2022年11月19日土曜日

雨談議

 





雨は音を消し、痕跡を消し去る。

我が家に泥棒が入った日も雨降りの日だった。


同時に雨は独特のにおいがある。

地下鉄に乗っている時に、停車駅で雨のにおいを運んでくる乗客がいて、はっとしたことが誰もがあるに違いない。


雨上がりの道は土の香りがするし、森の中はいつも以上に草木の香りに満ち満ちている。雨の雫が蒸発する時に、付着している物体の香りを同時に空中に解き放つのであろう。


雨の日はきらいではない。

天窓を雨の粒がたたく音も小気味いいし、車のフロントガラスを威勢よくはじき続ける音も悪くない。むろん、そんな呑気なことを言っていられるのは、我が身が濡れない状態にあるからであって、雨降りの日に外に出るなら、高性能な防水靴を履かねばならない。濡れそぼった靴下で長時間歩こうものなら、意気消沈してしまい散歩どころではない。


トンカはどうなのだろう。

夏は朝露に濡れた草原を嬉しそうに走り回っていたが、さて。凍えるような晩秋の朝、暗闇の中で、夜中に降り続いた雨をたっぷりと吸収した小径を嬉しそうに駆け回る姿に、トンカの力強さを見る。それが野生動物の本来の姿なのであろう。勝手に人間の都合で家で飼いならされ、拾い食いを禁止され、暖房の効いた部屋で人間と一緒に過ごすことは、ぬくぬくと眠りを貪ることは、果たしてトンカにとって幸せなのだろうか。


雨談議がトンカの幸せという壮大なるテーマに移ってしまった。しかし他人が幸せか、などと勘繰ること自体が非常に失礼な話に違いない。ここは、そろそろ切り上げて、雨上がりの森に散歩に行こうか。トンカは二つ返事でついてくるに違いない。



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