2016年11月5日土曜日

犬君へ








ひんやりとした早朝の空気に秋を感じながら、庭の緩やかなスロープを小走りに門に向かい、形だけの黒い鉄製門扉を押して外に出た瞬間、左足裏に違和感を感じる。そこにあってはならないものを踏んずけてしまった後味の悪さ。

ほんの数日前も同じことがあった。その時には、ゴミ箱を出すので大きい門扉を開けて外に出た瞬間、やはり、そこにあってはならないものを踏んずけてしまう。ここに引っ越してきて、もう10年以上になろうか。こんなことは、これまで全くなかった。

二週間のバカンスを終えての初日。勢いよく元気に学校に行くバッタ達が、朝一に門を開けて外に飛び出た途端、同じように踏んずけてしまったら、一日が台なしになってしまうだろう。

慌て、リラの枝を折り(実はリラの枝は、しなって、ちっとも折れてくれない)、葉を使って、ブツを処理する。そうしているうちに、乗ろうとしてたバスが通り過ぎてしまう。

左足に違和感を感じたままバスに揺られる。外は息が白くなるほど寒かった。前夜は遅くに帰って来たが、その時にはなかった。そして、ブツは気味が悪い程に柔らかかった。もしかしたら、体温さえ感じられたかもしれない。となると、早朝の散歩時の仕業に違いない。誰かが、意図的に、門の目の前で飼い犬に用をさせたに違いない。まぎれもない悪意を感じる取る。

左足に違和感を感じたまま電車に揺られている間、今度は対策を考えてみる。前回のブツをしっかりと除去しなかったために、同じような場所で何をしたに違いない。となると、酢でも撒くか。

その晩、バッタ達に、悪意を持った誰かが、飼い犬に人の家の門の前で散歩の途中に用足しをさせている、と怒り憤懣に告げると、笑われてしまう。

ママ、さすがに犬に、ここでしなさいとは誰も言えないよ、と。

おお、そうか。

ちゃんと拾わない飼い主がいけないんだろうけど、たまたま場所が家の門の前だったんだよね、と。

君たちは本当に素直に、人を疑わない素敵な若者に育っているよね。

そう思いながらも、お酢のボトルを持って外に出て、暗闇の中を散布。

犬君よ。君のご主人はどうやら身勝手な人みたいだね。でもさあ。歩道の上は止めようよ。みんなが歩く道なんだよ。ましてや、家の門の前はだめだよ。取り敢えず、お酢を撒いておくからね。君のテリトリーじゃないんだよ。威厳をもって、堂々と歩いておくれ。立ち止まっちゃだめだよ。





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