2014年12月20日土曜日

扉までの5歩



思いがけずにランチの誘い。
どうしても抜けられない会議中。
30分後なら、と慌ててSMS返信。

会議は三時間にも及んでおり、そろそろ終わる筈だった。それでも、決してそんな素振りは見せられない。平静を装い、丁寧に最後までゆっくりと余裕を持って対応する。相手先を顧客と辞して、エレベーターで階下まで降り、門を出たところで丁寧に挨拶をし、雨の中をダッシュする。

連絡があってから小一時間。祈るような思いで電話をする。待ち合わせの場となる最寄りの地下鉄の駅に駆けつけるが、果たして構内なのか、改札なのか、それとも地上なのか。と、横断歩道の向こう側に傘をさしている姿が目に入る。当然、地下鉄の入り口にいるこちら側に来るものと思い待つが相手は動かない。横断歩道を渡り、傘の中に入る。

ひんやりとした頬。

向かいのパン屋がパリではちょっとした有名店であると伝えると、じゃあパン屋に入ろうか、と笑う。

小一時間待たせた相手に、今どれだけの時間が残っているのかさえ分からない。
ただ、自分がこれから何をしなければならないのか、今何時になっているのか、そんなことは一切考えられなくなっていた。

通されたテーブルは真四角。小さいようで大きくて、真向いに座りながらも、手が届きそうで届かず、話だけは後から後から溢れ出て、ふと気が付くと、あれだけ混み合っていた店内に残っている客はまばら。

カウンターで支払いを済ませ、歩き出すすぐ後を追う。
左のオーバーの袖から、後ろに手がのぞく。その手を慌てて握る。
扉までの5歩。手と手を繋ぎ走り込んで外に出る。

別れて正反対の方向に進みながら、笑みが体中を駆け巡る。




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