裕はなかった。つい、こちらが随分前から出迎えに来ており、手落ちはない筈であることを主張してしまった。しまったと思った時には既に時遅し。相手は怒り、せっかく来たのにがっかりである、相手の気持ちを考えられないとは何事か、自己中心的ではないか、とガンガンと告げられる。到着ゲートの出口で待っているべきであり、ターンテーブルが見える場所で待っているとは変な話ではないか、と。

だからこそ、今回は失敗は許されなかった。
では、到着ゲートの出口で大人しく待っているべきであろうか。迷った。サイトではターンテーブルの番号まで表示してある。今回は間違いあるまい。指定されたターンテーブルの周りには、今、漸く乗客が集まり始めている。大丈夫。間違いあるまい。

それでも、今回も待てど暮らせど姿は見えない。団体が二組も出てきている。焦ってくる。同じ過ちをしてしまうほど馬鹿なことはあるまい。慌てて到着ゲートの出口に走っていく。姿はない。ここは腹を括り、この出口で待っているべきであろう。

そのうちに、先ほど見た団体がぞろぞろと出てくる。おかしい。これ程遅くなるはずがない。荷物が出てこなずに、困っているのだろうか。新たにターンテーブルが見える場所まで走っていくが、ターンテーブルは稼働を終了し、照明も落ちている。しまった。飛行機が到着してから早二時間。まさか、まさか。既に到着ゲートに出てしまい、そこに誰もいないことを腹に据えかね、タクシーに乗ってしまったのではないか。真っ青になる。口はからから。なんだって待っていてくれなかったのか。どうしてこうも激しやすいのだろう。タクシーに乗るお金を持っていたのだろうか。それよりも、バッタ達が学校に行ってしまうから、家に鍵が掛かってしまうではないか。困った。とにかくも、家に向かうか。いや待てよ。ひょっとしたら急に具合が悪くなり、どこかで休憩をしてるのではあるまいか。ここで帰ってしまったら、困ってしまうのでないだろうか。

一つだけ開いているカフェにも、待合所のベンチにも、トイレにも姿はない。インフォメーションセンターで、乗客が全員出てきたのか何とか調べられないかと尋ねるが、申し訳なさそうに、無理であることを告げられる。きっと泣きそうな顔をしていたのであろう。珍しく親身になってくれるも、全く力にはなってくれそうにない。

飛行機が到着してから三時間。覚悟を決める。家に帰ろう。

震える心を抑えつつ、漸くの思いで駐車場で車に乗る。何度も家に電話をし、バッタ達に何か連絡がないかと聞いていたが、焦る思いが募るばかりとなっていた。取り敢えずは家に帰ると連絡しようか。車を出しながら携帯を手にする。と、メール着信に気が付く。誰だろう。まさか。

まさかのまさか。当の本人からのメール。怒りのメールだろうか。ハンドルを切りながら本文を斜め読み。幾つかのキーワードを目で追いながら、大声を出してしまう。なんと。夜中発のはずなのに、午後の1時と勘違いをし乗り遅れてしまったことが分かる。そして、明日同じ時間に到着することになったらしい。

良かった。無事でいてくれたんだ。涙が出そうになる。

それなら、早く電話連絡が欲しかったと思ったのは、落ち着いてからのこと。それでも、怒ってタクシーに乗ってしまわずに、乗り遅れてしまい改めて翌日早起きして迎えに行かねばならない方がよっぽど良いと思わずにはいられない。

さあ新たに気を引き締めよう。後一日、家を掃除する時間ができたということ。
車を降りると朝日が気持ちよく降り注いでいる。






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皆さんからのコメント楽しみにしています




4 件のコメント:

  1. お母様いらっしゃるのね。

    母子水入らずの時間を楽しんでください。

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  2. ドキドキ…
    粗相がなくて良かったのか、1日減って悲しむべきか。
    でもやっぱり失敗なくお出迎えのの方がいいのかもね。
    てへ、遅れちゃった♡と登場のママはいつも以上に可愛いはず。

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  3. 匿名様

    温かいコメントありがとうございます!

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  4. Muffinちゃん

    ドキドキもの。
    でも、Muffinちゃんの言う通り。素敵な再会となりました。しかも笑えることには、翌日の便がすぐに手配できて(しかもほぼ無料)如何に自分はラッキーかと主張。ふふふ。母親って、いつだってこんな感じ。そうこなくっちゃ、なんだけど、ね。

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