あら、お久しぶり。
息子バッタのクラスメートのママにスーパーの入り口でばったり出会う。
ひとしきり、学校関係の話をしながら、
家族全員が一つのメールアカウントを共有しているとの話となり、
変に感心してしまう。
親子、夫婦、その間に、一切のプライベートがない世界とは、
一体どんな感じなのだろうか。
それでも、そろそろ息子には独立したアカウントを作ろうかと思っているのよ、
と悩まし気に伝える様子を見て、
なんだか、別世界の話だな、と思ってしまう。
でもね、
と彼女は続ける。
先週、携帯は買ってあげたのよ。
そうなのね。
家は、携帯は未だなのよ。
そう言うと、
すっと、距離を狭めて、
声を一段と落として、
「あら、家の息子の話だと、携帯持っているってよ。
しかも、アイフォンだって。」
なんだか、バカバカしくなる。
親が息子には携帯を買っていないし、
オペレーターと契約もしていない、と言っているのに。
「きっと、ママには内緒で自分のお小遣いで買ったのね。
あ、悪いこと言っちゃったよね。ごめんね。気にしないでね。」
なんだか、吐き気がしてくる。
毎月の電話料金を支払う能力が息子にはないことぐらい、親が知っている。
その親を前に、変なことを告げるものだと、呆れながらも腹立たしい。
彼女は、自分の息子の話を信じているだけに、性質が悪い。
馬鹿馬鹿しい、と思いながらも、
真っ先に学校から帰ってきた長女バッタに、その話をする。
「えっ?なんでぇ?持っていないのにね。」
彼女らしく、全く気にしていない様子で、その話はそこで終わってしまう。
今度は、息子バッタを捕まえて、話を振る。
「ええっ?持っていないのに?変なことを言うお母さんだね。
あ、きっと、友達が皆持っているから、僕にも買ってよ、と言って、買ってもらったんだよ。お母さん、うまく言いくるめられちゃったんだね。ははは!」
最後は笑っている。
そうか。確かにそう言われてみれば、その通り。
なんだか、親子の信頼関係を疑うことを言われて、
嫌な思いをしていたのだが、
バッタ達の視点では、決してそうではないらしい。
むしろ、息子さんの言葉を信じて、私に告げ口までした彼女が不憫にも思えてくる。
しかも、騙されて携帯を買わされたのであれば、尚のこと。
そう考えれば、
それこそ、親に内緒で、自分の個人アカウントを作ることなんて、
朝飯前のことだろう、と思えてくる。
なんだか、
すっきりしない結末となってしまうが、
友達にダシに使われた、なんてちっとも思っていない息子バッタや、
全く意に介さない様子の長女バッタの態度が
なんとも爽やかで心地よい。
さて、彼らを見習って、
頭を切り替えよう。
空を仰げば、煌々たる月。

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