2022年11月27日日曜日

ボルシチの味 前編

 





きまって11月の最終土曜日は、バッタ達が通っている学校の冬のバザールとなっていた。その日は何故か初雪が降ることになっていて、坂の多い通りなので、立ち往生した車が通りの真ん中で放置されていることも見慣れた光景だった。


どうやら今年は雪にはなりそうもないな。早朝、トンカと散歩をしながら、空を仰ぐ。バザールは学校の保護者会が企画、運営するのだが、一般公開されていて、近所の人々もノエルの贈り物を探しにやってくることが常だった。


バッタ達も友達と待ち合わせをして、色々な出店を冷やかしながら、様々な屋台でつまみ食いをし、時間の許す限り楽しんだものだった。とはいえ、土曜はバイオリンのレッスンの日だったので、早朝のちょこっとした時間と、バザーが終わるぎりぎりの時間にしか行けなかったのだが。


そんなこともあってか、卒業しても友達と誘い合って、好きなだけ、時には一日中学校のバザールに行っていた。そして、それは子供達だけでなく、親も同様で、見知った顔を見つけては近況報告や昔話に花が咲き、あちこちでおしゃべりの輪ができるのも、恒例のことだった。


ところが、今年は長女バッタは研究発表とやらでフランスの東部、アヌシーに行っていたし、末娘バッタは前日に学校の学生企画のガラパーティーがあったとかで、運営に携わっていた彼女は明け方にでも寝たのだろうか、疲れ果ててしまっているので来ないという。息子バッタは、フラットシェアリングをしている5人の学友たちと週末を過ごすので、ちっとも家に帰ってこなくなっていた。


前回、一緒にスパイスが効いたホットワインを飲みに行こうと誘ってくれた近所の友達は、丁度留守にしていたし、お金が足りなくなっちゃったから貸してよ、と大きな袋を膨らませて興奮しながらバザールで買い物をしていた友達は、パリに引っ越してしまっていた。そこで、今年はトンカと森にでも遊びに行こうかしらとぼんやりと思っていた。



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